認知症と薬4

15/01/2015
認知症と薬4
Dementia and Drugs
Department of Geriatric Medicine
Faculty of Medicine University of Tokyo
Next Dr. Corporation Executive Direct
Soshi Okamoto
BPSD:周辺症状
Behavioral Psychological Syndrome of
Dementia
認知症の進行とともに随伴する、
精神症状、行動の変化
認知症の治療概念
中核症状
周辺症状
抗認知症薬 抗精神病薬
実際の治療にあたっては、介護者の軽減目的にも、
BPSDをコントロールすることが重要な役割となる
基本的戦略
抑制系
興奮系
〈興奮系〉
陰性症状
周辺症状
陽性症状
セロクエルⓇ
サアミオンⓇ
シンメトレルⓇ
アリセプトⓇ
易怒性亢進
アパシー
せん妄
抑うつ
〈弱興奮系〉
無言
レミニールⓇ
食思不振
イクセロンⓇ
〈非定型抗精神病薬〉
中核症状
ジプレキサⓇ
リスパダールⓇ
不眠
エビリファイⓇ
徘徊
〈定型抗精神病薬〉
暴力・暴言
コントミンⓇ
幻視
セレネースⓇ
妄想
〈それ以外〉
(物盗られ妄想
抑肝散Ⓡ
被害妄想)
グラマリールⓇ
介護抵抗
メマリーⓇ
アルツハイマー型認知症の進行に伴い精神症状は変化
陰性症状
⇒
興奮
発症前
うつ
陽性症状
発症後
日内リズムの乱れ
いらいら
引きこもり
放浪
攻撃性
幻覚
瘋癲
自殺念慮
不安
情緒変化
非難行動
容認されない行動
妄想
性的不適切行為
認知症症状への薬物療法の効果
有効
無効
収集
大声
徘徊
不潔行為
無為・意欲低下
妄想
暴言・暴力
易怒
焦燥性興奮
幻覚
抑うつ
異食行為
常同行為
火の不始末
介護拒否
不安
不眠
すべてのBPSDがコントロール可能なわけではない!
BPSDは4群に分ける
1群 興奮・易怒スペクトラム⇒鎮静
• セロクエルⓇ、ジプレキサⓇが第1選択 ヒルナミンⓇ少量も可
• 上乗せでデパケンⓇ どうしようもないときレキソタン
• 症状消失後は早めの撤退(単に対症療法である!)
2群 妄想・幻覚スペクトラム(幻視は除く)
• エビリファイⓇ、リスパダールⓇ、ルーランⓇが第1選択 セレネースⓇ
• 症状消失後も再燃リスクあり少量継続
3群 抑うつ・不安スペクトラム
• 抑うつ・食欲不振・不眠
・・・リフレックスⓇ(NaSSA)、ジェイゾロフトⓇ(SSRI)、サインバルタⓇ(SNRI)
• パニック症状・・・パキシルⓇ、強迫症状・・・デプロメールⓇ
• 脳血管型認知症に伴う抑うつではサアミオンⓇ
4群 器質的症候スペクトラム
• 薬物は効果がない 深い追いせず介護での対応が第1選択
病状とBPSD
【アルツハイマー型認知症】
物盗られ・被害妄想→「内弁慶」は典型的!
易怒性亢進、異常な反復
【レビー小体型認知症】
幻視・妄想、パーキンソニズム、便秘、
睡眠行動障害
意識消失発作(起立性低血圧?)
【それ以外】
感情失禁・抑うつ・・・脳血管型認知症
盗難・易怒性・・・前頭側頭型認知症(FTD):Pick病
作話・眼球運動麻痺・・・V.B1欠乏症:Wernicke-Korsakoff syndrome
REM睡眠行動異常(RBD)
【概念】
強い情動を伴う鮮明な夢体験に従って夜間睡眠中に夢遊病様行動を起こす、
睡眠時に認める異常な行動(夢の内容は非常に鮮明で暴力的なことが多い)
REM期で生じ、異動行動中に起こすとすぐに覚醒し、鮮明に覚えている
【診断基準(簡略)】
・筋弛緩を伴わないREM睡眠の存在
・PSGに確認されたレム睡眠時の異常な行動
・てんかんや器質的疾患、薬剤性など他の疾患で説明できないこと
【治療】※確立された治療法はない!
