2015年4月記事 - 全造船機械労働組合

企業・産業動向レポート
= 2015年4月1日~30日の報道内容 =
Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況
◎東北各造船所関連
◆国交省、石巻市の造船事業者復興へ補助金交付 国土交通省は27日、東日本大震災で被災した中小造船事業者
を支援する補助金の交付を決定したと発表した。宮城県石巻市の聖人堀鐡工所(阿部幸一社長)に対し、14億9,000万
円(総事業費22億4,000万円)を交付することを決めた。国交省は「造船業等復興支援事業費補助金」の制度を2013年
度予算で創設。補助金の基金約160億円を設置し、補助金業務を行う機関として日本財団を選定。同財団が13年8月か
ら事業者による交付の申請を受け付けてきた。補助金交付の申請受付は今年3月末で終了している。今回の補助対象
事業者である聖人堀鐡工所は、同じく補助対象事業者である玉木造船化工を吸収合併した上で、石巻市から買い上げ
る敷地に工場などを移転、新設する。事業実施期間は今年5月から17年3月。
◆三菱重工、横浜金沢工場から撤退 ≪エンジンやタービン他工場へ移管、年度内≫三菱重工業が、横浜市の金沢地
区での生産事業から撤退する。23日に生産再編計画を発表した。金沢工場の定置用エンジンの生産事業は相模原製作
所に移管する。関連会社を通じて手掛けるタービンとボイラーの生産は、国内外の拠点に移す。来年3月までに移管を
完了する予定。工場跡地の利用法は未定。製品ごとに拠点を集約、最適化することで競争力を高める。横浜では本牧工
場で船舶修繕事業を手掛けているが、今回の発表は金沢工場のみの生産再編プランとなる。金沢地区では、三菱日立
パワーシステムズ(MHPS)を通じ、火力発電システム機器として中小型の蒸気タービンやボイラーを生産している。価格
競争の激化を背景に、海外生産を中心にした体制に転換する方針。タービンは中国のライセンス供与先に、ボイラーはM
HPSフィリピン工場に、それぞれ生産の主体を移す。三菱重工として金沢工場で手掛けている発電向け定置用エンジン
の製造は、相模原製作所に移管する。相模原にエンジン事業を集約して人員や設備を一体運営することで、需要が拡
大している分散型電源への機動的な対応を強化する。金沢地区の技術統括本部総合研究所などの研究開発人員と設
備は、関連製品事業の移管に連動して異動・集約する。金沢工場の今後の活用については、横浜市などと協議しながら
検討するという。三菱重工の横浜での歴史は、1891年に「横浜船渠」として現在のみなとみらい地区で船舶修理を手掛
けたことに始まる。その後に新造船や機械に進出し、1966年には本牧工場も新設した。だが、80年に新造船から撤退。
横浜みなとみらい21の開発を背景に、新たに金沢工場を建設して、1982-83年に金沢工場と本牧工場にそれぞれ機能
を移管した。本牧工場はLNG船をはじめとした船舶修繕拠点となり、金沢工場は発電関連や環境関連の装置の事業拠
点として運営してきた。
◆三菱重、横浜の工場閉鎖へ【朝日新聞/4.24】 三菱重工業は、発電用の機器をつくる横浜市金沢区の工場を2016
年3月末に閉鎖する。生産を人件費の安い海外に移し、新興国などで売りやすくする。従業員約360人は配置転換する。
面積は東京ドーム7個分の約33万平方㍍で、今後の使い道は横浜市と協議する。23日、発表した。中小型の火力発電設
備は中国や韓国のメーカーとの価格競争が激しく、コスト削減のため国内生産を続けるのは難しいと判断した。
◆三菱重工 横浜・金沢工場閉鎖【日刊工業新聞/4.24】 ≪拠点集約 国際競争力を向上≫三菱重工業は横浜製作所
・金沢工場(横浜市金沢区)を閉鎖する。同一敷地内の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)横浜工場(金沢地区)も生産
を打ち切る。同地域では産業用火力発電システム機器や定置用エンジンなどを手がけてきたが、2015年度末までに国
内外の他工場に全製品・機能を移管する。今後の活用については横浜市などと協議して決める。合計359人の従業員は
配置転換する。製造拠点を集約し、国際競争力を高める狙い。三菱重工とMHPSは23日、横浜・金沢地区の事業を国内外
拠点に移管すると発表した。同工場・地区は82年に稼働。敷地面積は約33万平方㍍。操業は年40万時間程度だったと
いう。中・小型火力発電システムやエンジン、環境装置などを手がけてきたが、コスト競争力を維持するのが困難になっ
た。すでに横浜製作所では陸上風車の生産も終息している。修繕船事業などを手がける本牧工場(横浜市中区)は維持
する。今後、MHPSが所掌する産業用火力発電システム機器については中・小型蒸気タービンをライセンス供与先の中国
のパートナー会社へ、中・小型ボイラーをフィリピン工場へそれぞれ移管する。三菱重工の定置用エンジンは相模原製
作所に人員や設備を集約。エンジン事業として一体運営することで、世界で広がる分散型電源需要に対応する。また、
金沢地区の三菱重工技術統括部総合研究所ならびにICTソリューション本部システム技術開発部の研究開発人員につ
いては、関連製品事業の移管に連動した人員配置を行う。
◆環境装置事業を統合【日本経済新聞/4.24】 ≪三菱重・日立、10月新会社、火力発電関連一貫供給体制≫三菱重
工業と日立製作所は発電プラント用の環境装置事業を統合する。火力発電プラントから環境装置まで一貫して提供で
きる体制を整え、低価格製品で攻める欧州や韓国のメーカーに対抗する。共同出資会社の三菱日立パワーシステムズ
(MHPS)が23日発表した。統合するのは、石炭火力発電所などから出る排ガスに含まれる大気汚染の原因物質を除く集
じん装置の事業だ。MHPSは統合の受け皿となる新会社を10月1日に設立する。三菱重工子会社の三菱重工メカトロシス
テムズ(神戸市)と日立子会社の日立プラントコンストラクション(東京・豊島)がそれぞれ事業を切り離し、新会社に集約
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する。新会社は設立当初の売上高で約150億円、社員数は約240人となる。社名や資本金は今後決める。事業統合で品
ぞろえと販売体制を強化し、技術開発やアフターサービスも共同で取り組む。2017年度をめどに売上高200億円を目指
す。集じん装置は、排気中のすすや粉じんなど粒子状物質(PM)を電気を使って吸引したり、特殊フィルターに通したりし
て除去。大気中に出さないようにする。三菱重工と日立は集じんの方法やシステムに違いがある。2社の強みを生かし
て付加価値の高い機種を開発し、販売の一本化で収益力を高める。MHPSば14年2月、三菱重工と日立の火力発電シス
テム事業を統合して誕生した。三菱重工とMHPSは23日、横浜市金沢区にある発電プラント設備の工場を閉鎖すると発
表した。中小型の蒸気タービン製造を中国の協力会社へ、中小型ボイラーはMHPSフィリピン工場に移管する。分業体制
でコスト競争力を高める。
◆「再建プラン」に4つの疑問【CОMPASS/5月】 ≪三菱重工の長崎分社化、勝ち目はあるか≫三菱重工業が10月1日付
で長崎造船所香焼工場での大型商船事業を二つの子会社に分社化する。建て直しに向けて、船舶事業を解体するよう
な形での「抜本改革」を示したが、果たして勝算はあるのか。三菱重工は客船の巨額の赤字を受けて、今回の再建策を
まとめた。長崎造船所香焼工場での大型商船の建造は今後、LNG船やLPG船に集中する。その上で、事業を二つに分社。
香焼工場内に船舶建造事業会社として100%出資の「MHI船海エンジニアリング」を発足し、長崎のガス船に関する営業・
設計・調達・製造・修理をこの新会社に移管する。これとは別に、製造の上流工程に当たるブロック製造も別途分社化す
る。艦艇事業や、下関造船所での商船事業は引き続き本体に残し、客船建造はエンジニアリング事業として本体に残
す。三菱の造船分社については、昨年の早い段階から業界内でも推測が広がっていた。だが今回、具体的な分社計画
が公表されると、その内容に驚きの声が上がった。「このプラン作成に、船舶部門の人間は関与していないのではない
か」(造船経営者)。そんな憶測が業界内に広がっているのは、「造船屋の発想が見えない」(同)からだ。疑問点はいく
つかある。まずは分社化によるブロック製造事業。他の造船所へのブロック外販も進め、年間生産量を拡大する計画と
いうが、「日本で最も高い三菱重工のコストで造るブロックに競争力はあるのか」(造船大手幹部)という疑問が上が
る。三菱重工は、香焼工場の内業工場のキャパシティーをフル活用することで競争力を出せると解説する。確かに現
在、ブロック外注の逼迫で単価は上昇している。ただそれでも、専業造船所の外注相場に三菱重工がコストを合わせる
ことば簡単ではない。疑問の2点目は、「ガス船特化」の方針だ。「得意船種であるガス船の連続建造による生産合理
化」が狙いとはいえ、バルカーなどの大宗船への特化ならまだしも、需要の山谷が大きい船に決め打ちすることはリス
クが高い。現実にLNG船では、最近でも2008-10年の3年間で発注隻数が世界全体でわずか10隻という「谷」があった
ばかりだ。また3点目は、解体的分社の弊害だ。近年、造船所の勝ち残り策は多様化が進んでいるが、共通しているのは
「規模のメリット」と「一体運営による全体最適化」だ。だが三菱重工だけが、この方向性から背を向けるかのようだ。一
昨年の事業ドメイン制への移行と今回の分社により、組織の上で船舶部門は「艦艇」「客船」「下関造船所の造船事業」
「香焼工場のブロック製造」「香焼工場の商船建造」に分割される形になる。この形で競争力を出せるのか。そして4点
目。技術者集団による技術開発力という三菱重工の最大の強みが、この形では棄損されるのでは、ということだ。造船
業では「自社生産がセットでなければ技術は維持できない」と一般的にいわれている。エンジニアリングをメーンにし
て成立させることば、欧州に例があるとはいえ、簡単ではない。当面は、このプランで仕事量は機能しそうだ。三菱重
工の次の中期経営計画は15年-17年度が対象だが、この3年間だけでみれば、ガス船とブロックの需要はある。だがそ
の先に、三菱重工の船舶部門はどのような未来を描いているのか。“事業規模5兆円”という目標にまい進する三菱重
工の中で、客船による巨額の赤字を計上した商船事業は、声を失ったかのようだ。分社によって商船事業の奮起を促
す、という上層部の狙いがあるにしても、三菱重工が示した解体的分社という道筋は、同じ船に乗る同業他社や顧客、
あるいは、三菱重工の追い落としを狙う毎外のライバルには、再建への厳しい道のりを感じさせている。三菱の最後の
戦いが始まろうとしている。
Ⅱ.国内造船・造機関係の動向
◆1-3月受注4割減の330万㌧ ≪国内造船、国内船主向け・タンカー比率増≫日本船舶輸出組合(輸組)が14日発表し
た今年1-3月の輸出船契約実績は計56隻義333万総㌧(157万CGT)で、総トンベースで前年同期比37%減だった。バル
カーの発注が低迷する中、VLCCやLNG船などの大型船を成約し、受注量はタンカーの比率がバルカーを上回った。ま
た、海外向けが中心だった直近2年と比べて、実質国内船主向けの比率が高まっている。昨年以降の日本の新造船受注
量を四半期別にみると、1-3月が529万総㌧、4-6月が532万総㌧、7-9月が146万総㌧、10-12月が277万総㌧となってお
り、今年1-3月の受注量は昨年7月以降の水準を上回った。ドライバルク市況の低迷により、今年に入ってからも新造受注
は依然として低迷しているものの、タンカーなどの成約が受注量を押し上げた。タンカーの受注量がバルカーを上回っ
たのも大きな特徴だ。1-3月の受注船を船種別にみると、バルカー39隻・150万総㌧に対して、タンカー15隻・154万総㌧
となっている。バルカーを主力とする日本の造船所が多い中で、タンカーの受注量がバルカーを上回るのは異例。VLC
CやLNG船などの大型船がタンカーの受注を牽引した。また、実質国内船主向けの割合が増加した。56隻のうち純輸出
船は12隻で、隻数ベースで国内向けが8割近くを占めた。2014年度の実績をみても、総トンベースで実質国内向けが69
%となっており、12年度の51.2%、13年度の57.3%から大幅に増加。海外船主の発注が一巡し、国内船主向けの案件が
多くなっている。契約は引き続きドル建て中心の傾向が続いている。造船ブーム期には円建てが7-8割を占めていた
が、14年度は円建てが15%にとどまり、外貨建てが81%だった。1-3月の竣工量に相当する通関実績は、前年同期比6%
増の97隻・393万総㌧だった。
◆3月の受注、2割の152万総㌧ ≪契約船の船種多様、竣工量は146万総㌧≫日本船舶輸出組合(輸組)がまとめた3
月の輸出船契約実績は30隻・152万総㌧で、総トンベースで前年同月比19%減だったものの、昨年7月以降では最も多か
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った。3月の契約船の内訳はコンテナ船2隻、バルカー23隻(ハンディ11隻、ハンディマックス6隻、パナマックス2隻、石炭
運搬船1隻、鉄鉱石運搬船3隻)、タンカー5隻(VLCCl隻、アフラマックス1隻、LPG船1隻、ケミカル船2隻)となっている。30
隻のうち純輸出船は6隻と、実質国内船主向けが8割を占めた。3月の受注船の契約態様は、トン数ベースで円建て契約
18.9%、円・外貨ミックス6.4%、外貨建て74.7%だった。現金払い契約は100%、商社契約は25.8%。納期別では2015年
度もの6.8%、16年度もの9.9%、17年度もの32.8%、18年度もの50.5%だった。竣工量に相当する通関実績は、前年同
月比10%増の33隻・146万総㌧だった。
◆活況造船、迫る苦境 ≪円安順風 生かし切れず≫2014年度の輸出船受注量が13年度比22%減と3年ぶりにマイ
ナスに転じた。石炭や穀物などを運ぶばら積み船が大幅に落ち込んだ。大手各社が将来の収益源と期待する海洋資源
開発船事業にも誤算が生じている。足元のドックの活況とは裏腹に、再び苦境が迫ってきている。円安の追い風で復活
したかに見えたニッポン造船。「短い春」に終わるのか。≪ブラジル事業で損失、昨年度の受注2割減≫日本船舶輸出組
合が14日発表した14年度の輸出船契約実績は1,288万総㌧だった。受注の大部分を占めるばら積み船は38%減。だが
「造船所自体は忙しい状況が続いている」(三井造船)。住友重機械工業の横須賀製造所(神奈川県横須賀市)。年間3
隻だったタンカーの建造を15年度から4-4・5隻に増やす。一時は造船からの撤退も選択肢の一つにあがったが、17年ま
で仕事量を確保しており、黒字化も視野に入ってきた。「徐々に協力工も増やす」(別川俊介社長)と当面事業を続ける
方針だ。日本の造船受注量は09年度に600万総㌧台まで落ち、14年ごろには造る船がなくなるという「14年問題」がさ
さやかれていた。それが円高修正で13年度は1,600万総㌧超と、文字通り息を吹き返した。ドックを占めているのは当時
受注した船だ。足元の受注減は数年後の苦境を意味する。ライバルの中韓勢に対して価格競争力を取り戻したのに肝
心の仕事が来ない。これが現状だ。≪運賃は4割低下≫中国の経済減速や船自体の供給過剰に資源安も加わり、ばら積
み船の運賃水準は「歴史的な安値圏」(海運大手幹部)に沈む。総合的な値動きを示すバルチック海運指数(1985年=1,
000)は13日時点で578。1年前に比べ4割低い。新たに船を発注しようという動きは影を潜める。タンカーや液化天然ガ
ス(LNG)船には一定の需要があるが、中小を中心にドック能力の限界からばら積み船しかつくれない造船会社も多い。
「(受注全体は)15年も苦しい状況が続く」(日本造船工業会の佃和夫会長)との見方が大勢だ。14年問題に危機感を抱
き、造船各社は12-13年に相次いでブラジルの造船会社に資本参加した。ジャパンマリンユナイテッドはIHIや日揮と、三
菱重工業は今治造船や名村造船所などと組んで出資。川崎重工業を含め3陣営が顔をそろえた。狙いはブラジル沖合
にある世界屈指の大型海底油田・ガス田開発向けの特殊船。同国でノウハウを蓄積し、今後日本の領海内などでも期待
される海洋資源開発市場への本格参入をもくろんだ。そこに誤算が生じた。汚職疑惑などで国営石油会社ペトロブラス
の経営が混乱。同社向けの資源船を受注していた出資先の造船会社に資金が回らなくなり、IHIは15年3月期単体決算
で90億円の特別損失の計上を迫られた。ブラジル側から受注し、愛知事業所(愛知県知多市)で進めていた船体建造も
中止した。名村造船所も21億円の特損計上を発表済みだ。「やはり新興国ビジネスは難しい」。川重の村山滋社長はこ
ぼす。出資先が新工場を稼働したばかりだが、建造作業は巡航速度に達していない。≪中韓では再編も≫事業環境の悪
化は中韓勢も同じだ。両国では銀行や国の主導で造船所の閉鎖や再編計画も進む。日本でも14年間題を控えて川重と
三井造船の経営統合構想など再編の動きが浮上したが、現在は鳴りを潜めている。今治造船は1月に大型ドック建造を
決めた。韓国勢が得意な大型コンテナ船市場を取りに行く。三菱重工は10月に長崎造船所で手掛ける商船建造などの
事業を分社し、他社との連携を強めていく構えだ。抜本的な体質強化策を打てるのは手持ち工事にまだ余裕がある今
しかない。
◆14年度受注22%減の1,288万総㌧、バルカー中心 タンカーも増加、船舶輸組 日本船舶輸出組合(船舶輸組)が14日
発表した2014年度の輸出船契約(受注)実績は、1,288万総㌧(629万標準貨物船換算㌦=CGT)となり、前年度比22%
減(CGTベースで21%減)だった。船内騒音規制の駆け込み発注などで14年6月までは堅調だったが、同年7月以降は落
ち込んだ。船種ではタンカーが増加したものの、依然としてバルカーが中心となっている。14年度の契約隻数は、272隻
で前年度比146隻減。このうち、バルカーは140隻減の208隻で、ハンディマックス、ハンディサイズ、パナマックスが中心
だった。油送船は8隻増の44隻で、ケミカル船、アフラマックスタンカー、LNG(液化天然ガス)船などが隻数を伸ばした。
貨物船は10隻減の20隻で、内訳はコンテナ船9隻、一般貨物船6隻、自動車運搬船5隻だった。14年度契約輸出船の船主
系列別受注量の割合(総トン数ベース)は、邦船系が69%と前年度の57%からシェアを拡大。このほか、欧米系11%(前
年度13%)、ギリシャ系6%(同12%)香港系4%(同4%)その他10%(同14%)だった。契約は全て現金払いで、トン数ベー
スの契約形態内訳(シェア)は円建て15%、円・外貨ミックス5%、外貨建て81%。商社契約は15%だった。納期別内訳は1
4年度3%▽15年度24%▽16年度23%▽17年度37%▽18年度12%▽19年度1%。竣工量を示す14年度輸出船通関実績
は、1,176万総㌧(546万CGT)で2%減(CGTベースで3%増)、隻数は8隻増の282隻。14年度末の輸出船手持ち工事量は
632隻、2,764万総㌧(1,350万CGT)だった。前年度末は658隻、2,772万総㌧(1,310万CGT)。≪3月もマイナス継続≫15年3
月単月の輸出船契約実績は、152万総㌧(67万CGT)で前年同月比19%減(CGTベースで28%減)、隻数は17隻減の30隻
だった。うち海外船主向けの純輸出船は6隻にとどまった。30隻の船種別内訳は、コンテナ船2隻、ハンディサイズバル
カー11隻、ハンディマックスバルカー6隻、パナマックスバルカー2隻、石炭運搬船1隻、鉄鉱石運搬船3隻、VLCC(大型原
油タンカー)1隻、アフラマックスタンカー1隻、LPG(液化石油ガス)船1隻、ケミカル船2隻。契約は全て現金払いで、トン数
ベースの契約形態内訳は円建て19%、円・外貨ミックス6%、外貨建て75%。商社契約は26%だった。納期別内訳は、15
年度7%▽16年度10%▽17年度33%▽18年度51%。
◆昨年度、輸出船契約/21.9%減1,288万1,550総㌧/3年ぶりマイナス 日本船舶輸出組合(JSEA)が14日発表した201
4年度の輸出船契約実績(一般鋼船)は、前年度比21.9%減の1,288万1,550総㌧となり3年ぶりに前年実績を割り込ん
だ。3月単月の契約実績は9カ月連続のマイナス。バラ積み運搬船を中心に「海運市況の低迷に伴い、新造船の発注が
減っており、厳しい時期が続く」(JSEA)との見方が出ている。14年度の契約隻数は272隻(13年度418隻)。内訳は貨物船
20隻、バラ積み運搬船208隻、油送船舶隻。納期別内訳(比率)は、14年度3.1%、15年度23.6%、16年度23.4%、17年度3
6.7%、18年度12.1%、19年度1.1%。通関実績は282隻、同2%減の1,176万4,821総㌧。3月末時点の輸出船手持ち工事量
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は632隻、2,764万1,720総㌧。造船各社はおおむね2~3年分の仕事量を抱えている計算。ただ、足元では新造船の供給
圧力が大きく、船価回復は難しい展開。「バラ積み船に受注を重ねてきた中堅造船所は苦しくなる可能性がある」(関
係筋)と見る向きはある。一方、3月単月の輸出船契約は前年同月比19.2%減の152万2,900総㌧。隻数は30隻。内訳はコ
ンテナ船2隻、ハンディ型バラ積み船11隻、ハンディマックス型バラ積み船6隻、パナマックス型バラ積み船2隻、石炭運搬
船1隻、鉄鉱石運搬船3隻、VLCC(超大型タンカー)1隻、アフラマックス型油送船1隻、液化石油ガス(LPG)運搬船1隻、ケミ
カルタンカー2隻。納期別内訳(比率)は15年度6.8%、16年度9.9%、17年度32.8%、18年度50.5%。通関実績は33隻、145
万8,492総㌧。
◆23・2%/2014年の日本の造船所の受注シェア 今年は年明けから2万TEU型のメガコンテナ船をロット受注するなど
存在感を見せている日本の造船業。かつては“造船ニッポン”と呼ばれた日本の造船業だが、受注規模では現在、中国、
韓国に次ぐ3番手だ。ただ、省エネ船の評価や円安の定着などで、昨年から巻き返しの兆候も徐々に表れている。日本
の造船所の世界に対するプレゼンスをデータから検証してみたい。IHS(旧ロイド)統計(1-9月実績の確定値と10-12月速
報値の合計)〔グラフ①〕によると、2014年の世界の新造船受注量は計2747隻・8,375万総㌧(約4,605万CGT)で、造船
ブーム最終年の08年並みの高水準となった。中国、韓国、日本の順位は変わらなかったものの、日本の受注シェアが20
%台を回復した。日本の受注シェアは中国が台頭する2000年代前半までは3-4割あったが、中国の台頭とともにシェア
は2割以下に減少した。昨年は円安の定着や省エネ船への評価のほか、船内騒音規制前の駆け込みを背景に、日本は
受注を伸ばした。船種別のシェアは〔グラフ②〕の通り。バルカーでは中国、タンカーとガス船では韓国が圧倒的なシェ
アを占めたものの、日本は6万重量トン超のハンディマックスを中心としたバルカーや、日本向けのシェールガス商談が
あったLNG船で存在感を見せた。バルカーでは、4万重量トン以下の小型で40.0%、5万-8万5000重量トンの中型で37.
