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1 地球温暖化対策推進計画策定の目的と削減目標
1-1 地球温暖化対策推進計画策定の背景と目的
札幌市の下水道は、大正15(1926)年度の事業着手から
80年以上にわたり機能の充実を図ってきました。戦後の
急激な人口増加に伴う環境整備や冬季オリンピック開催
22(2010)年度末の処理人口普及率は99.7%と、全国的
にも高水準の普及状況となっています。
下水道は、私たちの生活の安心・安全を守るとともに、快
適に暮らすために不可欠な都市施設です。また、処理水の
水質改善は、河川水質や水辺環境の向上にも大いに役立っ
ています。
2,000
総人口 処理人口
1,800
1,600
人口︵千人︶
を契機として短期間に集中して整備したこともあり、平成
■下水道処理人口の推移
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
S45 S50 S55 S60
H2
H7
H12 H17 H22
一方、下水道事業は、水処理及び汚泥処理に多くのエネルギーを使用しており、札幌市の下水道事業による温室効
果ガス排出量は、札幌市役所の事業活動の中でも大きな割合を占めています。このため、下水道事業においても、積
極的に地球温暖化対策(以下、
「温暖化対策」という)に取り組むことが求められています。
そこで、札幌市建設局では、下水道事業について、温暖化対策における明確な目標を設定するとともに、今後、温室
効果ガス排出量及びエネルギー使用量の削減に向けてさまざまな取組を行い、計画的に温暖化対策の推進を図る
ため、
「札幌市下水道事業における地球温暖化対策推進計画」を策定します。また、本計画は、同時に資源やエネル
ギー循環の形成推進を目指すことにもなり、将来の低炭素化社会の構築に貢献することにもなります。
1-2 計 画 の 位 置 づ け
札幌市建設 局では、
「札幌市下水道マスタープラン」で掲げた理念に基づき、平成23(2011)年度から平成32
(2020)年度までの10年間で下水道事業が取り組むべき施策の方向性を示すことを目的とした「札幌市下水道
ビジョン2020」を平成22(2010)年度に策定しました。
本計画は、
「札幌市下水道ビジョン2020」の重点施策である地球温暖化対策の具体的な行動計画として位置づけ
られ、平成23(2011)年度に策定した「札幌市下水道事業中期経営プラン2015」と連携していきます。また、平成
22(2010)年度に策定された札幌市全体の温暖化対策の計画である「札幌市温暖化対策推進ビジョン」とも連携し
ていきます。
札幌市温暖化対策
推進ビジョン
札幌市下水道
マスタープラン
札幌市下水道ビジョン
2020
〈計画期間 H23∼32(10年間)〉
連携
札幌市下水道における
地球温暖化対策推進計画
〈計画期間 H23∼27(5年間)〉
連携
札幌市下水道事業中期経営プラン2015
〈計画期間 H23∼27(5年間)〉
1
1 地球温暖化対策推進計画策定の目的と削減目標
1-3 計 画 期 間
計画期間:平成23(2011)年度から平成27(2015)年度までの5年間
本計画では、
「札幌市下水道事業中期経営プラン2015」の計画期間に合わせ、平成23(2011)年度から平成27
(2015)
年度までの5年間を計画期間とし、
早急かつ確実に実施する取組を示します。また、
下水道事業は中長期的に
運営されるものであるため、
本計画では、
「札幌市下水道ビジョン2020」
に基づき、
下水道事業における平成23
(2011)
年度から平成32
(2020)
年度までの10年間の中期的な温暖化対策の取組の方向性を基本方針として打ち出します。
1-4 計 画 目 標
平成27(2015)年度まで年平均1%以上のエネルギー使用量の削減〈平成21(2009)年度基準〉
「札幌市温暖化対策推進ビジョン」では、札幌市域全体の温室効果ガス排出量削減の中期目標を「平成32(2020)
年度までに温室効果ガス排出量25%の削減(平成2(1990)年度比)」としており、その達成に向けて札幌市役所にお
ける目標を「毎年平均1% 以上(平成21(2009)年度∼平成32(2020)年度で11%)のエネルギー使用量の削減」と
しています。
そのため、
本計画においても、
「札幌市温暖化対策ビジョン」
を踏まえて、
平成32
(2020)
年度までに温室効果ガス排
出量を25%削減
(平成2
(1990)
年度比)
することを見据え、
計画期間である平成27
(2015)
年度までの目標を、
「平成21
(2009)年度を基準として年平均1% 以上のエネルギー使用量の削減」とします。
(平成21(2009)年度から平成27
(2015)
年度までで6%以上の削減)
なお、
下水道事業では、
エネルギーの使用により発生する二酸化炭素以外にも、
