栄光ゼミナール PRESENTS テーマ 魚 ちきゅう ひょうめんせき わり うみ す さかな 地 球の表 面積の7割 は海で、そこに住 む魚 の しゅるい まん せん ちょうるい せん にゅうるい 種 類は、なんと2万5千。鳥 類が9千、ほ乳 類 テキスト版 ちゅうるい せんしゅるい うちゅうじん やは虫類がそれぞれ5千種類だから、宇宙人が ちきゅう み さかな わくせい おも 地 球を見たら 「魚の惑 星」 と思うかもしれない こんしゅう みぢか おもしろ さかな み ね。今週は、身近で面白い魚を見てみよう。 執筆/柳田理科雄 制作/空想科学研究所 提供/栄光ゼミナール さ し み あか 1 ◆マグロのお刺 身、 なぜ赤い? す し に ん き ちい お寿司で人気のネタといえばマグロだろう。 マグロは、小さいものでも 体長が1mにもなる大きな魚で、 いろいろな種類がある。 クロマグロなど たいちょう おお たいちょう さかな しゅるい たっ は体長3mにも達する。 おな か さかな か マグロは、サバや、カツオや、サワラなどと同じサバ科の魚だ。サバ科 さかな くち あ およ かいすい の おく こきゅう の魚は、口を開けて泳ぐことで海水を飲み、エラに送って呼吸している。 う し ねむ およ つづ このため、生まれてから死ぬまで、眠っているあいだも泳ぎ続ける。 こんなすごいことができるのは、マグロは筋肉のなかに酸素を蓄える 物質をたくさん持っているからだ。人間のマラソンもそうだが、長く運動 きんにく ぶっしつ も さ ん そ にんげん つづ さ ん そ きんにく さ ん そ いろ さしみ 赤い色がきれいなマグロのお刺身。とて もおいしいね たくわ なが ひつよう あか うんどう も を続けるには、たくさんの酸素が必要だ。筋肉に酸素をたくさん持って い およ つづ いるから、マグロは生きているあいだじゅう泳ぎ続けられる。 酸素を蓄える物質は、赤い色をしている。だから、マグロのお刺身は 赤いのだ。 さ ん そ たくわ ぶっしつ あか いろ さ し み あか しゃしん にんき ほか のがクロマグロ (ホンマグロ)。他にもミ め おお むな ナミマグロ、目の大きいメバチ、胸びれの なが 今日の1日1科学 こうきゅう この写 真は、人 気があって高 級とされる からだ おうしょく 長いビンナガ、体が黄 色がかったキハダ う し しゅるい おお ……など、マグロには種類が多く、おいし およ マグロは生まれてから死ぬまで泳ぐ さもそれぞれだ しろ 2 ◆タイが白 いのはなぜ? し ろ み さかな よ さ し み しろ いろ タイは 「白身の魚」 と呼ばれ、 そのお刺身は白い色をしている。 マグロと たいしょうてき 対照的だけど、 これはなぜだろうか。 タイは、普段は岩陰や海底でじっとしていて、危険が迫ると、素早く ふ だ ん いわかげ かいてい に き け ん おな しゅんかん て き せま す ば や うんどう さ ん そ 逃げる。ヒラメやカレイも同じだ。このような瞬間的な運動には、酸素が 必要ない。このため、筋肉に酸素を蓄える物質が含まれていないので、 白いのだ。 ひつよう きんにく さ ん そ たくわ ぶっしつ ふく さしみ ちが とうめいかん しろ マグロの刺身とは違って、透 明感ある白 いろ うつく い色が美しいマダイ しろ にんげん さ ん そ はこ ぶっしつ ふく せきしょきん きんにく 人間にも、酸素を運ぶ物質がたくさん含まれた 「赤色筋」 という筋肉 と、あまり含まれない 「白色筋 」 という筋肉がある。 100m走の選 手は ふく はくしょく き ん はくしょく き ん せんしゅ きんにく せきしょくきん そう せんしゅ はったつ 白色筋が、マラソンの選手は赤色筋がよく発達している。 今日の1日1科学 しゅんかんてき うんどう しろ きんにく む 瞬間的な運動には白い筋肉が向いている さかな おうさま よ さかなや 「魚の王 様」 とさえ呼ばれるマダイ。魚 屋 う たいちょう さんで売っているものは体 長が30㎝~ じつ たいちょう 50㎝ほどだが、実は体長120㎝くらいに そだ まで育つ! 1 すく り ゆ う 3 ◆ウナギが少 なくなった理由 た げ ん き で い さかな さいきん と ウナギは、食べると元気が出ると言われる魚だ。 