7%、ケープサイズで21.8%が日本のシェアとなっている。ガス船のシェアは、LNG船が17.0%、LPG船が17.8%だった。
また、4万重量トン以下のタンカーでは、日本のケミカル船ヤードが受注を伸ばしたことから50.7%の過半シェアを取っ
た。14年の特徴ともいえるのがコンテナ船だ。日本はメガコンテナ船の受注で韓国や中国に出遅れ、コンテナ船のシェ
アはここ数年1-6%にとどまっていたが、14年は今治造船やジャパンマリンユナイテッドがメガコンテナ船をロット受注し
たことで2割超のシェアに達した。今治造船は今年も、2万TEU型を計13隻受注している。14年はLNG船やメガコンテナ船
など日本向けの大型商談が多かったことも日本の受注を後押ししたとはいえ、高付加価値船でも世界市場で存在感を
示した。今後、海洋案件の低迷から韓国大手との競合激化も想定されるが、円安の定着という追い風もあり、より一層
の巻き返しに期待が寄せられている。
◆手持ち工事量/2,764万総㌧に増加 日本船舶輸出組合がまとめた今年3月末時点の手持ち工事量は632隻・2,764万
総㌧(1,350万CGT)で、総トンベースで2月末時点から増加した。納期別の内訳は、2015年度引渡分298隻・1,159万総㌧、1
6年度184隻・809万総㌧、17年度126隻・627万総㌧、18年度23隻・156万総㌧、19年度以降1隻・14万総㌧だった。
◆2月の造船統計、竣工29隻 国土交通省がまとめた2015年2月の造船主要53工場の鋼船受注・建造実績は、起工2
2隻・79万7,000総㌧、竣工29隻・77万総㌧、竣工船価895億円だった。竣工船のうち国内船の実績は自動車航送船1世、
その他船舶3隻の計4隻・8,000総㌧だった。輸出船は25隻・76万2,000総㌧で、内訳は貨物船が21隻(一般貨物船2隻、
ばら積み船9隻、鉱石兼ばら積み船8隻、セメント専用船1隻、木材件ばら積み船1隻)、油送船は4隻(一般油送船1隻、LPG
船1隻、化学薬品分2隻)だった。シンガポールやパナマ、マーシャル諸島、バミューダ諸島、インドネシア向けに竣工した。
鋼船修繕実績は102隻で、工事金額は30億円だった。
◆能力増強の設備投資を再開/三井造船玉野、人材確保と多能工化も課題 三井造船の玉野艦船工場は、効率化と
能力増強を目指した設備投資を再開する。金融危機後は老朽設備の更新に絞り込んでいたが、15年度に小組立工場の
建屋を新設し、整流化によつて組立工程の生産効率を15%高めて能力を引き上げる方針。その後も効率化に向けた投
資を進める考えだ。また、一般商船と艦艇・官公庁船を組み合わせた工場運営のため、人材の確保・育成が大きなテー
マとなっており、多能工化や、設計要員を中心とした確保に力を入れる。玉野事業所の玉野艦船工場は、造船ブーム期
にはドッククレーン増設などの能力アップの設備投資を行うとともに、工場全体として効率化と能力増強に向けた長期
の投資計画に着手していた。08年に大型の鋼材加工センター「深井鋼板切断工場」を新設、09年には曲げ加工専用の
工場を増設するなど、建造工程の上流から設備の整備を進めていた。だが、ここ数年は新規ルール対応に必要不可欠
な設備や、老朽設備の代替更新に絞り込んでいた。効率化を目指す新規の設備投資が手薄になっていた格好だが、こ
れを再開する。14年度は老朽代替として、修繕用の1号ドックのゲートと、鋼板切断工場のNC切断機1基の老朽代替を実
施した。15年度は鋼板切断工場のもう1基の切断機と修理艦用ドックのクレーン代替を行う。これに加えて、大型投資と
して小組立工場の建屋を建て直す予定だ。前艦船工場長の三宅俊良氏(取材時。現在千葉事業所長)は「残るは小組、
大組。組立工程の整流化がこれまで課題だったが、小組立工場の強化により最終組立工程の前段階に仕事を分散させ
て、全体の生産効率向上による月産能力の向上を図る。組立工程全体で、15%の効率向上を見込む」と語った。玉野艦
船工場では複数の中型バルカーと、防衛省向け艦艇、巡視船などの官公庁を組み合わせた建造体制をとっている。今
後の手持ち工事としては、年6~7隻のバルカー建造で17年までの仕事量をほぼ確保。今年は省エネ船シリーズの6万6,
000重量㌧型バルカーを5隻、6万重量㌧型バルカーを2隻、官公庁船を2隻進水する予定だ。それ以降は保安庁向け巡
視船1隻と防衛省の潜水艦救難艦(ASR)を除くと、バルカー建造が主体となる。商船と艦艇・官公庁船では工事内容が
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大きく異なるため、船台の状況に応じて艤装と船殻の比重が変わる。だが近年は陸上工事との人の取り合いで協力工
の確保が難しいため、自社で多能工の育成を進める。人材面では設計を中心とした人材不足も深刻だ。また人材確保
以外に設計能力の課題も挙げる。「これまでは同じ船型の連続建造で通用する時代だったが、省エネ船など時代に合
った設計が求められる。その間も官公庁船の仕事があり、設計能力の向上が必要だ。設計の技術力の差は顕著に表れ
るので、どのように強化するかが問われている」(三宅氏)。人員拡充に向けて、設計では15年度に従来と比較してより
多くの新入社員を設計へ配属する。また、フィリピンの設計子会社DASHエンジニアリングの造船設計部でも船の詳細設
計を行っており、今後もDASHの活用が増えそうだ。生産現場では、4月に施行された新制度を利用し、玉野では現在8人
にとどまる外国人研修生の受け入れを順次増やしていく方針だ。
◆常石造船/本社工場に大型投資 ≪マザー工場強化、400トンクレーンなど≫常石造船が、本社のある常石工場に大
型の設備投資を行うもようだ。関係筋によると、吊り能力400㌧のクレーン複数基導入などを計画しており、「数十年ぶ
りの大型投資」になるようだ。これまではフィリピンと中国の海外2エ場の強化を優先し、設備投資は海外での生産能力
拡張を目的とする投資に集中していた。だが、常石工場は国内唯一の生産拠点となり、海外造船所の技能者訓練など
を行う「マザーヤード」としての役割を増している。大型投資によって競争力を高める方向性を打ち出すことで、国内
生産の重要性も改めて示した格好だ。常石工場への設備投資としては、直近では2009年に新塗装基準(PSPC)に対応
するため大型の塗装工場を建設していた。今回の設備投資はこれを上回る規模となるもようで、クレーン代替など、
「数十年ぶりの大型投資」になるとみられる。常石造船は造船事業の戦略として「海外生産」を軸に置き、フィリピン・セ
ブ島のツネイシ・ヘビーインダストリーズ・セブ(THI)と中国の常石集団(舟山)造船の海外2工場の生産体制を強化して
きた。設備投資の点でも、過去20年間は海外を優先。近年では2010年までの3年間でフィリピンと中国に約500億円を
投資しており、THIでは第2工場を建設し、舟山では船台を拡張するなど、大規模な設備を整えた。この間、国内でも塗装
工場や組立工場の増設、設備の代替なども行っていたが、全体的には国内は老朽設備の更新や補修などがメーンとな
っており、投資は抑制されていた。今回久しぶりの国内への大型投資に踏み切る背景には、常石工場の重要性が高まっ
ていることがありそうだ。今年1月に多度津工場を今治造船に売却したことで、国内の生産拠点は常石工場だけとなっ
た。海外工場の技能者の研修をはじめ、常石工場はグループ全体の人材育成や技術拠点としての「マザーヤード」とし
ての重みを増しているため、工場としても競争力を高める必要がある。また、フィリピン・中国の2工場は大型投資が一
段落し、今後は大規模な設備投資よりも、生産性向上によって建造量を増やす段階に入ったことも背景にあるようだ。
いわゆる「円安による生産の国内回帰」とは異なり、海外生産の競争力を高めるためにも国内を改めて強化する必要
があったといえる。
◆広島工場に1,200トンクレーン新設 ≪今治造船、大型コンテナ船の生産性向上へ≫今治造船は、広島工場の建造ドッ
クに吊り能力1,200トンのゴライアスクレーン1基を設置する。老朽化した既存クレーンの代替との位置づけだが、能力が
アップすることでブロック大型化などによる生産性向上の効果を見込んでいる。同工場が得意とする大型コンテナ船
の競争力を高めたい考えだ。広島工場はドック2基で新造船を建造している。西側の1号ドック(全長378mX幅59m)には、
800トン型クレーン2基と200トン型2基の計4基のクレーンが設置されており、一方の東側の2号ドック(382mX56m)には80
0トン型クレーンが2基ある。このうち1号ドックで、既存の200トンクレーンを撤去し、1,200トンクレーンを新たに設置する。
稼働は来年の見込みだ。クレーン能力を高めることで、ドックへの搭載ブロックを従来よりも大型化でき、ブロック数が
減少、ドック期間が短縮するなどの生産効率化が見込める。広島工場では現在、川崎汽船向け1万4,000TEU型コンテナ
船シリーズを建造中。先月末に1番船“Millau Bridge”を引き渡しており、これ以降の半年間で計5隻を竣工する予定にあ
る。その後にケープサイズ・バルカーなどの建造を挟みつつ、再び川汽向けに1万4,000TEU型5隻と、台湾船社エバー
グリーン向けに同型船5隻を連続建造する予定。メガコンテナ船を主力製品とするうえでは、短期間にまとめて隻数を
用意するロット対応が重要となる。大型設備を整えて生産性を高めれば、コストや納期対応の両面でコンテナ船の競争
力を高めることができる。吊り能力1,200トンのゴライアスクレーンは現時点で国内最大の能力。三菱重工が長崎造船所
香焼工場で1基、大島造船所が2基、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が有明事業所で2基をそれぞれ運用している。今
治造船は丸亀事業本部に新設する大型ドックでも、1,200トンクレーン3基の導入を計画している。
◆造船協力会社人員、5年ぶり増加 《景況感改善も「人員は不足」》日本造船協力事業者団体連合会(日造協)がまと
めた「日造協実態調査報告」によると、造船協力会社の昨年7月時点での人員数は前年度に比べて0.3%増加した。人
員増加は5年ぶり。景況感も改善しているが、一方では人員不足を挙げる声が多かった。日造協が会員を対象とした書
面調査の結果を公表した。人員数は、技術員が前年に比べて1%減少する一方、工員が1%増加した。協力会社の人員数
は2013年度から造船ブームを背景に7年連続で増加したが、2010年7月の調査からは連続で減少していた。国内造船所
の操業減少で協力会杜も規模を縮小していたが、操業回復に伴う協力会社への仕事量拡大で、再び増加に転じたよう
だ。一方、人員不足については、現在「不足している」とする回答が全体の57%を占めてあり、今後「不足する」とする
回答は66%もあった。また、2015年度の景気見通しについては「良い」とする回答が全体の19%で、「悪い」の17%を上
回り、久しぶりに景況感がブラスとなった。このほか、2013年度の造船売上高は前の年度に比べて12%減。、調査対象年
度が、外注需要の急増する直前の時期にあたることも影響したようだ。
◆「造船は構造改革に踏み込むべき」 ≪造工・佃会長、2年振り返り三菱分社化にも言及≫日本造船工業会の佃和夫
会長は21日、任期中最後となる定例会見を開き、この2年の造船業を振り返った。日本造船業の最大の課題として「何に
も増して体力強化」とし、「痛みを伴う分業と協業が必要」「皆が取り組んではいるが、事業構造改革にまで踏み込むべ
き」と語った。構造改革の手法としてM&Aやアライアンスなどを挙げるとともに、差別化に向けたエンジニアリング強化
なども挙げ、出身の三菱重工業が長崎造船所の商船を分社したことについて「エンジニアリングを船から分離し、マー
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ケットを社内外に広く求める方針に合致した施策」と話した。佃会長の発言要旨は次のとおり。<2年を振り返り>△行き
過ぎた円高の修正が進み、経済環境は好転した。だが「2014年問題」は先送りと認識すべき。造船能力過剰の根本問題
が解決されていない。厳しい状況ではあるが、日本は海洋立国で、ものづくりの国でもあり、海運造船は日本経済を支
える基盤産業。大変だからといって腰を引く事業ではない。新技術による差別化と、新マーケットへの進出、体力強化を
喫緊の課題として取り組む必要がある。<造船業の課題>Δ何にも増して体力強化が重要。経営者が自ら強い意志で
決意すればできる。痛みを伴う分業と協業をどれほど腹を決めてできるかが大事。各社とも体力強化に向けて努力し
ているが、2年の経験をもとに、事業構造改革まで踏み込まなければいけないと強く感じる。△体力強化には、M&Aや
機能分社化、他社との協業などさまざまな方法がある。各社が最も適当と思う方法でやるべきで、いまそれぞれの分
野で前に進めている。三菱重工の例では、長崎造船所の商船を分社したことは、エンジニアリングを船から独立して広
く社内外にマーケット求める方針に合致した施策と考える。<エンジニアリングの分離>△これまで船殻設計が造船の命
だと考えてきたものづくりの方法をエンジニアリングと分け、エンジニアリングのマーケットを広げる構造改革もあるの
ではないか。△船の付加価値を考えると、以前は海上を効率良く安全に速く走る立派な船殻を造ればそれが競争力に
なったが、そういう価値では徐々に差別化できなくなっている。付加価値とは、価値ある設備を、船殻の上にどれだけ
効率良く設置できるかではないか。顧客が快適に過ごせる大量の客室をいかに効率良く乗せられるか。掘削装置をど
のように搭載するか。揮発量の少ないLNGタンクをいかに同じ寸法の船殻にたくさん乗せるか。それが船としての付加
価値の勝負ではないか。それには膨大なエンジニアリングカとリソースが必要。船の事業だけでそれだけのリソースを
持ち続けることは難しい。体力強化策として、船に特化した事業からエンジニアリングを切り離し、他のプラントなども
手掛ける部門として独立させ、エンジニアリングのマーケットを船殻以外にも広げて技術力を高めることが、結果的に
船の価値も高めることにつながるのではないか。<事業多角化の必要性>△事業多角化は入念な準備をしなければ、
エンジニアリングカがついて行かず失敗するケースが多い。韓国造船業の赤字や三菱重工の客船などもそうだ。海洋
分野も、これまで皆が何度も挑戦して失敗した。このため、多角化していない会社が良いようにみえるが、それを継続
できるかどうか。設計を変えず同じ船種を大量に建造する事業モデルが続き得るかは疑問だ。韓国や中国の追い上げ
を振り切るには、新たな船種にチャレンジしなければいけないときがくる。<ブラジル造船業の混乱>△ペトロブラス問
題と油価低迷で、ブラジルでの造船事業は厳しい状況だが、いっまでも続くわけではない。各社事情が異なるだろう
が、私の理解では減損処理をしても手を引くとはなっていない。いずれ必ず復活する時期を見込み、仕込みをしておく
べき。
◆造工の次期会長に川重の村山社長 ≪6月に就任、現役社長の就任はIHI釜氏以来≫日本造船工業会の次期会長に
川崎重工業の村山滋社長が内定した。6月に開催される定時総会で正式決定する予定。現役社長が造工会長に就任す
るのは、前会長の釜和明氏がIHI社長時代の2011年に就任して以来。村山社長は第35代の造工会長となる。川重出身の
造工会長は、2007-09年に会長を務めた田崎雅元氏以来。【むらやま・しげる】1974年京都大学航空工学科修士課程修
了、川崎重工入社。2005年執行役員航空宇宙カンパニーバイスプレジデント、2008年常務執行役員、航空宇宙カンパニ
ーバイスプレジデント、2010年代表取締役常務、航空宇宙カンパニープレジデントを経て、13年に現職。1950年(昭和25
年)生まれ。大阪府出身。
◆海外船主の納期延期要請が増加 ドライバルク市況の低迷を背景に、一部の海外船主が造船所に対して用船先の
決まっていない発注船の納期変更を要請している。期近納期の建造船を契約の範囲内で最大限引き渡しを遅らせてほ
しいという要望に加え、1年程度の大幅な納期先送り要請も出てきている。日本の造船所は、契約の範囲内であれば工
程を調整したり、建造船を引き渡せる状態で岸壁に係留するなどの対応をとっているようだ。2013年来の発注船は用
船先を確保していないものも多く、ドライ市況の深刻化により、納期延期の要望が今後増えてくる可能性もありそうだ。
造船所と船主の新造契約は、契約当初は納期に数カ月の幅を持たせており、引き渡しの時期が近づくにつれ、徐々に
引き渡す日を絞り込んで確定していく契約形態が多い。このため、ドライ市況の低迷を受けて、海外船主から引き渡しを
契約の範囲内でギリギリまで先送りにしてほしいという要請が増えており、「引き渡しは契約の範囲内で最も遅い時期
で調整している」(国内造船所関係者)という造船所もある。引き渡し日が迫った段階での延期要請に対しては、工程の
調整をせずに造船所の建造計画どおりに建造し、引き渡しまでの期間は岸壁に建造船を係留したままにすることも多
いという。造船所にとっては契約納期のズレは工場の建造工程や人員配置などにも深刻な影響が生じる。1つの船の納
期を遅らせれば、その後の竣工予定船の建造に混乱を招くことになる。後続の建造船に航海契約などで納期の調整が
困難な案件が控えており、納期よりも早めの建造計画を立てているケースもある。岸壁に係留するとしても、岸壁のキ
ャパシティにもそれほどの余裕はない。その一方で、人手不足の問題などもあり、納期の延期を進めてきた造船所も一
部あるようだ。「人手不足の問題が顕在化し始めた昨年から契約の範囲内で線表を先に延ばしている造船所もあった」
(造船現場関係者)。工程に遅れが生じている造船所にとっては、工程の調整を図るため、納期を後ろ倒しにすることで
船主と交渉を進めていたようだ。ドライ市況の低迷により、船主の希望ともマッチしていた。こうした契約納期の範囲内
での引き渡し延期に加え、ドライ市況に回復の兆しが見られないことから「契約の範囲を超えた引き渡し延期の要請も
出始めている」(国内造船所関係者)。発注船の一部の引き渡しを半年~1年程度延期してほしいという内容で、海外造
船所の建造船も含めると、既に表面化した納期延期もある。ギリシャ系バルカー船社スターバルクキャリアーズが今年
竣工予定の新造船の一部の納期を来年第2~3四l半期に延期したことを明らかにしているほか、米国上場のギリシャ船
主セーフバルカーズも1年程度の引き渡し延期を発注船の一部で造船所と交渉している。納期を大幅に延期すること
は、造船所としては建造船の順序を入れ替える必要なども出てくる。1本のドックで建造している造船所にとって対応が
難しいのはもちろんのこと、複数の建造工場を持つ造船所でも、連続建造体制が崩れるため簡単には対応できない。