水処理、
汚泥処理過程からメタンや
一酸化二窒素などの温室効果ガスが発生するため、
これらの温室効果ガス排出量削減の取組についても進めていきます。
1-5 基 本 方 針
本計画では、
「札幌市下水道ビジョン2020」に基づき、下水道事業から発生する温室効果ガス排出量を率先的かつ
計画的に削減し、同ビジョンの施策目標の一つである「低炭素・循環型都市の実現」の達成を目指します。
下水道事業における温暖化対策は、以下の基本方針に基づいて推進します。
なお、本計画は、その実施状況や技術の進歩、社会情勢の変化により、必要に応じて見直しを行うものとします。
改築・更新に合わせた
省エネルギー化の推進
新エネルギー・エネルギー
高度利用の推進
下水処理プロセスの
低炭素化の推進
2
費用対効果の高い温室効果ガス削減対策を進めるため、設備の改築・
更新に合わせて、より効果的な省エネルギー設備の導入を進めると
ともに、建物の省エネルギー化を図ります。
太陽光発電設備を始めとする新エネルギー設備の導入を進めると
ともに、LED照明など新たな技術の導入を進めていきます。
下水道の本来目的である水処理・汚泥処理に影響を及ぼさない範囲で
処理プロセスの効率化を図るとともに、水処理や汚泥処理の過程で
排出される温室効果ガスの少ない処理方法の導入を進めていきます。
1-6 計 画 の 枠 組 み
本計画の対象とする温室効果ガス(※)は二酸化炭素(CO2)、
メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)とします。
また、本計画は、札幌市における下水道事業に関連する全て
の組織・施設を対象とします。
(※)温室効果ガスは、この3種類の他に、ハイドロフルオロカーボン〔HFC〕、パーフルオ
ロカーボン〔PFC〕、六フッ化硫黄〔SF6〕が規定されていますが、下水道事業における平
常時の運転においてこれらの温室効果ガスの排出はほとんどありません。
フロン系ガスについては、市の実行計画に基づくものとしています。
■対象となる温室効果ガスと地球温暖化係数
温室効果ガス
地球温暖化係数
二酸化炭素(CO2)
メタン(CH4)
一酸化二窒素(N2O)
1
21
310
【参考】地球温暖化対策の推進に関する法律施行令
(H10.4.7政令第143号)
(最終改正:H22.3.3政令第20号)
■対象となる活動の区分
温室効果ガスの種類・排出源
①電気、
燃料等の
エネルギー消費に伴う
排出
■燃料の使用に伴う排出(重油、灯油、ガソリン等)
CO2
温対法 の対象範囲
国交省の手引き の対象範囲
CH4
(※3)
(※4)
下水道事業における主な排出・削減の内容
N2O
②施設の運転に伴う
各処理プロセスからの
排出
■他人から供給された電気の使用に伴う排出(※1)
■他人から供給された熱に伴う排出(蒸気、温水、冷水)(※2)
■ガス・ガソリン機関等における燃料の使用に伴う排出
■自動車の走行に伴う排出
■ガス・ガソリン機関等における燃料の使用に伴う排出
■自動車の走行に伴う排出
■下水の処理に伴う排出
CH4
N2O
■汚泥の焼却に伴う排出
■汚泥の埋立に伴う排出
■下水の処理に伴う排出
■汚泥の焼却に伴う排出
③上水・工業用水、
薬品類
の消費に伴う排出
CO2
■上水、工業用水、薬品類の消費に伴う排出
④下水道資源の有効活用
による排出量の削減
CO2
■下水道資源
(下水熱、
下水汚泥、
空間等)
の有効利用による削減
(※1)いわゆる買電のこと。自家発電、消化ガス発電等は含まない。但し、自家発電に使用した燃料(重油等)は、
「燃料の使用に伴う排出」としてカウントされる。
(※2)燃料又は電気を熱源とするものに限られる。例えば、ごみ焼却炉の廃熱供給は含まれない。
(※3)温対法:地球温暖化対策の推進に関する法律(H10.10.9法律第117号)
(最終改正:H23.6.24法律第74号)
(※4)国交省の手引き:下水道における地球温暖化防止推進計画策定の手引き(H21.3)
3
1 地球温暖化対策推進計画策定の目的と削減目標
1-6 計 画 の 枠 組 み
■対象となる施設
札幌市下水道計画概要図
■下水道施設一覧
茨戸水再生プラザ
創 成 川 水 再生プラザ
拓北水再生プラザ
伏 古川 水 再生プラザ
茨戸水再生プラザ
豊 平川 水 再生プラザ
厚別水再生プラザ
定 山 渓 水 再生プラザ
東部水再生プラザ
新川水再生プラザ
手稲水再生プラザ
拓北水再生プラザ
西部スラッジセンター
手稲沈砂洗浄センター
手稲水再生プラザ
拓北処理区
⑰
あいの里
教育大
③
⑯
④
手稲
手稲処理区
②
新琴似
新川水再生プラザ
西部下水管理センター
宮の沢
創成川水再生プラザ
栄町
麻生
①
⑤
創成川処理区
伏古川水再生プラザ
伏古川処理区
桑園
新川処理区
茨戸処理区
さっぽろ
大通
⑦
豊平川水再生プラザ
⑥
下水道庁舎
豊平川処理区
⑩
⑧
