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☆SPECIAL REPORT(BOJウォッチャー)
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<No.9126>
2003. 3. 25 (火)
「レジームチェンジ」に向け布石うつ
―― 次回会合まで従来の再評価指示=具体策焦点に
日銀法 17 条に基づく臨時金融政策決定会合、通常の政策委員会が 25 日に開催され、決
定会合では「全員一致」で当面の金融政策運営のなお書きが改められた。また、当面は全
ての営業日を通じて補完貸付制度を利用可能とする措置が決められた他、次回4月7∼8
日の決定会合までに、①金融緩和の波及メカニズム強化②これまでの量的緩和政策の評価
――に関する論点を報告するよう議長から執行部に指示が出されたため、福井新総裁での
「レジームチェンジ」に向け布石が打たれた恰好にある。プルーデンス政策への取組姿勢
を示す一方、実際に効果のある追加緩和手段としてETF、シンジケートローン担保債券
など、オペ対象の選定が目先の焦点となりそうだ。
初会合はまず「全員一致」で決定=安易な金融緩和に歯止め
「福井総裁が目指す最初の決定会合は、金融政策の具体的な変更よりも、従来の
体制との決別姿勢を示すこと。すなわちレジームチェンジにある」――。政府関係
者から事前にこのような指摘がなされる中、新日銀法下で初となる臨時会合での対
応が注目されたが「福井氏はマネジメント可能な政策でなければ導入しない」
(同)との指摘通り、臨時会合というサプライズな初陣は「全員一致」のもと、金
融政策の中身も現実的な内容に落ち着く恰好となった。
今回の臨時決定会合で、なお書き対応は「なお、当面、国際政治情勢など不確実
性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、(略)一層潤沢な資金供給を行う」
との表現に改められた。日銀用語で「当面」が意味することは、次の決定会合まで
の短期間に過ぎず、そのため次回4月7∼8日の会合で早晩これが変更される可能
性もある。ただイラク情勢で緊迫する3月期末の状況とは言え、従来の「当座預金
残高の拡大+国債買いオペの増額」という路線を安易に行わない姿勢を示したこと
の方が重要と言えそうだ。一部で取り沙汰された上限撤廃の議論も一切声明文には
盛り込まれておらず、福井氏が中銀として重視する「規律」の存在が再確認された。
また声明文の中では、補完貸付制度(ロンバート貸出)について「当分の間は全
ての営業日で公定歩合による利用を可能とすることとした」との方針が示された。
現在、即日オペの実施などにより、実質的に日銀が「最後の貸し手」から「最初の
出し手」の役目を担っている以上、ほとんど利用されていなかったロンバート貸出
の強化は全く意味を持たない。しかし、信用秩序の維持に対する取組姿勢を見せる
ため、ツールの1つとして盛り込まれた可能性が高いようだ。
次回会合での具体策が焦点=ETF、売掛債権など信用リスク物に
なお、今回の声明文では「レジームチェンジ」に向けた布石として、議長が「幅
広い観点から金融政策の透明性向上と金融緩和の波及メカニズム強化に関する論
点を、これまでの量的緩和政策の評価も踏まえつつ報告するよう執行部に指示し
た」ことが盛り込まれた点は注目される。具体的な措置として、福井総裁は企業金
融・金融調節の面でどのような措置が考えられるか、次回会合までに報告するよう
求めたとされるだけに、4月会合ではさっそく具体策が焦点となりそうだ。
その場合、これまでの福井総裁の発言などからは中小企業の売掛債権・シンジケ
ートローンを担保としたABSの他、ETFといった流動性の高いリスク性証券を
オペ対象に加える可能性が高いと見られる。単なる国債買いオペの増額ではマネー
サプライの増加に結びつかなかっただけに、日銀が一定の信用リスクを取る可能性
が高い。
実際、24 日の定例会見で林財務次官は、福井総裁が求めていた日銀納付金が減
額する可能性を容認する姿勢を表明。間接的に資産価格の上昇をうながす施策が盛
り込まれことに対し、認可を与える財務省側も理解を示す可能性が高まっている。
財政規律の維持、金融システム不安の解消といった政府側への他の要求も合意され
るのか、引き続き注目されそうだ。(了)
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