工学部・工学研究科を巡る状況 工学研究科長 小 野 田 信 春 福井大学工業会会員の皆様には、日頃より工学部・工学研究科に対して ご理解とご支援を頂き、心から感謝申し上げます。私は過去 3 年間、工学 研究科長を務めてきましたが、4 月よりもう 1 期 2 年続けることになりま した。多数の卒業生・修了生を輩出してきた工学部・工学研究科を維持・ 発展させることに、これまで以上に努力を傾注する所存です。どうか宜し くお願い申し上げます。 国立大学を巡る状況は年を追うごとに厳しくなっています。多額の財政 赤字を抱え、国は政策的に各省庁の予算削減を図っていて、国立大学も例 外ではありません。加えて、グローバル化や少子高齢化の急激な進展、新 興国の台頭による競争の激化など、社会経済状況の変化についても国立大 学が直面する課題は山積しています。こういう状況を受けて、文部科学省は各大学に、自らの強みや 特色を踏まえた上で、さらなる機能強化・改革に取り組むことを求め続けています。 福井大学は本年 4 月、大学全体に及ぶ改革を行いました。ひとつは新たな学部である「国際地域学 部」の設置であり、もうひとつが工学部の改組・再編です。 戦後の学制改革に伴い福井大学工学部が発足したのは 1949 年です。発足時には、建築学科、紡織 学科、繊維染料学科の 3 学科だけの構成でしたが、時代的・社会的要請を受けて拡充を続け、現在で は全国有数の規模を誇る工学部に発展しています。単に規模の大きさだけではなく、福井大学工学部 が、教育、研究のいずれについても高い評価を受けていることはご承知の通りです。しかし社会は常 に動いています。上述したような国立大学を巡る厳しい状況に対応するためにも、高い評価に安住す ることなく、改革を行う必要があるというのが我々の判断です。そして 1 年以上かけて慎重に検討し、 今回の工学部改組を行いました。 工学部の学生にとって、何より大切なのは、高い専門性を身に付けることです。ただ、社会システ ムの変革が急速に進むことが確実なこれからの時代、専門性に加えて知財や MOT も含め幅広い知識 をもつことも同時に必要です。今回の改組に当たっては、 「安全・安心社会の創造のためのモノづくり、 コトづくり、ヒトづくり」を基本コンセプトに据えました。そして、この基本コンセプトに沿いつつ、 時代の要請する「幅広い専門知識を持った技術者」に対応できるよう、複数専門分野を 1 学科に大く くり化し、工学の基礎に加えて複数専門分野を横断的に学習し、さらに特定分野の専門知識を習得し た人材を養成する体制を整えました。合わせて、福井大学工学部の強み・特色である「原子力安全工学」 と「繊維・機能性材料工学」が学べる教育課程を新たに整備しました。 従来の 8 学科を大くくり化し、再編してできたのが「機械・システム工学科」 「電気電子情報工学科」 「建築・都市環境工学科」 「物質・生命化学科」 「応用物理学科」の 5 学科です。各学科では、学年が進 むにつれて専門性が高まるようなカリキュラムを組んでいます。そして、専門性を明示するために、 各学科には複数の「コース」が設けられています。 福井大学工学部は、4 月から 5 学科体制で新たなスタートを切りました。これはもちろん伝統の破 壊ではありません。実績をもとに、これまでの人材育成機能をさらに深化させることを狙いとしたも のです。福井大学工学部は、前身を 1912 年創立の福井高等工業学校にまで遡ることができ、そこか ら数えて間もなく 100 周年を迎えます。輝かしい伝統に支えられた工学部・工学研究科をさらに発 展させるために、改組後も工業会の皆様と共に歩み続けたいと考えています。これまで同様のご支援 とご協力を心からお願い申し上げます。 最後になりますが、工業会の益々の発展と会員の皆様のご活躍をお祈りして、巻頭の挨拶とさせて 頂きます。 巻頭言 5
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