東部スラッジセンター
東部水再生プラザ
厚別コンポスト工場
(平成24(2012)年度で廃止)
⑨
厚別水再生プラザ
厚別洗浄センター
⑪
新さっぽろ
福住
東部処理区
⑮
⑭
⑬
⑫
定山渓処理区
定山渓
水再生プラザ
東部下水管理センター
厚別処理区
真駒内
凡 例
水再生プラザ
汚泥処理施設等
下水管理センター
下水道庁舎
地下鉄
JR
合流式
分流式
○処理区:各水再生プラザが受け持つ区域を処理区といいます。例えば、創成川処理区内から
排出される汚水は、すべて創成川水再生プラザに流入し、処理されます。
4
①創成川第2中継ポンプ場
②創成川第3中継ポンプ場
③茨戸中部中継ポンプ場
④茨戸東部中継ポンプ場
⑤伏古川雨水ポンプ場
⑥豊平川中継ポンプ場
⑦米 里 中 継 ポ ンプ 場
⑧月寒川雨水ポンプ場
⑨野津幌川雨水ポンプ場
⑩川 北 中 継 ポ ン プ 場
⑪厚別川雨水ポンプ場
⑫定山渓中継ポンプ場
⑬藤 野 中 継 ポ ンプ 場
⑭簾 舞 中 継 ポ ンプ 場
⑮藻岩下第2中継ポンプ場
⑯手 稲 中 継 ポ ンプ 場
⑰茨戸西部中継ポンプ場
西部スラッジセンター
東部スラッジセンター
厚 別 コ ン ポ スト工 場
手稲沈砂洗浄センター
厚 別 洗 浄 センター
東部下水管理センター
西部下水管理センター
下
水
道
庁
舎
コラム
地球温暖化のメカニズム
地球温暖化とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの大気中濃度が増加することによって太陽からの日射(太陽光)
や地表から放出する熱の一部が温室効果ガスに吸収され、気温が上昇する現象です。地球温暖化が進行すると、海面の上昇
や異常気象、生態系・食糧生産などへの影響が生じると言われており、日常生活に大きな影響がでます。
■地球温暖化の原因
適度な温室効果
宇宙へ放出
太陽光
温室効果ガスが濃い場合
宇宙へ放出
二酸化炭素 メタン 一酸化二窒素 フロン
(CO 2) (CH 4)(N 2O)
「温室効果ガス」
赤外線
など…
赤外線
温室効果ガスが増える原因
●森林の伐採
●フロンガス
●石油・石炭
燃料の使用
●排気ガス
世界・日本・札幌の動向
全世界で対策を進めるため、世界各国が参加する気候変動枠組条約締結国会議(COP)で温室効果ガスの削減目標が定め
られ、各国が目標値を約束しています。平成21(2009)年の国連気候変動サミットにおいて、日本は中期目標として平成
32(2020)年までに温室効果ガスの排出量を平成2(1990)年比25%削減することを公表し、平成22(2010)年には
これらの目標値を含んだ、地球温暖化対策基本法案を閣議決定しています。
札幌市でも、1990年代に高まった市民の環境への意識を受け、
「札幌市環境基本条例(平成7年度)」を制定し、その基本
理念を実現するために「札幌市環境基本計画(平成10年度)」を策定しました。さらに、市民一人一人がこれまで以上に地球
環境保全に取り組んでいく決意として、
「『環境首都・札幌』宣言(平成20年度)」を策定しました。また、札幌市の温暖化対
策としては、市民・事業者・行政の取組を示す「札幌市温暖化対策推進計画(平成13年度策定、平成18年度改定)」を経て、
「札幌市温暖化対策推進ビジョン(平成22年度)」を策定し、全市的な取組を進めています。
また、札幌市の下水道事業においても、平成10(1998)年度に基本理念を「次世代を見据える」と定め、その中において、
地球規模での環境保全に対して積極的に貢献するとしています。さらに、
「札幌市下水道マスタープラン(平成14年度)」、
「第4次札幌市下水道基本計画(平成16年度)」に引き継がれた基本理念に基づき策定された「札幌市下水道ビジョン2020
(平成22年度)」では、地球温暖化対策を重点施策として位置づけて積極的に取り組んでいます。
■札幌市の下水道事業の変遷と環境関連計画
下水道事業
下水道事業事業開始
創成川水再生プラザ運転開始
下水道資源の有効利用開始
高度処理の導入開始
基本理念の制定
札幌市下水道マスタープラン 策定
第4次札幌市下水道基本計画策定
札幌市下水道ビジョン2020 策定
札幌市下水道事業中期経営プラン2015 策定
年 度
札幌市全体
(環境関連)
大正15(1926)
昭和42(1967)
昭和59(1984)
平成 3 (1991)
平成 7 (1995) 環境基本条例 策定
平成10(1998) 札幌市環境基本計画 策定
平成13(2001) 札幌市温暖化対策推進計画 策定
平成14(2002)
平成16(2004)
平成18(2006) 札幌市温暖化対策推進計画 改定
平成20(2008)「環境首都・札幌」
宣言 策定
平成22(2010) 札幌市温暖化対策推進ビジョン 策定
平成23(2011)
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