詳細はこちら - 第一コンサルタンツ

上界法による片持ばり式擁壁の主働土圧算定式
㈱第一コンサルタンツ ○ 国際会員 右城 猛
㈱第一コンサルタンツ 正会員 筒井 秀樹
1.まえがき
筆者らは,逆T型擁壁などのかかと版付き擁壁(片持ばり式擁壁と呼ぶ)の土圧計算法として,
「改良試行くさび法」を
提案してきた 1),2)。これは,極限平衡法に基づいたクーロンの土圧理論をかかと版付き擁壁に拡張したものである。
本論文では,筆者らの提案式が,極限解析法の一つである上界法によっても極限平衡法と同一の定式化ができること
を示す。また,地表面が一様勾配である場合にはランキン土圧理論と一致することも示す。
2.上界法による定式化
q
V1 cos Ω1
c
②
d
b
PV
k HW2
kHW 1
W1
W2
l2
φ V2
ω2
l1
V1 φ
Ω1
φ
V1
ω1
cl 1
PH
cl 2
H
V1 sin Ω 1
①
γ,φ,c
Ω1
V1
θ(W sec θ)
1
Ω1+θ
ω1
a
(W 1)
(kHW1 )
図1 片持ばり式擁壁の速度場
主働状態における速度場を図1のように仮定する。速度の不連続線(すべり面)を直線とすれば,関連流れ則より速度
ベクトル V はすべり面とφの角度をなす。速度場①と速度場②の不連続線の長さをそれぞれ l1 ,l2 とすると,各ブロッ
クの内部消散エネルギー率 Di は式(1) で求められる。
速度場① Di1 = cl1V1 cos φ ・・・・・・・・・・・ (1) 速度場② Di 2 = cl2V2 cos φ ・・・・・・・・・・・ (2)
速度場の剛体ブロックに作用する外力には,表面外力と物体力がある。表面外力は地表面からの載荷重 q,仮想背面
ab からの主働土圧の水平成分 PH ,鉛直成分 PV である。物体力は,自重 W と地震時慣性力 k H W の合成力 Wsecθである。
不連続線の傾斜角がωでブロックの速度を V とすると,鉛直方向速度成分は Vsin(ω-φ),水平方向速度成分は Vcos(ω
-φ),物体力方向の速度成分は Vsin(ω-φ+θ)である。したがって,各ブロックの外力仕事率 Do は次式となる。ただし,
載荷重は土塊自重に含めている。なお,速度と力の作用方向が異なる場合は,仕事率が負になることに注意する。
速度場① Do1 = W1 secθV1 sin (Ω1 + θ) − PV V1 sin Ω1 − PH V1 cos Ω1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3)
速度場② Do 2 = W2 sec θV2 sin (Ω 2 − θ) + PV V2 sin Ω 2 − PH V2 cos Ω 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (4)
ここに, Ω1 = ω1 − φ , Ω 2 = ω2 − φ
外力仕事率と内部消散エネルギー率が等しいことを考慮すれば,次の2つの方程式が得られる。
速度場① W1 secθ sin (Ω1 + θ) − PV sin Ω1 − PH cos Ω1 − cl1 cos φ = 0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5)
速度場② W2 secθ sin (Ω 2 − θ) + PV sin Ω 2 − PH cos Ω 2 − cl2 cos φ = 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (6)
式(5)と式(6)を連立させて解けば,仮想背面 ab の主働土圧の水平成分 PH ,鉛直成分 PV ,土圧の傾斜角δを求めること
ができる。これは,極限平衡法から右城が導いた式 3)と一致する。
W sin (Ω1 + θ) + W2 sin (Ω 2 − θ) − c cos φ cos θ(l1 sin Ω 2 + l2 sin Ω1 )
PH = 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (7)
sin (Ω1 + Ω 2 ) cos θ
PV =
W1 sin (Ω1 + θ )secθ − cl1 cos φ
P
− H
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (8)
sin Ω1
tan Ω1
δ = tan− 1
PV
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (9)
PH
The Earth Pressure Calculating Method Using UBM for The Cantilever Reta ining Wall
Ushiro Takeshi , Tsutsui Hideki ( Daiichi-Consultants Co.,Ltd.)