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船価の底値感を背景に2013年以降、海外船主を中心にバルカーの新造発注が相次いだ。船価の底値感を背景とした先
行発注が大部分で、用船契約や航海契約のめどが付いていないものも多い。競争力のある船とはいえ、足元の市況下
でスポット運航すれば、赤字運航は避けられない。このため、用船先の確定していないものは竣工を先送りにできれば、
赤字幅を縮小できる。こうした納期延期の動きはリーマン・ショック直後にも数多くあり、造船所は対応に追われた。201
3年来の発注ブームで発注された新造船が竣工を迎える中、用船市況に回復の兆しがなかなか見えておらず、こうし
た納期延期の要請は今後も出てくることが予想される。ドライ市況低迷の影響が新規商談だけでなく、受注船にも影
響を及ぼし始めている。
◆造船鋼材/国内需要が一転増加へ 《14年度は5%増、15年度は2%増の343万㌧へ》国内造船所の造船用鋼材使用
量が増加に転じている。リーマン・ショック以降は減少を続けていたが、日本造船工業会(造工)加盟会社の2014年度の
購入量は、前の期に比べて5%増の337万㌧となったようだ。今期はさらに2%増の343万㌧を見込む。造船所が操業を
戻しつつあるため、鋼材需要も底を打ったといえる。造工が会員各社の状況を取りまとめた。2014年度の鋼材購入量
(見込み)のうち、最も使用量が多い厚中板は、前の期に比べて5%増の294万㌧となったようだ 事前に予定していた
購入量よりも増えて、前年を上回った。また、形鋼は前の期から19%増の27万㌧と大きく増えた。今期は厚中板の購入
量が300万㌧規模にまで増える見通しだ。国内造船所の鋼材消費量はピーク時の2008年度に463万㌧を記録したが、
その後は造船所が操業をスローダウンして建造量を減らしたため、下落傾向が続いていた。
◆造船この1カ月〈上〉造船淘汰が再び始まるか 《バルカーと海洋低迷が深刻化、海外は再編加速も》造船業界では、
バルカーの新造需要の低迷と、海洋案件の凍結で、事業環境の先行きが不安視されるようになってきている。納期延
期や船種変更などリーマンショック直後と同じ情勢が発生しているが、造船所の受注残など、状況は当時より悪いとも
言える。この低迷状況が続けば、造船所の淘汰が再び始まるとの見方も出てきている。低迷を背景に、海外では造船再
編が急ピッチで進む可能性もある。《リーマン直後との違い》司会 造船業界には先行きの不安感が徐々に広がっている
ようだ。ドライバルク市況の低迷がじわりと効いてきているのだろうか。― これほど海運市況が低迷しているからね。
造船所への新造船の引き合いもばったり止まっている。バルカーの船種変更や納期延期の要請も造船所には寄せられ
ているし、今後はオペレーターの信用問題も心配だ。気になる話はいろいろと聞くよ。一 新造船マーケットに関する
話題は後ほど改めて詳しく話すが、1つ言えるのは、納期延期や船種変更は、リーマンショック前後にもかなりあったと
いうことだ。いまは当時と状況が似ているような気がする。― うん。でも、違いもある。日本造船業にとっては、リー
マンショック後と違って、為替は円安だ。これは日本にはアドバンテージじやないかな。採算面でも受注面でも、日本は
救われているところがあると思う。それに、ファイナンス環境は当時ほど悪くない。― 確かにそうかもね。でも一方で
は、当時は何といっても、海運造船ブームの貯金が皆にあった。オペレーターや船主は体力があったし、造船所は手持
ち工事が採算的に良い案件ばかりだった。今回はその点が大きく違う。造船所もここ最近は不採算案件の建造が続い
ているし、手持ち工事も船価がそれほどは良くない。オペにも、当時ほどの余力はないのではないか。― 大きな違い
として、新造船発注残の「確実性」という点も挙げられる。リーマンショック後は、新興ヤードがまだたくさんいた。経験
が薄く、財務的にも危うい中国や韓国の造船所が、大量の受注残を抱えていた。結局、ほとんどの造船所が淘汰され
て、彼らの受注残も竣工に至らなかった。でも今は、歴史と実績のある造船所が中心だ。― そうすると、何か違うのか
な。― 例えば、今回は造船所側の事情で新造船が竣工しない、という可能性が低いのではないかな。当時は、新興ヤ
ードなどが建造経験がないせいで納期を大幅に過ぎても船を竣工できなかったり、建造資金に詰まったり、リファンドギ
ャランテイ(前受金返還保証)を得られずに契約が未発効に終わったりということがあった。一 要するに、いまのバル
カーの受注残はほぼ予定通り竣工してくると考えた方が良い、ということかな。― それもあるし、船主にキャンセル
を主張する正当な理由がない。造船所とは契約をめぐる交渉が出てくるだろうが、マーケットクレームのような事態も
心配している。― 日本の造船所も、初取引の船主の案件や、海外向けの仕事が受注残に多いという点が、リーマンシ
ョック後とは違うね。《淘汰戦の対象は》司会 この新造市況の低迷が続くと、造船所の経営は厳しいのではないか。―
「淘汰戦の第二幕が始まった」という人もいる。前回、リーマンショック後の淘汰は、主に新興勢が中心だった。だが今
回は、皆が採算悪化で苦しんでいる中に需要低迷も重なっているから、より広い範囲での淘汰になるかもしれない。―
やはり、バルカー低迷の影響が大きいのだろうね。世界全体の建造需要のうち、ドライバルクがかなりのボリューム
を占めているわけだから。― 中国は、民営造船所で厳しい状況の造船所が出てきている。南通明徳重工や東方重工
といった中堅ヤードが法的手続きなどを申請し始めている。中堅とはいえ、建造量が年間30万総㌧くらいの造船所だ
から、それなりに規模が大きい。巨大民営造船所でも、熔盛重工も再建の行方が不確かになり、STX大連は破産に至っ
た。― ただ中国の場合は、そのまま設備が廃棄されて淘汰されるか、というとわからない。― 韓国は、造船所の再
建や復帰がやはり困難になってきているようだ。跡地設備の競売が成立しなかったり、スポンサー探しが難航したりと
いう情報も聞こえてきている。― 韓国の新興ヤードは、一時期、プロダクト船の需要回復などで息を吹き返したと思
ったが…。― 当時も結局、リファンドギャランティがつかなかったりで正式には受注ができていなかった。いまは大手
向けのブロック製作などでしのいでいる造船所もあるというが、今後も事業を続けられるかどうか。大手も今は余裕が
ないからね。― 「今度こそ造船所の淘汰が進めば、産業には良いことだ」という意見も聞いた。確かに、世界的な需
給ギャップの大きさを考えれば、やはりもう一段の淘汰は必要なのだろう。海運サイドとしても、特定の船種で新造発注
が一気に積み上がって、すぐ船腹過剰に陥ると言う今の悪循環は、カネ余りだけでなく造船所のキャパシティが大きす
ぎる点にも原因があるという見方は強い。― それはあるかもしれない。ただ、淘汰の対象が海外造船所だけという
ことにはならない。― 日本はいまは落ち着いているように見えるが、このままバルカー低迷が続いたら、いろいろと
揺らぎ始めるかもしれない。《海外で再編加速か》司会 経営再建や事業再編といったテーマのニュースが多いのも、
やはり、厳しい環境を反映したものだろうか。― 海外で大型再編の話しが出てきているが、やはり無縁ではないだろ
う。― 中国では、国有2大造船グループの中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)の合併の噂が流れ
ているようだ。これは実現したら大転換になる。― 中国は造船に限らず、国営改革で他産業でも大合併構想が進ん
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でいる。造船でもその検討があるのは不思議ではない。そもそも昔は1つのグループだったわけだしね。― もし本当
に合併したら、年間200隻以上を建造する世界最大の造船グループになるわけだが・‥。― 実現性はまったくわから
ない。一部分の組織統合になるのではとか、いろいろな話がある。― ただ、中国は現状のCSSCとCSICの中での再編
は着実に進んでいるね。― うん。それによって彼らの競争力がどの程度高くなるのかはまだ見えないが、少なくとも
規模は維持されることになりそうだ。― 韓国ではSTX造船と成東造船海洋の合併話がある。昨年いったん浮上して
立ち消えになったが、またこの話が出てきた。― 両社とも経営再建の一環で政府系銀行が筆頭株主になっている。
だから、金融主導で進むのだろう。― 韓国の中堅ヤードはいまほとんどが韓国産業銀行か韓国輸出入銀行の管理下
だ。大宇造船海洋もいまだに産業銀行が筆頭株主だから、銀行系ではないのは、現代重工、サムスン重工、韓進重工く
らいしかない。― その分、金融主導による造船再編が進みやすいのだろう。基本的には「規模の大型化で生き残る」
という方向性は持っているようだから、何らかの形で再編は進むはずだ。― いまの低迷を考えると、海外の造船再編
は急ピッチで進む可能性が高そうだ。
◆造船この1カ月〈下〉、バルカーの納期延期要請増加 ≪新造船市場、商談もタンカー・コンテナへ≫ドライバルク市況低
迷の影響で、一部の海外船主が造船所に対して発注船の納期延期を要請している。契約納期の範囲内で最大限引き渡
しを遅らせてほしいという要望に加え、1年程度の大幅な納期の先送り要請も出てきている。納期の延期に加え、船種
変更なども増加しており、新造船市場では不況対応が本格化してきた。また、バルカーの低迷を受けて、商談の中心は
タンカーやコンテナ船へと移っており、アフラマックス・タンカーの営業を再開した国内造船所も出てきたようだ。≪1年
の延期要請も≫司会 ドライバルク市況の低迷を受けて、一部の海外船主から船種変更や納期延期の要請が造船所に
寄せられているな。― 納期の延期といっても大きく分けて2種類ある。1つは期近納期の建造船を契約の範囲内でギ
リギリまで引き渡しを遅らせてほしいというもの。もう1つは半年-1年といった大幅な納期先送りの要請だ。― 前者は
契約の範囲内というけれど、造船所と船主の契約は一般的にどうなっているのか。― 造船所と船主の新造契約はこ
契約当初は納期に数カ月の幅を持たせており、引き渡しの時期が近づくにつれ、徐々に引き渡す日を絞り込んで確定し
ていくことが多い。それで船主は契約の範囲内で最も遅い納期で引き渡すように要望しているようだ。― 契約の範
囲内だから問題ないような感じもするが、造船所は1つの船の納期を建造計画よりも数カ月単位で遅らせれば、その後
の竣工予定船の建造にも当然影響が出てくる。後続の建造船にフェリーや航海契約に投入予定の新造船などで納期の
調整が困難な案件が控えている場合には、納期よりも早めの建造計画を立てているケースもある。― そうしたケー
スでは、造船所は建造計画どおりに建造し、引き渡しまでの期間は岸壁に係留しておくのが一般的のようだ。ただ、岸壁
に係留するとしても、岸壁のキャパシティにもそれほどの余裕はない。― その一方で、納期の延期が逆に助かったと
いう造船所もある。― というと?― 昨年からの人手不足の深刻化で、工程に遅れが生じている造船所は、工程の
調整を図るため、納期を後ろ倒しにるすることで船主と交渉を進めていたからだ。納期が順守できない懸念があった
造船所にとっては、納期の延期はむしろ救われた。契約の範囲内で線表を先に延ばす動きは人手不足が顕在化し始め
た昨年からあったようだ。ドライ市況の低迷により、船主のニーズともマッチしていた。― 日本の造船所は契約の範囲
内のものについては、比較的柔軟に応じているようだ。― ただ、こうした契約内の延期だけでなく、半年-1年程度の
大幅な延期要請も表面化している。― 既にスターバルクやセーフバルカーズなどギリシャ系船主が大幅な納期延期
を決めたり、延期を交渉していることを明らかにしている。両者とも日本の造船所への発注残もある。― 両者とも決
して評判の悪い船主というわけではないようだ。日本の造船所での建造実績が多いごく普通の海外オーナーでもこ
うした動きが広がってきているようだ。― 2013年以降の海外船主を中心としたバルカーの発注ブームは、大部分が
船価の底値感を背景とした先行発注で、用船契約や航海契約のめどが付いていないものも多い。競争力のある船とは
いえ、足元の市況下でスポット運航すれば、赤字運航は避けられない。船主としてみれば用船先の確定していないもの
は竣工を先送りにできれば、赤字幅を縮小できる。― 造船所にとっては、こうした動きが常態化すれば、それこそ建
造計画や工程にも深刻な影響が出てくる。契約内ならともかく、大幅な延期については造船所によって対応が分かれ
るだろう。― 用船先が確定していない発注残を対象に、船種変更の動きも活発化している。ケープサイズ・バルカー
を中心にパナマックスやハンディマックスでもタンカーやプロダクト船に変更する動きが続出している。― バルカーの
ほかには、韓国造船所に発注されているLNG船をVLCC2隻に変更したケースもある。リグなどの海洋関連でも船種変更
が表面化しており、船種変更の動きは今後もまだまだ出てきそうだ。― このほか懸念されているのがマーケットクレ
ームだ。造船所の建造船に対して仕様と違うといったクレームを付けて船の引き渡しを拒んだり、それこそ引き渡しま
での時間稼ぎに使ったりするものだ。日本の造船所でもかつてマーケットクレームの対応に追われた。― ほとんどの
ケースが取るに足らないものか、全く問題のないもので、単に引き渡しを拒む目的のものがほとんどのようだ。― 今
後このような状況が出てくれば、造船所だけではやはり対応が難しい面もある。造船所も極力リスクの少ない客先と
取引をしているが、今回の発注ブームでは、初取引や商社が間に入っていない案件もある。営業担当者からすれば、新
規の商談はなかなかない上に、こうした案件への対応などで悩みの種は尽きない。≪アフラ型で営業活発化≫司会
バルカーの新造商談が停止する一方、タンカーは引き合いも多いようだが。― 確かに、今年1-3月に表面化した成約
を船種別にみても、隻数ベースでタンカーがバルカーを上回り圧倒的に多かった。タンカーの成約がバルカーを圧倒的
に上回るのは極めて異例のことだろう。また、2万TEU型のメガコンテナ船の商談も引き続き盛り上がっている。― タ
ンカーも“好調”と呼べるほどではないと思うが、パルカーがこのような状況なので、アフラマックスのデザインを持つ
造船所はタンカーの営業を積極的に展開している。国内で昨年から今年にかけて受注しているのが住友重機械と名村
造船所。さらに常石造船がアフラマックスの営業を再開したようだ。― 常石は近年はほとんどがバルカーだけど、か
つてはアフラマックスの建造実績も多かったからね。ただ、アフラマックスをメーンで連続建造していたのは今治造船に
売却した多度津工場だった。― 沼隈の本社でも建造実績はあるから、おそらく今回は本社での建造を視野に入れて
いるのだろう。― 3社以外の日本の造船所の動きはどうなのだろう。アフラマックスといえば、かつては多くの造船所
が建造していた船種だから、他の造船所が営業を再開してもおかしくはない。― 名村グループの佐世保重工業は、
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統合前からアフラの新しいデザインを持っていたし、ここ最近は中型船型を中心に建造していたから、建造する可能性
もあると思う。ただ、それ以外の造船所は今のところ話を聞かない。ジャパンマリンユナイテッド(JMU)も、内航2次輸送
向けのアフラマックスの建造実績はここ数年でもあるけど、12万重量㌧超のやや特殊な船型・仕様で、コンベンショナル
な船型の受注はない。― ただ、JMUの三島社長は年頭会見の際、「VLCC以外のタンカーも含めて、常にマーケテイン
グは行っている」と発言しており、今後参入する動きがないとは言えない。今治造船や三井造船、サノヤス造船にも建
造実績はある。― とはいえ、アフラマックスの営業を再開するとなると、デザインの見直しも必要になる。― 住重は
もちろん名村も着々と船型の開発を進めていた。それぞれ船型に違いもある。住重は新船型の11万2,000重量㌧型、名
村は11万5,000重量㌧型、常石は10万5,000重量㌧型だ。住重の新船型は寸法を抑えながら、11万超の載貨重量㌧を確
保した船型で、汎用性が高く、船主の評判も良いと聞く。― アフラマックスの新造需要はもはや2000年代前半以前の
ようなボリュームゾーンではなく、顧客もほとんどが海外向け。引き合いは活発だが、そう簡単に営業再開というわけ
にもいかないだろう。司会 VLCCの商談はどうか。― バルカ一に比べれば引き合いはあるものの、年初に比べれば
商談もスローダウンしてしまったようだ。― 国内造船所のメーンターゲットとなる邦船社向けのリプレース案件もある
が、商談はそれほど急ピッチでは進んでいない。― となると、新共通構造規則(調和化船体構造規則、H-CSR)に対応
した船型が商談の対象になるのだろうか。― そうなるだろう。国内でも既に規制対応型の開発にめどをつけている
造船所もあるが、商談に参加できる造船所は限定的だ。― 日本の造船所はやはりバルカー主体で、バルカーが盛り
上がってこなければ新造船市場は活性化しないね。
◆新造商談/海外向けアフラ引き合い続く、国内はVLCC焦点 海外からのアフラマックスタンカーの新造引き合いが
続いている。タンカー市況が底堅く、投資環境が整っているため、燃費・環境性能に優れたエコシップにリプレース(代
替)している模様。日本国内関連の原油船の新造引き合いは、VLCC(大型原油タンカー)が引き続き軸となっている。2
万TEUの超大型コンテナ船の新造発注が加速しそうなムードとなり、韓国と日本の造船所を中心に船台確定が進みそ
うな中、タンカーの新造発注がどこまで盛り上がるのか新造船市場関係者は注目している。マーケット筋によると、海
外船主によるアフラマックスタンカーの新造引き合いは引き続き堅調。近く具体的な成約も出る見通し。アフラマックス
の足元の新造船価レベルは5,350万㌦。バルカーの新造発注が世界的にほぼ止まっている影響により、新造船価相場
はタンカーも全般的に弱含み横ばい基調。ただし、為替の円安傾向により、日本の建造ヤードにとっては韓国勢に比べ
受注に踏み切りやすい環境となっている。昨年来、アフラマックスの新造船受注が表面化しているのは、住友重機械工
業と名村造船所。これに建造実績のあるジャパンマリンユナイテッド(JMU)、今治造船、常石造船がどう絡んでくるのか
注目される。一方、日本国内の原油船新造商談は、日本のオイル・ロードの中心船型であるVLCCの引き合いが水面下で
行われている模様。最近表面化した国内のVLCC新造発注は、明治海運がJMUに発注した2隻(日本郵船用船、2017年8
月、18年後半竣工予定)。足元の新造船マーケットは、原油タンカーに加え、超大型コンテナ船の新造発注も活発。最近
では香港の00CLが2万1,100TEU型6隻プラス・オプション6隻を韓国のサムスン重工業に発注したのに加え、6日には仏C
