主な精神神経系の副作用発現状況* 症例数 (安全性解析対象集団) 軽度及び中等度アルツハイマー型認知症 承認時 再審査終了時 計 457 3,240 3,697 高度アルツハイマー型 認知症承認時 総計 レビー小体型認知症 承認時 386 4,083 346 副作用等の種類別発現症例〔件数〕 (%) 副作用等の種類 激越 4 15 19(0.51) 6(1.55) 25(0.61) 4(1.16) 攻撃性 6 6(0.16) 4(1.04) 10(0.24) 1(0.29) 怒り 9 9(0.24) 7 10(0.27) 2 2(0.05) 落ち着きのなさ 3 異常行動 9(0.22) 10(2.59) 20(0.49) 1(0.29) 2(0.05) *2013年6月エーザイ株式会社集計、MedDRA/J ver.15.0 軽・中等度承認時と再審査終了時は3mg、5mg服用時の副作用発現状況である。高度承認時とレビー小体型認知症承認時は3mg、5mg、10mg服用時の 副作用発現状況である。 アルツハイマー型・レビー小体型認知症治療薬の効果と副作用の表裏の関係・左右する要因 効果と見る場合 副作用と見る場合 ・意欲が向上した ・余計なことをするようになった ・会話が増えた、言葉数が増えた ・口答えをするようになった ・自らの意思表示ができるようになった ・デイケアを拒否するようになった ・表情が豊かになった ・喜怒哀楽が激しくなった ・家事に協力しようとするようになった ・失敗が増えた、散らかすようになった 左右する要因 ・病前の同居の有無(治療により改善し、活発になった様子が家族にとって想定外の場合は こまやかな対応が困難) ・病前からの情緒的関係(元来関係の悪かった患者と家族の関係がさらに悪化) ・家族の介護負担の許容量(老老介護の場合などは、 「改善」 と理解できても対応しきれない) ・その他 医薬品インタビューフォームに掲載されている国内第Ⅲ相試験や再審査における副作用の 報告は、臨床現場から推測される頻度に比べ随分と低いように思われる。ここで「興奮」を BPSDとしてとらえなおしてみると環境要因や状況因、ライフイベント、身体疾患、様々な 服用薬などによって影響を受ける。以上のことを考えるとアリセプトの“直接”の作用に よって起こる興奮だけでなく意欲低下などの症状が改善した結果、周囲の反発を誘発し、 それに対する反応としての興奮があり得る。その証左として健康成人男子を対象とした アリセプトの国内第Ⅰ相試験の結果からも興奮の副作用は報告されていない。アリセプト のみならず、現在用いられている認知症治療薬のいずれでも興奮が起こり得ることを私は 経験している。実地医療において重要な点は、治療薬の作用プロフィールにとらわれず、 治療による各患者の変化を家族と共有しながら進めることである。 首都大学東京 大学院 人間健康科学研究科 教授 5 繁田雅弘 ∼アルツハイマー型・レビー小体型認知症∼ アルツハイマー型認知症におけるアリセプト10mg増量時の精神神経系副作用 安全性集計対象例数808例中、 精神障害及び神経系障害の副作用は83例 (10.3%) 119件に認められた。 主な副作用は激越、不眠症、落ち着きのなさ、攻撃性、浮動性めまいだった。 なお、精神神経系の副作用の多くは、10mg/日増量後早期に発現し、119件中10mg/日投与後2ヵ月 時までに119例中52.1%に発現していた。 時期 ∼1ヵ月時 ∼2ヵ月時 ∼3ヵ月時 ∼4ヵ月時 ∼5ヵ月時 ∼6ヵ月時 精神障害及び神経系障害 の副作用の発現件数 38 24 8 4 1 2 割合 (累積) 31.9% 52.1% 58.8% 62.2% 63.0% 64.7% 攻撃性 2 1 − − − − 激越 10 6 2 1 − − 不眠症 2 3 1 − − − 落ち着きのなさ 4 1 1 − 1 − 浮動性めまい 2 2 1 1 − − 対 象:FAST(Functional Assessment Staging)6又は7に該当する高度のアルツハイマー型認知症患者824例(安全 性集計対象例数は808例) 方 法:アリセプト10mg/日投与開始直前と投与後24ヵ月時までの安全性情報を解析した。 なお、本調査は、アリセプト10mg/日を投与開始時より調査期間終了時(又は中止時)まで実施し、最長は4年間 である。また市販後の日常診療下での調査のため、併用薬剤、併用療法についての制限を設けなかった。 アリセプト特定使用成績調査 本間昭:Geriatr, Med. 51 (4) . 