警察改革推進状況の検証結果 - 島根県

警察改革推進状況の検証結果
平成23年4月
島根県公安委員会
島根県警察本部
1
はじめに
本県警察においては、平成12年8月に策定された「警察改革要綱」及び平成17年
12月に取りまとめられた「警察改革を持続的に断行するための指針」に盛り込まれ
た各施策を実行に移し、国民の警察に対する信頼と治安の回復に向け、警察改革に
取り組んできたところである。
この度、警察改革の取組を始めてから10年が経過したことから、警察改革10年間
の取組状況を検証し、今後の施策展開の方向性を明らかにした。
2
警察改革の経緯
○
平成12年 3 月
一連の警察不祥事を受け、国家公安委員会の求めにより、有
識者による「警察刷新会議」が発足
○
平成12年 7 月
警察刷新会議が国家公安委員会あてに「警察刷新会議に関す
る提言」を提出
○
平成12年 8 月
国家公安委員会・警察庁が「警察改革要綱」を策定
○
平成17年12月
国家公安委員会・警察庁が「警察改革の持続的断行について
~治安と信頼の回復に向けて~」を指示
○
平成18年1月
「警察改革の持続的断行について」
(本部長通達)を発出し、
本県警察の抱える課題への対応及び警察改革要綱の着実な実
施と充実を図ることを指示
○
平成22年11月
「『警察改革』に盛り込まれた各施策の定着化・深化につい
て」(本部長通達)を発出し、警察改革への取組の検証を指
示
3
検証の対象とした施策
(1)
警察改革要綱
ア
警察行政の透明性の確保と自浄機能の強化
イ
「国民のための警察」の確立
ウ
新たな時代の要請にこたえる警察の構築
エ
警察活動を支える人的基盤の強化
(2)
警察改革を持続的に断行するための指針
ア
治安の回復
イ
幹部を始めとする職員の意識改革
ウ
不祥事の防止
エ
公安委員会の管理機能の一層の充実強化と警察改革の推進状況の不断の検証
4
検証結果
(1)
総括
ア
警察改革要綱及び警察改革を持続的に断行するための指針に盛り込まれた各
種施策は、制度面、運用面とも着実に推進されたと認められる。平成19年11月
以降、非違事案による懲戒処分者がなく、職員一人一人の意識改革も進んでい
る。
イ しかし、警察改革の基本的な考え方は、今後の警察行政においても引き続き
堅持されていくべきものであり、個々の施策を日常的に推進する中で、更に定
着化・深化を図っていくべきところ、本県のあるべき将来像との関連において、
いくつかの施策について改善が必要と認められる。
(2)
治安の更なる向上に向けて
ア
県内の治安情勢は、官民一体となった事件事故の抑止活動を推進した結果、
刑法犯認知件数が平成16年から7年連続して減少するとともに、交通事故発生
件数、負傷者数、死者数いずれも全国最少レベルにまで減少するなど、全国に
誇れる良好な治安を実現している。
イ
しかしながら、捜査環境がますます困難化する中にあって新たな治安情勢に
的確に対応し、本県の治安の質を更に高めていくには、県西部における未解決
重要事件の早期解決を図り、また、組織的に敢行される犯罪への対策を強化す
るとともに、「地域社会の連帯感と絆」を強め、規範意識の高い地域社会を実
現するための努力が不断に行われる必要がある。
ウ
また、これらの課題を克服していくため、より対処能力の高い警察職員を育
成することはもとより、組織の力が十全に機能するための職場環境の改善も重
要である。
エ
今後とも、警察改革に掲げられた各施策を着実に推進するとともに、本県の
治安の更なる向上に向け、「犯罪に強い社会の実現のための島根行動計画」を
始めとする治安諸施策を強力に推進するなどして、全力で県民の負託に応えて
いくこととする。
警察改革要綱
第1 警察行政の透明性の確保と自浄機能の強化
1 情報公開の推進
