企業・産業動向レポート = 2014年12月1日~31日の報道内容 = Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況 ◎函館ドック労連関連 ◆名村造船、34型バルカー1隻受注 《NBP向け、函館どつくで建造》海外紙によると、名村造船所はNYKバルク・プロジ ェクト貨物輸送(NBP)から3万4,000重量㌧型バルカー1隻を受注したようだ。グループの函館どつくで建造する予定。 納期は17年末と伝えられている。船価は不明。受注した3万4,000重量㌧型バルカーは名村造船と函館どつくが共同開 発した省エネ仕様のハンディサイズ・バルカー「HIGH BULK34E」シリーズ。従来のヒット商品だった32型バルカーの使い 勝手や船体の堅牢さなどの特徴を引き継ぎながら、燃費性能と積み高を向上させた。函館どつくは32型パルカーの建 造を終え、34型バルカーの建造に移っている。名村造船所の2014年第2四半期(4-9月)の決算資料によると、函館どつ く建造船として34型バルカーなど9隻を今年4-9月に受注しており、34型バルカーの受注が好調となっている。函館ど つくは、2017年度いっぱいまでの受注残を確保しているようだ。 ◎住友重機械ME関係 ◆住重、新造船の建造拡大/16年度、年間4-4.5隻に、損益改善へ 住友重機械工業は2016年度から新造船の年間建 造隻数を年4-4・5隻に拡大する。08年秋のリーマン・ショック後の受注低迷から造船事業の構造改革を進め、13年4月に 横須賀製造所(神奈川県横須賀市)の建造体制を年8-9隻から同3隻に絞り込んだ。円安の為替による受注環境の好転 を受け、段階的に建造を増やし、損益改善を図る。住重の新造船手持ち工事は9月末時点で10隻で、おおむね2年半分の 操業を確保している。「下期にも有望な受注案件がある」(別川俊介社長)という。16年度から再び建造隻数を増やす が、投資は老朽装置の更新などにとどめ、協力作業員の増員などで対応する。船舶事業の14年度営業損益見通しは20 億円の赤字(13年度は30億円の赤字)。「アフラマックス型」と呼ぶ中型タンカーを連続建造することで競争力を高めて いる。新造船を中心とする船舶事業については、一段踏み込んだ構造改革を検討してきた。損益改善傾向を受け「慌て る必要はない。少しずつ事業安定の道筋が見えた。16年度に黒字化することが船舶事業の役割」(別川社長)としてい る。 ◆長崎造船所の構造見直し/商船事業改革を加速、三菱重工 三菱重工業の宮永俊一社長は16日、日刊工業新聞社 のインタビューに応じ、商船事業の主力製造拠点である長崎造船所(長崎市)の構造改革を実施する方針を明らかにし た。「客船では以前も火災で損失を出した。(長崎造船所の改革を)何度かトライしたが、ガス運搬船の受注には周期が あり、仕事量の山谷への対応を考えてこれなかった」という。客船で累計1,000億円超の損失を計上した商船事業につ いて「これまでは何か工事をやってなんとか食べてきたが、民間企業として事業収益性が非常に低く、株主や投資家 に説明しがたいレベルまで苦しくなってきた」と説明。さらに「中国、韓国との競争もあるが、今治造船や大島造船所な どの専業メーカーがちゃんとした業績を上げているのに、我々の商船部門がそうならないのは反省すべきことだ」と 断言した。商船事業については客船をエンジニアリング事業に位置づけを変え、受注をガス運搬船に特化した上で、長 崎造船所における建造を香焼工場に集約するなど、具体的な構造改革案を2カ月以内に固める。ただ、建造については 「撤退したらもっとひどいことになる」とし、継続する方向だ。一方、三菱重工全体の国内生産については、「しがらみに とらわれないことだ」と一段の改革を示唆する一方、「減らすつもりは全然なく、高付加価値のガスタービンや航空機 など日本に適したものに変えていく」と述べた。松阪工場(三重県松阪市)でのカーエアコン生産をタイに移すことにつ いて「松阪は航空機にシフトした方が合理性がある」と語った。 ◆三菱重工/14年竣工量、10隻66万総㌧ 三菱重工業が19日発表した2014年の新造船竣工量は、10隻・66万総㌧ で、前年比で2隻減ったものの20万総㌧増となった。進水量は13隻、81万総㌧で2隻増、34万総㌧増だった。 ◆三菱重工、造船を分社/防衛は本体に 《LNG船、再編にらむ》三菱重工業は造船事業を2015年度中にも分社する検 討に入った。需要拡大が見込める液化天然ガス(LNG)船などを本体から切り離し、民間用船舶に特化した新会社を設立 する。防衛向け艦艇などは本体に残す。同社の造船事業は中韓勢との競争激化や、大型客船の設計変更などで多額の 損失が発生するなど苦戦している。新会社は造船専業大手との連携も進める考えで再編の呼び水になる可能性もあ る。分社の対象となるのは長崎造船所(長崎市)で手掛けるLNG船や液化石油ガス(LPG)船など。これらを同造船所の 香焼地区に、防衛向けの艦艇は同・立神地区に集約、香焼地区を分社する。同地区の約1千人の従業員の雇用は維持す る。三菱重工の造船事業の売上高は全体で2,500億円規模。このうちLNG船やばら積み船、コンテナ船などの売上高は 約1千億円。価格競争の激しいばら積み船などの受注はやめる。分社化で設立する新会社は国内最大手の今治造船(愛 媛県今治市)や、低コスト生産が強みの大島造船所(長崎県西海市)など専業大手と生産や設計などの連携を探る。船 の部材となる船体ブロックの製造を手掛ける別会社を設け、今治や大島などへの出資要請も検討する。建造中の大型 客船や、下関造船所(山口県)の資源探査船、フェリーは本体で続ける。 - 1 - ◆三菱重/造船の分社検討 三菱重工業は24日、造船事業の構造改革について「分社化を含也様々な可能性を検討 していることは事実」とのコメントを発表した。現在、策定作業を進めている2015年度からの3カ年事業計画に盛り込む 方針だ。具体策は決定次第、発表するとしている。 ◆三菱重工/造船構造改革で分社検討 《他社との連携に注目》三菱重工は24日、商船事業を同社が2015年度中にも 分社する検討に入ったとする23日の一部報道を受け、「造船事業の構造改革については、分社化を含め、さまざまな可 能性を検討していることは事実だが、現時点で決定した事実はない」とのコメントを公表した。同社が実際に商船事業 を分社した場合、同社から同業他社へ、または、同業他社から同社へ連携を打診する可能性が出てくると予想され、造 船業界関係者は強い関心を示している。三菱重工は現在建造中の客船2隻で、これまで約1,000億円の特別損失を計 上。現在はLNG(液化天然ガス)船、VLGC(大型LPG(液化石油ガス)船)の受注に特化している。一方、佃和夫・三菱重工取 締役相談役が会長を務める日本造船工業会。佃造工会長の任期は2015年6月まで。造船業界関係者は、会長退任のタ イミングに合わせて、三菱重工が商船事業の分社など構造改革を実施するのではないかとみていた。実際に分社され た場合、同業他社との連携があるのか否かが、次の注目点になる。三菱重工はすでに、LNG船の設計・営業で、新造船建 造量国内首位の今治造船(桧垣幸人社長)と合弁会社MI LNGカンパニーを設立していることに加え、さまざまな面で 今治造船との連携を深めている。他方、大島造船所(南尚最高代表)は、代々の工場長を三菱重工長崎造船所から迎え ていることに加え、バルカーの設計で三菱重工と協業した実績を持つ。名村造船所(名村建介社長)も近年、三菱重工 との関係を深めている上、三菱重工が得意とするガス船への進出に意欲を持つ。今年10月には佐世保重工業を完全子 会社化した。近年、2度の合併により建造量国内2位となり、造船統合の担い手を自負する造船専業大手ジャパンマリン ユナイテッド(三島愼次郎社長)の出方も注目される。連携があるとすれば、三菱重工と最も関係の深い今治造船が最 有力候補となる。ただ、今治造船は中国・大連のブロック工場を除けば、瀬戸内海域内で工場を運営する方針を掲げる。 地理的には大島造船所、名村造船所が近い。いずれにしても、三菱重工は設計の人材が豊富で、同業他社は共通して その点に強い関心を示している。 ◆三菱重工/造船の分社構想が浮上 《構造改革へ残された選択肢》客船の巨額損失を背景に造船事業の構造改革 を検討している三菱重工で、造船事業の分社案が浮上している。過去にも三菱では造船分社の構想がなかったわけで はないが、ここ数年で神戸造船所の商船撤退などの手を打ってきたこともあり、再建に向けた抜本策のメニューはそ れほど残されていない。その中で、「香焼工場の分社」や「造船事業分社」が有力な選択肢となっているようだ。三菱重 工は商船事業の構造改革について、来年度からの中期経営計画の一環として盛り込むべく、船舶海洋事業部も含めた 交通・輸送ドメインが検討を続けている。24日、証券取引所に「分社化を含め様々な可能性を検討していることは事実 だが、現時点においては決定した事実はない」と公表した。構造改革の対象となる「商船事業」とは、長崎造船所香焼 工場と下関造船所の事業を意味する。艦艇の建造・修繕については、昨年の事業ドメイン制への移行時に船舶海洋事業 部から分離して防衛ドメインによる運営へと移行しており、これに伴い、長崎造船所立神工場と横浜製作所も防衛傘下 となっているため、対象には含まれていない。「構造改革」というからには、単なるコスト削減などにとどまらない抜本 策にまで踏み込むことになる。とはいえ、三菱の造船事業はここ数年で、既に商船と艦艇の分離や、神戸造船所の商船 撤退、バルカーやコンテナ船などの一般商船の製造からの撤退などの手を打ってきたわけで、残る次の手は限られて いる。事業撤退や工場売却までいかずとも、残された手段は、香焼工場の商船撤退や、エンジニアリング事業への特 化、他社との造船事業統合のように、いずれも大規模な構造転換であり、「分社化」による経営の立て直しは、その最初 のステップとなる有力候補とみなされてきた。実際、「分社」は、以前から三菱重工の船舶事業の改革メニューとして、 社内でも何度か検討の対象にあがっていたようだ。「過去にも造船事業の分社化や長崎造船所の分社などを検討し、 シミュレーションだけでなく具体的に提案されたこともあった」(三菱関係者)。以前は艦艇事業の存在などから分社は 難しさもあったが、既に艦艇が別組織になったこともあり、三菱がここのところ各部門で「事業会社化」を進めてきて いる点なども、造船分社への布石となっている。分社にはいくつかの選択肢もありそうだ。現在報道されているのは、 香焼工場を分社するという案で、ちょうど99年に日立造船が有明工場を分社したものと類似の形とみられる。一方で は、2001年に川崎重工やIHI、住友重機械などが相次いで造船事業を分社したように、造船事業分社で「三菱造船」を設 立するようなアイデアがないわけでもなさそうだ。業界内では、三菱が分社の先にどのような姿を目指すのかを見定 めようとの姿勢も強まっている。近年は今治造船をはじめとした専業造船所と技術協力を核に関係性を強めている三 菱だが、「本筋は、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)や川崎重工など重工系との造船大統合であるはず」(造船経営者) との見方も一方ではある。三菱の構造改革には、業界が注視している。 Ⅱ.国内造船・造機関係の動向 ◆10月の造船統計/生産指数54.7%増84.3、国交省調査 国土交通省は2014年10月分の造船統計速報をまとめ、生 産指数は前年同月比54.7%増の84.3となった。生産指数は10年の竣工船価を100とする。鋼船の受注は5隻(総重量19 万6,000㌧)、起工は29隻(同109万5,000㌧)、竣工は32隻(同149万4,000㌧)、竣工船価は1,453億円だった。国内の造 船会社の主要53工場が調査対象。国内船の竣工実績は1隻(同2,000㌧)で、生産指数は65.0。一方、輸出船の竣工実績 は3.1隻(同149万2,000㌧)。内訳は一般貨物船1隻、鉱石専用船2隻、バラ積み船11隻、鉱石兼バラ積み船12隻、一般油 送船1隻、化学薬品船3隻、液化天然ガス(LNG)船1隻だった。輸出先としてはバハマ、マーシャル諸島が目立った。生産 指数は85.3。修繕実績は101隻、工事金額は35億円。 - 2 - ◆11月受注73%減34万総㌧、船舶輪組まとめ/単月実績、年初来最低 日本船舶輸出組合(船舶輸担が11日発表した 11月の輪出船契約(受注)実績は、34万総㌧17万CGT=標準貨物船換算㌧)と前年同月比73%減(CGTベースで73%減) だった。総㌧ベースでは今年に入り単月実績として最低。11月末の手持ち工事量は前年11月末比ではプラスとなったも のの、前月比では5カ月連続のマイナスとなった。4-11月の累計受注実績も減少に転じた。11月の契約隻数は前年同月 比26隻減の10隻にとどまった。船種別内訳は、ハンディサイズバルカー2隻▽ハンディマックスバルカー7隻▽パナマッ クスバルカー1隻。このうち、海外船主向けの純輸出船は5隻だった。契約方法は全て現金払いで、㌧数ベースの契約形 態内訳(シェア)は円建て13%、外貨建て87%商社契約は7%だった。納期別内訳は、2015年度44%▽17年度46%▽18 年度10%。輸出船の竣工量を示す11月の通関実績は62万総㌧(28万CGT)で42%減(CGTベースで40%減)となった。通 関隻数は8隻減の14隻に落ち込んだ。11月末の輸出船手持ち工事量は657隻、2,740万総㌧(1,321万CGT)だった。前年 同月末の594隻、2,516万㌧(1,179万CGT)は上回ったものの、前月実績(661隻、2,768万総㌧、1,332万CGT)は下回った。 ◆11月の受注/今年最低の34万㌧ 《輸組統計、騒音規制後の減速鮮明》日本船舶輸出組合(輸組)が11日発表した11 月の輸出船契約実績は10隻・34万総㌧だった。総㌧ベースで前年同月比73%減と、今年最低の水準となった。7月の契 約船からIMO(国際海事機関)の騒音規制が適用されることを受けて6月までは契約が相次いだが、駆け込みの反動な どから7月以降は大幅に減少している。1-11月の契約実績は前年同期比8%増の312隻・1,363万総㌧だった。6月の駆け 込み契約などの影響により年間の受注量は高水準となっているが、7-10月は平均すると月間60万総㌧のペースに落 ち込んでいる。年度ベースの累計受注量では、前年度同期を下回るなど減速感が鮮明になっている。11月の契約船の 内訳はバルカー10隻(ハンディ2隻、ハンディマックス7隻、パナマックス1隻)となっている。10隻のうち純輸出船は5隻だ った。11月の受注船の契約態様は、㌧数ベースで円建て契約13.0%、外貨建て87.0%だった。