経営 談話室 Vol.138 丸金印刷株式会社 代表取締役社長 川合 榮子 医薬品パッケージ印刷の 草分けとして ~次の100年へ、着実に一歩ずつ~ 医薬品のパッケージ・添付文書・ラベルを中心に、 プリプレスから印刷・製函までを一貫して手掛け、 昨年創業100周年を迎えた丸金印刷株式会社。品 質に対するこだわりで製品づくりに取り組み、次 の100年に向かって歩む川合 榮子社長にお話をう かがいました。 2 夢シティちば 2015年₄月号 最新鋭の印刷機 様々な貼り加工を機械化 オペレーターによる刷り色確認 医薬品パッケージ印刷のパイオニアとして 老舗印刷会社の社長に 突然の就任 当社は1914(大正3)年に、初代 の川合金五郎が東京・台東区下谷で 印刷業を創業し、昨年創業100周年 を迎えました。と言っても、実は27 年前に3代目社長であった夫が亡く なり、子育てに専念していた私が突 然社長に就任することになったため、 正直、会社の成り立ちの詳細はわか らないんです。 何しろ、 この会社が印 刷業だとは認識していましたが、具 体的にどんな仕事か全く知らないま ま、50歳を過ぎての要請でした。東 京営業所ができた時、10カ月ほど電 話番をした程度で、ぶっつけ本番で 経営者になってしまったんですね。 医薬品パッケージ印刷に 特化して成長 最初は主人の祖父が千代紙など小 間紙を扱う商いから始めて、 戦後、 夫 の父の代で印刷業にシフトしたのち、 取引先の薦めで他社が扱わない医薬 品パッケージ印刷に特化して、業績 を伸ばしていったようです。現在で も、同業の印刷会社は全国に10数社、 製薬会社のパッケージに特化してい るのは当社含め2社程度。それだけ 特殊な分野です。医薬品パッケージ、 そしてグループ会社の丸金ラベルが 医薬品のラベルやシールを、同じく マツヨシ紙工が医薬品の添付文書を、 この3つの製品を柱に、長年培った ノウハウを駆使した「ものづくり」 、 その安定供給をめざしています。 業界でした。しかし私が社長になっ た2000(平成12)年頃は、これから 大変になるぞという時期でした。販 売承認制度が変わって製薬会社の大 型合併が相次ぎ、ジェネリック医薬 品や海外の製薬会社の台頭など、状 況が一変。しかし徐々に新規開拓に 力を入れるなどして、売上げ維持に 努めました。 製薬業界、 “良き時代”の終焉 私は北海道で生まれ育ち、実家が 東京・深川で営む木材屋から短大に 通いました。その隣にあったのが当 時の丸金印刷。短大卒業後、就職す ることなく川合家にお嫁に来て、結 婚後も働いたことがなかったんです。 当然、 印刷業界は全く未知の世界。 知 識ゼロ、逆に白紙の状態だったのが 良かったかもしれません。 実は当社の100年の歴史の大半は、 “良き時代”でした。黙って座って いれば注文書が来た、そんな状況が 延々と続きました。当社の取引先で ある製薬会社というのは非常に業績 が安定していて、競争原理と無縁の 「お客様は定期・不定期で査察にいらっ しゃいます。そのたびに指導や要望をお受け しますが、同じことはまず言われません。例 えクレームであっても毎回、異なるヒントを 与えていただいています。お客様の求めるレ ベルに限りなく近づいていくことが全従業員 の目標」と川合社長。 かわい・えいこ 1945(昭和20)年6月、北海道滝川市 出身。東京の短期大学卒業後、69(昭和 44)年に結婚。出産、 育児を経て89(平 成元)年、丸金印刷株式会社の取締役に 就任、営業管理部長などを歴任。2000 (平成12)年、代表取締役社長に就任。 昨年9月、盛大に開催された創業100周年記念祝賀会の様子。 <会社DATA> ◆本社/千葉市花見川区幕張町2-7698-1 ☎043(273)1601 事業内容:医薬品パッケージ・ラベル・添付 文書の製造 夢シティちば 2015年₄月号 3 本社オフィスにて、従業員の皆さんと。 2016年、市原に一貫生産可能な新工場建設を予定 身の丈に合った総合力で勝負 当社にはとりたてて 「これだ!」 と いう強味はありません。求められる 製品クオリティはどんどん高度にな り、それに対応していくのは非常に 高いハードルです。しかし企業は総 合力が勝負です。技術、品質、営業 の対応力、財務体質、お客様への思 いに、まんべんなく合格点をいただ けるよう努めてきました。ただ近年 は、技術面で幅を拡げることで、お 客様の選択肢を増やせるよう力を注 いでいます。 経営者としての私のささやかな信 念は、社員を幸せにし、社員に満足 してもらうこと。当社の規模ではな かなか多くを望めず、無い袖は振れ ないので、身の丈に合った努力をコ ツコツ重ねて地固めをしていく。そ のスピードは遅くとも、毎年少しず つ売上げは上昇しています。 誠実に、誠意を尽くす 社員が集まる パートさんを含め200人近くの従 業員には、日頃から誠実に、誠意を 尽くしてお客様と接するようにと話 しています。良い製品を作ることは もちろん大事ですが、企業はロボッ トではなく、経営はハートを持った 「人」がすること。お客様と、 人と人 としてふれあう中で信頼関係が生ま れ、それが1件でも多くの注文に繋 がればと思います。 先代、先々代が培ってきた社風な のか、 当社にはなぜか昔から、 気持ち が素直で人柄の良い社員が自然に集 まってきます。断言できますが、人 と信頼関係を築けない者はひとりも いません。私ひとりでは何もできま せんが、皆が社長を盛り立てて、育 ててくれたことに本当に感謝してい ます。 着実に、 足元から一歩一歩 長いスパンで経営を予測すること が難しい時代ですが、当社にはまだ まだ不足しているものがたくさんあ ります。まずは今、現実的にできる ことを積み重ねていこう、というの が私の基本的な考え方です。社長就 任から15年、歩みは微々たるもので すが、決して後退はしていません。 来年は市原に一貫生産が可能な新 工場を建設する予定です。これは当 社としてはかなり大きな投資です。 企業としてのキャパシティが少し大 きくなるぶん、 機械が稼働し続け、 お 客様に良い製品を安定供給できるよ うに…これが至近距離のテーマです。 川合社長 Q &A Q朝の習慣は? A朝食後、庭の草花へ水やりをし てから出社。 Q愛読紙・愛読書は? A新聞は日経・朝日・日経産業新 聞。本はビジネス書全般。 Q仕事以外でハマっていることは? A旅行、ガーデニング。 Qカラオケの十八番は? Aあまり歌いません。クラシック、 演歌が好きです。 Q座右の銘は? 「感謝」 を心掛けています。 A「誠実」 Qとっておきのストレス解消法は? Aウォーキング、ヨガですっきり。 医薬品パッケージと、ラベル(丸金ラベル) 、添付文書(マツヨシ紙工)の3本柱で、次の100年へ。いわゆる 「ペラもの」は一切扱わないため、「うちは加工会社、 “箱屋さん”だと思っています」と川合社長。 4 夢シティちば 2015年₄月号 Qやる気の源は? A社員の笑顔を見ることで、頑張 る気持ちが湧いてきます。
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