平成26年度 研究成果発表会 平成 26 年度 研究成果発表会 圧力測定用材料の開発 ○ 吉 野 徹 *1)、 大 久 保 一 宏 *2)、 山 中 寿 行 *1)、 渡 邊 禎 之 *3) 1. 目 的 ・ 背 景 工業用プレスをはじめとする各種プレスにおいて、実際に対象物にかかる圧力は、摩擦 などの様々な要因があるため正確に知ることは難しい。また、同じ面内でも圧力は均一と は限らず分布を持ち、製品の品質に影響を及ぼす可能性がある。そのため、圧力を二次元 的に、正確で手軽に測定できる手法の開発が望まれている。 一 方 、 近 年 、 非 晶 質 炭 酸 カ ル シ ウ ム ( CaCO 3 ・ nH 2 O、 以 下 ACC と い う ) が 数 百 MPa 程 度の高圧下で結晶化する現象が発見された。結晶質炭酸カルシウムの構造中に水は入りに く い た め 、結 晶 化 に 伴 い 水 が 放 出 さ れ る 。そ こ で 、本 研 究 で は 、ACC が 高 圧 下 で 結 晶 化 す る際に放出される水と塩化コバルトなどの呈色剤との反応を利用し、圧力に応じて色が変 化する圧力測定用材料の開発を目指した。 2. 研 究 内 容 (1)実験方法 炭酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して得られた析出物を即座に吸 引 ろ 過 し 、 ア セ ト ン で 洗 浄 し た 後 、 真 空 デ シ ケ ー タ 内 で 減 圧 乾 燥 す る こ と で ACC を 得 た 。 こ の と き 、乾 燥 の 条 件 を 制 御 す る こ と で 、含 水 量 の 異 な る 2 種 類( 含 水 量 12 wt% 、18 wt% ) の ACC を 得 た 。 合 成 し た 2 種 類 の ACC に そ れ ぞ れ 無 水 塩 化 コ バ ル ト を 混 合 し た 。 こ の 混 合物をペレッター内に充填し、油圧プレス機により加圧を行った。加圧は、目標の圧力に 達 し た 後 、そ の 圧 力 下 で 30 秒 間 保 持 し た 。減 圧 後 、試 料 を 取 り 出 し 、肉 眼 で の 観 察 、画 像 の取得及び反射スペクトルを取得し、解析を行うことで色の評価を行った。 (2)結果及び考察 含 水 量 18 wt% の ACC か ら 作 製 し た 試 料 の 加 圧 後 の 様 子 を 図 1 に 示 す 。 低 圧 条 件 ( 13MPa) で 加 圧 す る と 青 色 に 、 高 圧 条 件( 500MPa)で 加 圧 す る と 赤 紫 色 へ と 変 色 し た 。こ の色の変化は、無水塩化コバルト(青色)が水と反応し、 塩化コバルト水和物(赤紫色)になったためである。 加圧後の試料の反射スペクトルを解析することで得られ た 色 の 変 化 の 指 標 を 図 2 に 示 す 。 含 水 量 18 wt% の ACC か ら 作 製 し た 試 料 に つ い て は 、13 MPa 以 上 500 MPa 以 下 の 圧 力範囲において、圧力の増加に伴い色の変化の指標が単調 に 増 加 し た 。 一 方 、 含 水 量 12 wt%の ACC か ら 作 製 し た 試 料 で は 、 600MPa ま で は 色 の 変 化 の 指 標 は 一 定 と な り 、 500MPa 以 上 で は 単 調 に 増 加 し た 。 以 上 に よ り 、ACC と 無 水 塩 化 コ バ ル ト を 組 み 合 わ せ る こ とで高圧条件での圧力測定を可能とする、新たな圧力測定 用 材 料 を 開 発 す る こ と に 成 功 し た ( 特 許 出 願 済 )。 図 2. 青色 赤紫色 図 1. 加圧後の試料 加圧後の色の変化の指標 3. 今 後 の 展 開 現在のところ開発品は粉末状であるが、シート状に加工すれば、工業用プレスなどの二 次元的な圧力分布測定に活用できる。 *1)材 料 技 術 グ ル ー プ 、 *2)実 証 試 験 セ ク タ ー 、 *3)高 度 分 析 開 発 セ ク タ ー H23.10~ H24.10【 基 盤 研 究 】 圧 力 測 定 用 材 料 の 開 発 H24.10~ H25.10【 基 盤 研 究 】 圧 力 マ ー カ ー の 開 発 | 32 |
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