現金払い契約は100%、商 社契約は7.0%。納期別では2015年度もの44%、17年度もの46%、18年度もの10%だった。竣工量に相当する通関実績 も、11月は前年同月比42%減の14隻・62万総㌧となり、大幅に減少した。 ◆手持ち工事量、2,740万総㌧に減少【海事プレス/12.12】 日本船舶輸出組合がまとめた今年11月末時点の手持ち 工事量は657隻・2,740万総㌧(1,321万CGT)で、10月末時点から減少した。手持ち工事は5カ月連続で減少が続いてい る。納期別の内訳は、2014年度引渡分103隻・434万総㌧、15年度281隻・1,099万総㌧、16年度170隻・741万総㌧、17年度9 7隻・442万総㌧、18年度以降6隻・24万総㌧だった。 ◎日本造船工業会 ◆受注回復も需給ギャップ解消せず 《造工・佃会長、「新市場進出必要」》日本造船工業会の佃和夫会長は16日に定 例会見を開催した。今年も世界的に受注量が回復したが、「基本的な体力の増強、技術革新、新しいマーケットへの進出 への努力」の必要性を強調した。来年の見通しについても今年と変わらず厳しい状況は続くとの認識を示しており、依 然として緊張感を持って事業に取り組んでいかなければならないとした。佃会長の発言要旨は次のとおり。〈造船業の 現状と展望〉Δ今年は世界的に受注量が回復し、日本の造船業も手持ち工事を2-2.5年くらい確保し、2014年問題をク リアできた。ただ、危機的な状況は回避できたが、造船業の立て直しに対して時間的な余裕ができたという認識で、基 本的な体力の増強、技術革新、新しいマーケットへの進出への努力という3つの課題は常に緊張感を持って取り組んで いかなければならない。Δ今年も世界で8,000万総㌧、日本は1,500万総㌧くらいの受注量があるのではないか。世界 全体の荷動き量から考えた適当な受注量は年間6,000万総㌧程度だが、それを上回っている。需給ギャップが依然とし てあり、船価が戻っていない。Δ景気は緩やかに回復に向かいつつあるが、造船業は、海運市況の回復も見込めるとは いえ緩やかなもので、来年も今年の厳しい状況は引き続き続くのではないか。Δ来年の受注量が世界で4,000万総㌧ くらいならば、ここ2年の造り過ぎの状況を調整できるが、そこまでは減少しないだろう。〈為替について〉Δ為替相場の 来年の見通しとして多くの方々がおっしやっているのは120円前後。急激な変化は好ましくない。円安を受けて企業の 株価や業績は好転しているが、この状況を利して次の成長戦略をどう展開していくかが大きな課題だ。〈原油価格につ いて〉Δ原油価格の急落は、海洋進出や燃費性能の高効率船を売っていく上でマイナスの面がある。ただ、一概に造船 業にとって負のインパクトがあると悲観することはない。長期的に見て高効率船の価値が高いのは明らかで、続けてき たことを変わらず続けていく。〈賃上げについて〉Δステークホルダーは従業員だけではなく、株主や顧客、社会などが 数多くいる。各ステークホルダー間でのバランスを取りながら調整していくことが必要だ。〈造船首脳会議(JECKU)〉Δ これまで中国は強大な建造能力を背景に世界を席巻してきたが、ここ1-2回の会議では市場の需給ギャップにも注目 し、中国の建造能力を見直して、生産性にも注目していかなければいけないと中国の関係者は言っている。世界で共通 の問題意識が醸成されつつある。Δ現在、500あるといわれている中国の造船所も生産性の低いところは淘汰されつ つあるようだ。〈人材不足について〉Δ造船業と建設業は似通った仕事をすることから、人材不足は一過性のものでは ないか。一過性の人材不足を補うため、緊急措置として外国人研修生の受け入れも決まっている。緊急措置の支援も 受けながらこの状況は乗りきれると考えている。 ◆「需給差は依然存在」/佃造工会会長、警戒感崩さず 日本造船工業会の佃和夫会長(三菱重工業相談役)は16日、 都内で会見し、受注量が回復しているものの「船腹がだぶついている状況が続き、船価が戻らない。需給ギャップの差 は依然として存在している」と警戒感を崩さない姿勢を示した。国内造船所は、おおむね2年半の仕事量を確保してい るが「あくまで造船業の立て直しに対して時間的な余裕をもらったという解釈」とし「経営、技術基盤を強化し、新市場 - 3 - への進出努力を続けることが重要」と断言した。足元では労働力不足による「人件費高騰のコストインパクトは非常に大 きい。どこまでコストを抑えられるかという緊張感が常にある」状況。円安に振れていても「猛烈な円高時に製造、調達 の軸足を海外に移しており、すぐに構造を変えるのは難しい。各企業とも為替の急激な変化は好まない」とした。また、 原油安により日本が得意とする付加価値の高いエコシップではなく「イニシャルコストの安い方に流れる恐れもある」 との見方を示した。 ◆造工会長 来年も厳しい状況続く/手持ち確保で基盤強化 日本造船工業会(造工)の佃和夫会長は16日の定例会 見で、来年の事業環境について「今年と基本的に変わらない。厳しい状況が続く」との見方を示した。「受注が伸び、日 本のバックログ(手持ち工事)も2.5年程度となり、危機的状況は回避した」と語る一方、「世界の今年の受注量は8,000 万総㌧ほどになりそうだが、6,000万総㌧程度が適当」と需給ギャップが大きい点を指摘。厳しい状況下、引き続き経営 基盤強化や技術基盤強化、国際協調を推進していくことの重要性を指摘した。人材不足については、政府が6月に閣議 決定した「日本再興戦略」に造船業の労働力不足に対する緊急的時限措置が盛り込まれたことなどに触れ、「措置の助 けを得ながら乗り切れると考えている」と語った。原油価格下落による海洋事業などへの影響については「原油価格が 安くなることは、プラスとマイナスの両面がある。負のインパクトがあると悲観することはない。進むべき方向は一定」 と説明した。 ◆成長は海外で、新たな造船所計画 《アジア諸国で造船振興政権が誕生》常石造船がセブ島へのエ場進出から今年 で20年を迎え、新たな造船所の計画を始動した。川崎重工やサムスン重エも、海外での造船事業への投資を進めよう としている。造船市況が冷え込む中でも、新たな成長を海外に求めようという動きが出ている。-方、アジア諸国では 自国の造船業振興を図る政権が相次いで誕生しており、国内生産を義務付ける「ローカルコンテンツ」のような政策が 登場する可能性もある。日本をはじめとした先進造船国への技術や出資の要請も強まりそうだ。《常石は「内需獲得」 に》司会 常石造船が今年、セブ島への進出20周年を迎えた。パーティーや記念行事なども開催されている。― 常 石セブは連載記事でも取り上げていたが、他の造船所の経営者からも、改めてよくぞ20年も続けたという声が出てい る。― 当初は失敗するだろうという見方が多かっただけにね。20年前は山賊が出たとかジャングルの中に工場を切 り開いたとかいう話はいろいろと聞くが、いまはゲストハウスは立派で、工場も整理がされている。よくここまで来たと いう印象を持つ。― それにしても、内需もないし、工業的なバックグラウンドもない国でなぜうまくいったのかは、や はりよくわからない。進出のタイミングや投資の時機が良かったというのもあるだろうが。― いろいろと成功の要因 は考えられるけれど、骨を埋める覚悟で事業を開いた、という部分が大きかったということではないかな。退路を断っ て進出した面もあったし、だからこそ地元に根差してやろうとなったのだろう。― ただ、ここまでは順風満帆ではな かった。工程の乱れなどは最近でもあったからね。― そこは、「まだ20年」という言い方ができるかもしれない。中国 の舟山工場も含めて、これからだろう。― 常石の次の海外計画も始まろうとしている。― 建設地はインドネシアで 内定といわれている。これはセブや舟山とは全く違う形になりそうだ。まずは修繕からとなるようだが、どちらかとい うとインドネシア国内の船舶がターゲットになるようだ。― 内需獲得型の進出だね。そうすると、神原グループとして パラグアイで進めている造船所に近い。― フィリピンでは新たに内航船の造船所も検討しているようだ。これまでセ ブと舟山では、輸出型の大型造船所を目指していたが、常石の海外事業が内需型になってきているようにみえる。― 年内で多度津も売却するから、大きな節目になる。― 海外事業を担当していた河野健二専務が、来年1月に常石造 船の社長に就任することになった。セブの経営経験が長く、海外事業の理想と現実をよく知る河野氏が率いることで、 常石の海外重視の方向性がはっきりしてくる。《サムスンは国内補完型》司会 常石の新工場の話だけではない。海外事 業に関する話題は他にもいくつかあったね。― 同じく「海外派」の川崎重工が、大連中遠川崎船舶工程(DACKS)の第 2ドックの建設を決めた。今年は年初から掲げていたテーマのうちの1つだ。― 川重と常石は海外進出の時期も同じだ ったが、これまで工事拡張などのタイミングもほぼ重なっていた。今回もまた、次の大型投資の判断時期が同じになっ た。― もう1つは、サムスン重工だ。こちらも東南アジアへの工場進出の検討が本格化している。ベトナムで大島造船 所が工場建設を中止したカムラン湾が有力といわれている。― ただ、サムスンは、予定していたサムスン・エンジニア リングと合併が、株価の問題で中止になってしまった。海外進出もこれとセットでの計画だっただけに、どうなるかわか らないのではないか。― でも、サムスンは韓国内の工場で海洋事業の比率を高めるという方向性は変えていない。 そうすると、従来の商船の顧客からの取引要請に応えるためには、やはり商船の建造拠点として海外工場は必須にな ると思う。― サムスンももともと中国でのブロック製作にいち早く進出していた。国内外での分業の志向が強い造船 所だ。― その点では、常石セブや川重の中国と同様に、サムスンの海外工場は国内補完の位置付けが強いようだ。 《インドはLNG船?》司会 一方のアジア諸国では、造船業を振興しようという計画が出てきている。― 政権が変わった インドとインドネシアで、造船振興策が立ち上がっている。インドでは、モディ新首相が国内製造業振興キャンペーンの 「メーク・イン・インディア」を立ち上げて、造船業も支援していく考えのようだ。― インドは長年、造船振興がいまいち 進まず、最後の「BRICs」ともいわれていた。インド船社も、国内造船所との取引強化を国から求められても、新造船は韓 国などに発注してきていた。― うん。ただ今回は、「ローカルコンテンツ」のような政策を打ち出す可能性がある。当 面の注目はGAIL(インドガス公社)の新造LNG船商談で、9隻中3隻の国内建造を求めているが…。これは実現はちょっと 疑問だね。海運会社は難色を示しているだろう。― そもそも技術協力する海外造船所がいない。日本造船所も韓国 ビッグ3も基本的に断っているようだし、協力を申し入れているのは再建中のSTX造船だけのようだね。― ロシアのL NG船建造プロジェクトもそうだったが、大型船の建造経験のない造船所がいきなりLNG船というのはさすがに厳しいと 思う。― 造船振興といえば、インドネシアもジョコ新大統領が「海洋国家」構想の一環として、造船業に対して優遇税 制などの支援を検討しているようだ。― こちらは、もっとローカルの小型船の話になるようだ。インドネシアは島しょ - 4 - 国で、国内を走るフェリーや貨物船の老朽化などが大きな課題となっている。造船所や修繕ヤードの整備と近代化が 長らくテーマとされてきた。― 常石造船の進出も、この一環になるのだろう。インドネシアはもともと日本への技能研 修生も多いね。― 他にもミャンマーやベトナムなどいろいろ造船振興の計画があるようだ。当然、日本や韓国の造船 所への支援要請があると思う。― もともと、ある程度の協力関係はあった。インドネシアでは、三井造船がパル造船と 長年協力しているし、インドでは三菱重工やJMU(ジャパンマリンユナイテッド)、名村造船などが現地造船所に技術支援 などを行っている。こうした関係をどこまで発展させるかということもあると思うが。― でも現地造船所を指導する ような人材がいないのではないか。この人手不足では、海外を助けている余裕がないのが実態と思う。ブラジルに出 資と技術供与を進めている造船所も、こちらにリソースを取られているしね。― 戦略的に海外事業をどう捉えるかだ ろう。さまざまカントリーリスクもある中で、それでもやろうというのは、やはり「覚悟」になるのだと思う。 ◆造船全般/人手不足と巨額赤字が問題に(上) 《受注進んだが拭えぬ不安》2014年の造船業界をキーワードで振り 返ると、『仕事不足の解消』や『円安』、『海洋進出』といった前向きなものと『人手不足』、『巨額赤字』などのネガティブ なものにはっきり二分する。大量受注で仕事不足の懸念は薄らいだものの、代わって人手不足の問題が浮上。また、円 安による採算改善がある一方で、高付加価値案件での巨額赤字も続出した。《「人手不足」、日本の転換》司会 2014年の 造船業界を振り返ろう。キーワードがいくつかあったと思う。その1つは『仕事不足から人手不足』だろう。― 仕事不足 の心配は解消された。昨年から今年前半にかけての大量受注で、造船所は3年分の仕事を確保した。― 7月の騒音規制 適用前までの駆け込み契約が1つの節目になった。7月以降は、商談もばったりだね。ドライ市況がこれほど悪いから。― それでも造船所は今のところは落ち着いている。手持ちに余裕があるからだろう。― 仕事不足が解消されたのは日 本だけではない。中国もかなり受注して、民営なども線表が伸びた。― 昨年からの1年半だけで、世界では1億6,000万 総㌧くらいの新造発注があったようだ。この発注残が、後々また禍根を残すかもしれないが…。― ひとまず16年いっ ぱいくらいは安心になったが、日本では今度はその仕事をこなせるかどうかが課題になってきた。年初から、話題とい えば人手の問題ばかりだね。― 造船所が操業を一斉に戻し始めたことで、瀬戸内を中心に、協力工が逼迫している。 震災復興に人が取られていることもあるし、ここ数年の仕事減で協力会社でベテランの引退などもあり、絶対量が減 っている。― 遍迫はある程度予想できていたけれど、一部の造船所が工程の遅れを挽回するために外注を増やして いることも人手不足に拍車をかけているね。下請けや孫請けの引き抜きのような詰も聞いている。― 設計も人手不足 だ。ただ今年に始まったことではなく、ここ数年は新設計船開発やルール対応で設計は多忙だ。設計の遅れが、建造工 程にまでずれ込み、いよいよ工程遅れも聞こえてきた。それで外注を増やすという点で玉突き的に不足感が強まって いる。― ブロックの加工外注の取りあいといえば10年前を彷彿とさせる。― 当時の逼迫で内作率を高めた造船所も 少なくない。