○ 平成18年9月、「島根県警察訓令・通達公表基準」を制定の上、施策を示す訓令・通達等を積極的に公表す
ることとし、公表対象の通達等については、県警察ホームページで公表するとともに、警察情報公開センター
へ公表中の訓令等の簿冊を備付け、一般の閲覧に供するなど、適切な公表を実施した。
○ 平成13年10月、島根県情報公開条例の実施機関入り し、情報公開制度の運用を開始した。また、公開決
定等の客観性及び適正確保のため、公安委員会に対し、適時適切な報告に努めた。
訓令・通達の公表推移
公文書公開請求件数の推移
500
80
400
60
300
40
200
20
100
0
0
H17
H18
H19
H20
H21
H22
42
110
208
302
341
381
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
62
11
18
69
52
71
73
61
33
22
【検証結果】
施策を示す訓令・通達等を積極的に公表するとともに、公開請求に対して迅速かつ適切に対応するなど、警
察行政の透明性が確保された。
2 警察職員の職務執行に対する苦情の適正な処理
○ 苦情該当性の適切な判断、苦情の受理・処理についての組織的管理の徹底を図ったほか、苦情の受理・処
理状況を公安委員会や警察本部長に適時適切に報告するなど、苦情の適正処理に努めた。
○ 改善すべき事項については迅速かつ適切な措置を講ずるとともに、反省・教訓事項について、執務資料等
の発出により、同種事案の再発防止の徹底を図るなど、苦情の適正処理に努めた。
苦情受理件数の推移
70
公安委員会あて
警察あて
60
50
40
30
20
10
0
H13
H14
H!5
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
平成22年の苦情の総受理
件数は16件であり、ピーク
時の平成19年の71件と
比べ、大幅に減少した。
【検証結果】
苦情の受理、処理が適切に行われるとともに、公安委員会等に対し、その状況が適時適切に報告されるな
ど、苦情申出制度の適切な運用が図られた。
1
3 警察における厳正な監察の実施
○ 平成16年4月に首席監察官を地方警務官に格上げし、各所属への指導力を強化した。
○ 平成12年4月に警察本部各部庶務担当課次長を兼務監察官に指定したほか、平成15年3月に監察官を3
人から4人体制にするなど、監察体制を強化した。
○ 県下全警察署を対象に行う総合監察及び随時監察を、年間計画に従って厳正かつ効率的に実施し、実施
結果はその都度、公安委員会に報告した。
【検証結果】
平成19年11月以降、懲戒処分者はなく、職員の意識改革は進んでおり、引き続き、県民の信頼を揺るぎない
ものとするため、非違事案未然防止のための各種施策を強化する必要が認められる。
4 公安委員会の管理機能の充実と活性化
○ 年初に作成した監察実施計画を報告するとともに、監察
実施結果を四半期ごとに報告することにより、公安委員会の
監察チェック機能を強化した。
○ 平成13年2月、公安委員会補佐室を設置し、室長に警視
を配置するなど、公安委員会の補佐体制を強化した。
○ 重要案件の事前説明と定例会議による二段階審議方式
を取り入れたほか、定例会議においては、出席者全員に発
言を求めるなど、会議における審議の活性化を図った。
○ 公安委員による交番・駐在所や警察署施設の視察、職員
との意見交換等を実施するとともに、ホームページへの活動
内容の掲載により、積極的な情報発信を行った。
公安委員と語る会の開催
【検証結果】
監察実施計画や監察実施結果の報告、現場視察や職員との意見交換等の機会の充実などにより、公安委
員会の管理機能の充実が図られた。
第2 「国民のための警察」の確立
1 国民の要望・意見の把握と誠実な対応