MA-CGMが韓国の韓進重工業に2万600TEU型3隻を発注したことも表面化し、韓国勢が急速に船台を埋めている。
◆国内造船にも船種変更の要請/バルカーからタンカー、一部合意も ドライバルク市況の低迷長期化を受けて、日本の
造船所にも船主から契約済みのバルカーの新造船を他の船種に変更したいとの要請が寄せられている。工程に混乱が
生じない先物納期の受注船を対象に、友好船主の要望に柔軟に応じる造船所もおり、複数の造船所がバルカーからタ
ンカーなどへの変更で交渉を進めていたり、既に船種変更を決めた案件もある。ただ、資機材の発注が済んでいる期
近納期の案件には対応できないほか、船主と造船所が合意に至つても、ファイナンサーの了承を得られず断念するケ
ースもあるもようで、成立の条件は限られているようだ。今年に入り、海外の造船所では海外船主による船種変更が数
多く表面化しているが、国内の造船所でも先物納期のバルカーを対象に船種変更の交渉を進めていた。関係筋による
と、国内でも複数の造船所が海外船主と船種変更の協議を進めており、既に船種変更をまとめた造船所もある。対象
となったのは、ハンディマックスやパナマックスなどの中型バルカーで、船主と造船所はバルカ一に比べて発注が積み
上がっていないタンカーなどへの船種変更を進めている。国内の造船所も工程に支障が出ず、資機材の発注が済んで
いない先物の納期の新造船については、友好船主との関係を重視し、船種変更に協力する姿勢がある。変更に際して
は「採算が合うことが大前提」(国内造船所関係者)で、船価面での調整も必要になるが、変更に伴うコストや船価の増
額分は船主が原則負担しており、必ずしもデメリットばかりではないようだ。ただ、既に資機材の発注が済んでいたり、
起工しているケースでは契約変更には物理的に応じることができない。交渉の結果、納期などがネックで合意に至らな
かつたものもある。船種変更はファイナンサーとの了承も必要になる。船主と造船所が合意に至っても、金融機関の了
承が得られず、断念するケースもあるという。外銀で一般的なアセット・ファイナンスは船の資産価値に着目して融資す
る。金融機関のスタンスや船主の信用力などにもよるが、資産そのものが変更になれば、ファイナンスの前提が根底か
ら変わってしまうことになり、金融機関が難色を示すこともあるようだ。さらに船種変更に伴って船価が高くなる場合
には、追加融資の必要もあり、より一層ハードルが高くなる。また、造船所としても、友好船主からの要請に柔軟に対応
する方針とはいえ、資機材の発注が済んでおらず、工程に支障がでない先物に限定すると対応できる案件は多くな
い。線表を先まで延ばしていることが大前提になる。加えて船種の変更先となる船種のデザインを造船所が持ってお
り、さらにバルカーとの船価がある程度見合う船種となると、「条件を満たせる案件は限定的だろう」(国内造船関係
者)という。市況低迷を背景に海外船主が契約済みの新造船を船種変更する動きが今年に入ってから活発になってお
り、海外造船所では用船先の確定していないケープサイズ・バルカーをタンカーやプロダクト船に変更したことが数多
く表面化している。ただ、造船所はキャンセルに比べて引き受ける余地があるとはいえ、納期面などを考慮すると国内
造船所での船種変更の動きは今後限定的との見方もある。
◆救難艦は三井/救難艇は川重が受注 ≪防衛省の14年度艦艇発注≫防衛省が2014年度予算で新造整備する艦艇
の発注先が出そろった。新たに整備する潜水艦救難艦(ASR)は、三井造船が受注。また、同艦に搭載する深海救難艇(D
SRV)は川崎重工業が受注した。三井造船が受注したのは、潜水艦の事故時に乗員救出を行う5,600㌧型潜水艦救難
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艦。“ちよだ”の後継艦で、大規模災害時には医療支援・被災者支援なども行う新型艦となる。このほかの新造艦では、
汎用護衛艦(DD)の2番艦は三菱重工業、2,900㌧型“そうりゆう”型潜水艦(SS)の10番艦は川崎重工、FRP製690㌧型掃
海艦(MSO)の2番艦はジャパンマリンユナイテッド(JMU)がそれぞれ受注した。
◆バルカ―建造造船所/新造船受注正念場 ≪18年後半納期焦点≫国内のバルカー建造造船所が新造船受注で正
念場を迎える。ほとんどの建造ヤードの船台は2018年前半までほぼ埋まっているものの、ドライ市況暴落・底ばいにより
後続の新造商談が皆無の状況となっており、18年後半の船台をいかに埋めるか、建造ヤード各社が決断を迫られるこ
とになりそう。7月1日以降の契約船には新たな国際ルール「H-CSR(調和共通構造規則)」が適用されるため、現在のデ
ザインで新造船を受注するには5-6月が最大の正念場となる。「引き合いがまったくない状況で、18年後半の船台をど
う埋めるか、頭の痛い状況が続いている」国内のバルカー建造ヤードの新造船営業関係者の間からは、異口同菖にそ
んな声が漏れてくる。ドライ市況低迷は当面続くとの見通しが支配的な中、新造船マーケットではバルカーが「魚が泳
いでいない」(営業関係者)状況となっている。一方、国内のバルカー建造ヤード各社は、18年前半までは船台をほぼ確
定しているものの、18年後半にはまだ空きがある。大型ドックは、タンカーや超大型コンテナ船(ULCS)で18年後半が埋
まる勢い。最大の懸案はバルカー建造ドックをどう埋めるか。海運子会社を擁する造船所は、その両社の間で6月まで
に建造契約を結ぶことができるため、7月のH-CSR適用を意識する必要はなさそう。焦点は、その他のバルカー建造ヤ
ードとなる。そうした造船所の中には、「新造船手持ち3年」を目安として掲げる造船所が多い。その目安の場合、18年後
半の船台を埋めるのは、15年後半でも問題はないが、バルカーの新造引き合いが低調なうえ、新ルールの適用も重な
る。18年後半の船台を埋める正念場は、実質的にこの5-6月の2カ月間となる。受注に踏み切るかどうかをめぐっては、
為替の円安傾向が造船各社の背中を押す最大の要因となりそうだ。
◆国内造船、残る17年船台が焦点 ≪市況低迷で規制前駆け込みトーンダウン≫バルカーをはじめとした新造商談が
低迷する中、17年船台を確定していない造船所は頭を悩ませている。多くの造船所関係者が今年7月から適用される
新規制を見越した駆け込みを想定していたが、バルカーの用船市況の長期低迷により急激にトーンダウンしている。駆
け込みが不発に終わり、商談再開が先送りになれば、工場によっては今年の後半に手持ち工事が2年を割り込むことに
なる。2013年-14年の大量受注により、線表を急ピッチで進めてきた日本の造船所。線表を先行させていたオーナー系
の専業造船所のほか、総合重工系の造船所もバルカ一に加えLNG船やメガコンテナ船、海洋といった大型案件を受注し
ており、既に営業の中心は18年以降の船台に移りつつある。ただ、一部の専業や総合重工系は17年後半の船台をまだ
確定していない。バルクを建造する総合重工系は工場ごとの線表にばらつきや間隙があり、大型船を建造するドックの
線表を18-19年に伸ばす一方、中小型船を中心に建造する工場の17年船台には余裕がある。足元の新造船市場は、17年
船台を残していたヤードにとっては誤算だった。「バルカーは安値を提示してもなかなか受注できない。これほどまで
の状況は想定していなかった」(市場関係者)。専業はもちろん総合重工系もパナマックスやハンディマックスなどの中
型バルカーを中心に残りの17年船台を埋めていく方針だったが、昨年後半から新造商談は沈静化。国内外の造船所と
も受注できたバルカーの案件は少ない。ここにきて大きな誤算の一つとなっているのが、市況低迷に伴って今年6月末
までの駆け込み発注が不発に終わる可能性が強くなっていることだ。今年7月から適用される国際船級協会連合(IAC
S)の調和化船体構造規則(H-CSR)前の駆け込みに多くの造船所関係者が期待を寄せていたが、急激にトーンダウンし
てしまった。「契約書のネゴなど受注までに要する期間を考えれば、春までに商談を始めていないと6月末までの契約
は厳しくなる。ただ、今のところ商談に動きはない」(国内造船営業担当者)。H-CSRは、コスト面など規制でのインパクト
が騒音規制以上ともいわれ、手持ち工事を確保していた国内の造船所の多くが、規制適用による建造コストの増加分
を船価に上乗せしていく考えで、規制適用前の発注を積極的に提案してきた。船主もある程度規制を見据えながらリ
プレース分などの発注を計画していたようだ。ところが、状況が一変して「以前から進めていた案件でもすぐに契約と
いう雰囲気ではなくなっている」「円安を受けて日本の造船所への値下げ圧力も強く、商談を進めづらい」(国内造船
営業担当者)という。新造船市場の分岐点となった昨年6月の段階では、船社も造船所もこれほどの用船市況の低迷は
想定外だった。騒音規制の駆け込みも発注の大前提となったのは、建造コストの増加による船価の上昇で、市況上昇の
可能性を想定したものだった。全くないとは言い切れないが、昨年の船内騒音規制前のような駆け込みをH-CSRでは
期待できなそうだ。今後受注が期待できる要因の一つに来年1月の起工船から適用されるNOx3次規制前の駆け込みが
指摘されている。NOxについては、造船所だけでなく、船社や舶用メーカーの動向とも深く関連しており、駆け込みを依
然として見込む声も多いが、用船市況低迷下での発注を疑問視する見方もある。商談再開の兆しが見えてこなけれ
ば、造船所としても今年後半には手持ち工事を確保するために何らかの対応を模索する必要も出てきそうだ。
◆人手不足が促す「造船技術者」像の変身 国内造船業では、数年前までの仕事不足が一転して、深刻な人手不足
問題に直面している。生産現場の技能者をはじめ、全方位で人手が足りない状況だが、深刻なのは設計・開発などを担
う造船技術者だ。造船業界で技術競争が激しくなる中、技術者不足は「日本造船業の地盤沈下」を招きかねない。打開
を図る中で、造船の設計・開発の現場は、大きく変わる可能性がある。≪不況下でも多忙≫リーマン・ショックから7年。日
本の造船所の多くが、需要低迷の冬の時代をしのぐために工場の操業を落とし、会社全体の活動をピークダウンしてい
る中で、これと対照的にずっとフル稼働の状態が続いているのが、設計現場だ。不況下でも設計が多忙を極めている
理由の一つ目は、不況対策のカギである製品多角化だ。仕事量を確保するために、それまで手掛けていなかった船種
船型にも手を広げて受注を図った造船所があった。当然、設計陣は初めて手掛ける船に苦労するケースが出た。また、
標準船型ではなく特殊船に進出した造船所では、それまでの一般商船よりも1隻にかかる設計負荷が高くなった。設計
繁忙の理由、二つ目は、省エネ戦略だ。数少ない新造商談のカギを握るのが省エネ性能なだけに、各社は既存船型の
燃費性能を高めるための開発を急いだ。船型の全面的な見直しに加えて、各種省エネ機器の搭載に当たって検討項目
も増えている。造船所間の開発競争が激しくなり、次々と新バージョンを開発する必要に迫られ、技術陣は新規開発に
走り続けている。造船ブーム期のように、標準船型を先物納期で連続大量建造する時代が終わり、少ない工事量に対し
て設計の手間を掛けなければいけない時代が到来した。本当の意味での、造船所の技術競争が始まったといえる。そし
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て一昨年から国内造船所が大量の受注を果たし、いよいよ工場の操業も回復基調に戻りつつあるが、技術者不足はま
すます深刻化している。少なくともこの状況は当面続きそうだ。さらなる設計不足を招くといわれている要因が、新ル
ールだ。まず、今年7月1日以降に契約するバルカーとタンカーの新造船には、国際船級協会連合(IACS)の新ルールとし
て新共通構造規則(調和化船体構造規則、H-CSR)が摘用される、これが、これが設計逼迫に拍車をかけることが懸念
されている。同規則では、有限要素解析(FEM)による強度の解析対象が、従来の船体中央平行部だけでなく、3次元曲
面を含む船首尾部に拡大する。強度評価の作業が複雑なものになり、造船業の上硫に当たる計画設計や構造設計の作
業工数が膨大になることが懸念されている。そもそも、造船各社は主力のバルカー、タンカーのデザインをこの規則対
応型に全て作り直す必要に迫られている。さらに、来年1月起工船からIMO(国際海事機関)の窒素酸化物(NOx)3次規制
も適応されることから、これもにらんだ新船型への切り替えが求められている。昨年発効した騒音規制への対策も、船
種によってはいまだ確立していない。設計の仕事量はさらに高まりそうだここれまで社内でのリソースで賄えない仕
事は、設計専業会社への外注などで補っていた。だが、各社が一斉に規制対応型船型の開発を進めている中で設計会
社への外注を増やしている。これに加えて、三菱重工業の大型客船をはじめとした大型プロジェクトで外注需要が一段
と増え、足元では新規の外注確保は厳しい状況。「昔からの友人が運営している設計会社にお願いしたが“もう追加で
仕事を入れるのはとても無理”と断られた」(造船所経営者)といった状況にもなっている。≪設計の地盤沈下≫技術者
不足は、工程にも影響を及ばし始めている。設計人員が十分でない造船所では設計負荷の急激な増大に対応しきれ
ず、徐々に設計が遅れるケースが出ている。「これまで標準船型の連続建造が長らく続いていたため、新たな設計に対
応できていない」(造船技術者)という。設計会社の逼迫で、外注による挽回も困難となっている。このため出図が遅
れ、生産スケジュールがずれ込む例が一部に出ているようだ。ここに協力工の不足が加わり、納期順守がギリギリの状
況になってきている、といわれる。問題は、造船所の設計が多忙を極めているという現象が、一時的な工程遅れにとど
まらず、この先、日本の技術競争力の弱体化につながる構造的な問題にならないか、ということだ。そもそも多忙の背
景にあるのは、これまで日本の造船業を支えていた技術者の高齢化や引退が進み、造船の設計リソースが日本全体で
減っていることが原因だ。数字を確認しよう。以前本誌でも紹介したが、国土交通省が日本の造船業の就労者数を調
査している。これによると、事務・技術職の人数は2000年には2万人を超えていたが、直近の13-14年時点では1万3,000
人台になっている(グラフ参照)。13年前に比べておよそ3割減った計算だ。新造船の建造量は当時に比べれば増えて
いるから、1隻の船にかける設計の人数は減っているといえる。ただ、もう一方で気になるデータもある。同じ統計では、
01年から12年の12年間でみると、事務・技術職は1万9,290人から1万5,239人に減っている。だが別の統計では、同期間
に主要造船14社の技術者数は4,950人から6,400人に増加しているというデータもある。ここから推測されるのは、中
小造船所の技術者が大きく減少しているということだ。確かに、「中小造船所では、技術者不足が深刻で新規開発もま
まならない造船所も出てきている」(造船設計関係者)という意見はよく耳にする。もともと中小規模の造船所の多く
は、設計者をそれほどたくさん抱えていない。ほぼ全てを外注に丸投げ、という造船所もある。だが、設計外注先も、技
術者の高齢化と不足という同じ問題を抱えており、規模の小さい設計会社では、後継者がいないために廃業というケ
ースも出てきている。「少し先を考えると恐ろしくなる。仕事はあるのに船を造れないという事態が中小規模の造船所
の中では起こるのではないか」(造船所経営者)。そんな懸念の声すら漏れる。大手の造船所でも、決して状況は明るく
ない。新船型の開発、生産技術の革新、船主との厳しい技術交渉、緻密な生産計画-。技術力を強めていかなければ、
こうした日本の強みが棄損されてしまう。危機感は以前から業界全体として共有していた。ジャパンマリンユナイテッド
(JMU)の統合や、名村造船所と佐世保重工業のグループ化という昨今の造船再編が、技術陣の強化を第一の目的にし
ていたことは繰り返すまでもない。また、規模の大きい造船所は早い段階で技術者の新卒採用を拡大し、ベテランから
若手への技術の伝承を制度として進めてきた。「円滑な伝承により若手が育ってきている」という造船所もいる。ここ
数年、設計への負荷が高まる過程で、それまではっきりと見えなかった造船所の設計対応力の差が顕在化したといわ
れているが、これまでの採用や技術伝承などの差が出てきたともいえる。ただこの一方では、現状で設計の仕事をこ
なせている造船所でも、ノウハウが本当にしっかり継承されているかの懸念は残る。近年の日本造船所の赤字案件の
多くは、受注時の船価が安かったというだけではなく「経験不足や、技術・ノウハウの伝承がまだ完全にできていない
ことで技術力が低下していたことに原因がある」との分析がある。技術者の責任というより「マネジメントが自社の技
術力を正確に見極め切れていない」(造船所幹部)ことが原因という。≪経営者への育成≫造船所は技術者不足にいか
に対処するか。まずは既存リソースを有効に活用することに力を入れようとしている。1,000人超の技術者を持っJMU。
三島愼次郎社長は「技術者は他社より豊富だが、これだけの船種の開発・設計に取り組むには不足している」と明かす。
「今後は人員を単に増やすのではなく、本社設計と各事業所設計の機能を明確にしながら、人材をどのように有機的
に展開していくかが課題。会社全体として考える」。造船所では工場と本社、子会社でそれぞれ技術者がいる。リソース
が分散している側面もあるため、有効活用の余地がある、との見方がある。今治造船が12年に丸亀事業本部に設計を
集約し、有効活用を図った例もある。ある中堅造船所では最近、関連会社を解散して、技術者と技能工を本社で吸収し
た。「必ずしも人材確保だけが目的ではなかったが、主力の造船に事業を集中させるという点で、リソースを活用する
狙いがあった」と同社幹部は語る。さらに、技術者のレベルアップを図る育成策も大きなカギとなる。社内での研修とと
もに、業界全体としての研修制度も従来からある。さらに、近年は造船所が外部の会社や機関などと共同研究する機会
も増えているが、「共同研究は単に成果を求めるだけでなく、若手の技術者に経験を積ませる目的もある。この視点で
人選を行っている」(造船所緯営者)という会社もある。また、技術者育成で近年でのポイントになるのが、経営意識を
持たせるための取り組みだ。技術者不足は、経営幹部候補の層が薄くなることも意味する。とりわけ造船業界では、70
年代の大不況時に人員整理を行い、採用も絞り込んだ影響で、従業員の世代構成がいびつになっている。最も人数が
薄いのがいまの50歳代。これからマネジメントの中核となるべき世代だ。「正直なところ当社は層が薄く、選択肢がな
い」とある造船所幹部は語る。造船所によっては役員などへの登用年齢が一気に若返る会社も出てきそうだ。これま