そうした造船所は今回助かっているようだ。― 今年は外国人研修制度の緩和が決まったほか、国土交通 省でも委員会が開催された。人材の点では、今年は大きな転換点だったろう。― それにしても、これから先、日本がこ れまでのような量を建造できるかどうか。人手の面でも、技術の点でもね。省エネによる日本の再評価が昨年の大量 受注を呼び込んだし、もともと日本は納期の面でも評価が高いが、本当にこれらを実行できる力が残っているかが心 配される。《「巨額赤字」で高付加価値の岐路》司会 日本にとってもう1つのキーワードは、やはり『円安』だろうか。― 今 年は低船価船の建造が本格化するということで、造船業界にとっては採算改善が大きなテーマになっていたが、日本 は思わぬ円安で救われた。― 1㌦=120円にまで一気に円安が進んだことは、採算面での影響が大きい。ちょうど㌦建 て船が増えているところに、この為替だ。これでずいぶんと救われるだろう。― 一方、ライバルの韓国はウォン高で商 船の採算が悪化している。― 韓国の場合は、今年は海洋での『巨額損失』が大きなトピックスだ。現代重工とサムスン重 工の大手2社の海洋赤字が話題になった。― 3,000億円の赤字を出した現代重工は、トップをはじめ役員多数の引責辞 任や組織の大リストラ、20年ぶりのストなど、大きく揺れた1年だった。造船世界最大手の苦闘が目立った。― 韓国とい えば、リーマン・ショック後、一昨年までは新興ヤードの淘汰、昨年はSTXなど中堅ヤードの危機と、徐々に経営問題が上 位グループに広がってきたが、今年はついに大手にまで波及した。― 一方の日本では、三菱重工の客船で1,000億円 の赤字という衝撃的な出来事があった。これについては後でまた時間を設けて話そう。― 三菱も韓国も、赤字の構造 が同じだった。高付加価値路線への挑戦で、契約時に詰め切れていない点などが実際の設計や建造の段階で問題とし て噴出した形になってしまった。― この赤字で路線を見直すかどうかが注目されたが、韓国は結局すぐに海洋の受注 を再開したね。原因の検証などももちろん行っているが、時間を掛けず、ある程度は走りながら立て直すということだ ろう。― 海洋で生きていくという路線は変えない。一方で三菱はすぐに客船の後続船受注という雰囲気ではない。 《「海洋元年」》司会 韓国では海洋で大きな赤字を出したが、日本も「海洋」がこれまで以上にクローズアップされた。― 具体的な案件がいくつも出てきて、「海洋元年」といってもよい。IHIの船体部などの相次ぐ受注や、川崎重工のオフシ ョア作業船、新潟造船の作業船などの受注があったし、日揮などのプラント・メーカーの参入もあった。舶用メーカーも 本格的に参入への取り組みを進めた。― ただ、韓国のような赤字を見るとさすが怯むよね。現代重工なら3,000億円 の赤字を出しても耐えられるのかもしれないが、日本の企業では会社がつぶれてしまうよ。― 海洋の事業リスクの大 きさは皆認識していた。IHIや三井造船が、上載プラントではなく船体部の建造に特化するという新しいスキームをとっ たのも、そのためだ。― 造船所がEPC(設計・調達・製造)を全て丸抱えでやるのではなく、連携して手掛けるという形 になる。これは設計などにもいえるが、自前ではなく外部の力を借りるという方向性が海洋をきっかけに強まった。― ただ、やはり実際のプロジェクトが始まると、設計の遅れなどで各社とも苦労している。商慣習の違いなどに直面して いる面もあるだろう。簡単ではない。― 今後は原油安が気になるところだ。― それでも、海洋は引き続き日本にとっ て大きなテーマになりそうだ。人材育成や日本近海でのなども含めて、来年以降も動きがある見込みだ。日本の造船 所で過去に海洋を手掛けた人たちがまだ残っているが、継承という意味では最後のチャンスともいえる。《来年に継が - 5 - れるテーマ》司会 それから毎年続いている『再編』も引き続きのテーマだった。― 日本では名村造船所と佐世保重工 のグループ化があった。中堅グループの中でも規模による勝ち残りを求めた再編が登場した意味は大きい。― 韓国で はSTXなど再建中の中堅造船4グループの統合構想が持ち上がった。結局実現はしていないけれど、規模を大きくする ことで競争に勝つというのが、共通認識になっている。― 中国も国営ヤードへの集約という再編が一歩進んだ。ただ、 こちらは期待していたほどのスピード感はない。― というより、再編によってキャパシティが大きく減るという期待とは 違う形になっている。再編は来年以降も大きなテーマになる。― それから、今年の『騒音規制』は業界に大きな問題を 突きつけた。これまでの規制とは全く種類の違うものだった。― うん。従来の構造規制は、手間やコストが増えるとい う問題はあるにせよ、それでも解決はできるものだった。来年発効のHCSR(調和型共通構造規則)も、影響は大きいが 対応できないわけではない。ところが騒音規制は発効して半年が経ったいまなお、船型によっては解決策が見えてい ない。技術的に解決できない規制が登場したというのは、前代未聞だ。― 来年から新規制が次々と出てくるが、かなり 苦しくなる。技術者が忙しいとか、採算が厳しいという点だけでなく、造船業のあり方に関わるような気がする。― こ うして見ると、今年のキーワードの多くは全て現在進行形だね。人手不足や採算も2015年に引き続き大きなテーマに なりそうだ。 ◆国内造船所/日本造船、再編・規模で戦う(中) 《「挑戦」のリスクも顕在化》最大手の今治造船や、統合造船所のジャ パンマリンユナイテッド(JMU)がLNG船など新規船種への参入で「規模のメリット」を示す中、名村造船所が佐世保重エ の子会社化で、やはり規模による勝ち残りの道を示した。新規分野への挑戦として、海洋などの具体案件が続々と持ち 上がるが、一方では、「挑戦」で先行していた三菱重エの客船が大きな赤字に陥り、衝撃を与えた。《三菱の危機》司会 続いて国内造船所の2014年の話題を振り返ろう。今年もいろいろな出来事があった。― まず挙げるとしたら、三菱重 工の客船赤字だ。毎年末のこの座談会でも、「今年最も動きがあった造船所」として三菱重工の名を何度も挙げてい た。最も戦略的に改革を進めている造船所という意味で言っていたのだが、客船は、その改革の象徴的なプロジェクト だった。― そもそもその改革を実現する力が本当に三菱にあるのか、という厳しい見方も以前から外部にはあった。― だが、客船以外は順調だったご特に大きな挑戦が客船だったわけだが、これほど混乱が拡大するとは、三菱重工側 だけの原因なのだろうか。それくらいに赤字額が大きすぎる。― 同様の巨額赤字を海洋で出した韓国大手は、海洋シ フトの路線は継続して、後続案件の受注もした。一方で、三菱が客船事業を今後どうするかは、まだ見えていない。― 今回は「プロトタイプ」ならではの赤字としていた。2隻で仕様が固まれば後続船では同じような失敗は起こり得ない、 リカバリーできるともいわれているが…。― 当面はLNG船の需要があるから問題はないが、その先はどうするのか。下 関だけとか、艦艇だけでやっていくのは現実的には難しい中で、長崎が何を造るのかだ。― 多くの人が言っているこ とだが、三菱重工は日本造船業の技術基盤を支える企業であることは間違いない。今後の行く末は誰もが見ている。 《上位グループが規模を追う》司会 ここ数年の大テーマである造船再編では、名村造船所による佐世保重工の子会社 化が今年の大きな動きだった。― 年初から、佐世保の他社との統合という観測が業界内にはあったが、名村との話が ここまで詰まっていることを知っている人は少なかった。― 名村は造船再編の軸として躍り出たわけだが、これまで 函館どつくと楢崎造船を系列化してきた過去がある。― これで佐世保と函館というかつての名門造船所が、再び同じ グループになった。― ただ、そういう歴史的背景より、規模がなければ勝てないというメッセージを掲げたことが重 要だったように思う。特に開発の面での規模の重要性だね。― JMUが統合時の狙いとして全く同じことを言っていた。 JMUも名村造船所も、船型開発ではユーザーにしっかりマーケテイングをしていることが有名で、デザインへの顧客の 評価も高い。こういう開発重視の造船所からすると、技術者のリソース不足に対する危機感は強いのだろう。― これ で国内造船所のグループ化がかなり進んだ。商船の建造量で見ると、今治造船グループ、JMU、常石造船、川崎重工、そ して名村グループ、大島造船が、100万総㌧超えのトップ6社だ。― 各社とも、この規模に増やしてきた過程が違う。統 合再編で大型化したのが今治とJMU、名村。常石と川重は海外工場で量を増やし、大島造船は単一工場の生産性を突き 詰めることで規模を拡大してきた。この方向性が、各社の戦略にもそのまま当てはまる。― うん。各社とも、勝ち残りの ためには一定の規模が必要という認識は共通している。今治造船の多度津買収や、常石造船と川崎重工の海外工場 への投資など、今年は国内造船所のトップグループが不況下でも規模を拡大する動きに出ていた。― 単に工場建設だ けが規模を獲得する手段ではないし、同じく統合・再編だけが日本造船業の手ではない。各社が戦略に沿った形で規模 による競争力を求めることが、日本の造船全体の競争力だけでなくシェア奪還にもつながるのだと思う。攻めるトップ グループ司会 ではこれらトップグループのこの1年を振り返ろうか。― まずは今治造船とJMUだが、いずれも「総合 造船所」としての路線を進めたように思う。今治造船はLNG船の再進出があり、メガコンテナ船の受注残も14隻にまで 増えた。― 今治はここ最近は全工場ともバルカーが中心で操業も若干落としていたが、また高付加価値案件の建造 も増えてくるし、操業も高まる。今治の操業が、瀬戸内の協力工のマーケットに与える影響も大きい。― 来年1月に常石 から多度津造船を買収する。人手不足のいま、タイミングが最適だったといわれるね。ドック拡張などの大型投資もコン スタントに進めているので、ハード面で規模を増やしていく傾向は続く。― JMUは今年は、LNG船にメガコンテナ船、フェ リーの受注があった。統合時に目標として掲げていた船種はほぼ全て受注した形だ。― 統合効果を本当に示すには、 「受注ではでなく採算」と言っている。新規船種の建造が本格的に始まる来年が、JMUにとって重要な年になる。― 「海 外組」の常石と川重だが、常石は今年がセブ進出から20周年を迎えた。― うん。品質などの安定という点ではまだ時 間がかかっているような声も聞くが、1つの時代を築いたのは間違いない。― 新工場の計画は年内に正式発表と思っ ていたがまだ出ていないね。いずれにしても、海外メーンの体制は変わっていない。― ただこれからは、どちらかとい うと内航船やバージなどが海外造船所の中心になってくる。他の大型造船所とは少し違う姿になっていくかもしれな い。― 川崎重工は海外への追加投資もあるが、それよりも今年はノルウェーからトップサイド・ドリリング船を受注したこ とが大きい。北欧の「海洋クラスター」に参入したのは画期的なことだ。「GOOD戦略」を一歩進めた形だね。新規市場へ の参入では、川重はいつも周到に進めている。― ただ実際の建造はこれからで、ドリルシップ船体部も苦労しているよ うだ。やはりGOODの成否は来年からが本番だろう。― 大島造船所はベトナム進出を中止したが、その候補地に韓国の - 6 - サムスン重工が進出しようとしている。それだけ魅力的な場所だったということだろう。― 大島造船は当面は、大島 の中で競争力を高めるという方向性だ。単一工場であれだけ生産性を上げて利益も高めて船主からも評価を得てい る。造船所の大手の中でも、大島造船の利益率や生産性をベンチマークにしているところもあるくらいだ。そこに磨き をかけるということだ。《海洋ヤードが立ち上がる》司会 もう1つのテーマが海洋だ。ここでも動きがあった。― IHIが海 洋構造物の受注を相当数を重ねた。来年から愛知工場が「海洋ヤード」として本格的に建造を始める。― 韓国の海洋 での赤字などを見た後だけに、海洋が集中する愛知を心配する声もある。― ただ、IHIの場合は船体部の建造のみを手 掛けて、リスクを抑えこんでいるようだ。― それから、本格的な海洋工場になってくると、JMUとの棲み分けはどうなる のかという視点が強まる。JMUも海洋を新規分野に位置づけているだろう。競合することはないだろうが、製品が分か れているわけでもない。あるいは、いずれJMUが愛知を傘下にするとか…。― それはないと思うけれど。ブラジル事業 やリグの開発でも両社は協力しているし、それぞれが協力しながら案件を追いかける形になるのだろう。― 海洋とい うことでは、三井造船が全社的に海洋を強化する方針を出している。もちろん三井海洋開発あってのことだ。― LNG船 への対応など、業界内でも三井造船の立ち位置が見えにくいといわれるが、その中でも海洋強化という点は明確にな っている。やはり船体部という形での進出で、千葉のクレーン増設なども海洋対応のようだ。― 少し方向性が他の造船 所とは違う形になってきているね。《手持ち不足は懸念払拭》司会 昨年から日本の造船はおしなべて受注が進んだ。― 最も先物まで行っている尾道造船は2020年の「オリンピック船台」が視野に入っている。― これまで工事不足が懸念 されていた造船所も3年は埋めた。代表格が、住友重機械。アフラマックス型で2017年半ばまで埋めた。操業対策として ブロック製作なども行っていたが、受注残が2ケタに戻った。― 内海造船も2017年半ばまで埋めた。佐世保重工も受注 が進み、来期は新造・修繕ともに多忙になるようだ。― 様変わりというのはこういうことだね。中小造船所も状況は同 じだろう。― その分、人手不足や工程遅延などがあちこちで聞こえてきている。中小造船所ではブロック確保などに も苦労しているし、来年はもっと深刻になる。戦略も大事だが、足元を固めることも重要な年になる。 ◆新造船市場/騒音規制でブーム期並み受注(下) 《後半は急減速も、LNG船商談盛況》新規制の適用などもあり、前 半と後半で全く様相の異なる展開となった2014年の新造船市場。前半は昨年を上回る好況に沸いたが、7月以降は新 造商談が停止した。発注に対して警戒感の見られる船主と手持ちエ事を確保した造船所のにらみ合いが今もなお続い ている。ただ、来年も新規制の適用があり、今年のような駆け込みを期待する声も大きい。また、日本向けの米シェール ガス輸送でLNG船の調達商談が夏場から佳境を迎え、盛り上がりを見せた。《駆け込みに沸いた前半戦》司会 さて、新造 船マーケットのこの1年を振り返ろう。7月に適用された「改正騒音コード」(騒音規制)を境に状況は一変したが、前半は 史上2番目の受注量となった昨年を上回る受注量だった。