工学研究科長の挨拶

工学部・工学研究科を巡る状況
福井大学工学研究科長・工業会顧問 小
野 田 信 春
福井大学工業会会員の皆様には、日頃より工学部・工学研究科に対して
ご理解とご支援を頂き、心より感謝申し上げます。2 期 2 年目を迎え、今
年は私が工学研究科長を務める最後の年となります。多数の卒業生・修了
生を輩出してきた工学部・工学研究科を維持・発展させることに、最後ま
で全力を注ぐ所存です。どうか宜しくお願い申し上げます。
さて、国立大学を取り巻く状況は依然として厳しいものがあります。本
年は第 2 期中期目標期間の最終年度であり、また、文部科学省が設定した
3 年間の国立大学改革加速期間の最終年度でもあります。すべての国立大
学が改革することを求められており、もちろん、福井大学も例外ではあり
ません。ただ、我々は、このような状況をむしろ変革を図る好機であると捉えています。福井大学工
学部は、長い歴史の中で数次の改組を行ってきましたが、前回の大きな改組が平成 11 年で、それか
らもう 15 年も経っています。グローバル化を核にした急速な社会変化に対応するためにも、文部科
学省による外圧的なものが無くても改革すべき時期にあると考え、平成 28 年度を目途に工学部を改
組することを決めて、1 年間に渡って議論を重ねてきました。いまその検討の最終段階にあります。
ただ、社会がどう変わろうと工学の基本そのものに変わりはなく、既存の工学分野の技術・知識の
意味を確実に理解し、その分野が培ってきたものの見方、考え方、価値観等を徹底的に身につけるこ
とが、最新技術を含めて学び続ける力や新しい技術・システム・価値観などを生み出す発想力につな
がるという面は無視できません。その一方で、特化した専門的な知識に加え、工学の幅広い分野に対
応できる総合的な実践力とともに、知財・MOT などの産業関連知識をもった人材が求められている
のも事実です。今回の改組では、これまでに築いてきた人材育成機能を踏まえた上で、それをさらに
深化させることで様々な社会的要請にも対応できる工学部となることを目指しています。具体的には、
「安全・安心社会の創造のためのモノづくり、コトづくり、ヒトづくり」を基本コンセプトとしつつ、
(1)社会ニーズや本学の機能強化の方向性をふまえ、工学部の強み・特色である「原子力安全工学」
と「繊維・機能性材料工学」が学べる学部教育課程を新たに整備する。
(2)社会が求める「幅広い専門知識を持った専門技術者」に対応できるよう、複数専門分野を大くく
り化した学科に再編し、工学の基礎に加えて複数専門分野を横断的に学習し、さらに特定の分
野の専門知識を修得した人材を養成する。
(3)社会からの要請も強い知財や MOT 等の産業実践力に係る知識も「幅広い専門知識」のひとつに
位置づけ、全学生に必修化する。
以上のような特徴を盛り込み、その実現を図ろうとしています。本原稿を執筆している時点では、ま
だ文部科学省との折衝が継続中で、最終的な了承を得ていませんが、いずれ皆様にも新しくなった工
学部をお示しできると思います。
福井大学工学部・工学研究科は日本海側で最大規模であり、前身の「福井高等工業学校」の創立か
ら数えて 90 年以上に及ぶ歴史があります。昨年の 11 月には關盛治福井高等工業学校初代校長の胸
像が再建され、その除幕式がありました。輝かしい伝統に支えられた工学部・工学研究科をさらに発
展させるために、工業会の皆様と共に歩みをさらに進めたいと思います。これまで同様のご支援とご
協力を心からお願い申し上げます。
最後になりますが、工業会のますますの発展と会員の皆様のご活躍をお祈りして、巻頭の挨拶とさ
せて頂きます。
(平成 27 年 4 月発行 工業会誌より)
巻頭言 5