・リボトリールⓇ
※麦角系アゴニストは弁膜症のリス
ク
が報告されてから新規には基本的に
使用しない
・ビ・シフロールⓇ、ニュープロⓇなど非麦角系ドパミンアゴニスト
(RLSと同範疇?→ドパミンA11細胞の機能不全)
パーキンソニズム
【症状】
安静時振戦resting tremor、固縮rigidity
体幹の傾斜(首の前垂れなど)、歩行障害、小声、仮面様顔貌mask face
【大切なこと】
原病の進行によるものか、薬剤性(ChEIや抗精神病薬など)によるものか
※特に、DLBは薬剤過敏性であることを忘れてはいけない
【治療】
〈薬剤性である場合〉
基本的には、被疑薬の中止・変更、もしくは減量
〈原病による場合〉
次項
パーキンソニズム
PDD/DLBの進行
メネシットⓇ (レボドパ・カルビドパ)
マドパーⓇ (レボドパ・ベンセラジド)
※効果不十分であれば
上記薬剤の増量
非麦角系ドパミンアゴニスト
(ビ・シフロールⓇ、ニュープロⓇ)
※効果不十分であれば
他剤の追加検討
※起立性低血圧などを認める場合は
ドプスⓇ・リズミックⓇなども検討
せん妄
delirium
せん妄とは?
 何言っているか分からない。
 凶暴的になる。
 取りあえず、セレネース。
 何言っているか分からない?
一般的なイメージ
間違いとまでは言い切れないが・・
せん妄とは?
 一過性に出現し、可逆性の軽度の意識障害あるいは意識変容。
急激な発症。急激な発症。
 精神機能の障害(多彩な精神症状)を伴う。見当識障害、
注意集中力困難、認知機能の低下、計算力記銘力障害、
精神運動興奮、錯乱、幻覚妄想、不眠(昼夜覚醒リズムの障害)、
活動性低下
 症状は浮動性(いい時と悪い時がある):
症状の可逆性、変動を認める。一方、認知症は不可逆的。
 周囲からの刺激の少ない夕方から夜間にかけて、出現する場合が
多い。(夜間せん妄)
 発症率:一般の入院患者は約15%程度。一方、ハイリスク患者
(高齢者、術後等)は約50%。
 特殊なせん妄:アルコール離脱せん妄・術後せん妄・ICUせん妄
せん妄の種類
【過活動型(hyperactive type)】
興奮、幻覚、妄想、不眠etc
【活動低下型(hypoactive type)】
無表情、無気力、傾眠etc
【混合型(mixed type)】
過活動性と活動低下型の特徴が混在
興奮・過活動が主体。夜間徘徊・
転倒・点滴抜去などがあり、時に抑
制が必要となる。
低活動ではあるが、意識障害、内
的不穏は持続している。
うつ病や不眠症と誤診しやすい。
上記2つの特徴が混在。
せん妄→興奮・不穏と考えていると
間違えやすい。
薬物療法の原則1
不眠に対して安易に睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)を使用しない
1.
•
ベンゾジアゼピン系は薬剤性せん妄のリスクファクター
•
アルコール性離脱せん妄・ベンゾジアゼピン離脱せん妄は別
•
抗ヒスタミン薬(アタラックスPⓇ・ポララミンⓇ)もせん妄のリスクである不使用
•
せん妄を伴う不眠には、屯用でセロクエルⓇ (25mg)・ヒルナミンⓇなど
•
リスパダールⓇは鎮静効果は弱く、錐体外路症状が強く出るため、不眠に
対して用いるのは得策ではない
2.
薬の至適用量に個人差が大きく、事前の副作用の説明とともに、
少量漸増とする、多剤併用は極力さける
3.
効果判定、過鎮静、アカシジア、パーキンソンニズム、ふらつきなど副作用
のモニター
4.
