No.10 今ここにいる幸せ(三学期終業式)

附属松本小学校 校長室だより
平成 27 年3月 16 日
『いま、ここに居る幸せ
~伝統は創るもの~』
(3学期終業式副校長講話より)
今日で、47日間の3学期が終わります。そして、209日間の平成26年度が終わろうとし
ています。
先ほど、1東の及川真綾さんと1西の小林大地くんが、学年を代表して「1年(3学期)を振
り返って」を発表してくれました。及川さんは、アイガモさんとの出来事、友だちがたくさんで
きたこと。小林くんは、児童会行事「トレジャークエスト」でペアの6年生にお世話になったこ
と。この1年間の成長と思い出を自分の言葉で語ってくれました。
それぞれの学級が、中核となる活動に浸りこみ、担任の先生と一緒に「くらし」をつくってき
ました。1年生のアイガモさん、お蚕さん。2年生の子ヤギのパクちゃん、ほうきづくり。3年
生の生き物探検、地域探検。4年生の松本の民芸・文化、熊手づくり。5年生のオカリナづくり、
附属小の歴史。6年生のボランティア活動、県内産の小麦の研究。その中で、生き物との出会い
と別れがあり、もの・こと・人との出会いと新たな発見がありました。明日の卒業式を前に、こ
の1年を、6年生は6年間を振り返り、耳を澄まして心の声を聴いてください。自分の何がどう
変わったのか、そして、明日登る山は見えたのか。
さて、今日の終業式に何を話そうか迷っていましたが、どうしても音楽集会の感想をお話した
くなりました。それが、みなさんからのメッセージを受けとった私の返事だと思っています。
1学期の終業式に「歌うわけ」と「集う意味」についてお話
しました。その中で、6東の内山未衣(みい)さんの「音楽集
会を振り返って」を紹介しました。6東のみなさんは、
「ひとり
ひとりの笑顔を輝かせよう」のテーマのもと、担当学級とフロ
アの皆さんが一つになれた音楽集会を創ってくれました。
「君の
笑顔が好きだから」は、ずっと歌い継がれていく、附属松本小
の宝物となりました。
先日の、6西のみなさん
が中心となって創った音楽集会は、6東はじめ、すべての学
級の魂がつまった音楽集会だったと思っています。
(音楽集会写真スライド)
6西のみなさんは、この音楽集会を終えて次のように振り
返っています。何人かの感想を紹介します。
・指揮をやらないことによって少しずれてはいたけれど、みんな気持ちよさそうでした。思い出
ごとに分かれたときに、私は「入学式・友だちとの出会い」というところで、1西の人と話し
ました。1年生だから入学式のことを話している人が多く、歌うときには入学式のときを思い
出しながら歌っているようでした。このようにすると、いろんな人の思い出を聞けて、自分の
中にもいろんな思い出がよみがえって、いろんなことを思い出せました。
・今回はステージからフロアへの移動や全校が一気にフロア内を大移動するのがあったけれど、
なんとなく、自分が全校の中に溶け込んでいくような、そんな感じがしました。
・5つの思い出に分かれて歌いました。その思い出につながる歌詞に工夫をつけて歌うと、とて
もいい歌声が広がりました。最後に歌ったときは、体育館が自由な空間に変わって、みんなが
笑顔になったように思えました。
・最後に丸池のところでみんなで歌ったときに、全校はもう帰ってるのかなと思ったけれど、外
に出ていったら全校が歌っていてくれてとてもびっくりしました。一緒に歌っていたら、いつ
もは何も思わないけれど、とても楽しい気持ちになりました。
最後に全校で歌った「絆」。涙で声が詰まり、歌うことができませんでした。「いま、ここ」に
いる幸せをかみしめていました。大げさな言い方ですが、生きている実感、つながっている実感
がそこにはありました。この子たちと、この先生たちと、パクちゃんと、そして天国にいるアイ
ガモのククロたちと、いまこの空間と、時間を共有して生きていることへの感謝。私にとって、
体育館が神聖な場となったのです。まさに、歌うことは、「祈る」こと。
このような音楽集会となったのは、
「出会えた仲間との絆を 思い出と共に伝えよう」のテーマ
のもと、6西のみなさんがたくさんのメッセージを発信してくれたからです。目に見える工夫は
次のことです。
・指揮者をおかないこと
・ひな壇(担当学級のステージ)をつくらないこと
・手の合図ではなく「座りましょう」と言葉で伝えたこと
・6西のみなさんも他の学級の中に入って一緒に歌ったこと
・少人数(思い出ごと)で思い出と表現の工夫を語り合ったこと
・学級や学年をこえて、思い出の場所に分かれて歌ったこと(整列はしていません)
・担当学級の6西も丸池のまわりで一緒に歌ったこと
形には必ず意味があります。そこには、6西の願いや思いが込められています。言い方を変え
れば、6西の願いや思いがそのような形を生み出したのです。それでは、なぜこのような形にな
ったのでしょう。それは、6西の、そして一人一人の願いや思いが強くなればなるほど、様々な
問いがそこに生じてきたのだと思います。
「なぜ指揮者がいるの」
「なぜひな壇が必要なの」
「なぜ
クラスの表現の工夫を発表するの」「全校で集まって歌う意味は何なの」「もっと絆が深まるには
どうしたらいいの」「もっとこの曲のよさを味わうにはどうしたらいいの」「みんなと創る音楽集
会、6西らしい音楽集会にするにはどうしたらいいの」
このような問いが自分との対話を生み、友だちとの対話を生んだのです。そして、6西のメッ
セージを全校のみなさんが受けとり、広げ、深めたのです。だから、あの感動的な音楽集会が生
まれたのです。
全校が退場し終え、もう一度「絆」を歌おうとしたとき、6西の子たちは丸池のまわりで歌っ
ているみんなの輪の中に入っていきました。驚いたことに何人かは、伴奏をしている子のまわり
に駆け寄り、歌っているのです。そうせざるを得なかったのでしょう。からだが自然に反応した
のでしょう。丸池のまわり、ピアノのまわりに、
「いま、ここ」を共に生きている、精一杯生きて
いる子どもたちがいました。
伝統は守るものではなく、創るもの。私は、形が伝統だとは思っていません。そこに貫かれて
いる精神が伝統だと思っています。もし、何の問いもない形が受け継がれていくならば、附属松
本小学校の歩みはそこで止まります。問い続け、求め続けていくこと。まだまだ、此処は「途上」
です。
副校長 宮下昭夫
-お知らせ-
元豊丘村教育長の毛涯章平先生(本校にも在職された大先輩です)に揮毫していただく言葉
が決まりました。4月には体育館に掲額する予定です。
《扁額の言葉》
『子どもらよ 道は遠くとも 険しくとも 目をみひらいて 心をこめて どこまでも歩め
ただひたすらに』(
「ただ ひたすらに」より)