わずか5年で装着率は急増 乗用車事故件数は2割減少

特集
先進予防安全技術を取り巻く自動車業界の概況
わずか5年で装着率は急増
乗用車事故件数は2割減少
の販売台数そのものも押し上げるよう
制装置」で1割を超えた。「衝突被害
カメラからの情報を基に、前方の障害
になったからだ。
軽減ブレーキ」も、2006年には100台
ミリ波レーダーや赤外線レーザー、
物や車両への衝突が避けられないと
この流れは、特に軽自動車やコンパ
に1台も装着していなかったものが今
ECUが判断すると、自動的にブレーキ
クトカーでは機能を限定したより安価
や5%弱に達している。もはや先進予
を作動させて車両を減速または停止さ
なシステムが開発・採用されたことで
防安全技術は、売れる車作りの 十分
せる「衝突被害軽減ブレーキ」。
瞬く間に広まり、設定車種・グレード
条件 ではなく 必要条件 となったの
車両前方に取り付けたミリ波レーダ
も急増。乗用車全体での装着率は、
だ。
ーやカメラによって、先行車と走行レ
2013年に「低速域衝突被害軽減ブレ
政府も先進予防安全技術の普及を強
ーンを認識・判断し、あらかじめ設定
ーキ」と「ペダル踏み間違い時加速抑
力に後押ししている。1991年に「ASV
した速度内で車間距離を保ちながら追
従走行する「アダプティブクルーズコ
ントロール」。
15
前方を監視する車載カメラで道路上
の車線を分ける白線や黄線を認識し、
走行中に車線から車体が逸脱しないよ
う操舵を補助する「レーンキープアシ
スト」。
これらに代表される先進予防安全技
術は、ほんの10年ほど前まで、極論
10
(出典:国土交通省「 ASV 技術普及状況調査」)
主な先進予防安全技術の装着台数
■車間距離警報
■低速域衝突被害軽減ブレーキ
■衝突被害軽減ブレーキ
■高速 ACC
■低速 ACC
■全車速 ACC
■ふらつき警報
■車線逸脱警報
■レーンキープアシスト
■ペダル踏み間違い時加速抑制装置
ACC= アダプティブクルーズコントロール
すれば高級車のための 快適装備 だっ
た。比較的安価な2ℓクラスや軽自動
車の一部に設定されるケースはあった
ものの、装着するには非装着車に対し
20万円前後の追加費用が必要となる
ことが多かった。
5
しかしそれも、2009年を境に完全
停止可能なシステムが認可され、しか
も安価に入手可能となってからは状況
が一変する。スバル「アイサイト(ver
.2)
」やボルボ「シティ・セーフティ」
などの先進予防安全技術を設定する車
両での装着率が5割を超え、設定車両
22
0
装着率
( %)
2006 年
2007 年
2008 年
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
ボデーショップレポート 2015 年 5 月号
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先進予防安全技術がボデーショップにもたらす影響
カーメーカーの動向❶
価格を5万円に抑え
装着率を7∼ 8割に拡大
初めてスマートアシ
ストが採用された5
代目ムーヴ(LA10
0S・110S)と同車
のレーザーレーダー
ダイハツ・スマートアシスト
──スマートアシストはどのように採
作動車速も約30km以下に絞った。一
着・交換・調整する際の注意点及び必
用車種が拡大されてきたのか
方、誤発進抑制制御機能や先行車発進
要なツールは
2012年12月に大幅マイナーチェン
お知らせ機能を加えながら、普及拡大
フロントグリル内のレーザーレーダ
ジ を 受 け た5代 目 ム ー ヴ(LA100S・
を図るべく価格を5万円に抑えている。
ーを脱着・交換した場合は光軸を調整
110S)で初めて採用した。
その後2013年8月にマイナーチェン
しなければならないが、そのためには
3代目(L150S・160S)には横滑り
ジしたミライース(LA300S・310S)、
専用のターゲットとスキャンツールが
防止装置及びレーザーレーダーによる
3代目タント(LA600S・610S)、ウェ
必要になる。
レーダークルーズコントロール、4代
イク(LA700S・710S)、6代目ムーヴ
車両を水平な位置に停止させた状態
目(L175S・185S)及び5代目前期型
(LA150S・160S)へと採用車種を拡大
でターゲットを規定の位置に設置し、
にはレーザーレーダーとカメラを用
しており、装着率は7 ∼ 8割で推移し
スキャンツールを接続。その後フロン
い、衝突被害軽減ブレーキと車線逸脱
ている。なお、6代目ムーヴでは、新
トバンパー上部から水平・垂直の各方
警報を新たに加えた「インテリジェン
たにソナーセンサーをリヤバンパー内
向調整用エイミングスクリューを回転
トドライビングアシスト」を設定して
に装着するとともに、後方誤発進抑制
させ、スキャンツールの画面で双方の
いたが、スマートアシストではレーダ
制御を新機能として追加している。
数値を見ながらズレ量が±0.5°以内に
ークルーズコントロール機能を省き、
──スマートアシストのユニットを脱
収まるよう調整すれば完了する。
──スマートアシスト装着車における
禁止事項は
レーザーレーダーやソナーには汚れ
検知機能が備わっており、汚れを検知
すると全機能が自動的に解除される。
しかし、汚れ検知機能も万全ではな
い。また、誤作動を起こす可能性もあ
るため、レーザーレーダー周辺へのス
テッカー・アクセサリー装着、撥水剤
や塗料の塗布は禁止されている。ウォ
ッシャー液やオイル、その他汚れが付
着した場合は拭き取る必要があるが、
その際は傷が入らないよう柔らかい布
を使用すること。高圧洗浄機で水を掛
けたり、強い衝撃を与えることも禁止
6代目ムーヴ(LA150S・160S)で追加された後方誤発進抑制制御機能の作動イメージ
されている。
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