439-467 (2013) [ART-2662] アリセプト増量時の精神症状の多くは、活動性の向上に伴う一時的なものである。ただ、 十分な介護指導を行っても介護継続が困難な場合には、アリセプトの一時的な減量や 中止を検討することがよいと考えられる。精神症状が消失するようであれば、アリセプト 増量による精神症状の増悪であった可能性が高いと思われる。また、精神症状が消失 してからアリセプトを再開すると、精神症状が現れなくなることもある。アリセプトの一時 的な減量や中止にあたっては、認知機能が急激に悪化するなどのデメリットに繋がる可能 性もあるため、アリセプトの減量や中止により精神症状が消失してからアリセプトを再開 することも考慮してよいと思われる。 札幌医科大学医学部 神経内科学講座 教授 下濱 俊 6 ∼アルツハイマー型・レビー小体型認知症∼ 主な循環器系の副作用発現状況* 軽度及び中等度アルツハイマー型認知症 症例数 (安全性解析対象集団) 承認時 再審査終了時 計 高度アルツハイマー型 認知症承認時 総計 レビー小体型認知症 承認時 457 3,240 3,697 386 4,083 346 副作用等の種類 徐脈 副作用等の種類別発現症例 〔件数 〕 (%) 1 2 3(0.08) 心室性期外収縮 動悸 1 3 洞性徐脈 4(0.11) 1 (0.26) 4 (0.10) 1 ( 0. 29 ) 5(1.30) 5 ( 0.12) 3( 0. 87 ) 1 (0.26) 5 ( 0.12) 3(0.78) 3 (0.07) 2( 0. 5 8 ) *2013年6月エーザイ株式会社集計、MedDRA/J ver.15.0 軽・中等度承認時と再審査終了時は3mg、5mg服用時の副作用発現状況である。高度承認時とレビー小体型認知症承認時は3mg、5mg、10mg服用時の 副作用発現状況である。 様々な循環器系合併症を有するアルツハイマー型・レビー小体型認知症患者にアリセプト を処方することが多い。集積された副作用報告の中に循環器系の事象もあり、アリセプト によるものなのかどうか正確に判別するのは困難で、合併症の症状の一つとして考えられ るものも少なくない。 私は安全に長期投与するために、定期的な(1年に1 回)心電図の確認とともに心拍数 50/分以下の場合アリセプトの減量、中止を検討し、循環器科に受診いただき専門医の 判断を仰いでいる。なお、房室ブロックⅠ度では、注意深く観察しながら投与し、 Ⅱ度では 循環器専門医に判断を仰いでいる。 東京医科大学 老年病科 教授 7 羽生春夫 日本の主な大規模試験・調査における安全性解析対象症例 アルツハイマー型認知症 軽度及び中等度 アルツハイマー型認知症対象 国内第Ⅲ相試験 457 例 軽度及び中等度 アルツハイマー型認知症対象 使用成績調査 高度アルツハイマー型認知症対象 国内第Ⅲ相試験 386 例 3,240 例 軽度及び中等度 アルツハイマー型認知症対象 特定使用成績調査 589 例 (ADLに対する効果) 軽度及び中等度 アルツハイマー型認知症対象 特定使用成績調査 289 例 (BPSDに対する効果) 軽度及び中等度 アルツハイマー型認知症対象 特定使用成績調査 9,425例 アルツハイマー型認知症対象 特定使用成績調査 (アリセプト、メマンチン製剤併用時の安全性と有効性) 進行中 808 例 (安全性と有効性) 軽度及び中等度 アルツハイマー型認知症対象 特定使用成績調査 (介護負担に対する効果) 398 例 軽度及び中等度 アルツハイマー型認知症対象 特定使用成績調査 (長期投与による安全性と有効性) 中間解析済 高度アルツハイマー型認知症対象 特定使用成績調査 約 5,000例 (長期投与によるADAS-Jcogを用いた有効性と安全性) 813 例 中間解析済 アルツハイマー型認知症対象 特定使用成績調査 (服薬継続率に及ぼす要因、有効性と安全性) 約 10,000 例 進行中 日本の主な大規模試験・調査における安全性解析対象症例 レビー小体型認知症 レビー小体型認知症対象 国内第Ⅱ相・Ⅲ相試験 346 例 レビー小体型認知症対象 製造販売後臨床試験 2015年開始予定 約140 例 レビー小体型認知症対象 特定使用成績調査 (長期投与による安全性、有効性と適正使用情報) 2015年開始予定 約 500 例 ●効能・効果、用法・用量及び禁忌を含む使用上の注意については添付文書をご参照ください。 8
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