で人材供給源のような役割を担っていた総合重工造船所でも、いまは外に出す余裕がなくなっている。こうした点も
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背景に、社内研修制度の中で、早い段階からマネジメント意識を持たせるための取り組みが最近の大きな流れだ。もと
もと総合重工系は全社的な研修制度を設けていたが、近年は中堅の専業造船所も独自の研修を充実し始めていた。ツ
ネイシホールディングスは、経営幹部や幹部候補らを対象とした経営コンサルタントによる経営学研修をはじめ、以前か
ら人材育成に積極的だ。サノヤスも近年は研修に力を入れており、09年度からは全管理職を対象としたマネジメント研
修などを実施。昨年春からは部長級を中心に「経営革新プロジェクト」を立ち上げ、経営視点で会社の中長期戦略を議
論させ、さらに30-40歳代の主任・課長級が参加する「サノヤスマネジメントスクール」も新設した。≪技術系の採用増加
≫技術者不足の解決のため、新卒採用も増加している。ベテラン技術者の退職に備えるとともに、技術者の陣容を拡充
する方向にあるためだ。既に15年度(今年4月入社)の採用数を大きく増やした造船所があるが、16年度はさらにこれを
上回る見通し。事業環境は先行き不透明感が強まっているが、採用は絞らず、むしろ強化している格好だ。海洋などへ
の事業転換をを進めている三井造船。「事業ポートフォリオ転換を人的リソースで支える必要があるため、新卒採用を
増やす」と福田典久船舶・艦艇事業本部長は話す。15年度の技術者の新卒採用数を従来比2倍にした。「16年度はさらに
増やす。ベテランの引退を補いつつ、増強を行う」(福田本部長)。川崎重工やJMUなども高水準の採用を予定してい
る。専業造船所も状況は同じだ。佐世保重工をグループ化した名村造船所をはじめ、やはり採用数は以前に比べて増
やしている。質的に変化しているのが中途採用だ。人材確保の打ち手としての中途採用を従来よりも拡大する動きが
出ており、その幅がかなり広がっている。これまで造船業界での中途採用といえば、幅広く公募をかける以外に、専業
ヤードや舶用メーカーが友好関係にある総合重工からベテラン造船技術者を招いたり、総合商社などから営業幹部と
して招く例など、国内の海事クラスター内での「大手から中手へ」という一方向的な動きが中心だった。ただ、こうした
形が崩れてきている。例えば、国内大手電機メーカーの人員削減策で退職した技術者など、異業種のエンジニアをタ
ーゲットにして中途採用をかける動きがあるようだ。従来も異業種からの中途採用がなかったわけではないが、雇用情
勢の変化や、技術テーマの多様化などを背景に、これまで以上に積極的に異業種採用を働きかける例があるという。
採用の範囲も、従来より広域化しており、本社・工場地域だけでなく全国的に採用を募る例も出ているという。産業間で
の人材獲得競争が激しいため、中途採用も既存のソースだけでは十分確保できないという背景もあるが、それだけで
はない。例えば「造船所として技術の多様性が必要になっている」(造船所幹部)という面もあるという。造船所の技術
者といえば工学系が中心。大学の造船学科や機械学科、電気系などの出身者で構成されている。「だが、環境規制や
全く新しい技術の登場などを考えると、もっと幅広い技術的素養が必要かもしれない。例えば近年は化学の知識も重
要になっている」といった背景があるようだ。このほか中途採用では、マネジメントへの登用含みで管理者クラスを採
用するような例も出ている。さらに、一部では造船所同士での移動も増えているほか、過去にはなかった「中手から大
手」という動きも出ている。総合重工各社をはじめ、日本の造船所は、さまざまな意味で人材の「自前主義」が強かっ
た。だが、これが崩れているようだ。こうなれば、次の可能性としてあるのが、海外からの採用。韓国や中国では毎年、
大学の造船学科で大量の学生が卒業している。造船所の経営不振でリストラを余儀なくされた熟練技術者もいる。「彼
らを使いこなすには、会社としても受け入れ態勢を整備する必要があるだろうが、優秀な人材を海外に求めることを
真剣に考える必要がある」(造船所経営者)。海洋開発をはじめ、海外の方が技術的に先行している分野も出てきた。こ
うした知見を生かすための人材戦略も検討され始めた。≪海外拠点の役割拡大≫「海外活用」は一つの打ち手でもあ
る。実際、海外で運営している船舶設計子会社や設計事務所の活用を高める動きがある。日本造船所では、中国やフィ
リピン、ベトナムなどに設計の事務所や子会社を持ち、船舶設計の中でも労力のかかる解析業務や詳細設計などを行
っている。国内の設計作業者の不足や、新規則対応などで船舶設計の作業が増大していることを背景に、こうしたi毎
外の力をこれまで以上に活用する方向にある。造船事業の毎外比率を高めている常石造船と川崎重工は、設計面でも
海外活用を広げ、設計作業の現地化を進めている。労力のかかる作業を海外に移したり、これまで海外支援にまわして
いた日本国内の技術リソースを有効活用するといった狙いがある。常石造船は、中国とフィリピンに大規模な設計子会
社を持っ。このうち中国の上海市と舟山市に拠点を持つ常石(上海)船舶設計は、従業員が約230人おり、グループが建
造する船舶の解析作業や詳細・生産設計などを行っている。またフィリピン・セブに持っ設計会社ツネイシ・テクニカル・
サービス(TTSP)は、従業員が300人強。詳細設計・ヤード設計など下流部門の設計を行う。いずれも陣容拡大などを検
討。「TTSP初めて社長に現地スタッフを抜擢した。心配する意見もあったが、思い切って実施した」(常石造船の河野健
二社長)など現地化も進めている。中国で合弁造船事業を行っている川崎重工業も、現地に設計部隊を持つ。村上彰男
常務は「以前は中国建造船も日本で基本設計まで行っていたが、現地の設計技術者の能力も高まってきたので、いま
はバルカーのような大宗船は引き合い段階から現地の設計が対応する形にした」と説明する。設計のローカル化が進
んでいる。生産拠点を海外に持たない造船所も、設計では海外を活用している。三井造船はフィリピン・セブ島で設計子
会社DASHエンジニアリングを持つ。プラント系の設計が中心だが、造船関連でも設計者80人を持つ。以前は玉野事業
所で建造する船の詳細設計で活用していたが、数年前から千車や子会社、さらに基本設計の解析業務でも活用する形
としている。複数の造船所が設計拠点を構えているのがベトナム。やはり拡充の動きにあるようだ。大島造船所はハノ
イに設計子会社ダイゾー・テックを持つ。06年の設立以来、設計支援業務を手掛けており、現状では30人体制となる
が、これを増員・拡大することを検討している。ベトナムにはこのほか、JMUがハイフォンに持つ設計子会社IEMVや、新来
島どっくが三井物産らと合弁で運営している設計技術者養成会社VMSKなどがあるが、今後の活用拡大などが見込ま
れている。自社の関連会社だけではない。新規の外注先としても海外を活用しようという動きはある。中国や韓国で
は、商船建造量が減少していることもあり、外注業者の仕事が不足している面もある。かつてに比べて腕も上がってい
る。こうした点に目を向け、「釜山や上海などで新規の外注先を探すことも視野に入れる」(造船所関係者)といった検
討が進んでいるようだ。外注先としては、欧州もターゲットだ。最近はオフショア構造物や客船などのプロジェクトで、東
欧をはじめとした欧州の設計を活用する造船所も増えてきた。この過程で、今後は商船の仕事でも欧州の設計会社を
利用する考えが出ている。≪リソースの有効活用≫一般的に、少子高齢化に向けた人材解決策としては、女性、高齢者、
外国人の三つの柱が挙げられる。造船業でも、女性技術者の採用が増えているほか、ベテランが引き続き職場に残って
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サポートするケースも多い。ただ、本格的に活用の場を広げようとすれば、勤務体系など労働制度をもう一度整える必
要もありそうだ。検討課題はほかにも残されている。例えば、日本全体での技術リソースを有効活用するための、造船
所同士の連携だ。マリタイムイノベーションジャパン(MIJAC)は、造船所が研究開発を共同で行う場として設立されたも
のだが、こうした形で、造船所が設計・開発のさまざまなフェーズごとに連携する可能性はありそうだ。国土交通省が
昨年から実施している「造船業・海洋産業における人材確保・育成方策に関する検討会」の中では、技術者不足に悩む中
小造船所が共同出資で設計会社を設立するという構想も提示された。また、設計技術者の育成に、企業同士が協力す
る場面も増える必要があるかもしれない。そして次なる大きなテーマが、海洋開発の技術者育成。足元では原油価格
下落で海洋開発プロジェクトが止まっているが、将来的に日本として海洋開発産業を育成する方向性は変わっていな
い。ただ、海洋エンジニアをいかにして育てるかは、「学問体系から作り直す必要もある」(大和裕幸・東京大学副学長)。
産官学を挙げた人材育成の枠組み作りが、今後活発になっていく見通しだ。≪技能者不足、外国人でカバーできるか≫
「引き合いは戻ったが、人手が足りず、生産量が上がらない」。瀬戸内の船体ブロック加工外注業者は昨年来、そう口を
そろえる。「仕事不足から人手不足」が如実に現れたのが、造船の協力工や加工外注の分野だ。人手不足にはやむを得
ない事情もある。国内造船各社は金融危機後に操業を落とし、まずは外注工事を削減した。協力会社や加工外注業者
は定年を迎えた熟練工を再雇用しなかったり、外国人研修生の受け入れを止めるなどの対応を取り、人員を減らしてき
た。相当数の人員が東北復興事業や束京五輪関連での首都圏の公共工事などにも流れた。一昨年から、造船所の大量
受注に伴い仕事が急増したものの、一度手放した熟練工はなかなか戻らない。このため造船所間での協力工や外注の
取り合いは激しくなっており、協力工比率の高い中小造船所の中には、一部で工程混乱も発生しているようだ。造船業
の人手不足は、2020年の東京五輪の開催前まで常態化する恐れも出てきた。造船所は徐々に操業を引き上げる前提
で受注しているケースもあるだけに、人手が足りず操業が思うように上げられない場合、納期順守が困難になる懸念
もあった。そこで政府が打った手が、現行の外国人技能実習制度とは別に、技能実習を修了した外国人材を造船所が
追加で受け入れられるようにする緊急措置だ。昨年6月に閣議決定され、今年4月からは、技能実習を修了した外国人
が実習後に最大2年、いったん帰国して1年以上が経っ場合は最大3年間、特定活動として在留が可能となった。研修を
修了した人材は、ある程度のスキルを身に付けているため、即戦力としての活用が期待できる。制度は2020年までの時
限措置ではあるが、多くの造船所が積極的に活用することを予定しているようだ。課題もある。人手の点で不足をカバ
ーできたとしても、生産現場に外国人が増えることば、工場のあり方が変わることを意味する。造船所によっては百人
単位の外国人が働く可能性もある。新たな「人材」を活用するためには、こうした生産現場を管理できる新しい人材像
も必要になってきそうだ。
◎新造船
◆新造船価/弱含み基調続く、パナマックスBCは20万㌦安 新造船マーケットは、バルカー、タンカーともに弱含み基
調が続いている。このうちバルカーは、パナマックスが直近と比べ20万㌦下落した。新造船価が横ばい基調を維持して
いるのは、LNG(液化天然ガス)船と超大型コンテナ船(ULCS)だけとなっている。マーケット筋によると、バルカーの足
元の新造船価レベルは、ケープサイズ、ハンディマックス、ハンディサイズが弱含み横ばい。ケープサイズは5,200万㌦
(18万重量㌧型)、ハンディマックスは2,600万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,200万㌦(3万5,000重量㌧
型)。パナマックスは、2,780万㌦(7万6,000重量㌧型)と20万㌦下落した。タンカーの足元の新造船価レベルは、全船型
で若干ながら弱含み横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は9,650万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは6,500万㌦(15
万7,000重量㌧型)、アフラマックスは5,350万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)
タンカーは3,650万㌦(5万1,000重量㌧型)となっている。ガス船は、VLGC(大型LPG〈液化石油ガス〉船)が弱含み横ば
いの7,750万㌦(8万2,000立方㍍型)。LNG船は、横ばいの2億㌦を維持している。コンテナ船は、1万3,000TEU型ULCSが1
億1,600万㌦と横ばいで、小じっかりした展開。自動車船(PCTC)は、6,000台積みが6,000万㌦と横ばいながら、下げ圧
力がやや強まっている。
◆新造船価/バルカー・タンカー横ばい維持 新造船価相場が、弱含みながら横ばいを維持している。足元の新造船価
レベルは、大型バルカーのケープサイズが5,200万㌦、VLCC(大型原油タンカー)が9,650万㌦。2万TEUの超大型コンテ
ナ船(ULCS)やタンカーの新造商談が活発なことを反映し、新造船価相場は弱含みながら下げ渋る展開が続いている。
マーケット筋によると、足元のバルカーの新造船価レベルは、ケーブサイズ5,200万㌦(18万重量㌧型)、パナマックス2,
780万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックス2,600万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズ2,200万㌦(3万5,000
重量㌧型)。タンカーは、VLCC9,650万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックス6,500万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマッ
クス5,350万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカー3,650万㌦(5万1,000重
量㌧型)。ガス船は、VLGC(大型LPG〈液化石油ガス〉船)が弱含み横ばいの7,750万㌦(8万2,000立方㍍型)、LNG(液化
天然ガス)船は横ばいの2億㌦(16万立方㍍型)。コンテナ船は、1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、自動車船(PC
TC)は6,000台積みが弱含み横ばいの6,000万㌦。
◆新造船、バルカー小幅続落/全船型20-50万㌦安 新造船マーケットで、バルカーの新造船価レベルが小幅続落し
た。大型のケープサイズから小型のハンディサイズまで、全船型で直近と比べ20万-50万㌦下落。コンテナ船の新造引
き合い活発化が影響し、バルカーの新造船価は下げ渋る展開が続いていたが、約1カ月ぶりに値を下げた。水面下で進
む新造引き合いで、買い手の船主が優位に立っていることが主因とみられる。タンカーの新造船価レベルは、全船型で
若干弱含みながら横ばいで推移している。バルカーの足元の新造船価レベルは、ケープサイズが50万㌦安の5,150万
㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは50万㌦安の2,730万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは50万㌦安の2,550
万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは20万㌦安の2,180万㌦(3万5,000重量㌧型)を付けている。タンカーは全
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船型で横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は9,650万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは6,500万㌦(15万7,000重量㌧
型)、アフラマックスは5,350万㌦(11方5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,65
0万㌦(5万1,000重量㌧型)。ガス船はVLGC(大型LPG〈液化石油ガス〉船)が50万㌦安の7,700万㌦(8万2,000立方㍍
型)、LNG(液化天然ガス)船は横ばいの2億㌦(16万立方㍍型)。コンテナ船は1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、
自動車船(PCTC)は6,000台積みが弱含み横ばいの6,000万㌦。
◎中古船
◆中古船価/新造転売、中小型BC続落、タンカーは強含み横ばい 中古船マーケットで、中小型バルカーの新造リセー
ル(転売)価格が小幅続落した。直近と比べ中型バルカーのハンディマックスは50万㌦安、小型バルカーのハンディサイ
ズは100万㌦安となった。ドライ市況底ばいを受け、バルカーの中古船価相場は全般的に横ばいながら弱含み基調が続
いている。タンカーの中古船価は、全般的に強含み横ばい。マーケット筋によると、足元のバルカーの中古船価レベル
は、ケープサイズ、パナマックスは弱含み横ばい。ケープサイズは、新造リセール4,900万㌦、船齢5年物3,400万㌦、船
齢10年物2,200万㌦、船齢15年物1,300万㌦。パナマックスは、新造リセール2,850万㌦、船齢5年物1,700万㌦、船齢10年
物1,300万㌦、船齢15年物900万㌦を維持している。ハンディマックスは、新造リセールが50万㌦安の2,750万㌦、船齢5
年物、10年物、15年物は弱含み横ばいで、それぞれ1,600万㌦、1,100万㌦、700万㌦となっている。ハンディサイズは、新
造リセールが100万㌦安の2,150万㌦、船齢5年物、10年物、15年物は弱含み横ばいで、それぞれ1,350万㌦、950万㌦、6
00万㌦。タンカーの足元の中古船価レベルは、堅調な市況を映し、横ばいながら強含みで推移している。VLCC(大型原
油タンカー)は新造リセール1億500万㌦、船齢5年物8,100万㌦、船齢10年物5,200万㌦、船齢15年物3,100万㌦。スエズ
マックスは、新造リセール7,000万㌦、船齢5年物5,750万㌦、船齢10年物4,100万㌦。アフラマックスは、新造リセール5,60
0万㌦、船齢5年物4,500万㌦、船齢10年物3,000万㌦で推移している。