【警察安全相談の充実】
○ 平成13年4月、警察安全相談員の配置・運用を開始するとともに、平成17年4月「警察相談センター」を設置
し、相談窓口を一元化したほか、「警察相談の取扱いに関する訓令」を制定し、警察相談の処理に関し、本部
長など幹部によるチェック体制を強化するなど、組織管理を徹底した。
○ 警察本部及び各警察署に相談業務相互支援ネットワークを構築し、関係機関との連携を強化するなど、警
察相談に対する適切な対応を図った。
○ 平成22年9月から、警察相談で対応しているDV・ストーカー被害者、高齢者虐待被害者からの110番通報
に迅速・的確に対応するシステムの運用を開始した。
【検証結果】
警察相談の処理に関し、組織管理が徹底されているほか、関係機関との連携を強化するなど、警察相談へ
の適切な対応が図られた。
【警察署協議会の設置】
○ 平成13年6月、各警察署に警察署協議会を設置し、外国人や学生を含め、幅広い分野、年齢層から協議会
委員を委嘱して広く地域住民の要望、意見を把握するとともに、委員からの意見は積極的に警察業務へ反映
した。
2
委員分野別構成
委員年齢別構成
【検証結果】
幅広い分野・年齢層からの委員の委嘱に努め、広く地域住民の要望・意見を警察業務に反映させており、
警察署協議会が有効に機能したと認められた。
2 国民の身近な不安を解消するための警察活動の強化
【空き交番の解消、駐在所の再評価及びパトロールの強化】
○ 交番相談員19人を12交番に配置するとともに、交番勤務員を増強するなどして交番体制を強化し、空き交
番の解消に努めた。
○ 治安情勢の変化に的確に対応する、しなやかで強靱な組織づくりの一環として、交番・駐在所の適正配置を
進めた結果、183駐在所(平成13年)を24か所廃止し、159駐在所(平成22年)とした。
○ 平成16年から警察署にパトロール係を設置してパトロール体制を整備し、地域警察官の犯罪抑止、検挙活
動を強化した。
【検証結果】
交番相談員の配置や交番・駐在所の適正配置を進めた結果、空き交番が解消されるとともに、パトロール態
勢も強化された。今後も、交番・駐在所の適正配置を進め、交番・駐在所が地域実態に即して地域一体となっ
た活動を行うことにより、地域の防犯機能を強化していく必要がある。
【犯罪や事故のないまちづくりの推進】
○ 平成18年に「島根県犯罪のない安全で安心なまちづくり条例」を、平成21年に「犯罪に強い社会の実現の
ための島根行動計画」をそれぞれ策定して警察、自治体、企業、県民等が一体となって「日本一治安の良い
島根」を実現するための施策を推進した。
○ 青色防犯パトロール車の整備や青色防犯灯の設置が県内全域に広がるなど、官民一体となった施策が推
進され、県内各地で防犯意識が高まった。
○ 交通安全施設等整備事業の推進により、あんしん歩行エリア等の整備や信号機の高度化等を推進し、交
通事故防止と交通渋滞の緩和を図った。
防犯ボランティア団体数の推移
○ 県内防犯ボランティアは、
369団体、25,504人
に増加
○ 青色防犯パトロールは、
146団体、2,099台
で人口比では全国1位
【検証結果】
・ 防犯ボランティア団体が年々増加し、青色防犯パトロール活動が充実しているほか、防犯灯の増設など、
防犯環境の整備も進んでいる。今後も、真に犯罪の起きにくい社会を実現するため、重層的な防犯ネット
ワークの整備、地域社会における連帯感や絆の強化、社会の規範意識の向上により、犯罪抑止力を高め
ていく必要がある。
・ 交通安全施設等整備事業を推進したことにより、死傷事故件数や死者数が減少し、交通渋滞が緩和される
など、一定の効果が認められた。
3
【ストーカー問題への対応】
○ 女性センターや児童相談所など、関係機関との意見交換会を開催し、被害者の保護対策等について、連