抗精神病薬の開始時には悪性症候群のリスクに注意
•
一方、PD治療薬では急に中断すると発症のリスク
•
PD薬を中止・減量する場合は、「少しずつ減量(漸減)していく」
•
抗精神病薬による悪性症候群は「いきなり中止」
薬物療法の原則2
5. 投与前に標的症状を定めておき、症状が軽減したら、
減量・中止する
•
改善しない場合は増量するが、それでも改善しなければやはり中止する
•
原則的には長期投与は避けるべき
•
実際には介護の面から漫然と長期投与になっている場合が多いが、
そのリスクはしっかり説明しておくべき
•
妄想・うつなど内因性要素が高いものは投与継続が必要
6. FDAは、認知症患者に対する定型抗精神病薬・
非定型抗精神病薬の投与で死亡率が増加すると注意
7. 保険病名が必要な場合がある
•
せん妄、躁状態など
抗精神病薬の副作用の比較
副作用
レボメプロマジン
(ヒルナミンⓇ)
ハロペリドール
(セレネースⓇ)
抗コリン作用
+++
脂質異常症
非定型抗精神病薬
オランザピン
(ジプレキサⓇ)
クエチアピン
(セロクエルⓇ)
リスペリドン
(リスパダールⓇ)
+
+
+
0
++
+
+++
++
+
錐体外路症状
+
+++
+
0
++
高プロラクチン血症
++
+++
+
0
+++
悪性症候群
+
++
+
+
+
起立性低血圧
+++
+
+
++
++
QT延長
++
+
+
+
+
鎮静
+++
+
++
++
+
痙攣
+
+
+
+
+
性欲減退
+++
++
+
+
++
体重増加
++
+
+++
++
++
Ⅱ型DM
+
+
++
+
+
セロクエルⓇ
 非定型抗精神病薬(多元受容体作用抗精神病薬)
• D2受容体に比較して、5-HT2受容体拮抗作用が強いのが特徴
 適応患者には、第1選択となる
• 錐体外路症状がほぼない!
 糖尿病が禁忌(病歴チェック)
• 定期的な体重、血糖などのモニター
 標的症状は、不安・焦燥、不眠、せん妄、易怒、妄想
• 抗ヒスタミンH1作用・抗5-HT2作用による鎮静作用
• 認知症患者の不眠症に対して屯用としてもよく使用される
 副作用(過量)は、傾眠、過鎮静、転倒
 レビー小体型認知症も含めて投与可能
 25mg分1夕/就寝前から開始、最大100mgまで可能
• 不眠、せん妄に対しては通常50mg程度まで
 経口薬・剤状しかないのが欠点
セロクエルⓇのもつ特徴
セロクエルⓇ
5-HT2
受容体
5-HT
神経
セロトニン神経はドパミン神経を抑制的に
制御している
DA
神経
DA分泌
増加
• セロクエルによる5-HT2受容体の阻害がセロトニン神経活動を抑制す
ることで黒質線条体でのドパミン分泌を促進
• この作用が、D2受容体阻害作用と拮抗することにより錐体外路症状
の出現を抑制する
リスパダールⓇ
 非定型型抗精神病薬(セロトニン・ドパミン遮断薬)
 糖尿病にも投与可
•
一応、体重・血糖のモニターは行うべき
 標的症状は、不安・焦燥、不眠、興奮、易怒、幻覚、妄想、せん妄
•
抗D2作用による陽性症状の改善、陰性症状にも多少の効果
•
不眠に対する鎮静効果を期待して使用するのはNG
 副作用(過量)は、パーキンソニズム、過鎮静
•
4mg以上で血中濃度依存的に錐体外路症状の出現が増加との報告も
 レビー小体型認知症はほぼ禁忌!
 鎮静作用が少ないため使いにくいが、内溶液があるため、
頓用で使われることが多い
 1回0.5mg(陽性症状が強い場合は1mg)、2時間以上あけて1日4回まで
•
経口投与後、1時間以内には血中濃度が最高に達する
•
血中半減期は約3時間であるが、CYP2D6活性の低い人では20時間をこえる
グラマリールⓇ
 定型抗精神病薬(ベンザミド系)
• D2受容体遮断薬
 糖尿病に投与可
• 過鎮静などの副作用も少なく使用しやすい
• グラマリールで過鎮静・パーキンソニズムが生じた場合にはDLBの可能性
を考慮(薬剤過敏性)
 標的症状は、不安・焦燥、不眠、興奮、易怒、幻覚、妄想、せん妄.