― 年初は期近の船台に余裕のあった中国造船所が昨年に 続き、ウルトラマックスを中心としたバルカーを大量受注していた。日本や中国の有力ヤードが船台を埋める中、期近な 納期で安い船価ならば海外船主の発注意欲もまだまだ高かった。― 日本の造船所もオーナ系の有力造船所がコンス タントに受注を重ねて、線表を伸ばしていった。日本の17年船台はあっという間にタイトになった。― 日本の造船所は 開発したエコシップを軸に受注を拡大しており、名村の34型や今治の63型をはじめとして新船型の受注が際立った。― ファンドマネーの存在も前半の発注を後押ししていたね。― 昨年から市場を賑わせていたスコルピオは年初にも22も のバルカーを大量発注した。このほかにも、5月に中国の江蘇熔盛重工や江蘇東方重工が64型バルカー最大36隻をそ れぞれ一括受注するという成約もあったが、発注者の背後にはどうやらファンドが付いていた可能性が指摘されてい る。― こうした発注はあったが、全体としてはGW前後から新造船市場の動きも徐々に鈍くなってきた感があった。海外 船主の発注も一巡し、手を引き始める投資ファンドも出てきていたようだ。昨年から積み上がった発注残を警戒する声 も強くなってきていた。― ただ、5月の状況を「嵐の前の静けさ」と言っていた関係者もいたけれど、まさにそのとおり だった。一気に動き出したのが6月だったね。― 7月1日以降の契約船から適用された騒音規制を受けて、6月は規制を 回避するための駆け込み契約がラッシュした。規制で駆け込みが発生するのは2008年のPSPC(バラストタンク新塗装基 準)以来だった。造船所が6月時点で売っていたデザインは規制には対応していなかったから、多くの造船所が6月末ま でに新造船の契約調印を済ませる必要があったわけだ。― 日本船舶輸出組合(輸組)の統計では、日本の造船所の輸 出船契約実績は91隻・339万総㌧で、6年半ぶりに単月の契約量が300万㌧を超えた。輸組の統計に反映されない海外 工場での建造船や非加盟の造船所を加えると、100隻を優に超えた。― 規制への対応策が見えていなかった1万総㌧ 台のハンディサイズ・バルカーや外航のケミカル船などの契約も急激に増加した。― そういえば、昨年から6月までは ケミカルヤードの受注も際立ったね。規制回避が背景にあったとはいえ、一時は手持ち工事の枯渇も危倶されていた が、17年や18年まで線表を進めている。― ケミカル船ヤードは海外船主や投資ファンドが絡んでくる案件にも積極的 に取り組んだのも大きな特徴だ。ケミカル1本足でやっていこうと思えば、国内だけではなく新規の海外顧客開拓も不 可欠なのだろう。― ケミカル船だけでなく、スエズマックスや中小型LPG船、小型コンテナ船などマイナーな船種や船 型の発注も目立った。― スエズマックスは06年、10年、14年とミニ発注ブームが来ているから、4年周期でミニ発注ブ ームが来るのかな。《7月以降は商談停止》司会 駆け込みなどで上期だけで世界の受注量は5,000万総㌧を超えた。た だ、7月を境に商談は完全に止まってしまった。― 騒音規制前の反動減などで、LNG船などのプロジェクト色の強い船種 以外は動きがパッタリ停まった。バルクの新規の新造商談は全く聞かれなくなったといっても過言ではないほどだ。― 今年はいわゆる「夏枯れ」とは違って、一過性のものではなかった。船価云々の話ではなく、新造船そのものの需要が 鈍くなった。― 発注する船主も海運市況に対する警戒感が強くなって様子見に入ったことに加えて、造船所としても 当面の手持ち工事を確保して、焦って受注する状況にはなかった。規制にも対応しなければならないので、状況がはっ きりするまでは様子を見ざるを得ないという事情もあった。これで双方の様子見の構図がより鮮明になった。― 船価 相場も6月までは緩やかな上昇傾向だったが、7月以降は軟化した。ただ、大幅に値崩れせず、弱含みの傾向は若干あ るものの、現在までほぼ横ばいの推移が続いている。― 採算という意味では日本の造船所は円安で回復しているも のの、船価としてはまだまだ苦しいところ。人手不足によりコストも上昇していることから、いくら為替が円安に振れて いるとはいえ、今の船価よりも下げて受注するのは現状まだリスクもあるだろう。― 当面の手持ち工事を確保してい - 7 - ることや建造コストの上昇という要素を考えれば、円安とはいえ、むしろより高い船価を提示したいところだ。― ただ、 その一方で船主側にとっては必ずしも魅力的な船価とは言えなくなったようだ。《日本向けLNG船商談が活況》司会 バルクの商談は低迷した後も日本向けの米シェールガス輸送のLNG船商談が盛り上がった。― シェール案件では、まず ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が東京ガス向けに2隻を受注した。LNG船の受注は9年ぶり、SPBのLNG船としては24年 ぶりの受注だった。この商談は建造オプションが付いていて、11月にもオプション1隻が行使された。― これで日本の造 船所としては、モス、メンプレン、SPBの3種類のラインアップがそろった。― 続いて大型プロジェクトの「キヤメロンLNG」 では、三井物産向けの5隻がまず決まった。日本の造船所としては川崎重工業の2隻の受注が明らかになった。― 韓国 造船所が日本向けの商談に食い込んでくるのかどうかが焦点とされていたが、三井物産向けの3隻を韓国のサムスン 重工業が受注したね。― 韓国造船大手は海洋の受注に苦戦していたから、韓国ガス公社(KOGAS)向けなどの韓国以 外のLNG船商談に対してもかなりアグレッシブだったようだ。― 海洋の不振で、LNG船以外にもLPG船やタンカー、メガ コンテナ船などの得意とする高付加価値船を積極的に受注していたね。― 特に商船への回帰の傾向が顕著だったの が大宇だ。商船はここ数年で最高の受注高を記録する一方で、海洋は11月までゼロだった。ただ、11月に27億㌦規模の 大型プラントを受注した。― 大手3社とも年末に向けて相次いで海洋案件の受注や内定し、巻き返しを図っている。た だ、年初の受注目標達成はさすがに厳しそうだ。司会 話をLNG船商談に戻そう。キヤメロンでは三井物産に続き、三菱 商事向け、「フリーポートLNG」では中部電力と大阪ガス向け、「コープポイントLNG」では関西電力向けで、日本の造船所 の受注が有力視されているが、何隻くらいになりそうか。― 三菱商事向けの調達隻数は5隻前後、中部電力は最大5 隻、大阪ガスは1-2隻、関西電力は2隻になるようだ。LNGの転売で調達隻数は当初想定されていたよりも減少した。― 一部で韓国造船所が起用される可能性もあるが、三菱重工業と今治造船のLNG船合弁会社MI LNGカンパニー、川崎重 工業の受注が有力視されている。― MI LNGカンパニーと言えば、三菱重工が新パナマ運河通航に対応した18万㎥ 型 の「サヤリンゴSTaGE」を開発した。また、今治造船もエルカノから17万8,000㎥ 型の新鋭船を受注するなど存在感を見 せた。― 日本はメガコンテナ船でも、今治造船やJMUがロット商談に対応して存在感を示した。《来年も待ち受ける規制》 司会 商談再開の兆しはまだ見えないが、来年以降はどう見ているのだろうか。― 来年も規制前の駆け込みを見込む という関係者の意見が多い。受注量は今年に比べて微減か横ばい程度が見込まれそうだ。― 来年7月にも国際船級 協会連合(IACS)の新共通構造規則(調和化船体構造規則、H-CSR)が適用される。さらに2016年1月以降に起工する新 造船からIMOの窒素酸化物(NOx)3次規制に対応する必要もある。今年6月には騒音規制の影響で駆け込み契約が相次 いだが、規制によるインパクトは騒音規制以上ともいわれている。― 建造コストの上昇は不可避な状況で、船型によっ て違いはあるものの両規制で数百万㌦の増加が見込まれているようだ。このため、船主にも大型規制の適用に伴う影 響を懸念する声もあるようだ。― 昨年来の大量受注で当面の手持ち工事を確保していることから、日本の造船所の多 くが規制適用による建造コストの増加分を船価に上乗せしていく考えで、現在も規制適用前の発注を積極的に提案し ているようだ。― 船価は需給環境や円安などを考えると、大幅な上昇は見込めないという見方も多い。ただ、その一 方で、建造コストは規制対応や人手不足などで上昇は不可避な状況だ。その分、上昇に期待するという声もある。― 来年の新造船市場も規制が1つのポイントになりそうだ。現在の新造船市場は静かだが、規制前の駆け込みなどで一定 量の受注量はあるのではないだろうか。 ◎新造船船価 ◆新造船価、バルカ一全船型で横ばい/タンカーはVL50万㌦安 新造船マーケットで、バルカーの船価レベルが弱含 みながら横ばいで推移している。足元の新造船価レベルは、直近と比べてバルカー全船型で横ばい。新造発注そのも のが激減していることに加え、足元のドライ市況が軟化していることから、バルカーの新造船価には当面、下押し圧力 がかかるものとみられている。タンカーは、新造発注が限られ弱含み基調が続く中、最近の成約を反映してVLCC(大型 原油タンカー)の新造船価レベルが50万㌦安となった。マーケット筋によると、バルカーの足元の新造船価レベルは、ケ ープサイズ5,400万㌦(18万重量㌧型)、パナマックス2,900万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックス2,700万㌦(6万 2,000重量㌧型)、ハンディサイズ2,300万㌦(3万5,000重量㌧型)と横ばいで推移している。ただ、今週に入り中国造船 が20万重量㌧型ケープサイズバルカーで安値受注したことが表面化しており、バルカーの新造船価相場に一段と下 落圧力がかかる可能性が高まっている。タンカーの新造船価レベルは、VLCCが小幅続落し、50万㌦安の9,700万㌦とな った。スエズマックスは6,550万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックスは5,400万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディ アムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,700万㌦と横ばいで推移している。済 ◆新造船価、バルカー弱含み横ばい/タンカーも軟化に転じる 新造船マーケットでバルカーの新造船価レベルが、弱含 み横ばいで推移している。足元のドライ市況は続落しており、新造船価相場にも一段と下落圧力がかかる可能性が高 い。運賃市況の急騰を背景に、底堅くなっていたタンカーの新造船価レベルも軟化に転じた。マーケット筋によると、足 元のバルカーの新造船価レベルは、ケープサイズが5,400万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは2,900万㌦(7万6,000 重量㌧型)、ハンディマックスは2,700万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,300万㌦(3万5,000重量㌧型)と弱 含みながら横ばい。タンカーは、VLCC(大型原油タンカー)が弱含み横ばいの9,700万㌦(32万重量㌧型)、スエズマック スは20万㌦安の6,530万㌦、アフラマックスは横ばいの5,400万㌦、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タン カーは20万㌦安の3,680万㌦となっている。ガス船は、VLGC(大型LPG〈液化石油ガス〉船)が弱含み横ばいの7,900万 ㌦(8万2,000立方㍍型、LNG(液化天然ガス)船は横ばいの2億㌦(16万立方㍍型)。コンテナ船は、1万3,000TEU型で横 ばいの1億1,600万㌦、自動車船(PCTC)は6,000台積みが横ばいの6,450万㌦で推移している。 ◆新造船価、バルカー弱含み横ばい/タンカーは小じっかり 新造船価相場がバルカー、タンカーともに横ばいで推移し ている。ただ、足元の海運マーケットでドライ市況が続落し、タンカーが続騰していることを反映。バルカーの新造船価 - 8 - は弱含み、タンカーは小じっかりした展開となっている。マーケット筋によると、足元のバルカーの新造船価レベルは、ケ ープサイズが5,400万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは2,900万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは2,700万 ㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,300万㌦(3万5,000重量㌧型)と弱含みながら横ばいが続いている。足元 のドライ市況は下げ足が強くなっており、加えてバルカーの新造発注が激減しているため、新造船価レベルも一段と下 落圧力を受ける可能性が高い。タンカーは、VLCC(大型原油タンカー)が9,700万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは 6,530万㌦、アフラマックスは5,400万㌦、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,680万㌦と横ばい で推移している。ガス船は、VLGC(大型LPG〈液化石油ガス〉船が横ばいの7,900万㌦(8万2,000立方㍍型)、もNG(液化 天然ガス)船は横ばいの2億㌦(16万立方㍍型)。コンテナ船は、1万3,000TEU型で横ばいの1億1,600万㌦、自動車船(PC TC)は、6,000台積みで横ばいの6,450万㌦となっている。 ◆新造船価、バルカ―・タンカーほぼ横ばい 《中古船価はケープ続落》新造船マーケットで、船価相場がバルカー、タ ンカーともにほぼ横ばいで推移している。海運市況はドライが低迷し、タンカーは好調を続けているものの、新造発注 そのものが両船種で極めて限定的なため、新造船価レベルは双方とも弱含み基調となっている。中古船マーケットで は、ケープサイズバルカーの船価が続落した。マーケット筋によると、足元のバルカーの新造船価レベルは、ケープサイ ズが5,400万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは2,900万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは2,700万㌦(6万2, 000重量㌧型)、ハンディサイズは2,300万㌦(3万5,000重量㌧型)と弱含み横ばい。