携強化と情報共有を図った。
○ ストーカー事案に対しては、ストーカー規制法その他の刑罰法令を適用し、検挙、警告等の適切な措置を
講じたほか、被害者に対する防犯指導を行うなど、被害者の立場に立った対処により被害者の安全確保に
努めた。
【検証結果】
被害者の一時保護など、保護対策を迅速に行うため、関係機関との連携を強化して情報共有を図るとともに、
ストーカー規制法、その他刑罰法令を適用して迅速に対処するなど、積極的な対応が図られた。
【児童虐待等新たな問題への対応及び少年犯罪対策の強化】
○ 児童虐待認知時の援助要請等に円滑に対応できるよう児童
相談所と連携を強化したほか、児童の出会い系サイト利用及び
児童ポルノに対する対策を強化するため、「青少年が安全・安
心にインターネットを利用できる環境促進連絡会」を発足するな
ど、関係機関との連携を強化し、携帯電話のフィルタリング普及
啓発活動等を推進した。
○ 県下の小・中・高校において、非行防止教室を開催し、規範
意識の醸成を図った。
青少年が安全・安心にインターネットを
利用できる環境促進連絡会
【検証結果】
・ 関係機関との連携を強化し、虐待を受けた児童の適切な保護、支援等児童虐待防止対策が推進された。
・ 非行少年、不良行為少年の補導数が6年連続で減少するなど、少年犯罪対策に一定の効果が認められ
た。
【民事介入暴力対策の強化】
○ 民事介入暴力対策を推進するため、暴力追放県民センターとの連携による暴力団関係相談への適切な
対応と援助措置を行ったほか、弁護士会、暴力追放県民センター、警察の三者で「民暴研究会」を設置し、
情報交換を行った。
○ 関係機関・団体と連携して、経済取引や公共工事等から暴力団を排除する暴力団排除条項を整備するな
ど暴力団排除対策を推進した。
○ 県全体で暴排気運を高め、県民や事業者が関係機関・団体と一体となって暴力団を孤立化させる仕組み
として「島根県暴力団排除条例」(平成23年4月1日施行)を制定した。
【検証結果】
関係機関・団体との連携強化による経済活動からの暴力団排除や「島根県暴力団排除条例」の制定など、
官民一体となった効果的な暴力団排除対策が推進された。
3 被害者支援の推進
○ 犯罪被害者等の経済的負担を軽減するため、診断書料、初診料等の公費負担、犯罪被害者給付金等の支
給を行うとともに、精神的負担を軽減するため、精神科医・臨床心理士等によるカウンセリングなどきめ細かな
被害者支援を実施した。
○ 島根県被害者支援連絡協議会や被害者支援ネットワークを開催し、犯罪被害者等に対する理解を深めた。
【検証結果】
犯罪被害者等の経済的・精神的負担を軽減するための各種施策により、犯罪被害者等のニーズに応じた
支援が着実に推進されたほか、関係機関との連携により犯罪被害者等への理解を深める施策が推進され
た。
4
第3 新たな時代の要請にこたえる警察の構築
1 暴力団犯罪その他の組織犯罪との対決
○ 暴力団犯罪を始めとする組織犯罪に的確に対応するため、平成16年に銃器・薬物対策業務を刑事部門へ
移管するとともに、平成18年に組織犯罪対策課を設置、平成22年に国際捜査業務を組織犯罪対策課へ移管
し、執行力強化に向けた組織づくりを推進した。
○ 「暴力追放・銃器根絶島根県民大会」、「薬物乱用根絶島根県民大会」の開催や「薬物乱用防止教室」を
実施するなど、薬物・銃器根絶に向けた広報啓発活動を推進した。
○ 水際対策及び来日外国人犯罪対策を推進するため、
不審船対応訓練
入国管理局、税関、海上保安部等の関係機関と定期
的に情報交換を行うとともに、合同訓練を実施して連
携を強化した。
○ 暴力団等の犯罪組織の資金源封圧のため、犯罪収
益解明係を設置し、犯罪に係る資金の流れや犯罪組織
の実態把握に努めた。
【検証結果】
銃器・薬物根絶に向けた各種広報啓発活動を推進し、銃器・薬物対策を強化するとともに、関係機関と連携