 副作用(過量)は、パーキンソニズム、過鎮静
 経験的には血管性認知症の場合は有効のことが多い
 25mg2錠(50mg)分1夕/就寝前から開始
• 落ち着いてくれば25mgに減量
• 最大150mgまで増量可能であるが、現実的には75mgぐらいまで
デパケンⓇ
 気分安定薬(抗てんかん薬)
 躁状態(多弁、興奮、易怒、暴言、暴力、大声)に対して
セロクエルやリスパダールだけで治まらない場合に一時的に
上乗せで使うことが多い
• 第一選択薬にはなりにくい
 糖尿病に投薬可
• シロップ製剤もあり使用しやすい
• 肝障害患者には注意
 副作用は、ふらつき、眠気
• 長期で使用する場合には、血中濃度測定
• 至適血中濃度: 50-100ug/mL
 てんかんに使用するdoseよりも少量で用いる
• 100mg~400mgで用いる
抑肝散Ⓡ
 鎮静作用はマイルド
 作用機序としてセロトニン神経系への作用が考えられている
 非定型抗精神病薬は総死亡のリスクが高まるとの報告があり、
副作用を懸念する場合はよい
• 陽性症状に対して、抗精神病薬より前に用いられることが多い
 メタ解析では、コントロールと比較し、神経精神症状評価(NPI)総スコア
の減少において優れていた
• 中核症状には影響を与えない
 副作用:低カリウム血症、浮腫、血圧上昇、過鎮静(7.5mg)
• 甘草による偽性アルドステロン症、2.5mEq/lまで低下したcaseもある
 高齢者では、甘草の独特な甘さ、細粒が飲みにくい場合が多く、アドヒ
アランスが悪い
 レビー小体型+糖尿病のときは第1選択
 5.0mg分2から使用し、必要なタイミングで7.5mgにまで増量
抑肝散Ⓡ
Matsuda Y et al. Hum Psychopharmacol 2013 Jan 28(1) : 80-6
NPIのサブスコアでは妄想、幻覚、および興奮・攻撃性を有意に改善した
リフレックスⓇ
 NaSSAと呼ばれる多様な作用機序をもつ抗うつ薬
• ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬
• モノアミン再取り込み阻害作用を持たず、5-HT及びNA神経の活動を高める
:α2受容体遮断作用による効果
• α2受容体遮断作用・H1受容体遮断作用・5-HT3受容体遮断作用
5-HT2C受容体遮断作用・5-HT2A受容体遮断作用
 標的症状は、うつ状態(抑うつ気分、喜びの減退)、不眠、不安、
食思不振など不安に関連した身体症状
 副作用は、眠気(H1受容体遮断効果)、倦怠感、体重増加(食欲増進)
 SSRIと比較し、消化器系副作用が少なく、むしろ食欲を改善し、また催眠
効果もあるため、使用頻度が増加
• 抑うつにより、食思不振、不眠を伴っている場合には非常にいい適応となる
 15mg分1就寝前より開始、30mgまで増量
• 保険的には最大45mgまで可能
リフレックスⓇのマルチ作用
薬理作用
臨床作用
抗うつ効果
α2受容体遮断作用
※ノルアドレナリン・セロトニン放出促進効果による
H1受容体遮断作用
睡眠・食欲の改善、体重増加
5-HT3受容体遮断作用
嘔気・悪心改善
5-HT2C受容体遮断作用
不安の抑制
5-HT2A受容体遮断作用
性機能障害の抑制、睡眠改善
サアミオンⓇ
 麦角アルカロイド誘導体である脳循環改善薬
 脳梗塞後や、脳血管性認知症患者の抑うつ症状や、意欲低下に
対して用いられる
• ノルエピネフリントランスポーター(NET)やセロトニントランスポーター(SET)に
濃度依存的に作動することにより、意欲改善効果を発揮する?