◆中古船価/大中型BC小幅続落、一部50~150万㌦安 中古船マーケットで大中型バルカーの中古船価が一部小幅
続落した。大型バルカーのケープサイズ、中型バルカーのパナマックス、ハンディマックスが50万~150万㌦下落した。一
方、タンカーの中古船価レベルは、タンカー市況が堅調なのを反映し、小じっかりした展開となっている。マーケット筋に
よると、バルカーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズは新造リセールが直近と比べ100万㌦安の4,800万㌦。船
齢5年物、船齢10年物は弱含み横ばいでそれぞれ3,400万㌦、2,200万㌦、船齢15年物は100万㌦安の1,200万㌦となっ
ている。パナマックスは、新造リセールが弱含み横ばいの2,850万㌦、船齢5年物は50万㌦安の1,650万㌦、船齢10年物
は弱含み横ばいの1,300万㌦、船齢15年物は150万㌦安の750万㌦。ハンディマックスは、新造リセール、船齢5年物、船齢
10年物はそれぞれ弱含み横ばぃの2,750万㌦、1,600万㌦、1,100万㌦、船齢15年物は50万㌦安の700万㌦。ハンディサイ
ズは全般的に弱含み横ばい。新造リセールは2,150万㌦、船齢5年物は1,350万㌦、船齢10年物は950万㌦、船齢15年物
は600万㌦を維持している。タンカーの足元の中古船価レベルは、横ばいながら若干強含み基調となってきた。VLCC
(大型原油タンカー)は、新造リセールが1億500万㌦、船齢5年物は8,100万㌦、船齢10年物は5,200万㌦、船齢15年物は
3,100万㌦。スエズマックスは、新造リセール7,000万㌦、船齢5年物5,750万㌦、船齢10年物4,100万㌦。アフラマックスは、
新道リセール5,600万㌦、船齢5年物4,500万㌦、船齢10年物3,000万㌦となっている。
◆鉄鉱石、値下がり一服/豪で生産抑制観測 鉄鋼原料となる鉄鉱石の価格下落が一服した。指標となるオーストラ
リア産のスポット(随時契約)価格は1㌧52-53㌦と、月初に比べ約13%高い。4月上旬にかけての急速な値下がりを受け
て豪の中堅資源会社であるアトラス・アイアンが生産を休止。資源国の増産ペースに一定の歯止めが掛かるとの観測か
ら相場が強含んだ。鉄鉱石価格ば4月初めに節目とみられた50㌦を割り込み、一時は約10年ぶりの安値となる46-47
㌦まで下落していた。「資源メジャーに比べ生産コストの高い中堅の生産会社は採算割れに陥るケースが増えている」
(商社)とされる。アトラス社の休止で生産会社の淘汰が始まるとの思惑が広がった。鉄鉱石価格は1年前の半値以下ま
で下がっており、値ごろ感から実需の買いが入りやすいとの指摘もある。ただ、リオ・ティントなどの資源メジャーは増産
を続ける方針で、供給過剰が解消に向かうとの声は少ない。「本格的に価格が反転するかは不透明」(大手証券アナリ
スト)との見方が多い。
◆デンマークなど6カ国が候補擁立 《IMO次期事務局長戦》今年いっぱいで関水康司事務局長が任期を満了するこ
とを受け、IMO(国際海事機関)の次期事務局長選が始まった。IMOは1日、3月末に締め切った立候補受付で6カ国が候補
者を擁立したと発表した。キプロス、フィリピン、ケニア、デンマーク、韓国、ロシアが立候補した。IMO理事国40カ国により
6月29日から7月3日に開かれる第114回理事会の選挙投票で、過半数を獲得した候補者が次期事務局長に選出される。
11月23日から12月2日に開かれる第29回総会での承認を受け来年1月から就任する。理事会が開催される6月末までが
実質的な選挙期間となる。その間、立候補者・擁立国はIMO加盟国への選挙運動を展開する。関水事務局長は日本人初
のIMO事務局長として2012年に就任。昨年、家族の健康上の理由から1期・4年の任期を満了して15年末で退任する考え
を表明していた。前任でギリシャ出身のE・ミトロプロス氏は11年まで2期・8年を務めた。
Ⅳ.世界・各国造船業の動向
◆厳しいSOx規制開始
≪規制逃れ懸念も混乱なし、一般海域に焦点移る≫排出規制海域(ECA)で船舶燃料の硫黄
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分の上限を0.1%にする厳しい硫黄酸化物(SOx)排出規制が今年から始まった。海運業界では一部の船舶が規制を逃
れて公平性が損なわれることが規制開始の1年程度前から懸念されていたが、これまでのところ問題は起こっていな
い。SOX排出規制の焦点は、2020年または25年に実施される予定の一般海域の0.5%規制に移りつつある。欧州のバ
ルト海や北海のほか、北米(米国とカナダ沿岸200海里内)、米国カリブ海のECAで燃料中の硫黄分0.1%規制が今年1月
1日から始まった。ECAでは05年5月19日から1.5%、10年7月1日から1.0%の規制が実施されているが、これが0.1%へと
大きく引き下げられた。0.1%の燃料はC重油に比べ1.5倍から2倍近くも高いことから、海運会社の経済圧迫要因になる
ことが心配されていたが、コスト増はサーチャージ導入によってある程度は吸収されたようだ。また、昨年後半以降は
燃料価格が下落した。このため、C重油を低硫黄燃料に切り替えた場合のコストアップの幅も、燃料高騰時に比べ圧縮さ
れた。規制を守らない船舶が欧州で続出し、規制を順守する船舶が競争上不利になることを、日本の海運業界は最も
懸念していた。ただ、規制開始から数カ月が経過し、規制の順守に関するトラブルは報告されていない。一部の国がPS
C(ポート・ステート・コントロール)による監視強化の必要性を強く主張し、欧州ではPSC当局のパリMOUなどで方針の統
一化を図り規制を周知する活動にも力を入れていることなどが奏功しているようだ。海運関係者は「ECAのSOx規制は
順調にスタートしたと受け止めている」などの認識を示している。EUは16年から、入港船の40%で検査を実施し、10-30
%の船舶では実際に船上で燃料をサンプリングすることも検討している。ECAのSOx規制に続いて、焦点は20年または
25年に予定される一般海域での0.5%規制に移りつつある。問題は燃料の供給が間に合うのかどうかと、規制をいつ
開始するのか。IMO(国際海事機関)は18年までに低硫黄燃料の需給などの市場動向を調査・検討(レビュー)し実施時期
を決める予定で、IMOはこのレビュー項目に関する検討に昨年10月から着手した。硫黄分が0.5%の燃料は軽油に相当
するが、規制は既存船を含む全ての船舶を対象としており、全世界で同燃料が使用されると、供給する製油所に巨額の
設備投資が必要になる。また、従来は原油の精製過程で最後に残る残渣油がC重油として船舶で使用されてきたが、そ
の残渣油の消費先がなくなる問題もある。海運業界は燃料価格の動向次第では低硫黄燃料の使用以外に、排ガス浄化
装置の設置やLNGへの燃料の切り替えも視野に入れている。EUはIMOの規制にかかわらず0.5%規制を域内で20年に実
施する方向だが、仮にIMOでも18年のレビューで20年からの規制開始が決定した場合、開始までの猶予は2年しかなく、
海運会社の準備が間に合わない可能性がある。海運業界やICS(国際海運会議所)は適用開始時期が早期に決定され
るようIMOに求めており、レビューの実施時期も前倒ししたい意向。IMOは昨年10月の第67回海洋環境保護委員会(MEPC
67)で電子メールなどの通信ベースの会合(コレスポンデンス・グループ)を設置し、レビューの対象項目に関する議論を
開始した。結果は今年5月のMEPC68に提出される見通しだ。ただ、IMOのレビューは燃料油の需給見通しが中心となり、
海運業界への影響に関する項目は中心にならない可能性も海運関係者は指摘する。ICSでは国際海運団体と連携して
燃料コストアップに伴う海上輸送への影響を中心に調査することも検討している。
◆中国船舶報、特約記事/14年中国造船・修繕・解撤・舶用実績 『中国船舶報・北京報道』中国税関総署によると、201
4年、わが国の船舶輸出額は前年比14.1%減の237.8億㌦(約2.8兆円)、輸入額は同37.1%減の12.5億㌦(約1,500億円)
だった。船舶輸出額は2009年以降、最低のレベルだ。輸出額は09年が283.6億㌦(約3.4兆円)、11年は過去最高の436.9
億㌦(約5.2兆円)に達した。その後の3年間、国際金融危機の影響が続いて輸出額の減少幅は年10%以上になり、13年
は25.3%減にまで落ち込んだ。14年の3大主流船型(バルカー・タンカー・コンテナ船)の輸出額は154.9億㌦(約1.8兆
円)で全体の6割を超えた。バルカーは81.2億㌦(約9,600億円)で34.1%を占め、前年比33.5%減。大型・超大型コンテ
ナ船は51.1億㌦(約6,000億円)で21.5%を占め、6,000TEU型以上は同144.6%増と激増した。そのほか浮体式・セミサ
ブ式ドリリング・生産海洋プラットフォームの輸出額は20.3億㌦(約2,400億円)で8.5%を占めた。わが国は14年、191カ
国・地域に船舶を輸出した。輸出額は、依然として最重要市場のアジアが140.5億㌦(約1.7兆円)で59.1%を占めた。欧
州は40.2億㌦(約4,700億円)と前年比24.2%増だった。同年、全土30省・区・直轄市が船舶を輸出した。輸出額が10億
㌦を超えたのは7地区。輸出額1位を保つ江蘇省は64.7億㌦(約7,700億円)で27.2%を占めた。一方、輸入で最も多いの
は解撤のための船舶や浮体式構造物で、輸入額は同62.1%減の2.9億㌦(約340億円)だった。『中国船舶報・広州報道』
各地の修繕ヤードで構成する「斯佩克」の第51回会議で公表された速報値の統計によると、14年、わが国の主な船舶修
繕企業は前年比1.18%減の船舶計3,441隻の修繕工事を完工し、修繕生産高は同14.48%増の125.05億元(約2,400億
円)だった。会議に出席した13社のうち、修繕生産高が前年比で増加したのは10社、前年並みは1社、減少は2社。中遠船
務工程(COSCOシップヤード・グループ)、中国船舶工業集団(CSSC)傘下の中船澄酉船舶(広州)、招商局集団傘下の友
聯船廠(蛇口)など6社の生産高は10億元(約190億円)を超えた。『中国船舶報・中国解撤協会』速報値の統計によると、
14年、国内の船舶解撤企業は国内外からの各種船舶計251隻・193万ライトトン(約830万重量㌧)を解撤し、前年比22.4
%減だった。スクラップしたのは国内船が同111.8%増の108万ライトトン、輸入船が同57.2%減の85万ライトトンだった。
国内船のスクラップに占める3大主流船型は、バルカー(一般貨物船含む)、タンカー、コンテナ船がそれぞれ全体の58.
6%、10.2%、26.7%。船齢20年以下の船舶はライトトンベースで全体の27.7%を占めた。一方、輸入船ではバルカー、タ
ンカー、コンテナ船が各48.4%、16.9%、11.2%。船齢20年以下が43.6%。14年の船舶解撤企業のスクラップ船板、スクラ
ップ鋼、スクラップ非鉄金属とその他の解撤物資の在庫量は計約90万㌧、うちスクラップ鋼が5割以上と予想される。中
央政府による老齢船・シングルハルタンカーの早期解撤・代替建造支援政策が後押しし、14年に初めて国内船のスクラ
ップが輸入船を超えた。国内船のスクラップ平均単価は下落を続け、昨年末時点での平均価格はライトトン当たり1,638.
5元(約3.2万円)で、年初より20.2%、前年同期比25.7%下がった。輸入船は同時点で同271.3㌦(同)で、同19%、24.9%
下がった。14年暦年の輸入船スクラップ価格は同約309㌦(約3.6万円)。バングラデシュやインドは同約465~480㌦(約5.
5~5.7万円)とされている。『中国船舶報・北京報道』14年、新造市場低迷下でもわが国の舶用機器市場は成長し、輸出
額は過去最高となった。中国税関総署によると、同年の輸出額は前年比3.5%増の31.76億㌦(約3,800億円)、輸入額は
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同19.7%増の48.25億㌦(約5,700億円)。輸出ではレーダーや無線航海機器部品が総額の2割以上を占め、舶用推進器
・プロペラとバラスト水処理装置の伸び率が高かった。14年、舶用機器26品目のうち輸出額が1億㌦を超えたのは10品
目。レーダー・無線航海機器部品は同5.5%増の7.01億㌦(約830億円)、その他熔接チェーンは同4%増の3.27億㌦(約3
90億円)。伸び率が最も高かったのは舶用推進器・プロペラで同33.1%増だった。輸入では舶用ディーゼルエンジンが
全体の約3割を占め、伸び率は1.5割以上増加、門型クレーン・据え置き式回転クレーンは約8割増加した。輸入額は舶用
ディーゼルエンジンが同16.9%増の13.41億㌦(約1,600億円)、レーダー・無線航海機器部品が同13.6%増の11.04億㌦
(約1,300億円)、舶用推進器・プロペラが同25.19も増の6.91億㌦(約820億円)。
◆中国船舶報、特約記事/14年CSSC大手ヤード実績 『中国船舶報』14年、国有造船グループ、CSSCはグループ全体
で新造船計177隻・1,512万重量㌧、オフショア設備17基・隻を受注、その中でジャッキアップ式ドリリング・プラットフォーム
は4船型15基を契約した。上海外高橋造船、広州広船国際股分などが年度目標を達成したが、大事なのは生産管理の
優良化や資源の回転・利用効率向上、業務割り当ての細分化だ。外高橋造船は新造船のドック効率を10%高め、年度計
画より4隻多く引き渡すことに成功した。『中国船舶報・上海報道』14年、CSSC傘下の同国造船最大手、外高橋造船は売
上高、利益総額ともに業務目標を達成した。民間商船は同年に受注計32隻・713.8万重量㌧、引き渡し同32隻・499.75万
重量㌧。手持ち工事における割合は、コンテナ船、ガス船、VLCCなどの高付加価値船舶が26%、オフショアが33%に達し
た。『中国船舶報・江陰報道』CSSC傘下の中船澄西船舶修造は14年、新造船19隻を引き渡し、年度目標を2隻上回った。
同年は起工30隻、進水25隻、竣工21隻。同社は「外部優先」の業務方針を明確化し、総経理や生産担当副総経理と外部
の協力メーカーが定期的に交流する仕組みを作り、実力や信頼性で協力会社を選定し、船舶ブロック5社、パイプ2社、
艤装5社、ハッチカバー1社の生産ネットワークを形成した。『中国船舶報・広州報道』14年、CSSC傘下で華南の新造事業
中核会社、広州広船国際は新造船計18隻・134.25万総㌧を引き渡した。オフショアは年度計画を0.35%上回り、前年比6
3%増。契約額も同計画を12.52%上回り、新造船・オフショアの受注18隻・259.82万重量㌧を達成、うち高技術・高付加
価値製品が43.06%を占めた。
◆中国船舶報、特約記事/14年中国舶用鋼板生産4割増 『中国船舶報・中国船舶工業行業協会』統計によると、14
年、わが国の主な鉄鋼企業は舶用鋼板を計1,330万㌧生産し、前年比41.1%増と大幅に増加した。うち高強度鋼板は同5
2.9%増の701万㌧。わが国の主な舶用鋼板メーカーは湘潭鋼鉄集団、新余鋼鉄集団、鞍鋼集団、南京鋼鉄聯合、沙鋼集
団、重慶鋼鉄(集団)の6社などで、同年の上位10社の舶用鋼板生産量は同42.7%増の1,092万㌧で、全体の82.1%を占
めた。この6杜はいずれも生産100万㌧を超え、昨年から4社も増えた。舶用鋼板の平均価格は持続的に下がっている。
昨年末時点で、20㍉鋼板は前年同期比9.7%下落の㌧3,580元(約7万円)、6㍉鋼板は同10.3%下落の3,780元(約7.3万
円)だ。一方で14年、わが国の舶用鋼材調達量は前年比18.2%増の約1,300万㌧。昨年末時点での手持ち工事量を見る
と、わが国の今後数年間の新造船竣工量・起工量は年4,500~5,000万重量㌧と推測され、舶用鋼板消費量は同1,300~1,
400万㌧で推移すると見込まれる。
◆中国造船、1~3月受注量8割減/CANSI統計、6カ月連続マイナス 中国船舶工業行業協会(CANSI)によると、今年1~
3月の中国造船業の新造船受注量は前年同期比77%減の599万重量㌧だった。中国造船の新造船受注量は低迷が続
いており、6カ月連続で前年同月を下回った。一方、竣工量は1~3月が28%増の947万重量㌧で、回復基調となっている。
3月単月ベースでみると、受注量は前年同月比72%減の217万重量㌧、竣工量は19%増の391重量㌧だった。手持ち工
事量は、受注の低迷と竣工量の増加に伴って減少している。3月末時点で1億4,493万重量㌧で、2月末時点と比べて26
7万重量㌧減少。1年前と比べても3%減少した。重点観測企業とする造船54社の1~3月の受注量は前年同期比80%減
の487万重量㌧、竣工量は26%増の875万重量㌧、手持ち工事量はほぼ横ばいの1億4,288万重量㌧だった。受注量、竣
工量、手持ち工事量は、重点観測企業がそれぞれ81%、92%、99%を占めている。ただ、これまで重点観測企業がそれ
ぞれの項目で9割以上を占めていたが、受注量が8割台に減少した。船舶関連の重点観測企業とする88社の1~3月の完
成工業総生産額は8%増の934億元(約1兆8,000億円)。このうち造船関連が10%増の464億元(約8,900億円)、舶用が
16%増の79億元(約1,520億円)、修繕が12%減の26億元(約500億円)としている。また、主要事業収入は9%増の647
億元(約1兆2,400億円)だったものの、利潤総額は1億7,000万元(約33億円)で88%減少した。
◆韓国造船の給与/高止まり 《円換算で平均年740万円、日本超えか》韓国造船業の昨年の主要7社の社員1人当たり
平均年間給与(加重平均)は7,347万ウォンで、前の年に比べて0.4%増とほぼ横ばいだった。大規模な赤字決算が相次
ぎ、各社が事業リストラなども行ったが、平均給与は高止まりした。昨年の日本円/韓国ウォンの平均為替レートで換算
すると約738万円となり、日本の総合重工系などを上回っているものとみられる。韓国造船各社の事業報告書を基に本
紙がまとめた2014年度の給与実態は表のとおり。各社によって年俸の増減はばらけた。1人当たりの年俸でみると、最
大手の現代重工グループ3社はいずれも、前年に比べて増加。現代重工は4%増の7,527万ウォン(757万円)だった。現
代三湖重工は7,813万ウォン(785万円)で、韓国の中で最も高かった。これに対してサムスン重工は6%減の7,210万ウォ
ン(724万円)、大宇造船海洋は1%減の7,371万ウォン(740万円)といずれも減少した。韓国造船業全体の平均年俸は一
貫して増加を続けているが、金融危機直後の2009年と、深刻化した2013年に減少に転じている。また昨年末時点での
従業員数は、7社合計で前年比2%増の6万9,241人だった。