して合同訓練を実施するなど、水際対策及び来日外国人犯罪対策を推進した。
一方、犯罪のグローバル化が顕著となっていることから、部門横断的な取組体制を構築し、繁華街対策、
ヤード対策などにより収集した情報や疑わしい取引に関する情報等を分析し、犯罪組織の実態解明と解体を
図る必要がある。
2 サイバー犯罪等ハイテク犯罪対策の抜本的な強化
○ 平成12年に生活環境課にサイバー犯罪対策係を新設し、サイバー犯罪等ハイテク犯罪に対応する体制を
強化した。
○ 「島根県サイバーテロ対策協議会」を設立し、関係機関との連携を強化したほか、重要インフラ事業者等に
対する個別指導、共同訓練などを実施し、事案対処要領の迅速・高度化を図った。
○ 島根県サイバーテロ対策プロジェクトにおいてサイバー攻撃を監視するセキュリティシステムを開発したほか、
全警察署にサイバーパトロール用携帯電話を配備するなど、装備資機材の整備を図った。
【検証結果】
関係機関との情報交換や関連事業者との共同訓練を実施するとともに、サイバー犯罪に対応する装備資
機材を整備するなど、サイバー犯罪対策を強化した。
しかし、インターネットの普及が急速に進んだことにより、インターネット上に違法・有害情報が氾濫し、サイ
バー犯罪も増加していることから、各部門と連携した捜査体制を構築するとともに、捜査技術の向上を図る
必要がある。
5
3 広域犯罪への的確な対応
○ 共同・合同捜査を的確に実施し、組織的かつ効果的な捜査を推進したほか、他県との合同による広域捜査
訓練の充実に努めた。
○ 自動車ナンバー自動読取システム等捜査支援システムの整備・充実を推進し、効果的な情報分析支援体
制の充実を図った。
【検証結果】
自動車ナンバー自動読取システム等捜査支援システムの整備・拡充と積極的な活用が図られた。
4 安全かつ快適な交通の確保
○ 交通安全施設等整備事業により、あんしん歩行エリア等の整備や信号機の高度化等を推進し、交通事故
防止と交通渋滞の緩和を図った。
○ 平成12年から平成20年までの間、松江署管内における共同危険行為により30人を検挙するなど、交通違
反取締りを強化し、暴走族容疑者を大幅に減少させた。
【検証結果】
・ 交通安全施設等整備事業は効果的に推進されており、安全かつ快適な交通環境が確保された。
・ 非行少年グループの実態把握を図り、暴走族容疑者を早期に把握し、爆音走行の抑止と検挙活動を推進
した結果、暴走族容疑者が大幅に減少するなど、沈静化が図られた。
第4 警察活動を支える人的基盤の強化
1 精強な執行力の確保と一人一人の資質の向上
【意識改革】
○ 職場及び警察学校における職務倫理教養を充実させるとともに、警察職員による非違事案の未然防止に
資するため、首席監察官等による「ポリスマインド教養」を実施したほか、各種執務資料等を発出するなど、
警察改革を風化させないよう、教養の充実を図った。
○ 警察職員として必要な幅広い知識、見識を養うため、犯罪被害者の遺族、公安委員、警察署協議会委員等
の有識者による講話を実施した。
○ 警部及び警部補の昇任試験において、警察改革に関する問題を出題し、幹部昇任者の意識改革を図った。
【検証結果】
警察改革の精神を風化させないための指導教養を実施するとともに、ポリスマインド醸成のための職務倫
理教養を実施するなど、警察職員の意識改革が図られた。
【実戦的教育】
○ 各警察署において、ロールプレイング方式による職務質問、擬律判断、制圧逮捕等の実戦的総合訓練や
相手方から刃物等で攻撃される事案等を想定した総合術科訓練を実施するなど、現場執行力の強化を図っ
た。
○ 採用時教養において、早期戦力化のための実戦的な現場対応措置訓練や総合術科訓練の実施、対話
能力向上のためのスピーチ訓練の実施、無線通話技術の向上のための教養・訓練等を充実させた。