• 「やる気」スコアの改善など、エビデンスも確立している
 血小板凝集抑制作用も兼ね持つ
 サブスタンスPを介した嚥下反射機能を兼ね持つ
• 脳梗塞後の嚥下機能低下した患者に用いやすい
• 嚥下機能障害患者:
血圧が維持されている患者ではACEIを用いることが多い
 15mg分3毎食後(一回5mg)で用いる
 これといった副作用がなく使用しやすい
• 他の抗血小板剤・抗凝固剤が含まれている場合には注意
やる気スコア
薬の使用方法(ADに対して)
〈基本事項〉
 中核症状に対して、用いることができるのは、
アリセプトⓇ・イクセロンⓇ・レミニールⓇ・メマリーⓇ
•
(アリセプトⓇ or イクセロンⓇ or レミニールⓇ)+メマリーⓇの併用は可能
 高度認知症に対して保険適応があるのは、アリセプトⓇのみ
→実際の臨床では、ケースによりどの薬剤も用いることがある
 基本的にはアリセプトⓇ・イクセロンⓇ・レミニールⓇ(ChEI)から開始することが
多い
•
メマリーはよほど陽性症状が強く出ていない以上1st choiceになりにくい
 アリセプトⓇ・イクセロンⓇ・レミニールⓇはそれぞれ最大量に到達するより前に
メマリーⓇの併用を行うことが多い
•
アリセプトⓇなら5mg, イクセロンⓇなら9mg, レミニールⓇなら16mgの時点で
その次にメマリー5mgを併用する
 中核症状だけでなく、BPSDも考慮して選別する配慮がとても大切になる
•
アリセプトⓇ>イクセロンⓇ≧レミニールⓇで興奮作用が強く出る
薬の使用方法(ADに対して)
中核症状++ 陽性症状ー 陰性症状ー
 アリセプトⓇ・イクセロンⓇ・レミニールⓇどれから開始にしてもよい
• それぞれの患者背景に相応しい薬剤を選択
→ アドヒアランス・ADLの問題など
 アリセプトⓇなら5mg, イクセロンⓇなら9mg, レミニールⓇなら16mgの時点
で、その次にメマリーⓇ5mgを併用する
 メマリーⓇは10mgまで増量することが多い
• めまり・ふらつきが出なければ20mgにまで増量
 アリセプトⓇによる下痢・軟便にはブスコパンⓇで対応
薬の使用方法(ADに対して)
中核症状+ 陽性症状+ 陰性症状ー
 イクセロンⓇ・レミニールⓇのいずれから開始がよい
• アリセプトⓇは興奮作用が強くでるため控える
• 場合によっては、メマリーⓇから開始してもよい
 陽性症状を抑えるために、抗BPSD薬を併用
• 陽性症状が目立たない場合には抑肝散Ⓡから
• 陽性症状が目立つ、また不眠やせん妄症状を認める場合には
セロクエルⓇが1st choice
 陽性症状が過度な場合は、中核症状は使わず、セロクエルⓇ等で
対応し陽性症状を落ち着かせてから、中核症状薬を用いるべき
• 大切なことは介護者の負担を軽減することの認識を
 DMがある場合にはセロクエルⓇが使用できない
• 2nd choiceとして「抑肝散Ⓡ+グラマリールⓇ」など
• リスパダールⓇは鎮静効果薄く、錐体外路症状強いので原則屯用のみ
薬の使用方法(ADに対して)
中核症状+ 陽性症状ー 陰性症状+
 精神賦活効果のあるアリセプトⓇからの開始がよい
•
•
アリセプトⓇは可能であれば10mgまで増量
下痢・嘔気が強い、アドヒアランスの問題がある場合には、イクセロンⓇ・
レミニールⓇに変更
 陰性症状(意欲低下)の改善目的にサアミオンⓇを1st choiceで用いる
•
10mg分2で開始し、15mg分3まで増量
 食思低下がある場合には、ジェイゾロフトⓇの追加投与も検討
•
25mgから開始し、50mgまで増量
 食思低下に加え不眠症状を認める場合にはリフレックスⓇの好対象
•
•
•
•
15mgから開始し、30mgまで増量
催眠作用があるため就寝前に内服
リフレックスⓇの催眠作用だけでは弱いことが多いが、簡単にベンゾに頼らない
→マイスリーⓇ、ルネスタⓇ、ロゼレムⓇなど
オレキシンを介した新しい作用機序であるベルソムラⓇに今後期待
薬の使用方法(DLBに対して)
〈基本事項〉
 DLBに対して保険適応が通っているのは、アリセプトⓇのみである
• 実際の臨床では、アルツハイマーの保険名で別の薬を処方する
ことあり
 薬剤過敏性があるため、どの薬剤も必ず低用量から開始する
 中核症状に対しては、徐放効果(血中濃度変化がマイルド)がある貼付
剤のイクセロンⓇが1st choiceで用いることが多い
• 海外ではPDD(Parkinson disease with dementia)に対して保険適応
あり
• 無動、前屈、振戦などの錐体外路兆候の出現に注意
 DLBの患者には、せん妄に対してリスパダールⓇは用いない!