◆韓国造船/4社が最終赤字 ≪前期、為替・低船価・海洋混乱が影響≫韓国造船主要7社の2014年12月期連結決算
は、経営再建の特殊要因で黒字化したSTX造船海洋を除く全社で最終損益が悪化した。このうち現代重工業グループ
3社と韓進重工は、赤字決算になった。採算悪化を招いたのが、ドルに対するウォン安と、低船価船の建造による新造船
事業の悪化。これに加えて、海洋構造物のエ事でコストが膨れ上がり、大規模な損失が発生した。3月31日に全社が発表
した事業報告書を基に業績を取りまとめた。最大手の現代重工グループは、連結対象の現代三湖重工と現代尾浦造船
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も含めて、3社が連結・単体ともに全段階で赤字決算だった。現代重工は海洋やプラントでの損失が響いて赤字に転落
し、純損失は2兆2,061億ウォン(約2,400億円)だった。造船専業の子会社2社は新造船の採算悪化で赤字決算となり、現
代三湖重工は単体では3期連続の最終赤字だった。大宇造船海洋は営業段階では増益を確保したが、通貨高に伴う前
受金の為替評価損を営業外損失に計上したことで、最終利益は86%の減益だった。サムスン重工は1-3月に2件の海洋
工事の損失として約7,600億ウォンを引当て処理したことで採算が悪化し、純利益は77%減になった。韓進重工は造船
事業で損失が拡大。5期連続の最終赤字で低迷が続いている。経営再建中のSTX造船海洋は営業段階では引き続き赤
字だった。ただ、1兆6,000億ウォンの債務の株式転換を営業外利益として計上したことで、単体の純損益段階では4ぶ
りに黒字化した。
◆韓国造船/研究開発費を大幅減 ≪昨年は5社計で28%減の560億円≫韓国造船所が研究開発費を絞り込んでい
る。主要5社の2014年の研究開発投資額は合計で5,175億ウォン(560億円)で、前年から28%減少した。投資額が減るの
は過去10年で初めて。現代重工を除く主要5社が大きく減らしており、業績悪化などが影響した可能性がある。昨年の
研究開発投資額は、現代重工が、現代尾浦造船や現代三湖重工を含めたグループ全体で前の年から5%増やし2,836
億ウォンとした。ただ、これ以外の造船所は全社が投資額を減らした。赤字が続く韓進重工は前年のおよそ10分の1に、
経営再建中のSTX造船海洋は半分にそれぞれ縮小。大手でも、サムスン重工が29%減、大宇造船海洋が13%減と大き
く減らした。韓国ではこれまで不況下でも技術開発への投資額は増やしており、近年は海洋開発関連の研究を拡大し
たこともあり、研究開発費用は6,000億ウォンを超えていた。だが、昨年は商船と海洋の採算悪化に伴い各社が事業の
見直しなどを進めており、この一環として研究開発費にも手をつけたものとみられる。
◆韓国造船大手3社/サムスン重が2桁増 ≪1-3月受注 現代重工・大宇は苦戦≫韓国造船大手3社(現代重工業、大
宇造船海洋、サムスン重工業)の1-3月の受注は、サムスン重工が2桁増となったものの、現代重工と大宇は大きく落ち
込んだ。原油価格下落などにより、海洋資源開発が停滞。各社とも海洋プラントの受注はゼロで、一般商船だけの成約
となった。特にサムスン重工は2万TEUクラスの超大型コンテナ船10隻を大量成約し、受注高を伸ばした。現代重工の造
船部門(シップビルディング部門)受注高は、1-3月で6億3,600万㌦と前年同期比80%減だった。受注隻数は30隻減の8
隻にとどまった。8隻の船種別内訳はタンカー6隻、LPG(液化石油ガス)船2隻。3月末の受注残高は前年3月末比27%減
の171億㌦、隻数は33隻減の135隻となった。受注残高の船種別割合はLNG(液化天然ガス)船26%、LPG船17%、タンカ
ー16%、コンテナ船13%、特殊船・艦艇12%、セミサブマーシブル・リグ(半潜水型掘削装置)8%、ドリルシップ(掘削船)3
%、バルカー3%その他2%。現代重工のオフショア・エンジニアリング部門の1-3月の受注高も、前年同期比36%減の5
億9,300万㌦にとどまった。サムスン重工の1-3月の新造船・海洋プラント受注高は10%増の23億㌦だった。受注隻数は6
隻増の18隻。船種別内訳はコンテナ船川隻、タンカー6隻、LNG船2隻となった。3月末時点の受注残高は前年3月末と比
べ9%減の338億㌦、受注残隻数は113隻。大宇の期間中の受注高は20%減の14億㌦に低迷した。隻数は7隻減の8隻で、
船種別内訳はLNG船6隻、タンカー2隻。3月末の受注残高は前年3月末と比べ11%増の497億㌦だった。受注残隻数は15
隻増の162隻となっている。
◆韓国造船大手/1Q受注高4割減 ≪サムスンのみ前年超、コンテナ船で明暗≫韓国造船大手3社の今年の第1四半期
(1-3月)の造船・海洋(オフショア)部門の受注高は計49億㌦だった。受注金額ベースで前年同期比38%減となり、低調
なスタートとなった。ただ、現代重工業や大宇造船海洋が前年実績を大幅に下回る中、メガコンテナ船10隻を受注した
サムスン重工業は前年同期実績を唯一上回るなど明暗が分かれた格好。海洋部門の新規案件が低迷する中、いかに高
付加価値船を受注できるかが今後のカギになってきそうだ。各社が公表しているIR資料によると、現代と大宇は3月に
新規受注がなく、1-3月の累計受注高も前年同期と比べて大幅に減少した。1-3月の受注実績は、現代が80%減の8隻
(タンカー6隻、LPG船2隻)・6億3,600万㌦、大宇が20%減の8隻(タンカー2隻、LNG船6隻)・14億㌦。現代の他部門を含め
た全体の受注高は49%減の30億1,700万ドルで、主力の造船・海洋部門の低迷が響いた。唯一前年実績を上回ったサム
スンは、3月にメガコンテナ船6隻とタンカー6隻の計12隻を受注した。1-3月の累計実績は10%増の18隻(コンテナ船10
隻、LNG船2隻、タンカー6隻)・23億㌦となった。商船三井や00CL向けの2万TEU級のメガコンテナ船商談で他の韓国大
手に競り勝ち、3社の中でも圧倒的な受注高になった。また、久々にタンカーを受注するなど商船回帰の傾向も顕著に
なっている。原油価格の低迷やペトロブラス問題などで海洋プロジェクトに遅れが生じており、各社とも海洋部門での
純粋な新規案件の受注はここまでない。商船から海洋へとビジネスモデルの転換をここ数年図ってきた韓国大手だ
が、新規の商談は当面の間、商船をメーンに進めざるを得ない状況で、いかに高付加価値船を受注できるかが焦点に
なっている。商船回帰の傾向がより一層強まることが予想されており、高付加価値船での競合激化が加速しそうだ。
Ⅴ.造船・造機以外の産業動向
◎外航海運
◆ばら積み、際立つギャップ/運賃が最安値圏、大手業績は堅調 ≪円建て利益・燃料安、追い風≫船海運市況の低迷
が続いている。中国経済の減速感などで、天然資源や穀物などを運ぶばら積み船のスポット(随時契約)運賃は比較可
能な1985年以降の最安値圏で推移している。ただ、2015年3月期の海運大手の業績は堅調さを保っており、市況とのギ
ャップが際立つ。ばら積み船運賃の総合的な値動きを示すバルチック海運指数(BDI、1985年=1000)は9日時点で580
と前年同期に比べ5割低い。2月18日に史上最低値を記録した後も、上値の重い展開が続く。ばら積み船の代表的な船
型で鉄鉱石を運ぶケープサイズの場合、運賃算定の前提となる用船料(船会社が船主に払うチャーター料)は14年度
平均で1日あたり1万863㌦。日本郵船や商船三井、川崎汽船の国内大手3社が期初に想定した半分程度にとどまった。
一般に侮運業界の採算ラインは2万5千㌦とされる。鉄鉱石の輸送量は増加基調が続くが、最大の需要国である中国の
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経済減速で頭打ち感がある。船舶の供給過剰も響き、スポット市況低迷が続く。「今後1-2年は抜本的な改善は期待しに
くい」(商船三井の武藤光一社長)との声もある。ただ、市況の停滞感とは裏腹に海運会社の業績は堅調だ。直近の業
績予想では15年3月期の日本郵船の経常利益は前の期に比べて23%増、川崎汽船は48%増えたもよう。コンテナ船事
業をてこ入れ中の商船三井は減益見込みだが、2期連続で黒字は確保する。市況と業績のギャップは株価に顕著に表
れている。海運調査会社のトランプデータサービス(東京・千代田)は11年から独自に算出したばら積み船の運賃指数と
海運株の相関性を分析している。12-13年に比べて14年春以降は方向性にズレが生じ、秋から冬はほぼ逆方向に動い
た。これまでバルチック海運指数は海運株の売買の材料になることが多かった。連動性が薄れた背景には3つの要因
が重なっている。一つは円安だ。海上運賃は米ドルで取引され「為替要因は日本の船会社の収益に直結する」(三菱UFJ
モルガン・スタンレー証券の安藤誠悟シニアアナリスト)。昨年秋以降の円安で円建ての収益が増えた。原油安に連動し
た船舶燃料の値下がりも大きい。足元の燃油価格は1㌦320㌦前後で、12-13年のほぼ半分だ。この水準が続けば16年3
月期は大手3社で燃料要因が200億-300億円の経常増益につながる見通しだ。「安定利益が見込めるLNG(液化天然
ガス)船の増加など事業構造が変化している」(武藤氏)ことも作用している。足元では原油タンカー、北米向けコンテ
ナ船の需要の堅調さやコスト削減効果が業績を押し上げている。ばら積み船ではスポット契約の割合を減らし、価格を
一定期間固定する長期契約の比率を高める傾向が強い。商船三井の場合、資源ブームだった08年3月期は経常利益の
うち6割がばら積み船を中心にしたスポット取引によるものだったが、14年3月期は1割程度に下がった。収益が市況に
左右されにくいよう、契約形態を見直す動きも進む。
◆スポット用船、3月は15%減/大型ばら積み船 鉄鉱石などを運ぶ大型ばら積み船、ケープサイズの3月のスポット
(随時契約)用船契約実績は389万㌧で前年同月に比べて15%少なかった。3カ月連続で前年実績を下回った。世界最
大の鉄鉱石輸入国である中国の需要が頭打ちになり、荷動きが一服した。海運調査会社のトランプデータサービス(東
京・千代田)が集計した。鉄鋼メーカーなどは海運会社と定期契約した船で原料を運搬する一方、需給の変動に応じて
スポット契約を活用している。スポット契約の増減は、鉄鋼原料の需要動向を映している。中国の1~2月の鉄鉱石輸入量
は前年同期比0.9%減少した。2014年の輸入量は前年比で14%伸びており、15年に入り減速感が出ている。
◆ばら積み船の就航数3・3% 海運調査会社のトランプデータサービス(東京・千代田)がまとめた船舶統計による
と、世界中で就航しているばら積み船は3月末時点で1万386隻と前年同期比3・3%多かった。前月比では3カ月連続で
増えた。ばら積み船運賃は安値で推移している。海運会社は効率化のため老朽船の退役を急いでおり、就航数の伸び
が鈍った。ばら積み船の代表的な船型で、鉄鉱石などを運ぶケープサイズは前年同期比2・6%増の1,632隻だが、前の
月に比べると7隻減った。前月比で減少したのは2カ月連続。世界最大の鉄鉱石輸入国である中国に需要の頭打ち感が
あり、荷動きに停滞感が出ている。
◆海上輸送、10年で1・7倍/中国の「爆買い」が影響 鉄鉱石や石炭などばら積み貨物の海上輸送量が伸びている。
日本郵船の集計によると、2014年は44億9,300万㌧と10年間で1・7倍に拡大した。ただ、貨物の運賃は、輸送量を上回っ
て船舶が過剰に供給されたため低迷している。10年間で特に伸びが大きかったのが鉄鋼原料である鉄鉱石。14年の輸
送量は12億9,500万㌧で10年前に比べて2・2倍に増えた。けん引したのは中国だ。中国の粗鋼生産量は13年までの10年
間で3・7倍と急成長した。国内産の鉄鉱石だけでは足りず、オーストラリアやブラジルからの調達を増やした。現在では
世界の鉄鉱石輸入量の3分の2を中国が占める。鉄鉱石と並ぶ主要貨物の石炭も発電燃料や鉄鋼原料としての需要が
拡大し、荷動きはこの10年間で1・8倍に増えた。穀物も中国、東南アジア向けの出荷が増加し、1・4倍に伸びた。ただ、足
元で中国など振興国の経済成長に減速感が出ており、今後の伸びが緩やかになる可能性もある。輸送量が伸びる一
方、ばら積み貨物の運賃は安値が続く。総合的な値動きを示すバルチック海運指数(BDI、1985年=1000)は今年2月、過
去最低の509を付けた。資源ブームに沸いた07-08年には10,000を超える局面もあったが、リーマン・ショックで一気に
急落した。荷動きの伸びに比べて運賃がさえないのは船舶の供給過剰が原因だ。世界の新造船受注量は14年で8,258
万、㌧13年は1億320万㌦。日本造船工業会の佃和夫会長は「世界経済の動向を踏まえれば、竣工量は年4,000-6,000
万㌧が適正」と指摘する。世界全体の造船能力は実需の2倍に達するとの見方もある。金融緩和を背景に投機マネーが
造船分野にも流れ込んでおり、供給過剰に拍車をかけている。貨物量と船舶の就航量との需給ギャップは海上運賃を
左右する。足元では船舶の就航量の伸びが鈍化する一方、中国の鉄鉱石輸入などに頭打ち感が出ている。
◎内航海運
◆内航新制度移行1年前、ポスト暫定事業 しっかり議論を 新年度が始まり、内航海運の重要政策、暫定措置事業(日本
内航海運組合総連合会が実施主体)が、2016年度に新たな枠組みに移行するまで1年を切った。暫定事業は、1967年に
船腹過剰対策としてスタートした船腹調整制度を見直し、98年から現在の形で行われている。解撒交付金、建造納付
金、納付金免除の3つの制度が柱。15年度で解撒交付金制度などが終了した後、暫定事業の所要資金を返済するため
の納付金制度を中心とした枠組みに移る。16年度以降は環境要件などで単価額を3グループに分類した納付金制度が
スタートする。24年度までに単価差を段階的に代替建造と新規建造の間で締小し、格差解消を図る。暫定事業の所要資
金は市中金融機関や鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)からの借入金でも調達。新たに船舶を建造す
る内航事業者が内航総連に約める建造納付金を、借入金返済などに充てる仕組みで事業が運営されている。このう
ち、金融機関への返済は終了し、14年度末時点の借入金残高は鉄道・運輸機構への返済分380億円となった。今後、事
業者からの納付金収入を基に所要資金の返済を進め、24年度までに借入金返済などを終えることで、収支が相償い事
業が終わる計画だ。内航総連は3月12日の理事会で、16年度からの新たな枠組みスタートに向けた、暫定事業の実施細
則の改正内容を決めた。事業者が船を代替建造する場合、内航総連へ支払う納付金額にも関係する被処理船処理要
領や、環境性能基準、事業集約に関する規程などが新たに細則に設けられた。改正内容の一例を挙げると、納付金額は
建造船の環境性能によって異なるが、その比較基準を90年代初頭船のC02(二酸化炭素)排出量と比べ、どの程度削減
できたかで判断することが決められた。このほか、今後の暫定事業を円滑に進めていくための詳細なルールが定めら
れた。関係者には可能な限り、、今回決定した細則を含めた16年度以降の暫定事業のルールが事業者に浸透するよう
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努力をお願いしたい。地方の海運組合などでも事業者に細かな説明が行われていると聞く。ただ、内航事業者の中に
は経営者白身が船の現場で働いていて、なかなか情報を得ることができない環境にある人もいる。どんな事業者で
も、新制度をできる限りスムーズに活用できるよう配慮してほしい。新制度スタートは、暫定事業終了へのラストスパート
となる。25年度以降の内航業界は船腹調整、暫定事業各制度下の状況とは異なる姿に変わっていく。事業が終わるま
で9年。関係者からも発言があるように、ポスト暫定事業について、余裕のある今こそしっかり考えていくべきだ。この間
に、内航海運を取り巻く環境も変化する可能性がある。こうした事態にも柔軟に対応しながら、内航業界自身が、腰を
据えて将来像を描いてほしいと思う。
◆内航暫定事業収支実績、14年度納付金82億円/解撤交付金はゼロ 国土交通省は、日本内航海運組合総連合会
(内航総連)が実施主体として行っている内航海運暫定措置事業の2014年度までの収支実績と暫定事業解消(24年
度)までの資金管理計画を作成した。14年度の収支実績は収入480億円(建造納付金82億円、借入金380億円、繰越金1
8億円)、支出465億円(元本返済461億円、利息など5億円)、次期繰越金は15億円。解撤交付金はゼロだった。国交省は
10年6月に閣議決定した「規制・制度改革にかかる対処方針」で、「内航総連と協議した上で、毎年度、内航海運暫定措
置事業の解消までの資金管理計画を作成・公表する」が明記されたことを受け、毎年度末に収支実績と今後の資金管
理計画を作成・公表している。15年度の計画は、収入434億円(納付金50億円、借入金369億円、繰越金15億円)、支出41
1億円(交付金5億円、元本返済380億円、預託金返済21億円、利息など5億円)、次期への繰越金23億円と想定。解撤交
付金制度などが終了し、環境要件などによって分類された建造約付金制度を中心とした新たな暫定事業の枠組みがス
タートする16年度は、収入380億円(納付金44億円、借入金313億円、繰越金23億円)、支出374億円(元本返済369億円、
利息など5億円)、次期繰越金6億円となる見通し。17年度以降は貨物輸送量需要予測に基づいて納付金収入を試算
し、17~19年度は44億~46億円、20~23年度は55億~61億円とした。毎年度借り換える借入金は年々徐々に減少し、暫定措
置事業最終年度の24年度までに借入金返済などを終えることで、収支相償い同事業が解消する。
◆推定鉄骨需要量は約44万㌧ 《4カ月ぶりに前年上回る》国土交通省の2月の建築着工統計調査報告によると、全着
工床面積は前年同月比0・4%減(前月比6・9%増)の1,043万7,000平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が同16・7%
増(同14・7%増)の428万4,000平方㍍、SRC造は同38・3%減(同18・2%減)の16万6,000平方㍍。全床面積中のS造、SRC
造の比率は42・6%、推定される鉄骨需要量は約43万7,000㌧の水準(前年同月は約38・1万㌧※表2)と4カ月ぶりに前
年を上回った。
◆工作機械受注 14年度 ≪北米活況 外需初の1兆円超え≫日本工作機械工業会(日工会)が9日発表した2014年
度の工作機械の受注実績は、前年度比31・0%増の1兆5,782億6,000万円だった。過去2位の水準。外需が同34・3%増の
1兆516億3,400万円で、年度で初めて1兆円を超えた。内需も同24・8%増と力強い伸び。3月単月は総額が3月の最高だ
