犬の高脂血症におけるポリフェノールおよびハーブの血中過酸化

演 題 番号:48
演 題 名:犬の高脂血症におけるポリフェノールおよびハーブの血中過酸化脂質抑制効果
発表者氏名:○日笠喜朗1) 黒澤拓也1)植田和也1)佐伯嘉彦 2)中田雪枝 2)春名章宏 3)上岡尚民 4)松村浩明 5)
発表者所属:1)鳥取大・獣医内科、2)サンライズ・大阪府、3)春名動物病院・岡山県、
4)うえおか動物病院・広島県、5)明治製菓・東京都
1.はじめに:高脂血症とは血中コレステロール、トリグリセリド(TG)、リン脂質(PL)のうち1つ以上の増
加をいい、肝傷害、膵炎、動脈硬化症、虚血性心疾患の危険因子となる。我々はポリフェノールとω3 多価
不飽和脂肪酸の併用は高 TG、高 LDL または高コレステロール血症の改善作用を有することを報告してきた。
一方、フリ− ラジカルの活性酸素は DNA 損傷、脂質や蛋白質の酸化により癌や老化の原因となり、過酸化脂
質(LPO)では酸化 LDL が動脈硬化性プラークの形成に関与する。老化や癌、動脈硬化などは LPO 由来の障害
に一部起因するとの考えもある。アップルポリフェノール(AP)はヒトや実験動物で抗酸化作用を示すこと
が知られ、ハーブは抗酸化作用や抗菌作用などが注目されている。本研究では犬の高脂血症における特に血
中 LPO に対するポリフェノールとハーブの効果を検討した。
2.材料および方法:正常犬および食餌性脂肪負荷犬において、食餌に AP またはハーブを添加し、臨床検査
、一般血液検査、血中 LPO およびその他の各種脂質検査、アガロースゲル電気泳動を実施した。AP 投与群に
は毎日 1 回 AP 50 mg/kg(ポリフェノールとして 25 mg/kg)を餌(成犬用半生タイプ;サンライズ)と一緒
に1ヵ月間、経口投与した。ハーブ群にはフェンネルとクローブを配合したハーブ入り餌(サンライズ)を
毎日1回、1ヵ月間給餌した。それぞれの対照群には餌のみ給餌した。
3.成績:正常犬への AP 投与は LPO を減少しなかったが、脂肪負荷犬に AP を投与すると、LPO の減少が認
められた。アガロースゲル電気泳動では AP 投与した数例で preβ、β分画に減少が見られた。正常犬および
脂肪負荷犬へのハーブの添加は、ともに LPO の顕著な減少を認めた。ハーブの添加は T-chol、TG、PL、β-Lip
、HDL に著明な変化を起こさなかった。投与期間中、いずれの犬にも臨床症状と一般血液検査に著しい変化
は認められず、またポリフェノールおよびハーブに対する嗜好性は良好であった。
4.考察:本研究においてアップルポリフェノールおよびハーブは強力な抗酸化作用を有することが認めら
れ、ハーブでより顕著であることが判明した。従って、サプリメントとしてのハーブ入り食餌は、動脈硬化
性疾患をはじめ、様々な酸化ストレス、老化の予防に有用であると考えられた。