○ 術科訓練単位制度の導入や若手警察官や女性警察官を対象とした術科訓練を実施するなど、術科訓練
の取組を活性化させ、基礎体力の維持・向上を図った。
【検証結果】
各警察署及び警察学校において、現場執行力の強化に向けた教育訓練を充実させた結果、若手警察官
が刃物を持った被疑者を制圧・検挙するなど、現場対応力が強化された。今後も、現場実態に即した実戦
的、実務的教養、訓練等を実施し、個々の職員の対処能力を向上させる必要がある。
6
【優秀かつ多様な人材の確保と活用】
○ 体験・体感型採用説明会の開催、大学における就職説明
会の実施、民間主催の就職説明会への参加等優秀な人材
を確保するための取組を強化した。
○ 受験資格の上限年齢を3歳引き上げ、受験対象を拡大し
たほか、面接時間を増やし、面接試験の精度を確保するな
など、優秀な人材確保に取り組んだ。
○ 女性警察官の積極的な採用を図るとともに、通信指令室、
白バイ勤務員、警察学校教官、子ども・女性安全対策隊な
どに起用するなど、女性警察官の職域の拡大を図った。
就職説明会
【検証結果】
女性警察官の積極的採用と職域拡大により、ストーカー事案等への取組体制や性犯罪等にかかる被害者
支援の充実が図られているが、更なる拡充が求められる。
2 業務の合理化と地方警察官の計画的増員
○ 平成14年以降、警察官を74人増員した。平成21年度は、子どもと女性を性犯罪等の被害から守るための
体制を構築し、平成22年度には、警察署鑑識体制を強化するなど、警察基盤の整備を図った。
○ 平成17年に県下17警察署を12警察署に再編し、効率的な警察官配置を実施した。また、平成20年に本部
内の庶務業務を集中化したことにより、業務の合理化を推進し、現場執行力を強化した。
○ 島根県警察WANシステムを整備し、平成12年以降、グループウェアの構築や情報保護システムを導入し
たほか、平成17年度には全国に先駆けて、1人1台パソコンを整備するなど、業務の効率化を図った。
【検証結果】
不断の組織の見直しにより警察基盤が強化されたほか、ネットワークの整備、最新のIT技術の導入により、
情報の共有化と業務の合理化が図られた。
3 活力を生む組織運営
○ 管理監督者に対するメンタルヘルスセミナーに加え、職員自身が受講できるセミナーを実施したほか、平
成22年から休業者の職場復帰支援制度の運用を開始するなど、職員のメンタルヘルス対策を強化した。
○ 保健委員や産業医、嘱託保健師を増員したほか、50人未満の5警察署に健康管理医を配置するなど、健
康管理体制を強化した。
○ 健康管理対策に対する幹部、職員の意識改革を図った結果、定期検診等の一次検診受診率はほぼ100
%となったほか、二次検診の受診率も増加した。
○ 現場の活動に対する適正な評価を行うため、「地域警察官MVP表彰制度」、「ベスト交番、ベスト駐在所
ブロック表彰制度」、「ベスト初動警察賞等表彰制度」等を制定し、職員の士気の高揚及び技能の向上を図っ
た。
【検証結果】
・ 職員への健康管理に関する教養や健康管理対策推進体制の整備、職場復帰支援制度の効果的な運用を
図るなど、職員の健康管理対策を推進しているが、精神疾患による休業期間が長期化していることから、更
なるメンタルヘルス対策が必要と認める。
・ 現場活動に対して適正な表彰を実施することにより職員の士気高揚を図るなど、活力を生む組織運営が
推進された。
7
警察改革の持続的断行
第5 治安の回復
1 街頭犯罪・侵入犯罪の発生を抑止するための総合対策の推進
○ 平成14年12月に、「街頭犯罪等の発生を抑止するための総合対策」を、平成16年1月に、「身近な犯罪を抑
止するための総合対策」をそれぞれ策定し、犯罪を抑止するための対策に取り組んだほか、平成19年に、「身