タンカーは、ⅤLCC(大型原油タン カー)が弱含み横ばいの9,700万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは30万㌦安の6,500万㌦、アフラマックスは横ばい の5,400万㌦、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,680万㌦と横ばバルカーの中古船価相場で は、ケープサイズが続落した。新造リセールは5,400万㌦、船齢5年物は3,900万㌦、船齢10年物は2,750万㌦、船齢15年 物は1,600万㌦と、それぞれ100万㌦下落した。他の船型は弱含み横ばい。パナマックスは、新造リセール3,100万㌦、船 齢5年物2,000万㌦、船齢10年物1,450万㌦、船齢15年物1,000万㌦。ハンディマックスは、新造リセール3,000万㌦、船齢5 年物2,050万㌦、船齢10年物1,350万㌦、船齢15年物900万㌦。ハンディサイズは、新造リセール2,400万㌦、船齢5年物1, 700万㌦、船齢10年物1,250万㌦、船齢15年物900万㌦。タンカーの中古船価レベルは、運賃市況の上昇を映し、全船型で 強含み横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は新造リセール1億500万㌦、船齢5年物7,700万㌦、船齢10年物5,200万㌦、船 齢15年物2,900万㌦。スエズマックスは新造リセール7,200万㌦、船齢5年物5,700万㌦、船齢10年物3,700万㌦。アフラマ ックスは新造リセール5,700万㌦、船齢5年物4,200万㌦、船齢10年物2,700㌦。 ◎中古船船価 ◆中古船価、ケープサイズ小幅続落/バルカー全船型で弱含み 中古船マーケットで、ケープサイズバルカーの中古 船価が小幅続落した。足元の中古船価レベルは直近と比べ100万㌦安。バルカーの他の船型は横ばいで推移している ものの、ドライ市況の軟化を映し、全船型で弱含みとなっている。またタンカーの中古船価は運賃市況の上昇を反映し、 スエズマックスが小幅高となっていることに加え、他の船型も横ばいながら強含みで推移している。マーケット筋によ ると、足元のバルカーの中古船価レベルは、ケープサイズが新造リセールは横ばいの5,800万㌦、船齢5年物は100万㌦ 安の4,000万㌦、船齢10年物は100万㌦安の3,000万㌦、船齢15年物は100万㌦安の1,700万㌦となった。パナマックスは 横ばいで推移しており、新造リセールが3,200万㌦、船齢5年物は2,050万㌦、船齢10年物は1,480万㌦、船齢15年物は1, 000万㌦。ハンディマックスは、新造リセール3,050万㌦、船齢5年物2,150万㌦、船齢10年物1,450万㌦、船齢15年物900 万㌦と横ばい。ハンディサイズは、新造リセール2,400万㌦、船齢5年物1,700万㌦、船齢10年物1,250万㌦、船齢15年物9 00万㌦で横ばい。タンカーの足元の中古船価レベルは、VLCC(大型原油タンカー)が新造リセール1億500万㌦、船齢5年 物7,700万㌦、船齢10年物5,200万㌦、船齢15年物2,900万㌦と強含み横ばいで推移している。スエズマックスは、新造リ セールが横ばいの7,200万㌦、船齢5年物は100万㌦高の5,700万㌦、船齢10年物は100万㌦高の3,600万㌦を付けてい る。アフラマックスは、新造リセール5,600万㌦、船齢5年物4,200万㌦、船齢10年物2,700万㌦と強含み横ばい。 ◆中古船価、ケープサイズ続落 中古船マーケットでケープサイズバルカーの中古船価が続落した。船齢にもよる が、一部では150万~200万㌦下落した。ドライ市況がこのところ下げ脚を早めているのが主因。マーケット筋によると、 足元のバルカーの中古船価レベルは直近と比べ、ケープサイズが新造リセールは200万㌦安の5,600万㌦、船齢5年物 は弱含み横ばいの4,000万㌦、船齢10年物は150万㌦安の2,850万㌦、船齢15年物は弱含み横ばいの1,700万㌦で推移 している。パナマックスは、新造リセールが100万㌦安の3,100万㌦、船齢5年物、10年物、15年物は弱含み横ばいで、そ れぞれ2,050万㌦、1,480万㌦、1,000万㌦となっている。ハンディマックスは、新造リセールが50万㌦安の3,000万㌦、船 齢5年物、10年物、15年物はそれぞれ横ばいの2,150万㌦、1,450万㌦、900万㌦。ハンディサイズは全般的に横ばい。新 造リセール2,400万㌦、船齢5年物1,700万㌦、船齢10年物1,250万㌦、船齢15年物900万㌦となっている。タンカーは運 賃市況の上昇を反映し、全船型で横ばいながら強含み基調。VLCC(大型原油タンカー)は新造リセール1億500万㌦、船 齢5年物7,700万㌦、船齢10年物5,200万㌦、船齢15年物2,900万㌦。スエズマックスは新造リセール7,200万㌦、船齢5年 物5,700万㌦、船齢10年物3,700万㌦。アフラマックスは新造リセール5,600万㌦、船齢5年物4,200万㌦、船齢10年物2,70 0万㌦。 ◆中古船、中型バルカ―小幅続落/30-100万㌦安 中古船マーケットで中型バルカーの船価が小幅続落した。足元の 中古船価レベルは、パナマックス、ハンディマックスが船齢により30万-100万㌦安となっている。ドライ市況の大幅下落 が主因。マーケット筋によると、足元のバルカーの中古船価レベルは直近と比べ、ケープサイズが新造リセール100万㌦ 安の5,500万㌦、船齢5年物、船齢10年物、船齢15年物は弱含み横ばいで、それぞれ4,000万㌦、2,850万㌦、1,700万㌦。 パナマックスは、新造リセールが横ばい3,100万㌦、船齢5年物は50万㌦安の2,000万㌦、船齢10年物は30万㌦安の1,45 0万㌦、船齢15年物は弱含み横ばいの1,000万㌦となっている。ハンディマックスは、新造リセールが横ばいの3,000万 ㌦、船齢5年物は100万㌦安の2,050万㌦、船齢10年物は100万㌦安の1,350万㌦、船齢15年物は弱含み横ばいの900万 ㌦。ハンディサイズは全般的に横ばい。新造リセール2,400万㌦、船齢5年物1,700万㌦、船齢10年物1,250万㌦、船齢15年 物900万㌦となっている。タンカーは運賃市況の上昇を映し、全船型で横ばいながら強含み基調アフラマックスは一部 - 9 - 小幅上昇した。VLCC(大型原油夕ンカー)は新造リセール1億500万㌦、船齢5年物7,700万㌦、船齢10年物5,200万㌦、船 齢15年物2,900万㌦。スエズマックスは新造リセール7200万㌦、船齢5年物5,700万㌦、船齢10年物3,700万㌦。アフラマ ックスは新造リセールが100万㌦高の5,700万㌦、船齢5年物、船齢10年物はそれぞれ横ばいの4,200万㌦、2,700万㌦。 ◆日本船舶投資促進が解散/金融情勢激変で、役目終える 国内造船業界が共同で設立した日本船舶投資促進(JSI F)が12日に臨時株主総会を開き、解散を決議した。金融危機で船舶ファイナンスが冷え込んでいた時代に、日本造船業 の受注獲得を目的に設立されたが、その後世界の金融情勢が「カネ余り」に転じるなど造船所の受注環境が当初から 大きく転換したこともあり、その役目を終えた。12日付で解散し、社長を務めた川戸忍氏が清算人として来年3月までに 清算結了する予定だ。JSIFは、国土交通省の新造船改策検討会での官民一体の議論を受けて、2012年4月に造船所20 社、金融系4社、総合商社3社の出資で発足した。造船所自らが自己資金(エクイティ)を入れて国際協力銀行(JBIC)な どの融資を活用し、裸用船という形で海外船主向けの新造受注を図るというのが基本的なスキームで、このファイナン スパッケージなどのコーディネート役を担う会社として誕生した。設立当時は世界的に船舶金融が絞り込まれており、 船主が新造船を発注するうえでファイナンスが大きなネックとなっていた。造船所も受注が止まり、仕事不足などへの 危機感が高まる中で、JSIFを設立した。当初はそのスキームの競争力ある条件や、「オールジャパン」という姿もあっ て、内外から高い注目を集め、海外船社向けにバルカーやタンカー、オフショア船などで具体的な商談が進んだ。成約 目前まで進んだ案件がいくつかあったことも知られるが、超円高の逆風などもあって最終的にはまとまらず、JSIFとし ての実績は一部の業務委託契約などに限られた。さらに、世界的な金融緩和を背景に、ファンド資金の流入や船舶金融 の緩和などで海運界の資金環境が一変。日本造船所も大量受注を重ね、仕事への飢餓感が薄くなった。会社設立時か ら、案件形成期間を3年間としていたことから、現在の金融情勢や造船所の事業環境などを考慮し、3年をもって解散す ることを決めた。 ◆三井造、170億円追加投資/岡山・千葉・大分で設備増強 三井造船は18日、岡山県、千葉県、大分県の国内主力3工 場に合計170億円の追加の設備投資を実施する方針を明らかにした。新造船や海洋構造物、舶用ディーゼルエンジン製 造の効率化や老朽装置の更新に加えて、港湾用クレーンの増産に対応する。これに伴い、2014~16年度の中期経営計画 で設定した単体で3カ年合計150億円の設備投資計画を上方修正し、2倍の同300億円に引き上げる。工場での正社員 や協力社員の増員を計画しており、政府が掲げる地方創生にも貢献していく。追加設備投資の具体的内容は主に3点。 第一に玉野事業所(岡山県玉野市)の造船工場にレーザー溶接装置などを導入し、建造効率を高める。一部ラインでは 8割の省人化につながるという。舶用ディーゼルエンジン製造ラインには、重油にかわる次世代燃料として需要が膨ら んでいる天然ガスやエタンを供給する装置などを追加する。大型ドックを持つ千葉事業所(千葉県市原市)には3号ドッ クに門型大型クレーンを導入。三井海洋開発と連携して受注を進めている浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FP SO)や超大型タンカー、ガス運搬船などの建造効率を高める。玉野、千葉で合計100億円を投じる計画だ。一方、港湾用 クレーンを製造する大分事業所(大分市)では岸壁用クレーン(ポーテーナ)の製造能力を2倍に引き上げるほか、輸出 用の岸壁整備などに70億円を投資する。これに伴い正社員30人を採用する予定。東南アジアをはじめ世界で港湾用ク レーンの需要が高まっている。三井造船は15年3月期に500億円を見込む同事業の受注高を、今後数年で600億円に引 き上げる。 ◆三井造船、国内拠点を増強/170億円投資、円安追い風 三井造船は国内拠点の増強に乗り出す。約170億円を投 じ、2016年度中に港湾クレーンの生産能力を約7割増やすほか、造船関連では休止中の設備(ドック)を再開するなどし て海洋開発分野の受注増に備える。100億円超の国内投資は米リーマン・ショックが起きた08年以来。円安で受注や輸 出環境が好転するなか、大型投資で競争力を高める。《クレーン 生産能力7割増》港湾でコンテナの積み下ろしなどに 使うクレーンを生産する大分事業所(大分市)では組み立てラインなどを増設する。投資額は約70億円。三井造船では 港湾クレーンの受注高が12年度に年間300億円程度だったが、14年度は500億円を超す見通しだ。受注の伸びに合わせ て、生産能力を500億円規模に高める。港湾クレーンは東南アジアやアフリカなど新興国でターミナル港の新設や拡張 が相次ぎ需要が急増しているほか、先進国でも老朽設備の更新意欲が高い。需要増が目立つ東南アジアでは、現地企 業と組んでクレーン生産の合弁会社を14年度中に設立する計画もある。17年度には港湾クレーンの受注額を世界シェア の2割となる600億円まで伸ばす考えだ。円安で受注採算が改善している造船事業では、千葉事業所(千葉県市原市) 内の休止中のドックに大型クレーンを設置し、生産を再開する。稼働するドックは計3つとなる。中期的に成長が見込める 洋上の石油・ガスプラントの船体部分を2つのドックで分割して建造する体制を整えることで、納期を大幅に短縮。低コス トで連続受注できるようにする。三井造船は子会社の三井海洋開発が受注した海底の石油やガスを採掘する洋上プラ ント(FPSO)の船体部分を昨年から千葉事業所で建造している。ドックの増強を機にこれまで主力のばら積み船や艦船 に加え、FPSOやガス運搬船など多様な船種の建造に取り組む。千葉事業所と玉野事業所(岡山県玉野市)では鋼材の 溶接工程を自動で行う最新機器などを導入する。さらに老朽化した建屋も刷新する。 ◆川重と三井造が提携/修繕事業共同運営 《LNG船ニーズ囲い込み》三井造船と川崎重工業は25日、修繕船事業で 提携すると発表した。三井造船が修繕子会社エム・イー・エス由良(和歌山県由良町)の株式のうち40%を川重に譲渡。 両社は今後、北米から日本向けのシェールガス輸送開始に伴い、国内での液化天然ガス(LNG)運搬船の修繕ニーズが 高まると見ており、共同運営体制に切り替え、技術や要員を融通。シンガポールやドバイの修繕造船所に対抗する。三井 造船と川重は2013年に経営統合交渉を白紙に戻した経緯があるが、双方のメリットが大きい事業については手を組む 考えだ。三井造船と川重は同日、株式譲渡契約と合弁契約を締結。15年4月1日付でエム・イー・エス由良を「MES-KHI由 良ドック」に改称し、共同運営を始める。資本金は2億円。出資比率は三井造船60%、川重40%。従業員数は182人。社長 は三井造船から出すが、川重からも常勤1人、非常勤1人の計2人の役員を送り込む。川重は三井造船との経営統合交渉 - 10 - をめぐり、前社長を解任した。ただ、個別事業では双方の理にかなえば協業する考えを示してきた。両社は今夏から造 船事業での協業を模索してきたという。今後の提携拡大については現時点で白紙だが、新造船事業に発展する可能性 もある。三井造船はここ数年、LNG船の新規受注が途絶えているものの、修繕船専業のエム・イー・エス由良では年1-3 隻のLNG船の修繕を継続して手がけてきた。エム・イー・エス由良の13年度売上高は123億円。一方、川重はガス運搬船を 主体に国内で商船建造を手がけており、坂出工場(香川県坂出市)ではLNG船の受注を積み重ね、連続建造している半 面、修繕事業の規模は年数億円にとどまっていた。両社とも定期検査や修理工事のノウハウを持つが、中東からのLNG 輸送などではシンガポールやドバイなど主要輸送航路上の修繕専業造船所に押されていた。三井造船によると韓国や 中国の造船所ではLNG船修繕を手がけていないという。17年以降に北米産の日本向けシェールガス輸送が本格化する 見通しで、三井造船と川重の技術力を結集することで、修繕ニーズを取り込む。