でも、最近はあまり獲 ね だ ん たか と れなくなって、値段がものすごく高くなってしまった。 なぜ獲れなくなっ たのだろうか? にっぽん ふ だ ん かわ す たまご う じ き 日本のウナギは、普段は川に住んでいるが、卵を産む時期がくると、 太 平洋へ出てグアム島の近くで卵を産む。生まれた子どもは、海 流に たいへいよう の で にし とう はこ ちか くろしお たまご の う う にっぽん こ かいりゅう く たいちょう 乗って西へ運ばれ、黒潮に乗って日本まで来る。そのころには、体長5 たび き ょ り ㎝ぐらいのシラスウナギになっている。それまでに旅する距離は5500 ㎞、かかる時間は4ヶ月から5ヶ月だ。 じ か ん か げ つ か げ つ かわ のぼ えさ た おお にんげん ここからシラスウナギは、川を上り、餌を食べて大きくなる。人間は、 まえ つか おお そだ わたし た その前にシラスウナギを捕まえて、大きく育てる。これが、私たちが食べ ているウナギだ。 と り ゆ う シラスウナギが獲れなくなった理由は、3つある。 1つめは、シラスウナギを捕まえすぎたこと。 これは 「乱獲」 と呼ばれる。 つか き こ う へ ん か らんかく かいりゅう か よ う こ 2つめは、気候の変化で海流が変わり、生まれたウナギの子どもが 海流に乗れなくなったこと。気候が変わったのは、人間が石油や石炭 を使いすぎて、地球温暖化を招いたのが理由の1つといわれる。 かいりゅう の き こ う つか ちきゅう お ん だ ん か にんげん か にんげん まね て せ き ゆ せきたん り ゆ う かわ すがた か そだ 3つめは、人間の手によって川の姿が変わり、ウナギが育ちにくくなっ たこと。つまり、ウナギが獲れなくなった原因は、すべて人間にある。 と げんいん にんげん 今日の1日1科学 にんげん げんいん と ウナギは人間が原因で取れなくなった ふ し ぎ 4 ◆不 思議なタツノオトシゴ さかな みぎらん しゃしん さかな タツノオトシゴという魚がいる。右欄の写真①のように、 とても魚とは 思えない姿をしているが、本当に魚なのだろうか。 おも すがた ほんとう さかな か さかな あたま からだ たい ちょっかく ①タツノオトシゴ ②ヘコアユ ま タツノオトシゴは、 ヨウジウオ科の魚だ。頭が体に対して直角に曲がっ ていて、馬に似ているので、ウマウオやウミウマとも呼ばれる。英語でも シー・ホース (海の馬) という。尻尾が長く、クルリと巻いていて、これで うま に よ うみ いわ うま かいそう し っ ぽ しお なが え い ご ま なが ふせ 岩や海藻につかまって、潮に流されるのを防いでいる。 最大の特徴は、オスのお腹に 「育児のう」 という袋があって、メスはそ さいだい とくちょう たまご なか う い く じ う ふくろ こ おや おな すがた こに卵を産みつけることだ。生まれた子どもは、親と同じ姿になるまで、 育児のうのなかで育つ。だから、卵を産むのはもちろんメスだが、子ど もはオスのお腹から生まれてくる。 い く じ そだ なか か たまご う ③リーフィーシードラゴン ④アカヤガラ こ う か さかな おお みぎらん しゃしん ヨウジウオ科には変わった魚が多い。右欄の写真②は、ヘコアユだ。 逆立ちして、海藻やウニの棘のふりをしながら、背びれの側に向かって 泳ぐ。 これができるのは、尾びれが背びれと反対側についているからだ! さ か だ かいそう およ とげ せ お せ がわ む はんたいがわ しゃしん は うみ りゅう 写真③は、リーフィー・シー・ドラゴン (葉っぱのような海の竜) だ。 全身に皮膚が変化したトゲがあり、その先にヒラヒラがついて、海藻の ぜんしん ひ ふ うみ へ ん か さき かいそう ただよ ふりをして海を漂っている。 写真④は、ヨウジウオ科に近いヤガラ科のヤガラだ。体長は1mぐら いで、長いストローのような口で、岩に隠れた小魚やエビなどを吸い込 しゃしん なが か ちか くち か いわ かく たいちょう こざかな す こ 2 た えさ さかな きょうふ んで食べる。餌になる魚たちにとって、これは恐怖だろう。 今日の1日1科学 こ う タツノオトシゴの子どもはオスから生まれる りく うご さかな 5 ◆陸 でも動ける魚がいるの!? さかな し とうなん す さかな キノボリウオという魚を知っているだろうか。