全般季節予報支援資料 3か月予報 予報期間:2015年8月~2015年10月 2015年7月24日 気象庁地球環境・海洋部 全般季節予報 (1)出現の可能性が最も大きい天候 8月 北日本では、天気は数日の周期で変わりますが、平年に比べ晴れの日が少ないでしょう。東日本日本 海側では、平年に比べ晴れの日が少ない見込みです。東日本太平洋側と西日本では、平年と同様に晴れの日 が多いでしょう。沖縄・奄美では、平年に比べ晴れの日が多い見込みです。 9月 北日本では、天気は数日の周期で変わりますが、平年に比べ晴れの日が多いでしょう。東日本と西日 本日本海側では、天気は数日の周期で変わる見込みです。西日本太平洋側と沖縄・奄美では、平年と同様に 晴れの日が多いでしょう。 10月 全国的に天気は数日の周期で変わるでしょう。北日本太平洋側では、平年と同様に晴れの日が多い 見込みです。東日本太平洋側、西日本と沖縄・奄美では、平年に比べ晴れの日が多いでしょう。 (2)確率予報 3か月(%) 8月 9月 10 月 低 並 高 低 並 高 低 並 高 低 並 高 北日本 30:30:40 40:30:30 30:30:40 20:40:40 東日本 30:30:40 30:40:30 30:30:40 20:40:40 西日本 30:40:30 30:40:30 30:40:30 30:40:30 沖縄・奄美 30:40:30 30:30:40 30:40:30 30:40:30 3か月(%) 8月 9月 10 月 少 並 多 少 並 多 少 並 多 少 並 多 北日本日本海側 北日本太平洋側 30:40:30 30:40:30 20:40:40 20:40:40 40:40:20 40:40:20 30:40:30 30:40:30 東日本日本海側 東日本太平洋側 30:40:30 30:40:30 20:40:40 30:30:40 40:30:30 30:30:40 40:30:30 40:40:20 西日本日本海側 西日本太平洋側 40:30:30 40:30:30 30:30:40 30:30:40 30:40:30 30:40:30 40:40:20 40:40:20 沖縄・奄美 40:40:20 40:40:20 40:30:30 40:40:20 全般季節予報支援資料 3か月予報 1 / 4 ページ 気温 降水量 予報資料の解釈 ●3 か月平均 ・ 熱帯の海面水温(SST)偏差は、日付変更線付近から太平洋東部にかけて正偏差の予測。6 月 のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値との差で+1.6℃まで高くなっており、冬にかけ てエルニーニョ現象が継続する見込み(7 月 10 日発表のエルニーニョ監視速報を参照)。ま た、インド洋も全体的に正偏差の予測。その間の西部太平洋は負偏差で、相対的に SST が低い。 ・ 熱帯の降水量は、日付変更線付近付近から太平洋東部で多く(SST が高いことに対応)、上層 発散偏差(200hPa 速度ポテンシャルの負偏差)の予測。一方、インド洋東部から東南アジア 周辺は上層収束偏差(200hPa 速度ポテンシャルの正偏差)で対流活動が抑えられており、イ ンド洋北部からフィリピン付近とインドネシア付近は降水量が少ない予測。これら、熱帯の対 流活動や上層発散場の偏差パターンは、過去のエルニーニョ現象時の特徴と整合的である。 ・ インド洋東部から東南アジア周辺の対流不活発に対応して、ユーラシア大陸で上層低気圧性循 環偏差、インド洋北部から南シナ海で下層高気圧性循環偏差の予測。一方、太平洋の日付変更 線付近から東部の対流活発に対応して、太平洋低緯度(30°N 以南)は上層高気圧性循環偏差、 下層低気圧性循環偏差の予測。 ・ 上記の循環偏差域は、予報期間中、次第に東へ広がる予測となっている(各月の項に記述)。 これは、インド洋北部から東南アジア周辺の少雨域が東へ広がることに対応している。エルニ ーニョ時の統計にも見られることで、今回の予報でも考慮する。 ・ 日付変更線付近付近から太平洋東部の対流活発傾向に対応して、日本の南東海上では海面気圧 が低く 500hPa 高度が相対的に低い予測。太平洋高気圧の日本への張り出しは弱い見込み。 ・ 上層に見られるチベット高気圧は北側を中心に弱い見込み(ユーラシア大陸の上層低気圧性循 環偏差)。このため、上空の偏西風は大陸から日本付近では平年より南寄り(南偏)でやや弱 い見込み。 ・ 日本周辺の降水量は、沖縄・奄美周辺を中心に東日本付近にかけて少雨傾向の予測。これは、 インド洋北部から南シナ海で下層高気圧性循環偏差による下層北風偏差に加え、偏西風がやや 弱いことが寄与していると考えられる。この少雨傾向は、過去のエルニーニョ時の天候や偏西 風南偏時に現れやすいという統計とも整合的で、今回の予報でも考慮する。 ・ 西日本から沖縄・奄美周辺では下層気温が相対的に低い予測。これは、インド洋北部から南シ ナ海で下層高気圧性循環偏差による下層北風偏差が寄与していると考えられる。また、この北 風偏差により、沖縄・奄美では南からの湿った気流が入りにくく、少雨傾向となる時期もある と見込む。 ・ 層厚換算温度(北半球・中緯度ともに)は、昨年半ばから上昇傾向で、6 月の実況は平年比約 +0.6℃とかなり高く、先月のモデルの予測より上昇している。そのため、今回の予報では、 一部地域について先月の予測より少し高温側に変更する(9 月の北・東日本)。なお、層厚換 算温度の高い状態には、地球温暖化に加え、エルニーニョ現象の発達や熱帯の活発な対流活動 が寄与していると考えられる。 ・ 以上から、3 か月合計の降水量は、北・東日本で平年程度、西日本で若干の少雨傾向、沖縄・ 奄美で少雨傾向を見込む。3 か月平均気温は、北・東日本で若干の高温傾向、西日本と沖縄・ 奄美で平年程度を見込む。 ●8月 ・ SST は、3か月平均とほぼ同様。 ・ 熱帯の上層発散・収束場の大きな偏差分布(太平洋の日付変更線付近で発散偏差、インド洋か ら東南アジア周辺で収束偏差)は 3 か月平均と同様。 ・ インド洋北部の下層高気圧性循環(対流不活発に対応)、太平洋低緯度の下層低気圧性循環偏 差(対流活発に対応)のパターンは、3 か月平均より西寄りに位置する。これに関連して、東 全般季節予報支援資料 3か月予報 2 / 4 ページ ・ ・ ・ ・ 南アジアからフィリピンの東にかけても太平洋低緯度に広がる低気圧性循環偏差域に入る予測。 東南アジアから西部太平洋の 10°N 帯では、平年程度から多雨傾向と予測されている。 太平洋高気圧の日本付近への張り出しは、日本の南から南東海上を中心に弱い見込み。日本の 南から本州以北では多雨傾向が予測されている。 上空の偏西風は、大陸で平年の南寄り、日本付近で南西から北東に流れる傾向が予測されてい る。 7/22 初期値の1か月予報モデルでは、8 月初め(予測 2 週目)は東・西日本では中心に太平洋 高気圧が強まり、高温・少雨・多照傾向となる予測。北日本でも平年程度の天候で、高温傾向。 一方、フィリピン周辺は対流不活発(直近の活発な対流活動で海面水温が低下、季節内振動の 影響などが関連)で、沖縄・奄美周辺は湿った気流が入りにくく、少雨傾向の予測。その後は、 太平洋高気圧の勢力の北への張り出しが弱まる傾向で、次第に上述の3か月予報モデルの特徴 に近づくと見込まれる。 以上から、偏西風帯に近い北日本と東日本日本海側を中心に、低気圧や前線の影響を受けやす い見込み。降水量は北日本と東日本日本海側で多雨傾向、東日本太平洋側と西日本でも若干の 多雨傾向を見込む。沖縄・奄美では、太平洋高気圧におおわれやすい時期があり、少雨傾向を 見込む。気温は、8 月初めに北から西日本で高温になる時期がある(太平洋高気圧の強まり) ことと、対流圏全体の高温傾向、多雨傾向が低温に寄与することを考慮する。多雨傾向を見込 む北日本は若干の低温傾向を見込む一方、東・西日本は平年程度、沖縄・奄美は若干の高温傾 向を見込む。 想定される天候 ・ 北日本では、天気は数日の周期で変わるが、低気圧や前線の影響を受けやすく、平年に比 べ晴れの日が少ない。 ・ 東日本日本海側では、低気圧や前線の影響を受けやすく、平年に比べ晴れの日が少ない。 ・ 東日本太平洋側と西日本では、平年と同様に晴れの日が多い。 ・ 沖縄・奄美では、太平洋高気圧におおわれやすく、平年に比べ晴れの日が多い。 ●9月 ・ SST は、3か月平均とほぼ同様。 ・ 熱帯の対流活動、流線関数の偏差パターンは、3か月平均とほぼ同様。 ・ 上空の偏西風は大陸から日本付近にかけて南偏傾向。 ・ 偏西風の南偏により、秋雨前線は南寄りに位置する見込み。これにより、北日本を中心に少雨 傾向、東日本太平洋側は季節的に早く前線の影響を受けるため若干の多雨傾向を見込む。西日 本は、気候値的に東日本太平洋側に比べ秋雨前線の影響が小さく、多雨傾向は見込まない。 ・ 太平洋高気圧の日本付近への張り出しは、日本の南から南東海上を中心に弱い予想。 ・ 沖縄・奄美では下層北風偏差(インド洋北部から東南アジアの下層高気圧性循環偏差(対流不 活発傾向)や日本の南から南東海上で太平洋高気圧が弱いことが関連)で、少雨傾向の予測と なっている。また、西日本から沖縄・奄美では下層気温が相対的に低い予測となっている。 ・ 以上から、降水量は北日本では少雨傾向、東日本日本海側では若干の少雨傾向、東日本太平洋 側では若干の多雨傾向、西日本では平年程度、沖縄・奄美では若干の少雨傾向を見込む。気温 は、北・東日本では若干の高温傾向、西日本と沖縄・奄美では平年程度を見込む。 想定される天候 ・ 北日本では、天気は数日の周期で変わるが、低気圧や前線の影響を受けにくく、平年に比 べ晴れの日が多い。 ・ 東日本と西日本日本海側では、天気は数日の周期で変わる。 ・ 西日本太平洋側と沖縄・奄美では、高気圧に覆われて、平年と同様に晴れの日が多い。 全般季節予報支援資料 3か月予報 3 / 4 ページ ●10月 ・ SST は、3か月平均とほぼ同様。 ・ 熱帯の降水量は、3か月平均よりやや東寄りで、少雨傾向の地域が 3 か月平均で見られたイン ド洋東部から東南アジア周辺に加えて、フィリピンの東まで広がる予測。これは、季節進行 (アジアモンスーンの平均的な対流活発域が夏から秋にかけて東へ移る)に関連していると考 えられ、過去のエルニーニョ現象時の特徴とも整合的。 ・ 下層気温は、日本付近を含め中緯度帯は広く正偏差の予測だが、沖縄・奄美周辺では相対的に 低い。これは、インド洋北部からフィリピンの東の下層高気圧性循環偏差に対応して大陸から 相対的に冷たい空気が入りやすいためと考えられる。なお、統計的にも、過去のエルニーニョ 時には西日本と沖縄・奄美で低温傾向が見られる。 ・ 上空の偏西風は大陸から日本付近にかけて南偏して弱い傾向。また、東日本以南は少雨傾向の 予測で、低気圧の影響が小さいことも見込まれる。これは偏西風が弱く日本の南で低気圧の活 動が弱いことや、大陸から相対的に冷たい空気が入りやすい(インド洋北部からフィリピンの 東の下層高気圧性循環偏差)ことが関連していると考えられる。また、この少雨傾向に関して は、統計的には過去のエルニーニョ時に見られることに加え、少雨年には偏西風が南偏してい ることが見られるので、今回の予報で考慮する。 ・ 以上から、降水量は、北日本では平年程度の一方、東日本太平洋側以西では少雨傾向、東日本 日本海側では若干の少雨傾向を見込む。気温は、北・東日本で高温傾向、西日本と沖縄・奄美で は平年程度を見込む。 想定される天候 ・ 全国的に天気は数日の周期で変わる。 ・ 北日本太平洋側では、平年と同様に晴れの日が多い。 ・ 東日本太平洋側、西日本と沖縄・奄美では、高気圧に覆われやすく、平年に比べ晴れの日 が多い。 7月(20 日まで)の天候経過 上旬は、東・西日本太平洋側を中心に梅雨前線や湿った気流の影響で曇りや雨の日が多かった。 沖縄地方では太平洋高気圧に覆われて概ね晴れたが、9日から11日にかけては台風第9号が沖縄地 方に接近したため暴風雨となった。一方、北日本や東日本日本海側は前線の影響を受けにくく、 移動性高気圧におおわれて晴れた日が多かった。中旬は、旬の前半は日本の南東海上で太平洋高 気圧の勢力が強まり、西日本太平洋側では湿った気流が流れ込みやすかった。このため、西日本 太平洋側で曇りや雨の日が多かった一方、そのほかの地方は晴れて気温が高く、多くの地点で真 夏日となった。中旬の後半は台風第11号が日本の南を北上し、16日から17日にかけて西日本に上 陸・再上陸し、日本海へ進んだ。このため、東・西日本と沖縄・奄美では広い範囲で大雨となった。 気温は、北日本と沖縄・奄美で平年を上回り、西日本では平年を下回った。東日本では平年と同 値だった。降水量は、東・西日本太平洋側と沖縄・奄美で平年を大幅に上回り、北日本と東・西日 本日本海側では平年を下回った。日照時間は、東日本太平洋側と西日本、沖縄・奄美で平年を下 回り、北日本と東日本日本海側では平年を上回った。 この資料は、気象事業者等が、気象庁の提供する季節予報の根拠を理解するための補助資料であり、 そのままの形で一般に提供することを想定して作成したものではありません。 全般季節予報支援資料 3か月予報 4 / 4 ページ
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