川重は神戸工場(神戸市)での潜水艦 や官公庁船の定期検査や修繕などは継続していくが、商船修繕については基本的に共同運営会社で対応する。 ◆運搬船修繕事業で提携/川重、三井造船子会社に出資 三井造船と川崎重工業は25日、液化天然ガス(LNG)運搬 船などの修繕事業で提携すると発表した。三井造の完全子会社・に川重が4割出資し、人員や技術を有効活用して競争 力を高める。2013年に両社の経営統合が浮上したが破談となった。ただ、市場拡大が見込める分野ごとの協業は必要 と判断し、修繕事業を共同運営する。エム・イー・エス由良(和歌山県由良町)の株式40%を15年4月1日付で川重が取 得、社名をMES-KHI由良ドックに改称する。資本金は2億円。北米から日本へのシェールガス輸送が始まれば国内での修 繕需要が増える見込み。LNG船などの修繕で豊富なノウハウを持つ三井造と、LNG船の建造実績が多い川重が連携す ることで生産効率化や工期短縮を進め競争力を高める。新造船の船体ブロック建造の一部でも協力する。 ◆川崎重工と三井造船/修繕船事業で提携 MES由良に40%出資 川崎重工と三井造船は25日、商船の修繕船事業 で提携すると発表した。三井造船が同社100%子会社で修繕船専業のエム・イー・エス由良(MES由良、和歌山県由良町) の株式40%を川崎重工に譲渡し、資本提携するとともに、技術とマンパワーを融合して修繕船事業を強化する。川重は 2015年4月1日付でMES由良の株式40%を取得する。川重と三井造船は25日、株式譲渡契約、合弁契約を締結した。社 名は15年4月1日付で「MES-KHI由良ドック」に改称する。資本金は2億円。従業員は182人。修繕船事業は、シンガポールや 中国など海外修繕ヤードとの厳しい競争にさらされているものの、将来的には北米から日本へのシェールガス輸送の 開始に伴い、LNG(液化天然ガス)船の国内での入渠工事増加が見込まれる。川重は国内有数の修繕船専業ヤードであ るMES由良の経営に参画し、修繕船事業を強化することにより、同社建造のLNG船のトータルライフサイクルサポートを 顧客に提供する体制を撃える。MES由良は、長さ405㍍、幅65㍍、最大入渠可能船舶33万重量㌧の修繕ドックを持つ。川 重はLNG船の定期検査・修繕工事などで長年にわたり培ってきたノウハウを活用するとともに、三井造船と共同で人材 面や受注面での支援を行い、MES由良の競争力強化に取り組む。川重は神戸工場で行っている同社建造の潜水艦や官 公庁船の定期検査・年次検査工事などについては従来通り継続する。 ◆三井造船と川崎重工、修繕で協業/由良工場を共同運営、LNG船工事取り込む 三井造船と川崎重工業が船舶修繕 事業で協業する。来年4月1日付で、三井造船の船舶修繕専業子会社エム・イー・エス由良(和歌山県日高郡、陣座優社 長)の株式40%を川重が取得し、共同運営会社とする。川重は坂出工場で手掛けていた一般商船の修繕事業を基本的 に由良に移管する。両社は昨年、会社全体の合併交渉が破談に終わった後も、船舶事業の協業を検討してきた。北米シ エールガス輸送用のLNG船の修繕工事が伸びる見込みにあることから、需要の取り込みに向けて修繕分野での協力を 決めた。両社が25日、MES由良の株式譲渡契約と合弁契約を結んだと発表した。来年4月1日付でMES由良を三井60%、 川重40%の共同出資会社とし、社名も「MES-KHI由良ドック」に改める。社長は三井造船側から出し、川重からは役員2 人(うち非常勤1人)を派遣する予定。川重は現在、坂出工場の第2ドックでガス船を中心に商船の修繕事業を行っている ほか、神戸工場で潜水艦や官公庁船の定期検査・年次検査工事などを手掛けている。神戸での修繕は従来どおり継続 するが、今回の協業を機に坂出での修繕は基本的に由良に集約していく考え。修繕の現人員は他事業に異動し、第2ドッ クは新造船事業の補完などで活用する見通しだ。協業の狙いの1つは、LNG船修繕需要の取り込みだ。現在、LNG船の修 繕はドバイを中心とした中東域とシンガポールが中心地。日本向けのLNG船も、中東産や東南アジア産のガス輸送が主 流のため、積み地と航路に近いこれら地域で修繕が主に行われている。ただ、今後は北米シエールガスのアジア向け 輸送が増えることから、地理的に遠い中東やシンガポールよりも、東アジア域での修繕工事需要が高まる見通し。LNG 船の修繕を手掛けられる修繕ヤードは、韓国や中国にはほとんどなく、日本でも三井・由良や川重・坂出、三菱重工の横 浜製作所など一部に限られる。由良は毎年1~3隻のLNG船修繕をコンスタントに手掛けており、モス型とメンプレン型の 両方式で工事ノウハウを持つ。また川重も、LNG船の定期検査・修理工事でノウハウを培ってきた。両社が人材や技術、 受注面で支援を行うことで、由良の競争力強化と収益性向上に共同で取り組む。三井としては由良の修繕ヤードとして の競争力を一層高めるメリットがあり、川重としても自社建造LNG船のトータルライフサポートを顧客に提供する体制を 構築する狙いがある。三井と川重は昨年まで、水面下で会社全体の合併交渉を進めていたが、昨年6月に交渉を打ち 切った。ただ、もともと造船部門が協業を模索するところから交渉が始まった経緯もあり、その後も造船部門同士は協 業策の検討を進めていた。具体的な成果を上げられる連携策を模索する中で、双方にとってもメリットがある修繕ヤー ドの共同事業化の構想が浮上。今年夏から具体的な検討が始まり、このほど正式決定に至った。由良工場は、1973年に 三井造船由良造船所として操業を開始した工場。88年に修繕専門の由良三井造船として独立し、1999年に完全分社化 でMES由良となった。主要施設はドック1基と岸壁3本で、2010年にドックの全長を405mに延長、中型船の2隻同時入渠が 可能な体制とした。年間60~100隻の修繕工事を手掛けているほか、船体ブロックの製作も行っており、従業員数は約1 80人、構内協力工約100人。 ◆高卒の技能職採用を倍に/三井造船、受注増え人手不足 三井造船は、2016年春に入社する高卒技能職の採用を6 0人程度とし、15年比で倍増させる方針だ。田中孝雄社長が26日、朝日新聞の取材に対し、明らかにした。ここ数年採用 を抑えてきたが、円安により海外からの受注が増え、造船に必要な人手が不足している。今後数年で退職する高年層も 多く、技能の引き継ぎを急ぐねらいもある。技能職の社員は、船やディーゼルエンジン、港でコンテナを積み下ろしする - 11 - ためのクレーンなどをつくる工場で働く。リーマン・ショック前の新造船の受注により、10年春には102人を採用したが、そ の後の超円高で受注が大きく減り、14年春の採用は18人まで減らしていた。だが、円安が進んだ昨年以降は注文が戻っ ている。公共工事の増加で建設業界が賃金を引き上げており、非正社員の確保も難しくなっている。定年後に再雇用し たベテランから、技能を引き継ぐ教育にも力を入れる。また、インドネシアからの技能実習生も100人規模で受け入れる。 田中社長は「日本でものづくりをしていくために、人材の確保が短期的にも長期的にも大きな課題だ」と話す。 Ⅲ.各国造船業の動向 ◆新造船竣工量、増加は来年から/今年7000万㌧規模、急回復には疑問も 世界の新造船竣工量が本格的に増加す るのは、来年からとなりそうだ。昨年までの大量発注の影響で、今年から増加に転じるとみられていたが、これまでの ところ竣工量は前年を下回るペースで推移しており、今期は7,000万総㌧前後で落ち着きそうだ。来年は現状の発注残 の竣工予定からすると9,000万総㌧近い規模にまで急増するとされる。だが、低迷する海運市況や、造船所の現実的な 換業状況などを考えると、これほど急回復できるかは疑問符がつく。IHS(旧ロイド)統計によると、昨年の世界の新造船 竣工量は6,967万総㌧で、2年連続減少し、ピークの1億143万総㌧に比べて3割縮小している。今年初めの時点では、今 年の竣工予定船は7,800万総㌧にまで増える見通しにあった。だが、1~9月時点の竣工量は5,017万総㌧にとどまってお り、前年同期比12%減とむしろ縮小傾向が続いている。このペースが続くと、前年とほぼ同じ7,000万総㌧弱となりそ う。予定していたよりも造船所の操業が回復していない。今年建造量が大きく戻る見込みにあった中国では、中国船舶 工業行業協会(CANSI)統計によると1-10月竣工量が前年同期比18%滅の2,847万重量㌧にとどまっている。換業が徐 々に戻り始めた日本も、日本船舶輸出組合の竣工量に相当する通関統計では1~10月が前年同期比4%減の1,061万総 ㌧でなお減少傾向だ。問題は、来年どこまで増えるかだ。昨年の大量発注では、期近な船台では2014年~15年の納期か ら受注残が拡大していた。IHS統計では現時点で来年の世界の新造船竣工予定量は8,911万総㌧にのぼる。また、今年竣 工しなかった800万㌧分が来年にずれ込むとすれば、これよりもさらに増える計画にある。だが、一気に3割以上も建造 量が増えることは現実的に難しいとの見方も強い。 ◆14年世界の新造発注1,700隻規模/"駆け込み"反動 年後半失速 2014年の世界の新造船発注は1,700隻規模とな りそうだ。新ルール適用回避を狙った駆け込み発注が年前半に発生したものの、年後半はその反動で失速し、前年比2 割減少した。足元の新造船マーケットは、ほとんどの邦船オペレータ―各社に加え、海外船主も様子見姿勢に入り、発注 が激減。15年にはもう一つの新ルール適用を控えるため適用回避の駆み発注が予想されるものの、発注が盛り上がる のか微妙な情勢となってきた。《前年比2割減》14年の世界の新造発注は、12月11日現在1,701隻(本紙集計)。12月に入 り、新造船マーケットで発注案件が表面化するケースは激減しており、年内残り2週間の営業日で新造発注が大きく積 み上がる可能性は低い。「国内も海外も魚が泳いでいない」造船各社の新造船営業関係者の聞からはそんな声が漏れ てくる。LNG(液化天然ガス)船のプロジェクト物や一部超大型コンテナ船を除くと、新造船マーケットは夏場以降、閑散 とした商況が深まっている。「一般不定期船は(新造案件が)皆無の状況」国内船主の間からもそんな声が伝わってく る。本紙取材では、新造船マーケットで表面化していない邦船オペレーターの新造案件は、鉄鋼原料船を中心にそれな りに存在する。ただし、隻数は極めて限られる。一方、今年前半を中心に世界で積み上がった新造船をみると、バルカー ではドライ市況への影響が大きいケープサイズの新造発注が155隻(オプション、VLOC<大型鉱石船>19隻含む)。経営 難に陥り新造船受注から遠ざかっていた韓国・中国の新興造船所が超短納期船台で受注したため、ほとんどのデリバリ -・ポジションが15-16年となっている。タンカーではVLCC(大型原油タンカ―)が58隻発注され、竣工は16-17年に集中 している。 ◆日韓の造船大手の苦境/高付加価値化で立て直し急げ 日韓の有力造船会社が苦境に陥っている。三菱重工業は 客船事業で累計1,000億円の損失を計上。韓国の現代重工業は海洋構造物やプラント事業で工程遅れなどが生じ、7~9 月期の連結営業損益が1兆9,346億ウォン(約2,000億円強)の赤字で、通期でも3兆ウォン超の赤字を見込む。両社とも 高付加価値分野でつまづき、巨額損失に陥った。世界の造船技術をリードするためにも、両者の事業立て直しを期待し たい。三菱重工は2010年に船舶・海洋事業の生産再編を決め、神戸造船所(神戸市兵庫区)での商船建造から撤退する など高付加価値製品へのシフトや需要変動に強い体制づくりを進めてきた。その客船で損失が拡大したことから、商船 事業について「差別化技術を上手に使えるところを考え、できれば残したい」(宮永俊一社長)と一段の縮小を示唆し ている。11月にフランス・パリで開催したJECKU(日本、欧州、中国、韓国、米国)造船首脳会議は「造船所は過剰な供給能 力の対策として、量よりも質の向上やオフショア市場のようなハイテク事業分野への特化を実施しているが、健全な需 給バランスを取り戻すためには不十分」との声明を出した。解決の糸口として環境規制の推進を取り上げ「不高効率船 舶の市場退出を支援し、規制要件を達成する技術的先進性を有する船舶を提供するための真の機会をもたらす」とし ている。三菱重工は摩擦低減や排ガス浄化など省エネ・環境技術で世界トップ級の力を持つ。これらを活用することで 高収益化が見込める。最近では北米産シェールガスの日本への輸送用として、最大級かつ燃費を従来比2割以上改善 した液化天然ガス(LNG)運搬船を開発した。中国の造船業界は政府主導で再編に踏み出している。韓国大手の現代重 工業、サムスン重工業、大宇造船海洋も建造能力の絞り込みが必要だろう。1~10月の3社の造船・海洋受注はウォン高を 背景に前年同期比3~4割落ち込んだが、足元の韓国造船業全体の受注は10、11月と2カ月連続で中国を上回り、世界首 位に返り咲いたようだ。巨大ドックを持てあますほど損失が膨らむだけに、積極受注に転じるのは理解できる。しかし、こ れが各社の安値競争をさらに悪化させることを恐れる。創業以来の赤字に沈む現代重工では11月27日に20年ぶりのス トライキで生産が一時中断。労組の主張を一部受け入れるなど構造改革が進んでいない。日本、韓国、中国の造船所の たたき合いは、業界を疲弊させ、技術力の低下を招く。利益無き繁忙から抜け出すためにも、大胆なリストラを含めた事 - 12 - 業計画を示すべきだ。 ◆韓国造船大手、海洋で巻き返し 《1-10月受注36%減も、11月に相次ぎ受注》韓国造船大手3社の今年1-10月の造船 ・海洋開発(オフショア)部門の受注実績は計138隻・243億㌦で、前年同期に比べて受注金額ベースで36%減となった。 前年に比べて海洋部門の受注が少なく、依然として苦戦が続いている。ただ、11月に入り、大手3社とも相次いで海洋 関連やプラントなど大型案件を受注しており、受注高を積み上げている。年初に設定した受注目標の達成は厳しい見通 しと現地紙では伝えられているが、このほかにも内定している案件があり、年末に向けて巻き返しを図っている。昨年 に比べてここまで-般商船の受注が多かった韓国大手だが、11月に入り、海洋やプラント受注が相次いだ。現代重工業 が2兆1,036億ウォン(約19億㌦)規模の海上プラットフォームと海底ケーブルなどの工事、サムスン重工業が計7億㌦規 模の浮体式生産設備(FPU)と海上プラットフォーム計2基を受注したほか、大宇造船海洋が総額2兆9,000億ウォン(26億 8,000万㌦)規模の陸上原油生産設備を受注した。大宇が海洋やプラントを受注するのは今年初めてで、待ち望んでい た大型案件の受注にこぎ着けた。現代や大宇はこれらの受注により、今年に入ってからの商船や海洋の受注額が100億 ㌦を突破したもよう。