東南アジアに住む魚で、 現地の言葉でそういう意味の名前で呼ばれている。 キノボリウオは、実際には木に登れないが、陸上をはい回る。魚なの げ ん ち こ と ば い み な ま え じっさい に、なぜだろう? さかな みず なか き ① よ のぼ りくじょう こきゅう まわ さかな も 魚は、水の中で呼吸するための 「えら」 を持っている。キノボリウオに は、えらもあるが、えらぶたの上に、空気中で呼吸するための仕組みを うえ くうきちゅう こきゅう し く ② も 持っている。 陸 上でも生きていられる魚は、ほかにもいる。ムツゴロウやトビハゼ りくじょう い さかな ひ ふ こきゅう こきゅう は、カエルのように皮膚で呼吸できる。ハイギョは、うきぶくろで呼吸で わたし も はい そ せ ん し ん か きる。私たちが持っている肺は、ハイギョの祖先のうきぶくろから進化し たものだ。 むかし さかな すいちゅう ほか さかな きょうそう さ りくじょう ③ く 昔、魚のなかには、水中で他の魚と競争するのを避けて、陸上で暮ら そ せ ん りく あ そうとしたものたちがいた。 そのなかで、 ハイギョの祖先だけが陸に上が わたし にんげん し そ ん ることができた。私たち人間も、 その子孫なのだ。 ①キノボリウオ ②ムツゴロウ ③ハイギョ 今日の1日1科学 くうきちゅう こきゅう さかな さかな こきゅう れんちゅう だ! 空気中で呼吸できる魚もいる な が い くうきちゅう 魚なのに空気中で呼吸できるすごい連中 さかな 6 ◆長 生きする魚 な が い さかな なん ねん い いちばん長生きする魚は何だろうか。 ねん ねん い マダイやコイは、 40年も生きる。ウナギは50年、ナマズは60年も生き な が い ① ねんいじょう るといわれている。だが、もっと長生きなのはチョウザメだ。 100年以上 も長生きし、 『理科年表』によれば、なんと152年も生きた記録がある! な が い り か ねんぴょう ねん な ま え も じ い き ろ く はい チョウザメという名 前には、サメという文 字が入っているが、サメと はぜんぜん違う生き物だ。ちょっと自分の耳に触ってみよう。耳には軟 ちが い もの ほね じ ぶ ん みみ さわ なんこつ みみ ほね やわ なんこつ ② らかい骨がある。これを軟骨という。サメやエイは、骨が軟骨でできた 軟骨魚類で、とても原始的な魚だ。チョウザメはマグロやタイなどのよう なんこつぎょるい かた ほね げ ん し て き も こうこつぎょるい さかな な か ま に硬い骨を持つ硬骨魚類の仲間だ。 チョウザメは、川や湖などの淡水に住み、真っ黒な卵を産む。これを 塩漬けにしたのが、高級食材のキャビアだ。それにしても、その長寿に かわ し お づ みずうみ たんすい す こうきゅう しょくざい くろ たまご う ちょうじゅ おどろ は驚くね。 にんげん ながい 人 間よりも長 生きすることもあるチョウ たまご しおづ ザメ (①) 。その卵を塩漬けにしたキャビア (②) 今日の1日1科学 ねんいじょう ま い チョウザメは100年以上も生きる 3 やなぎた り か お へんしゅう こ う き 柳田理科雄の編集後記 ぼく す さかな むな つばさ ひろ さいこう とお 僕がいちばん好きな魚は、 トビウオです。胸びれを翼のように広げ、最高で400mも遠 と ゆうし す す あじ こきょう たねがしま くまで飛ぶその勇姿……も好きですが、 もっと好きなのは、味です。故郷の種子島のト ぜんちょう いちやぼし や さいこう ビウオは全長が30㎝もあり、 それを一夜干しにして焼いたものは最高のごちそうです。 かたみ せがわ はら がわ わ ぽん にぎ た こ 片身を背 側と腹 側に割ることができて、 それを1本ずつ握って食べます。子どものころ ひだりて みぎて おうごん ぼく は、左手にサツマイモ、右手にトビウオというのが、 おやつの黄金コンビでした。僕にとっ こきょう ふうけい かさ さかな やなぎた てトビウオは、故郷の風景と重なる魚です。 (柳田) 4
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