近な犯罪抑止推進計画」を策定し、同計画に基づいた対策を計画的かつ強力に推進した。
○ 平成21年12月、「犯罪に強い社会の実現のための島根行動計画」を策定し、日本一治安の良い島根を目指
し、官民一体となった取組を推進した。
刑法犯認知件数等の推移
10000
8000
6000
4000
2000
0
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
刑法犯認知件数
7533
8695
9055
9217
8864
7586
6782
6001
5802
5157
5116
身近な犯罪認知件数
4487
5358
5689
5812
5284
4353
3624
3275
2997
2771
2367
○ 平成22年の刑法犯認知件数は
5,116件で、平成16年から7年連続で
減少し、全国最少値であった。
○ 平成22年の身近な犯罪の発生件数
は2,367件で、平成16年から7年連続
で減少した。
【検証結果】
防犯ボランティア団体による自主防犯活動の活性化や企業等と連携した各種防犯対策など、官民一体となっ
た犯罪抑止の総合的対策を推進した結果、県内の刑法犯認知件数は平成16年から7年連続して減少し、ま
た、身近な犯罪の発生件数も大幅に減少するなど、犯罪の抑止に一定の効果が認められた。
2 重要犯罪に係る捜査の強化
○ 重要犯罪に対応するため、自動車ナンバー自動読取システム等の捜査支援システムを整備し、効果的な
情報分析支援体制の充実を図った。
○ DNA型鑑定施設や機材を増強し、DNA型鑑定を積極的に実施するとともに、現場鑑識体制を強化するなど
して科学捜査の充実・強化を図った。
○ 適正な検視業務を推進するため、検視体制を増強した結果、平成16年に21.6%だった検視官の臨場率は
平成22年に56.5%に上昇した。
DNA型鑑定件数の推移
重要犯罪の認知・検挙状況
【検証結果】
DNA型鑑定等捜査手法の効果的な運用、鑑識活動等にかかる教育の強化などにより、科学捜査力の充実・
強化が図られたほか、捜査支援システムの整備や死因究明体制を強化するなど、重要犯罪に係る捜査力が
強化された。
一方で、浜田市における女子大学生被害にかかる死体遺棄等事件など、県西部における未解決重要事件
の早期解決に向け、引き続き、組織を挙げた捜査活動が必要である。
8
3 振り込め詐欺対策の強化
○ 合同・共同捜査による犯行グループに対する取締りを徹底するとともに、助長犯罪について、刑法等の法
令を適用した取締りを強化したほか、振込指定先金融機関に対する「口座凍結依頼」、犯行に使用された携
帯電話事業者に対する「契約者確認の求め」による犯行ツールの無力化等を実施した。
○ 平成21年「島根県振り込め詐欺撲滅対策推進本部」を設置し、官民一体となった振り込め詐欺被害防止活
動を推進した。
○ 金融機関、コンビニ業界等関係企業と連携を強化し、振り込みや送金を防止する諸対策を推進した。
振り込め詐欺発生状況
《平成22年被害状況》
○ 被害件数は17件で前年対比-3件
○ 被害金額は6,772万円で前年対比
+4,337万円
○ 罪種別では架空請求詐欺が全体の
約8割
【検証結果】
被害防止対策を強力に推進した結果、認知件数は大幅に減少したが、いまだ高齢者を始めとする被害者が
散見されることから、被害者ゼロに向けた諸対策を推進する必要が認められる。
4 生活経済事犯など国民の身近で発生する治安事象への対応
○ ヤミ金融事犯、特定商取引等事犯、知的財産権侵害事犯等の経済関係事犯の取締等を強化するため、「島
根県生活経済事犯対策推進要綱」を制定し、被害の拡大を防止するとともに、悪質訪問販売業者を摘発する
など、安全で平穏な生活の確保等に資する捜査を推進した。
○ 全警察署へのサイバーパトロール用携帯電話の配備やサイバーパトロールモニター制度の運用により、違