さらに今後受注が見込まれる内定案件もある。現代がオフショア作業船1隻、大宇がロシアのヤマ ルLNGプロジェクト向けのLNG船5隻を受注内定している。サムスン重工は、米国船社エクセルレイト・エナジー向けの世 界初の浮体式のガス液化・貯蔵・積出設備(FLSO)の建造で優先交渉権を得ているほか、このほかにもLNG船やコンテナ 船などを年内に追加受注する見通しとなっている。海洋部門は、石油メジャーが主導する案件自体が昨年に比べてや や減速感があることに加え、韓国造船大手も採算リスクの大きい海洋の受注に対して慎重になっていた側面もあり、こ れまであまり受注が進んでいなかった。その-方で、ガス船やタンカー、メガコンテナ船といった高付加価値の商船を 受注している。特に大宇は商船の受注高が前年同期の2.5倍になっていた。韓国大手は、現代が商船部門で91億5,000 万㌦、海洋部門で69億㌦、全体で295億6,500万㌦を掲げているほか、サムスンや大宇が145億㌦を年初の受注目標と して設定している。 ◆海洋案件で受注高積み上げ図る 《韓国造船大手、1-11月は受注高36%減》韓国造船大手3社の今年1-11月の造船 ・海洋開発(オフショア)部門の受注実績は計145隻・286億㌦で、前年同期に比べて受注金額ベースで36%減となった。 これまで前年に比べて海洋の比率が少なく苦戦が続いていたが、11月に大型案件を相次いで受注し、巻き返しを図っ ている。現代重工業と大宇造船海洋は受注高が100億㌦を超えた。サムスン重工業も海洋の内定案件があり、年末まで に受注高が伸びる可能性もある。商船と海洋部門の受注比率は11月末時点で6対4。海洋は10月末時点では約3割にと どまっていたが、ここにきて海洋プラントなどを相次いで受注したことで急激に比率が高まっている。各社の11月末時 点の受注高は表のとおり。現代の受注高を部門ごとに見ると、商船部門が前年同期比36%減、海洋部門が13%減で、こ のほかの全部門を合わせた受注高は27%減の188億㌦となっている。また、大宇はLNG船の受注により、12月に受注高 を伸ばしている。ロシアのヤマルLNGプロジェクト向けのLNG船5隻など内定案件を正式受注すれば、前年実績を上回る 可能性もある。ただ、海洋を相次いで受注しているものの、原油価格の下落などを受けて石油メジャーが主導する海洋 案件自体に減速する懸念もないとはいえない。海洋での採算リスクも顕在化している。海洋開発を中心とした事業の多 角化という方針は変えないとみられるものの、一時的に商船に回帰する可能性もありえそうだ。 ◆バラスト水管理条約、11月下旬で批准43カ国 船舶にバラスト水処理搭載などを求めるバラスト水管理条約の批准 国が11月27日時点で43カ国に膨らんだ。今年に入り日本を含め5カ国が批准。世界の商船船腹量に占める批准国の合 計商船船腹量の比率は32.54%に上昇し、発効条件の35%に近づいてきた。バラスト水管理条約は、排水基準を満たす バラスト水管理(処理装置の搭載義務)、処理装置などの定期的検査実施(400総㌧以上)、寄港国監督(ポートステート コントロール=PSC)を船主などに要求する。30カ国以上の国が締結し、かつ、その合計商船船腹量が世界の商船船腹量 の35%以上となった日の12カ月後に発効する。装置メーカーが製品を販売するために必要な承認取得手続きも進む。 メーカーは、IMO(国際海事機関)の決議「バラスト水管理システムの承認のためのガイドライン(G8)」により、条約締約 国主管庁の型式承認を取得する必要がある。国土交通省では10月21日までに、G8に基づいた型式承認に相当する承 認を12社(13装置)に対して行っている。 Ⅳ.造船・造機以外の産業動向 ◎外航海運 ◆船舶融資に1,200億円/三井住友信託、仏銀と基金 三井住友信託銀行は仏金融大手クレディ・アグリコルと共同で 船舶向け融資専用のファンドを設立する。双方の顧客基盤や審査ノウハウを持ち寄り、欧州やアジアの海運会社などに 船舶を購入する資金を貸し出す。3年で10億㌦(約1,200億円)の融資をめざす。石炭や原油などの資源を運ぶ船舶の世 界的な需要拡大を見据え、旺盛な資金需要を取り込む考えだ。8日午後に発表する。三井住友信託とクレディ・アグリコ ル傘下の投資銀行が共同出資ファンドを立ち上げ、船舶向け融資を実行する。融資は来年1月から始める。融資案件が生 じるたびに両行がファンドに資金を入れる形式を取り、3年で10億㌦規模に増やす計画だ。船舶向け融資は「シップファ イナンス」と呼ばれ、エネルギー資源や自動車などを運送する海運会社などに対し、新しい船舶の購入代金を貸し出 す。貸出先の信用力に加え、新しい船舶の担保価値や船が将来生み出す現金収入なども加味して融資を決めるのが特 - 13 - 徴だ。資金を拠出する金融機関にも高い専門性が求められるが、2%程度と高い利ざやも見込めるケースもある。三井 住友信託は法人向け貸し出しの柱の1つとして船舶向け融資を進め、1兆円程度の残高を抱えるが、9割は国内の顧客向 けだ。欧州やアジアなどに顧客基盤を持つクレディ・アグリコルと組めば、優良な海外顧客を開拓しやすいと判断した。 海洋油田開発に使う船舶など、より高度な審査能力が必要な案件にも同社のノウハウを生かして参入しやすくなる。ク レディ・アグリコルも三井住友信託と組むことで、日本勢も含めてより多くの海運会社に融資する機会が広がる。船舶を 供給する日本の造船業との接点も増やせる。世界の造船需要はリーマン・ショック後の急減を経て、足元で再び拡大基 調にある。日本造船工業会によると、世界全体の受注量は2013年に1億320万総㌧と前年比2・7倍になった。新興国を中 心とする人口増で、資源や食料などの貿易は中長期的に拡大が見込まれ、船舶需要も一段の伸びが予想される。もっ とも、船舶の担保価値や収益力は資源価格などと連動して大きく変動する傾向があり、船舶向け融資は貸出先の破綻 などで焦げ付くリスクもある。貸出先の拡大に伴い、金融機関側の与信管理能力の向上もー段と求められそうだ。 ◆大型船5,000億円規模投資、米シュール輸送にらむ 大型船舶に5,000億円規模を投資するファンドが2015年初めに 運用を始める。金融機関から出資を募り、液化天然ガス(LNG)輸送船などを購入して海運会社に貸し出す。17年にも始 まる北米産シェールガスの輸入をにらみ、海運各社は輸送船の拡充を進めている。リスクマネーを活用して海上輸送の インフラを整備する。ファンドを運営するのは独立系のアンカー・シップ・パートナーズ(東京・中央)で、これまでに2つの ファンドを立ち上げ、約3,300億円を船舶に投資した実績がある。購入した船舶は日本郵船や川崎汽船などが運航して いる。新たなファンドは都市銀行や地方銀行などの投資家から出資を募る。大型船を購入して侮運会社と賃借契約を結 び、海運会社から受け取る用船料を出資者に配当として支払う。これまでの船舶ファンドの年間平均利回りは5%起と みられ、新たなファンドも5%以上の利回りを目指す。海運大手はシェールガスの輸入をにらみ輸送船を増やしている。 日本郵船は運航するLNG船を19年までに100隻超と、現在より3割以上増やす計画だ。商船三井もLNG船の拡充を急い でいる。新ファンドはLNG船のほかコンテナ船にも投資する。川崎汽船は保有するコンテナ船を順次大型船に切り替え、1 8年までに大型コンテナ船を10隻確保する計画だ。大型船は燃費性能に優れる利点があるが、コンテナ船で100億円、L NG船なら200億円を超える。海運会社が自前で全てを投資するには負担が重いため、アンカー社は「船舶ファンドの需 要が高まる」と見ている。船舶ファンドを組成する動きは広がっている。三井住友信託銀行は仏金融大手と組んで専用 ファンドを立ち上げ、来年1月から船舶向けの融資を始める。海外では米ブラックストーン・グループなど大手投資ファンド が船舶投資を拡大している。 ◆タンカー運賃一段高/2年8カ月ぶり水準 大型原油タンカーのスポット(随時契約)運賃が一段と上昇している。運賃 水準を示すワールドスケール(WS、基準運賃=100)は中東~極東間の週平均で65.5と直近で低かった9月下旬と比べて 約8割高い。60台後半をつけたのは約2年8カ月ぶりとなる。中国の原油輸入量が前年を上回る水準で推移するなど、 堅調な荷動きが続いている。WSは国際的な海運業界団体のワールドスケール協会が算出した基準運賃に対し、実際の 運賃がどの水準にあるか示している。現在の海運業界の採算ラインは50前後とみられる。中国の11月の原油職人量は 前年同月に比べて7.9%増の2,541万㌧と4カ月連続で前年実績を上回った。原油の需給は緩んでいるが「原油価格が 安いとき中国は備蓄を増やす傾向がある」(海運大手)。冬季を迎えた北半球で暖房用の需要が高まっていることもあ り、荷動きは堅調だ。 ◆鉄鉱石運搬船、用船料が急落/3週間で8割安、中国向け荷動鈍く 鉄鉱石運搬船のチャータト料(用船料)が急落し ている。主力船型のケープサイズで海運会社が船主に支払うスポット(随時喫約)の用船料は11月下旬から下げ続け、約 8割下がった。世界最大の鉄鉱石需要国である中国向けの荷動きに鈍化の兆しが表れ、先行きへの不安が強まってい る。用船料は運賃算定の目安となる指標で、現在は1日あたり4,500㌦前後(主要航路平均、17万㌧級)。前年同期に比 べると9割近く安い。「本来、資源メジャーの決算期である12月は年末に向けて市況が上向くはずだが、逆に下落してい る」(海運調査会社のトランプデータサービス)。用船料は鉄鉱石などの需給動向に応じて大きく上下する傾向はあるも のの、需要期まっただ中の大幅下落は海運業界にとって想定外の展開だった。スポットの用船料が安ければ海運会社に とってはコスト減になるが、連動して運賃も下落するため、収益面で不利に働くケースが多い。鉄鉱石の荷動きは毎年 秋から冬にかけてヤマ場を迎える。需要をけん引するのは世界の鉄鉱石輸入量の3分の2を占める中国だ。原料の輸送 が滞る厳冬期に備えて、鉄鉱石の在庫量を増やすメーカーが多い。これまで中国の鉄鉱石輸入量は順調に伸び続けて きた。2014年の輸入量は前年実績を上回る水準で推移し、1-10月の累計は前年同期を17%上回った。今年の用船料は 荷動きの大幅な伸びに支えられてきた。ここへ来て荷動きに変調の兆しが見え始めた。10月の中国の粗鋼生産量は前 年同月比で0・3%減少し、2年2カ月ぶりに前年実績を下回った。11月も前年同月比0・2%減だった。鉄鉱石輸入量も11月 は1年9カ月ぶりに前年実績を割り込み、前年同月比で13・4%減少した。ほぼ一本調子で拡大してきた鉄鉱石の荷動き は踊り場にさしかかっている。中国の粗鋼生産や鉄鉱石輸入の減少については、一時的な動きにすぎないとの観測も ある。「北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の影響も考えられ、鉄鉱石の需要が大きく減少している様 子はない」(商船三井)という。ブラジルの出荷減など供給側の要因を指摘する関係者も少なくない。だが、運賃先物 市場が敏感に反応し、現物の相場にも波及している。海上運賃先渡し契約(FFA)の15年1月物は1日あたり6,800㌦前後 で、12月に入って4割近く下がった。「先物は実際の荷動きよりもマクロの経済指標に反応する」(海運大手)傾向があ り、市場に漂う不安感を率直に映す。原油やコンテナ貨物の好調な荷動きや円安・燃油安の追い風を受ける海運業界に 吹き始めた逆風。用船料も弱含みのまま越年となりそうだ。日本の海運業界ではケープサイズは長期契約が中心で、 多い社でもスポット契約の割合は2割程度にとどまる。それでもスポット相場の低迷が長期化すれば、長期契約の価格交 渉にも影響を与えかねない。 ◎内航海運 ◆認定建造船累計1,310隻 《半年前から58隻増加 暫定事業、9月末》日本内航海運組合総連合会(内航総連)が引 き当て資格台帳に基づきまこめた暫定措置事業認定状況の集計によると、同事業規程で認定された累計の建造船腹 量は、9月末時点(竣工べース)で1,310隻・304万2,700対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方㍍、曳船・馬力など)だった。 - 14 - 半年前の前回集計時(3月末時点)の1,252隻・288万8,300対象㌧と比べ、58隻・15万4,400対象㌧増えた。認定建造船腹 量の船種別内訳は、一般貨物船571隻・86万4,400重量㌧(前回集計比26隻・4万1,300重量㌧増)、油送船418隻・109万立 方㍍(23隻・7万4,100立方㍍増)、RORO船・コンテナ船・CGC(混載型自動車専用船)95隻・50万9,700重量㌧(3隻・2万700 重量㌧増)など。隻数では一般貨物船、対象㌧数では油送船が最も多いという従来の傾向は変わらない。内航海運で 主要な船種の一般貨物船と油送船を合計した建造量は989隻・195万4,400対象㌧。隻数全体の75・5%、㌧数で64・2% を占めている。老朽化した一般貨物船の代替建造や油送船で大型船のリプレースが活発だったこともあり、これら2つ の船種の隻数、㌧数の割合が若干増加した。累計建造隻数では100隻に及ばないRORO船・コンテナ船・CGCだが、大型船 を含んでいるため建造量は50万9,700㌧達し、500隻を超える船が建造されている一般貨物船に次ぐ勢力になってい る。他の船種では石材・砂・砂利専用船53隻・7万9,100㌧(隻数、㌧数とも横ばい)、台船・はしけ29隻・3万3,900重量㌧ (同)、曳船90隻・25万2,600重量㌧(3隻、1万1,700馬力増)、その他特殊船54隻・21万2,900重量㌧(3隻・6,500重量㌧ 増)。解撒交付金交付や建造納付金免除で、暫定事業を開始した1998年から2014年9月までの16年間に台帳から抹消さ れた船腹量は3,160隻・408万3,000対象㌧。台帳登録船腹量は、同事業開始時(98年5月以前の解撒完了船=ペーパー 船除く)に比べ61・19%減少した。 ◆推定鉄骨需要量は約50万㌧ 《08年10月以来の高水準に》国土交通省の10月の建築着工統計調査報告によると、 全着工床面積は前年同月比6・2%減(前月比13・8%増)の1,237万6,000平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が同 9・2%増(同25・6%増)の477万4,000平方㍍、SRC造は同0・4%増(同26・2%増)の37万6,000平方㍍で、全床面積中のS 造、SRC造の比率は41・6%。推定される鉄骨需要量は約49万6,000㌧(前年同月は約46万㌧、※表2)と08年10月(約51 万㌧)以来の高水準となった。 ◆工作機械11月受注、1,390億円/リーマン後最高 日本工作機械工業会(日工会)が9月発表した11月単月の工作機 械受注実績(速報)は、前年同月比36・6%増の1,390億400万円となり、14カ月連続のプラスとなった。1,300億円超は3 カ月連続で、9月を上回り2008年秋のリーマン・ショック後の最高額を記録した。海外は北米の強い基調を維持し、国内 は設備投資を後押しする補助金分の消化が進んだが反動減はみられず、税制と見本市効果で前年を上回った。内需は 同17・9%増の490億3,900万円で17カ月連続増。10月から11月にかけての日本国際工作機械見本市(JIMTOF2014)効果 が鮮明だ。DMG森精機とオークマ、OKKなどが同10%台後半の増加となった。地合いはよく「中小企業向けに小型機が 伸びた。設備投資をするユーザーの裾野がさらに広がっている」(オークマ営業部)と指摘する。外需は同49・6%増の8 99億6,500万円で13カ月連続の増加。3月に続く、過去2位となった。JIMTOF効果は「アジア諸国の受注があった」(DMG 森精機広報・展示会部)と外需にも波及した。「北米は引き続き高い水準にある」(牧野フライス製作所業務部広報課)と 米国の好況が続いている。 ◆工作機械8社受注 11月24%増509億円、本社まとめ 15カ月連続プラス 日刊工業新聞社が9日まとめた11月の工 作機械主要8社の受注実績は、前年同月比24・5%増の509億6,000万円となり、15カ月連続のプラス成長となった。内 外需ともに2ケタ増と堅調を保った。国内は10月末-11月初めの日本国際工作機械見本市(JIMTOF2014)の開催効果が みられ、海外では中国の新興スマートフォン(スマホ)向けとみられる大口受注が加わった。国内は同13・9%増の207億1, 500万円。連続成長を16カ月に伸ばした。3社が前年割れだったが、増加した各社はいずれも2ケタの伸びを示した。設 備投資を支援する税制活用が下地となり、JIMTOF効果が上乗せされた。外需は同32・2%増の300億6,500万円で6カ月 連続の増加となった。北米の高水準は変わらず、中国でのスマホ需要が再び目立つようになった。ことしの春から夏に かけては米アップルの新型スマホ関連が中心だったが、ここにきて中国地場スマホ向けの勢いがある。業界内では現 在の受注水準が2015年も続くとの見方が多い。ただ、欧州はウクライナに関連するロシア問題が危倶され、外需を押し 下げる懸念材料になっている。 ◆工作機械受注11月36%増1,390億円/日工会まとめ、リーマン後最高額 日本工作機械工業会(日工会)が17日発表 した工作機械の11月受注実績は、前年同月比36・6%増の1,390億5,000万円で14カ月連続のプラスとなった。2008年の リーマン・ショック後の最高額を記録した。内需は投資支援の政策や日工会主催の見本市の効果があり、外需は欧米ア ジアが堅調だった。15年の世界受注は「大きな伸びこそ期待しにくいが、まずまずの高い水準で推移するだろう」(花 木義麿日工会会長)と足元の基調が続きそうだ。内需は同17・9%増の490億6,100万円で17カ月連続のプラス。6カ月連 続で400億円超の高水準が続いた。業種別で最大規模の一般機械は3カ月連続で190億円を超えた。続く自動車は5カ 月ぶりに150億円を超えた。外需は同49・6%増の899億8,900万円で13カ月連続のプラスとなり過去2位の受注額に伸 びた。10月に続きベトナムでスマートフォン関連とみられる大口の短期受注があった。中国集中だったスマホ生産はベト ナムに移っているようだ。 ◆産機受注、10月0・7%減3,005億円/産機工まとめ、2か月ぶり減 日本産業機械工業会(産機工)が11日に発表した2 014年10月の産業機械受注額は前年同月比0・7%減の3,005億7,800万円となり、2か月ぶりにマイナスとなった。このう ち内需は同10・6%減の2,017億1,400万円で、外需は同28・0%増の988億6,400万円だった。内需のうち製造業向けは同 6・0%増、非製造業向けは同23・2%減、官公需向けは同22・7%減、代理店向けは同8・4%増。主要約70社の輸出契約高 は同25・4%増の872億3,200万円で2か月連続プラス。プラント案件はゼロだった。地域別構成比はアジア61・4%、アフリ カ15・7%、北米10・3%、欧州6・3%、南米3・1%、中東2・1%。 - 15 - ◆環境装置受注25.8%減少、10月 日本産業機械工業会が11日発表した2014年10月の環境装置受注実績は、前年同 月比25.8%減の383億4,600万円で3カ月連続で前年同月を下回った。全体の8割以上を占めた官公需が、都市ゴミ処 理装置の減少で同25.9%減の321億7,100万円と落ち込んだのが響いた。外需も排煙脱硝装置などの減少で同64.6% 減の11億600万円と減少した。民需は同1.1%減の50億6,900万円。内訳は製造業が鉄鋼、その他向け産業排水処理装置 などの減少で同11.8%減の29億9,600万円。一方、非製造業は電力向け排ガス処理装置、大気汚染防止装置関連機器な どが増加し、同20%増の20億7,300万円だった。装置別では、大気汚染防止装置が海外向け排煙脱硝装置が減少し、同 34.3%減の17億4,100万円。水質汚濁防止装置は同9.4%増の201億2,100万円。ゴミ処理装置は同46.4%減の163億1,2 00万円。 ◆国内4輪生産6・3%減/10月、4カ月連続マイナス 日本自動車工業会(自工会)がまとめた2014年10月の国内生産・ 輸出実績は、4輪車の国内生産が前年同月比6・3%減の81万6,936台と、4カ月連続のマイナスとなった。消費増税後の 需要停滞が継続。海外生産移管が進む小型乗用車は同17・0%減の14万404台と大幅マイナスとなった。小型乗用車の 輸出は同42・5%減の1万8,887台で、10月として過去最低だった。一方、軽乗用車と、新興国向け輸出が堅調なバスの生 産は10月として過去2番目の高水準だった。4輪車全体の輸出は同1・6%減の40万1,250台で、3カ月連続で前年同月実 績を下回った。地域別では、北米向けが同14・1%減の14万8,682台で7カ月連続のマイナスと落ち込みが目立った。2輪 車の国内生産は同7・0%増の5万6,827台で、3カ月ぶりにプラスに転じた。輸出は同0・5%減の3万8,727台で、5カ月ぶ りに前年同月実績を下回った。 ◆国内4輪生産12・2%減/11月、2ケタ減17カ月ぶり 日本自動車工業会(自工会)がまとめた2014年11月の国内生産・ 輸出実績は、4輪車の国内生産が前年同月比12・2%減の74万3289台となった。5カ月連続の減少で、減少幅は13年6月 以来17カ月ぶりに2ケタに拡大した。消費増税の反動減からの市場回復の遅れに加え、前年11月は増税前の駆け込み需 要があったためと見られる。輸出の減少も響いた。1-11月累計の国内生産は前年同期比1・9%増の900万7501台とな り、14年1-12月の累計生産台数は6年連続の1000万台割れが確実だ。「14年暦年が13年の963万台を超えるかは微妙」 (自工会)とするが、12月は70万-80万台で推移しているため前年水準を上回る可能性が高い。ただ、1-11月累計が 前年同期を上回ったのは消費増税前の駆け込み需要のためで、足元は厳しい状況が続く。11月の四輪車輸出は前年同 月比11・5%減の36万8113台で4カ月連続の前年割れ。小型4輪車は同52・5%減の1万4518台と、全月を通じて過去最低 だった。2輪車の国内生産は同0・2%減の5万2627台で統計開始以来で下から3番目の水準。輸出は同9・1%増の4万293 5台で、同じく下から4番目の水準だった。 ◆新車販売9%減41万台/11月、5カ月連続マイナス 日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合 会(全軽協)が1日発表した2014年11月の新車販売台数は、前年同月比9・0%減の41万6,139台と5カ月連続で前年同月 実績を下回った。消費増税後の需要低迷が続き、減少幅は2カ月連続で拡大。登録車は同13・5%減の23万9,207台で4 カ月連続のマイナスとなり、減少幅が7カ月ぶりに2ケタに悪化した。登録車のうち乗用車は同15・9%減の20万3,910台。 一方、貨物車は同4・1%増、バスは同2・7%増と堅調だった。自販連は「11月は前の年より稼働日が2日少なかったが、そ の影響を差し引いても前年実績に届かない。特に乗用車の回復が遅れている」と指摘。乗用車メーカーは新型「デミ オ」の効果があったマツダを除き軒並みマイナスとなった。軽自動車は同2・2%減の17万6,932台で2カ月連続のマイナ ス。ただ、11月としては13年に次いで過去2番目の高水準だった。スズキは3カ月連続のプラス、日産自動車は2カ月ぶり のプラスとなった。1-11月期累計の軽自動車の販売は前年同期比6・6%増の207万2,817台。全軽協は「13年通年の実績 まで残り4万台強であり、過去最高の更新は確実」と説明する。登録車の1-11月期累計も同1・7%増の305万8,138台とプ ラスを確保。「増税後の反動減は続いているが、通年で前年越えを達成したい」(自販連)考えだ。 ①乗用車 ◆車8社の生産・販売/11月 《海外生産10カ月ぶり減少》乗用車メーカー8社が24日発表した2014年11月の生産・販 売・輸出実績によると、8社合計の海外生産が前年同月比1・0%減の147万8,292台となり、10カ月ぶりに前年同月を下回 った。トヨタ自動車と日産自動車は中国生産が同20%前後減少。タイの需要回復の遅れも響いた。8社合計の世界生産 は同5・2%減の217万3,819台で、2カ月連続のマイナスとなった。海外生産はトヨタ、日産、三菱自動車、ダイハツ工業の 4社がマイナス。中国生産の減少の要因についてトヨタは「一部車種で在庫調整があった」、日産は「小型商用車の全需 の減少や、小型乗用車の競争激化が響いた」としている。一方、ホンダは中国生産がすべての月を通じ過去最高、海外 生産が11月として過去最高を更新。「中国では小型車『フィット』などの生産が高水準で推移した」(ホンダ)。マツダはメ キシコ工場の生産増が海外生産全体をけん引。スズキはインドや中国の生産増により海外生産と世界生産が11月として 過去最高になった。国内生産は消費増税後の需要低迷に加え、海外への生産移管により6社がマイナス。ホンダはフィッ トのハイブリッド車(HV)の相次ぐリコール(無料の回収・修理)に伴う新車発売の遅れも影響し、国内生産と販売が同30 %強減った。富士重工業は北米市場の販売好調を受け、国内生産、海外生産ともに11月としての過去最高を更新。スズ キは軽自動車の販売と、登録車を含む国内販売全体が11月として過去最高になった。 ②トラック ◆普通トラック11・1%増 《11月販売 7カ月連続プラス》トラック業界関係者がまとめた11月の普通トラック(積載量4㌧ 以上)販売台数は、前年同月比11・1%増の7,369台だった。7カ月連続で前年同月実績を上回った。引き続き建設関連需 要が底堅く推移しており、ダンプトラックなどの販売が伸びた。またトラックの荷台を手がける架装メーカーの供給能力 が向上し、生産台数が増えたことも販売台数を押し上げた。これまで架装工程の生産が逼迫し、トラックを供給するリー ドタイムが長期化していたという。車種別では大型トラックが同8・3%増の4,022台、中型トラックが同14・7%増の3,347 台だった。メーカー別に見ると大型トラックではUDトラックスが同25・3%増の871台で伸び率が最も大きかった。 - 16 - ③ ◆鉄鉱石、需要緩和で下落、国際価格 《中国向けスポット 5年ぶり安値》高炉の製鉄原料となる鉄鉱石の国際相場 が需給緩和を背景に下落している。国際指標となる中国向け鉄鉱石(豪州産粉鉱石・鉄分62%)のスポット(随時契約) 価格は足元で㌧当たり71㌦前後で約5年ぶりの安値圏で推移している。年初からは約47%安い。「最大供給国の豪州で 供給が増える一方、中国では住宅建設などの需要が鈍い。引き続き需給が緩んでおり、下値のめどが見えない状況」 (大和証券の五百旗頭治郎シニアアナリスト」との指摘があった。スポット(随時契約)価格の下落を受け、新日鉄住金、J FEスチールなどの国内大手鉄鋼メーカーが英豪リオ・ティントをはじめとする海外資源メジャーから調達する2015年1-3 月期の鉄鉱石価格は、今期(10-12月期〕から大幅に下落する。10-12月期の㌧当たり85㌦から約17%安い同70㌦前後と なったもよう。下落は4四半期連続。年間契約から四半期ごとの値決め方式に移行した10年4月以降では最安値となっ た。原料安は高炉などの収益改善につながる。だが、原料安を理由に鋼材価格に下げ圧力がかかる可能性がある。四 半期価格の指標となる9月から11月までの中国向け鉄鉱石のスポット価格の平均値が前期より安値となったため値下げ となった。同価格は節目の80㌦を大幅に割り込み安値水準で推移している。金属調査会社アイアールユニバースの棚 町裕次社長は、「鉄鉱石は今年で8,000万㌧来年は1億5,000万㌦の供給過多が見込まれており、足元のスポット価格は 70㌦前後と5年ぶりの安値水準で推移している。来年は60㌦割れも予想されている」と話す。資源の価格リスクマネジ メントコンサルタント会社、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は、鉄鉱石価格について、「当面、現 在の低水準での推移を余儀なくされると見ている。季節的には、鉄鉱石の中国国内生産が減少するため、海上輸送鉄 鉱石価格に上昇圧力がかかる時期に入っている。だが、肝心の鉄鋼製品需要が外需以外は低迷していることが最大の 要因だ」と指摘する。 ◆11月粗鋼生産/暦年で1億1,000万㌧超 日本の2014年暦年の粗鋼生産量が1億1,000万㌧超となることが確実な 情勢となった。日本鉄鋼連盟がまとめた1-11月の粗鋼生産量は前年同期比0・4%増の1億166万㌧。12月も900万㌧を上 回る見通しで、2年連続で1億1,000万㌧を突破しそうだ。消費増税前の駆け込み需要があった13年暦年(1億1,059万㌧) 並みを確保しそうだ。ただ足元の生産量は鈍化傾向だ。11月の粗鋼生産量は前年同月比1・1%減の917万5,000㌧で3カ 月連続のマイナス。高炉系の転炉鋼が同2・6%減、電炉鋼は同3・9%増だった。建設向けの条鋼類、製造業向けの鋼板類 ともに前年割れだが、「前年が高水準だった反動もあり悪くはない」(関係者)。需要見合いの生産を意識したこともう かがえる。 以 - 17 - 上
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