土圧の水平成分 PH による外力仕事率は, DoPH = − PH V1 cos (ω1 − φ) あるいは DoPH = − PH V2 cos (ω2 − φ) で表される。こ
の外力仕事率を最小化するω1 ,ω2 が主働すべり面であり,そのときの土圧が主働土圧である。DoPH は負の値であるの
で,これを最小化するということは,PH を最大化することを意味する。
3.ランキン式との関係
式(7),式(8)において,θ=0,c=0 とおけば,式(10),式(11)となる。
W sin (ω1 − φ)
PH
W sin (ω1 − φ) + W2 sin (ω 2 − φ)
PH = 1
・・・・・・・・・・・・・・・(10) , PV = 1
−
sin (ω1 − φ)
tan(ω1 − φ )
sin (ω1 + ω2 − 2 φ)
(11)
土の単位体積重量をγとすると,地表面がβで一様勾配の場合,各ブロックの重量は式(12),式(13)で与えられる。
cos ω1 cos β
cos ω 2 cos β
1
1
W1 = γH 2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・(12) W2 = γH 2
・・・・・・・・ (13)
2
sin (ω1 − β )
2
sin (ω 2 + β )
式(10)の最大化条件は式(13)であるので,これを考慮するとすべり角は式(14)となる。また,主働土圧の水平成分は式
(15)となり,塑性理論に基づいたランキンの土圧式と一致する。また,土圧の傾斜角はδ=βとなり,地表面に平行とな
る。
∂PH
∂PH
=0,
= 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (13)
∂ω1
∂ω 2
ω1 =
sin β 
sin β 
π 1
π 1
+  φ + β − sin − 1
 , ω 2 = +  φ − β − sin −1
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (14)
2 2 
sin φ 
2 2
sin φ 
PH =
cos β − cos 2 β − cos 2 φ
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (15)
γ H 2 cos 2 β
2
cos β + cos 2 β − cos 2 φ
4.結 論
上界法によっても極限平衡法と同じ土圧式の定式化ができ,地表面が一様勾配で,粘着力がない場合は,ランキン式
と一致する。上界法を適用すれば,極限平衡法に比べ未知数が1個少なくなるため,定式化が容易になる。
片持ばり式擁壁の設計では,図2に示すような土圧問題が出現するが,ランキン式やクーロン式(試行くさび法も含む)
が適用できるのは,(a)の場合に限られる。(b)∼(d)の問題を解くためには,土圧傾斜角δを適当に仮定して問題を静定化
する必要があった。しかし,改良試行くさび法を適用すれば,δを仮定する必要がないので,地表面形状や載荷重の載
荷状態に関係なく合理的に土圧を算定することが可能である。
本論文では,すべり面を直線と仮定したが,塑性場がランキン状態にないと厳密には曲線となる。しかし,直線と仮
定しても誤差は無視できる程度になることがわかっている 4)。
q
q
W2
ω2
W1
ω1
(a) 一様勾配,一様載荷
q
q
β
W2
ω2
W1
W2
ω1
ω2
(b) 部分載荷
W1
ω1
(c) 嵩上げ盛土
W2
ω2
W1
ω1
(d) 盛土が下へ傾斜
図2 盛土形状
参考文献
1)
右城猛,八木則男,矢田部龍一,筒井秀樹:かかと版付き擁壁の合理的な土圧評価法,土木学会論文集,No.567/
Ⅵ35,1997.
2)
右城猛,筒井秀樹:片持ばり式擁壁の合理的な土圧計算法の一試案,土木技術,Vol.54.No.8,1999.
3)
右城猛:Excel による擁壁設計,理工図書,2000.
4)
右城猛,小椋正澄,筒井秀樹,長山学史:改良試行くさび法(ITWM)の非線形すべり問題への拡張,土木学会論文集
No.602/Ⅵ-40,1998.