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SCストランド
—エポキシ樹脂全素線塗装型 PC 鋼より線—「SCストランド」
1.開発の背景と目的
プレストレストコンクリート(PC)構造物において,PC 鋼より線は PC 構造物の寿命を左右する重要な材
料である。しかしながら,
PC 鋼より線は塩害やグラウト充填不具合などの影響によりその腐食が問題となり,
最悪の場合は破断に至り構造物自体の寿命が短くなることがあり,PC 鋼材の防食は PC 構造物にとって大き
な課題となっていた。
この課題を鑑みて,PC 構造物の耐久化と PC に限らず多様な構造形式の緊張材として使用可能であるエポ
キシ樹脂によって全素線単独に防錆塗膜が形成された「SCストランド」は開発された。
2.技術の内容
PC 鋼より線の防錆塗膜形成方法は,PC 鋼より線の素線 1 本ごとに単独で塗膜を形成する方法(全素線塗
装型)と外周を被覆状に塗装して内部空隙にも樹脂を充填する方法(内部充てん型)がある。
両者の断面比較を図-1 に示す。全素線塗装型は,PC 鋼より線の素線それぞれの外周面に塗膜が形成され
ているため,PC 鋼より線のより溝形状を保持したまま素線同士の接触部分がない。したがって,全ての素線
が全長にわたり完全に防錆される。一方,内部充てん型はより溝が被覆で埋められてしまい,素線の接触点は
そのまま残存する。素線の接触点は完全には防錆されないため,内部腐食が発生する可能性がある。
全素線塗装型は 0.2mm 程度の塗膜が均一に形成されているため,PC 鋼より線の最大の特徴である柔軟性
をはじめ,コンクリートとの付着強度や定着具の適用性などの特徴を保持して防食性を付与した防食 PC 鋼よ
り線である。
塗膜による非接触化
防錆塗膜
心線
素線の接触部分
被覆
側線
心線
側線
【全素線塗装型】
樹脂充てん部
【内部充てん型】
図-1 全素線塗装型(左)と内部充てん型(右)の断面比較
PC鋼より線
防錆塗膜
図-2 SC ストランド(全素線塗装型)の外観
1
SCストランド
表-1 SCストランドの標準仕様
PC鋼より線
JIS記号
SWPR7A
呼び名
9.3
12.7
15.2
405
774
1,101
10.5
13.9
16.4
424
800
1,131
0.20
0.20
0.20
19.0
26.0
30.0
単位質量
[g/m]
標準外径
[mm]
標準単位質量
[g/m]
防錆塗膜
標準塗膜厚さ
[mm]
標準塗膜質量
[g/m]
塗膜の種類
SWPR7B
エポキシ樹脂
3.技術の効果
SC ストランドは,防錆性能に優れていることから,沖縄県や新潟県などの塩害地域における橋梁や建築構
造物に使用され,PC 構造物の高耐久化が図られている。また,吊りケーブルなどの応力変動が大きい条件下
では,PC 鋼より線は素線間の接触によってフレッティングコロージョン(擦過腐食)が起こりやすくなり疲
労強度は低下する(図-3)
。SC ストランドは,素線間にエポキシ樹脂塗膜を有しているため,素線間の金属
接触は皆無であり,引張疲労強度は著しく向上する。
(N/mm 2 )
500
:裸PC鋼より線
応力振幅(N/mm 2 )
:内部充てん型PC鋼より線
(ECFストランド)
400
:全素線塗装型PC鋼より線
(SCストランド)
:SCケーブル
(43本タイプ)
300
(推奨値)
245
200
100
10
5
10
6
200万回
400万回
繰返し回数(回)
図-3 PC 鋼より線の S-N 曲線
2
10
7
SCストランド
4.審査証明の結果
「SCストランド」は,以下に示す性能を有すると認められました。
(1)
防錆性能
塩化物および薬品等に対する十分な防錆性能を有している
(2)
塗膜の可とう性
緊張に伴う伸びおよび曲げ等に追随する十分な可とう性を有している
(3)
柔軟性
従来の PC 鋼より線と同等の柔軟性を有している
(4)
塗膜の耐衝撃性
塗膜硬度試験等による所定の耐衝撃性を有している
(5)
機械的性質
JIS G 3536 に定められている PC 鋼より線の機械的性質を有している
(6)
疲労強度特性
従来の PC 鋼より線と同等の疲労強度特性を有している
コンクリートとの付着強
従来の PC 鋼より線と同等の付着強度であり,定着長さは道路橋示方書に定められ
度特性
ている PC 鋼より線直径の 65 倍以下の定着長である
(7)
(8)
プレストレストコンクリ
ートへの適用性
従来の PC 鋼より線を用いる場合と同等の適用性を有しているとともに,部材の耐
久性向上を図ることが可能であり,施工時において塗膜に損傷を与えないように取
り扱えば部材の耐久性向上のために十分な適用性がある
5.技術の適用範囲等
・プレストレストコンクリート構造物(土木構造物,建築構造物,海洋構造物)
・グラウンドアンカー用緊張材
・吊りケーブル構造(斜張橋斜材ケーブル,建築構造物吊りケーブル)
6.施工実績
・土木構造物
古宇利大橋(沖縄県)
新皆野橋(埼玉県)
3
SCストランド
・建築構造物
幕張メッセ展示場(千葉県)
広島市民球場(広島県)
・吊ケーブル構造
東京スタジアム(東京都)
下関唐戸市場(山口県)
・グラウンドアンカー
KTB・引張型 SC アンカーなど多数
7.技術保有会社および連絡先
黒沢建設株式会社
〒163-0717 東京都新宿区西新宿 2-7-1 小田急第一生命ビル 17 階
TEL:03-6302-0221(代表)
8.審査証明実施機関
一般財団法人 土木研究センター
9.審査証明年月日
平成 17 年 3 月 31 日
平成 22 年 3 月 31 日 更新
平成 27 年 3 月 31 日 内容変更・更新
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