ったほか、内需が80カ月ぶりに500億円台に達した。受注総額の増加は2年連続となる。好結果の一要因は北米市場の
活況だ。DMG森精機は外需が過去最高。「北米が特にいい。3月はエネルギー分野が落ち着いたが自動車向けがカバー
した」(広報・展示会部)。牧野フライス製作所は総額が過去3位、外需が過去最高だった。「米国は航空機向けの伸びが
顕著」(広報課)と得意分野で受注を重ね、同時に、「国内とアジアの部品や金型向けも数が出ている」(同)としている。
外需はスマートフォン向けの短期大口受注の貢献も大きい。ツガミは外需が過去最高。「(スマートフォン関連)が14年49月に集中した」(管理部)。年内は中国のスマートフォンメーカー向けを期待する。一方、内需は5,266億2,600万円。補助
金などの政策や円安が追い風となり、「設備更新の案件が増えた」(オークマ営業部)。三菱重工業は「年明けから受注
が増えている」(広報部)という。3月単月は、受注総額が前年同月比14・6%増の1,470億9,400万円だった。内需は同46
・2%増の553億6,000万円、外需は3月として過去最高となる同1・5%増の917億3,400万円だった。
◆昨年度8社受注、工作機械19%増 5,732億円 ≪本社まとめ 北米・スマホなど好調≫日刊工業新聞社が9日まとめ
た工作機械主要8社の2014年度(14年4月-15年3月)の工作機械受注実績は、前年度比19・2%増の5,732倍9,400万円と
なり、2年連続のプラスだった。牧野フライス製作所とDMG森精機、ツガミが外需の過去最高を更新し、7社の内需が前年
度比2ケタ増の高い伸びだった。14年度は円安や設備投資関連の補助金、北米の製造回帰、スマートフォン特需などの
好材料を、各社が受注に結び付けた1年だった。内需は同24・3%増の2,221億4,100万円。円安などでユーザーの事業環
境が改善し、設備更新を中心とする需要増があった。自動車分野の大手ユーザーに偏らず、幅広い業種、企業規模で設
備投資が活性化した。ものづくり補助金や減税制度が、これまで更新投資をためらってきたユーザーの背中を押した
側面がある。また、外需は同16・1%増の3,511億5,300万円だった。過去最高のDMG森は特に北米市場のよさを指摘する。
北米は自動車に加え、航空機分野で勢い。航空機に強い牧野フライスが7年ぶりに過去最高を記録している。ツガミは
中国のスマホ需要を取り込んだ。中国市場は「(スマホなどの)スポット受注を除いたベース部分も増えている」(管理
部)。3月は前年同月比32・2%増の549億6,700万円だった。連続プラスを19カ月に伸ばした。内需は同47・7%増の223
億5,500万円で20カ月連続増、外需は同23・3%増の326億1,300万円で10カ月連続増だった。
◆昨年度工作機械受注、31%増1兆5,785億円/日工会まとめ ≪外需は初の1兆円超え≫日本工作機械工業会(自工
会〕が16日発表した2014年度の工作機械の受注実績は、前年度比31・0%増の1兆5,785億4,600万円となり、過去2番目
の高い水準となった。前年実績を2年連続で上回り、外需は初めて1兆円を超えた。日米欧は欧州が緩やかではあるが
いずれも勢いがあり、中国とベトナムでスマートフォン「スマホ)の部品を加工する機械の特需があった。3月単月は過
去最高を記録するなど基調は強く、安定的な成長が続きそうだ。14年度は、07年度の1兆5,939億円に次ぐ規模に伸び
た。内需は同24・8%増の5,268億7,600万円で2年連続で増えた。円安によってユーザ一企業の経営環境が改善し、もの
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づくり補助金や減税制度を利用した老朽設備の更新が進んだようだ。「一般機械」「自動車」「電気・精密」「航空・造船・
輸送用機械」の主要4業種がすべて、08年のリーマン・ショック後の最高額だ。自動車のうち、部品の伸び率が目立って
いる。外需は同34・3%増の1兆516億7,000万円。内需と同じく2年連続の増加となった。北米とアジアは過去最高、欧州
がリーマン・ショック後の最高だった。アジアではスマホ特需によって中国と「その他アジア」が大幅に増加した。3月は14
年12月実績を上回り過去最高だ。内需が80カ月ぶりに500億円を超えた。省エネルギー補助金のスタートを待ち、発注
を手控える動きがある中での最高額更新で、「潜在需要は、なお高い」(石丸雍二専務理事)と春以降の受注拡大が期
待できそうだ。外需は過去2番目の水準だった。中国とベトナムでスマホ関連とみられる大量受注があった。北米は高
水準だった14年の月平均ほどに回復した。シェールガス・オイル開発の減退影響があるが、「北米の産業は幅広く、安定
的に伸びていくだろう」(牧野二郎副会長)と自動車や航空機などでの市場拡大を見通す。
◎産業機械
◆2月産機受注11%減 産機工まとめ 日本産業機械工業会(産機工)が8日に発表した2015年2月の産業機械受注額
は、前年同月比11・0%減の3,793億4,500万円で、3カ月ぶりのマイナスとなった。このうち内需は同34・8%増の2,554億
8,000万円で、外需は同47・7%減の1,238億6,500万円だった。内需のうち製造業向けは同25・1%増、非製造業向けは同
82・5%増、官公需向けは同11・3%増、代理店向けは同2・3%減。主要約70社の輸出契約高は同49・2%減の1,147億400
万円で、6カ月ぶりのマイナスとなった。プラント案件は2件で、同73・8%減の171億8,800万円だった。地域別構成比は、
アジア70・4%、北米7・3%、欧州6・1%、ロシア・東欧5・1%、南米3・3%。
◎環境装置
◆環境装置受注34%増/2月 廃棄物処理装置けん引 日本産業機械工業会が8日発表した2015年2月の環境装置受
注実績は、前年同月比34・1%増の487億9,900万円で2カ月連続の増加となった。ウエートの大きい官公需が汚泥処理
装置や都市ゴミ処理装置の受注増で同18・8%増の374億6,800万円と続伸。民需は非製造業分野の事業系廃棄物処理
装置などがけん引して同93・1%増の89億800万円、外需は都市ゴミ処理装置の受注で同8・7倍の24億2,300万円とな
るなど全需要部門で伸長した。民需の内訳は製造業が同47・0%増の49億1,100万円、非製造業が同2・1倍の39倍9,700
万円。製造業では食品、鉄鋼、機械産業向け産業廃水処理装置や石油・石炭産業向け排煙脱硫装置か好調。非製造業で
は電力向けバイオマス発電プラントが受注金額を押し上げた。装置別では、大気汚染防止装置が同9・9%増の20億2,90
0万円、水質汚濁防止装置が同29・9%増の94億2,500万円、ゴミ処理装置が同37・3%増の372億2,500万円。
◆白物家電出荷額/3年ぶりに減少 ≪昨年度 駆け込み反動で12%≫白物家電の2014年度の出荷額は前年度比12・2
%減の2兆1,255億円で、3年ぶりに前年度を下回った。日本電機工業会が20日発表した。14年4月の消費税率引き上げ
前にあった駆け込み需要の反動に加え、夏の豪雨などで、エアコンが売れなかったことが追い打ちをかけた。出荷額は
過去5年間で最も少ない。減少幅も消費税率が3%から5%へと引き上げられた1997年度(前年度比17%減)以来の大き
さだという。白物家電の出荷額は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機で約6割をしめる。14年度はエアコンが前年度比15・4%減、
冷蔵庫が同17・5%減、洗濯機が同12%減だった。前年度割れはエアコンと冷蔵庫が3年ぶり。乾燥もできるドラム型への
買い替え需要で好調が続いていた洗濯機は5年ぶりだ。全体の出荷額は過去10年間の平均値(2兆1,065億円)を少し
上回った。家電各社が省エネ性能の高いエアコンや大容量のタイプの冷蔵庫や洗濯機など、高価格帯の商品を強化し
たためという。
◆民生用電子機器、国内出荷10%減/昨年度 電子情報技術産業協会(JEITA)が22日に発表した2014年度(14年4月
-15年3月)の民生用電子機器の国内出荷額は、前年度比10・9%減の1兆2,822億円で4年連続の前年割れとなった。14
年4月の消費増税を前にした駆け込み需要の反動が影響したとみられる。分野別では携帯音楽プレーヤーなどの童戸
機器の落ち込みが最も大きく、22・8%減の824億円で9年連続の前年割れとなった。
◆国内4輪生産4.6%減/2月輸出は中国向げ減少 日本自動車工業会(自工会)は2015年2月の国内生産・輸出実績を
まとめた。ホンダの訂正分を反映した4輪車の国内生産は前年同月比4・6%減の82万3786台。14年2月は消費増税前の
駆け込み需要がありその反動で減少した。4輪車の輸出は中国向けが減少し同0・3%減の36万5855台と3カ月ぶりの前
年割れとなった。4輪車生産が前年同月を下回るのは8カ月連続。消費増税を受けた国内販売の低迷が響いている。4
輪車のうち、小型4輪車は同14・7%減の13万9789台で9カ月連続、普通車は同2・1%減の39万9063台で5カ月連続の前
年割れ。軽4輪車は同6・1%減の15万9615台と2カ月連続の前年割れとなったが、14年2月の過去最高に次ぐ高い水準を
維持した。トラックは同3・4%増の11万3807台と4カ月ぶりのプラス。輸出は乗用車の小型4輪車が同31・3%減の1万378
6台とすべての月を通して過去最低。地域別では北米が同0・3%減の同13万3297台、中国の減少が響いたアジアが同2
1・8%減の3万8586台とそれぞれ3カ月ぶり、2カ月ぶりの前年割れとなった。一方、2輪車の生産は同11・2%減の5万79
台で4カ月連続の前年割れとなり過去最低。輸出の低迷が響いた。
◆新車販売6.9%減529万台/昨年度、4年ぶりマイナス 《日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会
連合会(全軽協)が1日発表した2014年度の新車販売台数は前年度比6・9%減の529万7110台となり、4年ぶりに前年度
実績を下回った。13年度は14年4月の消費増税前の駆け込み需要があり、14年度はその反動減が登録車を中心に表れ
た。》登録車は同8・9%減の312万3980台で4年ぶりのマイナスとなった。上期(4-9月期)は駆け込み需要の受注残が
あり前年同期比3・7%減にとどまったが、下期(10-3月期)は同13・1%減と減少幅が拡大した。車種別の14年度販売は
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乗用車が前年度比10・7%減の269万2663台となり、4年ぶりに13年度実績を下回った。貨物車は同4・0%増、バスは同3・
1%増と堅調だった。軽自動車の14年度の新車販売は同3・9%減の217万3130台だった。4年ぶりのマイナスとなったが、
台数は13年度に次いで過去2番目に高い水準だった。全軽協の担当者は「消費増税後に小型・低価格の車が好まれる
ダウンサイジング傾向が強まり、軽自動車の販売は意外と落ちなかった」と指摘する。3月単月の新車販売台数は、登
録車と軽自動車の合計で前年同月比11・2%減の69万5411台となり、3カ月連続の減少となった。4月以降の見通しにつ
いて、自販連の担当者は「消費増税後の反動減は長引く可能性が高い。エコカー減税の燃費基準見直しは多くの車が
実質増税となるが、影響がどこまで出るかは4月の結果が出てみないと分からない」と話した。
◆普通トラック9・6%増 昨年度 トラック業界関係者がまとめた2014年度の普通トラック(積載量4㌧以上)販売台数
は、前年度比9・6%増の8万7,635台だった。07年度以来7年ぶりに8万台を超え、前年度を5年連続で上回った。消費増
税後の反動減が14年6月までに収束。建設関連の需要が堅調で、ダンプトラックやミキサー車などの販売が伸びた。3
月単月では前年同月比12・2%減の1万3,331台となり、11カ月ぶりに前年同月を下回った。14年3月は消費増税前の駆け
込み需要により1万5,000台を突破。一方、13年3月は約1万1,000台で、業界関係者は今年3月が「低い水準とは思ってい
ない」という。14年度の車種別では大型トラックが前年度比8・4%増の4万9,778台。中型トラックは同11・3%増の3万7,85
7台だった。メーカー別では日野自動車が同10・8%増の3万1,958台で首位となった。今後の見通しについて関係者は詳
細を検討中としながら、「14年度が想定より需要が伸びたこともあり、15年度は下回る」との見方を示した。
◆車7社 海外生産最高/昨年度、北米販売が好調
国内乗用車8社が23日まとめた2014年度の海外生産台数は13
年度比4・4%増の1,708万2,016台だった。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど7社が過去最高となった。北米販売が
好調で、各社が需要地に近い地域で現地生産を進めたことが要因だ。対照的に国内生産は5社が前の期を下回った。
内需低迷に加え、輸出も伸びていないことが響いた。トヨタと日産の海外生産台数は6期連続、ホンダは3期連続で前
の期を上回った。北米生産が過去最高となるメーカーが多かったが、ホンダはアジアでも過去最高。各社は為替に影響
されにくい生産体制の構築を進めている。日産は北米向け新型「ムラーノ」を現地生産に切り替え、マツダもメキシコと
タイで新型「デミオ」の生産を始めた。8社合計の国内生産台数は3・7%減の903万1,944台だった。消費増税後に内需
が低迷したことが影響した。日産は13%減の87万608台と1967年度以来、初めて100万台を下回った。輸出は6社が前
年割れとなり、円安効果は自動車の国内生産には限定的だったようだ。
◆国内4輪生産3・2%減/昨年度、5年ぶりマイナス 日本自動車工業会(自工会)が28日にまとめた2014年度の生産・
輸出実績によると、4輪車の国内生産は前年度比3・2%減の959万644台、輸出は同3・1%減の449万724台となった。消
費増税を受けた国内販売の低迷に加え、生産の海外シフトが響き、国内生産は5年ぶりに前年度割れとなった。4輪車の
国内生産を車種別内訳で見ると、軽人気を反映して乗用軽4輪車が同0・3%増の181万2,335台となり、過去最高を3年
連続で更新した。一方、乗用小型4輪車は同13・3%減の166万2,282台となり、3年連続のマイナスとなった。乗用小型4
輪車は、主力車種の海外移管を受けて、輸出が同46・8%減の22万947台と大幅減となったことも影響した。乗用小型4
輪車の輸出は過去最低水準となった。バスは新興国向けの輸出が伸びて、同2・5%増の13万8,520台となり過去最高を
記録した。2輸車は、輸出が同3・5%増の46万1,632台と3年ぶりにプラスに転じたが、国内生産は同1・2%減の57万6,169
台となり過去最低となった。3月単月の国内生産については、4輪車が前年同月比6・5%減の87万8,488台で9カ月連続
のマイナス、2輪車が同12・5%減の5万204台で5カ月連続のマイナスとなった。輸出については欧米向けの伸びを受け
た4輪車が同2・8%増の39万6,796台となり2カ月ぶりにプラスに転じた。2輪車は同1・0%減の4万4,630台で4カ月連続
の前月割れだった。同日発表した14年暦年の海外生産台数は前年比4・3%増の1,747万6,219台となり5年連続で過去最
高を更新した。大洋州を除く全地域で現地生産が増加した。
◆粗鋼需要、7・8%減2,551万㌧ 《4-6月予想 3四半期連続減》経済産業省は2日、2015年4-6月期の粗鋼需要が前
年同期比7・8%減の2,551万㌧になりそうだと発表した。3四半期連続のマイナスで、4-6月期としてはリーマン・ショック
直後の09年に次ぐ低い数字。建設部門では公共投資の反動減、製造部門では自動車や建設機械向けの需要減が響く。
ただ、同省では「絶対値はそれほど低くない。期待値が高かった分、その修正が図られている」(鉄鋼課)と前向きに評
価している。4-6月期の鋼材需要見通しは前年同期比3・8%減の2,321万㌧。このうち内需は土木や自動車の落ち込み
が大きく、同4・0%減の1,534万㌧。一方、輸出は原油安に伴うエネルギー関連需要が大きく落ち込んでいることから、
同3・5%減の788万㌧と予想した。また、3月末の国内向け普通綱鋼材のメーカー・問屋在庫は593万㌧の見込みで、在
庫率は1・48カ月。同省では「かなり高い水準にある」(同)と見ているが、「決して先行きが暗いわけではない。各企業が
これをきっかけに適切な経営判断を働かせる」(同)と悲観する状況ではないと指摘した。
◆鋼材受注量、2月2.8%減少 日本鉄鋼連盟(鉄連)が9日発表した2月の普通鋼鋼材受注量は前年同月比2.8%減の
555万2,000㌧だった。自動車や造船など製造業向けを中心に受注が伸び悩み、7カ月連続のマイナスとなった。建設向
けも工事の遅れから在庫が滞留して受注減につながった。
◆粗鋼生産14年度、3期ぶり減少/車・建築 低迷響く 日本鉄鋼連盟が20日発表した2014年度の粗鋼生産量(速報)
は、前年度比1・5%減の1億984万7,500㌧となり、3期ぶりに減少に転じた。5期連続で1億㌧の大台は超えたものの、結
果的には消費増税による需要減からの回復遅れが響いた。業界関係者は「前半は思ったほど消費増税の影響が出なか
ったが、後半から落ち込みが顕著になり、3月になっても需給の調整が終わらなかった」(高炉大手役員)と総括してい
る。全体として、自動車や建築など主要な需要先の低迷が響いた。炉別では高炉系の転炉鋼が同1・8%減の8,458万5,1
00㌧、電炉鋼が同0・6%減の2,526万2,400㌧といずれも前年度を下回った。粗鋼生産全体に占める電炉鋼比率は23・0
%と、前年度より0・2ポイント上昇した。鋼種別では普通鋼が同1・9%減の8,488万2,600㌧、特殊鋼が同0・2%減の2,496
万5,000㌧だった。15年度の粗鋼生産見通しについては、4-6月期の予想が記録的な低さとなっているものの、年後半
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からは回復に転じ、14年度並みを確保できるとの見方が強い。「首都圏での再開発や工場、大型物流倉庫など前向きの
設備投資の動きも見られる」(電炉大手役員)として、需給が緩い状況も近く解消されると見る。また、鉄連が同日発表
した3月の粗鋼生産量(速報)は、前年同月比4・5%減の928万5,600㌧で7カ月連続のマイナスだった。前年3月は消費
増税前の最後の駆け込み需要で生産水準が高く、その反動が出た格好。原油安でエネルギー産業の需要が落ち込ん
だことなども重なった。
以
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