• まずは抑肝散Ⓡから始めてみる
薬の使用方法(DLBに対して)
認知機能の改善
(中核症状)
パーキンニズムの改善
(歩行障害・振戦など)
イクセロンⓇ・レミニールⓇ
アリセプトⓇ
抗パーキンソン病薬
(メネシットⓇ・マドパーⓇ)
:改善
陽性症状の抑制
(幻視・せん妄など)
:悪化
抑肝散Ⓡ
セロクエルⓇ
それぞれが互いに影響を及ぼすため、患者の症状に応じて、
必要性のpriorityや、投与量に注意し、投薬を心がけるべき
薬の使用方法(DLBに対して)
中核症状+ 陽性症状+ 陰性症状ー パーキンソニズムー
 中核症状に対してはまずイクセロンⓇから開始する
• 錐体外路症状などの副作用に注意を払いながら、18mgまで増量可能
 イクセロンで効果なければ、アリセプトⓇかレミニールⓇに変更
• アリセプトⓇは錐体外路兆候が強く出る傾向あるため
5mgまでに留めるべき
 幻視・せん妄などの陽性症状を抑える必要性がある場合は、
抑肝散Ⓡを1st choiceで用いる
• 5mg分2で始め、7.5mg分3まで増量可能
• 偽性アルドステロン症(低K血症)に注意
• せん妄が強くでる場合には、セロクセルⓇを追加投与(※DMには禁忌)
• セロクエルⓇは12.5mg(0.5T)から開始する方がよく、必要に応じて漸増
• リスパダールⓇは基本的にDLBに使用しない
薬の使用方法(DLBに対して)
中核症状+ 陽性症状+ 陰性症状ー パーキンソニズム+
 中核症状に対してはまずイクセロンⓇから開始する
• 錐体外路症状などの副作用に注意を払いながら、18mgまで増量可能
• イクセロンⓇで効果なければ、アリセプトⓇ(5mgまで)かレミニールⓇに変更
 陽性症状でも、幻視は中核症状薬を用いることで改善する期待あり
• 陽性症状が、幻視に限局されていれば、すぐの抗BPSD薬の投与は
必要なし
• 一方、幻視が強くでる場合や、せん妄などの他のBPSDを伴う場合には、
初めから抑肝散Ⓡ5mgやセロクエルⓇ12.5mgを投薬するのも一手
 中核症状薬を増量中に、パーキンゾニズムが顕著、もしくは増悪傾向
にあれば、それ以上の増量は一旦中止にし、抗パーキンソン病薬の
開始を検討
• メネシットⓇ、マドパーⓇのいずれかから始める
薬の使用方法(DLBに対して)
中核症状± 陽性症状ー 陰性症状+ パーキンソニズム++
 中核症状と比較しパーキンソニズムを強く認める場合には、
中核症状薬の投薬より前に抗パーキンソン病薬の開始を検討
• メネシットⓇ、マドパーⓇのいずれかから始める
• 効果が十分でなければ、ビ・シフロールⓇかニュープロパッチⓇを追加
• これらは、RLS(Restless Legs Syndrome)を伴う場合はより好対象
• 特にニュープロパッチⓇは貼付剤であり、Wearing-off現象を抑制する効果
 パーキンソニズムがおさまれば必要に応じて、中核症状薬の考慮
• イクセロンⓇ → レミニールⓇ → アリセプトⓇ (5mgまで)の順にトライ
• パーキンソニズムの再燃に注意
• メマリーⓇの使用効果に関してはcontroversialだが、陰性症状を認める場
合には用いないのが賢明であろう
 陰性症状(意欲低下)の改善目的にサアミオンⓇの使用も検討
• ChEIの使用により、改善することも期待できる
個人的な展望
 従来の認知症のイメージ:「怖い」「なりたくない」「介護大変そう」
↓
 年を重ねれば、誰でもなりうるもの
なってから考えるのではなく、社会一般常識として、概念を理解し
ておく必要性
→認知症カフェ等の設立・講演活動による持続的な啓蒙活動
 超高齢化社会を迎えるにあたって、施設(単体)の充足のみ
ならず認知症患者に住みやすく理解のある街作りを
→認知症タウン・認知症ヒルズの設立など
主な参考一覧
認知症疾患治療ガイドライン(医学書院)
コウノメソッド認知症診療(日本医事新報社)
認知症の治療(ふくろうクリニック 山口潔先生)
日本神経病理学会HP
など
今回、私のような若輩者に講演の機会を与えていただいた
株式会社Ariect 永森様に感謝の意を表したいと思います。
fin.
ご静聴ありがとうございました。
ご意見 ・ご質問がございましたら下記まで
お願いいたします。
岡本宗史
[email protected]