法有害情報の監視体制の強化を図り、インターネットを利用した著作権法違反等を検挙した。
【検証結果】
平成17年以降、経済関係事犯の検挙人員は高い水準を保っており、環境事犯についても検挙実績が大幅
に増加したほか、サイバーパトロールを端緒としてインターネット利用犯罪を検挙するなど、一定の効果が認
められた。
5 総合的な交通事故防止対策の推進
○ 平成21年から、本県死亡事故の特徴である「高齢者・夜
間・国道」の3つのことば(みこと)をキーワードに、交通事
故から県民の命(みこと)を守る総合的な交通事故防止対
策として「みこと運動」を推進した。
○ 交通死亡事故が発生した際、交通死亡事故の連続発
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生をブロック(阻止)する24時間の「ブロック 集中対策」を
実施するなど、死亡事故連続発生阻止対策を実施した。
○ 飲酒運転根絶に対する広報啓発活動を推進したほか、
飲酒運転に対する取締りを強化するなど、飲酒運転根絶
対策を強化した。
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交通事故発生状況
○ 交通事故発生件数、負傷者数、死
者数はいずれも減少
○ 高齢者死者数は減少しているもの
の、全死者数に占める比率は高い。
○ 全死亡事故件数の約半数が夜間・
国道で発生
【検証結果】
効果的な交通安全教育や総合的な交通事故防止対策を推進した結果、交通事故発生件数、負傷者数、死
者数はいずれも減少したが、高齢者死者数、夜間、国道における死者数が半数以上を占めていることから、
この特徴を踏まえ、引き続きみこと運動など諸対策を推進する必要が認められる。
6 総合的な国際テロ対策の推進
○ 島根原子力発電所、空港等の重要施設や鉄道等公共交通機関の警戒警備を強化したほか、「空港保安委
員会」「島根県公共交通機関等テロ対策協議会」における情報共有、合同訓練の実施により、関係機関との連
携を強化した。
○ 平成18年に警備第一課の附置機関として「国際テロ対策室」を設置し、国際テロに関する情報の収集、分析
及び浜田港等の国際海港対策を強化した。
【検証結果】
国際テロの未然防止を図るため、関係機関との情報共有や合同訓練の実施など関係機関が一体となった
総合的な国際テロ対策が推進された。
第6 幹部を始めとする職員の意識改革
《再掲》 第4 警察活動を支える人的基盤の強化 「精強な執行力の確保と一人一人の資質の向上」
<意識改革>
○ 職場及び警察学校における職務倫理教養を充実させるとともに、警察職員による非違事案の未然防止に資
するため、首席監察官等による「ポリスマインド教養」を実施したほか、各種執務資料等を発出するなど警察改
革を風化させないよう、教養の充実を図った。
○ 警察職員として必要な幅広い知識、見識を養うため、犯罪被害者の遺族、公安委員、警察署協議会委員等
の有識者による講話を実施した。
○ 警部及び警部補の昇任試験において、警察改革に関する問題を出題し、幹部昇任者の意識改革を図った。
【検証結果】
警察改革の精神を風化させないための指導教養を実施するとともに、ポリスマインド醸成のための職務倫
理教養を実施するなど、警察職員の意識改革が図られた。
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第7 不祥事の防止
1 会計経理の透明性の確保と監査の強化
○ 「捜査員のための捜査費経理の手引き」などの執務資料を作成し、各種教養に活用するとともに、捜査費関
係書類作成ファイルを導入し、書類作成の適正化を図った。
○ 監査室体制を強化するとともに、会計監査の指針の策定、チェックリストの作成等監査手法を改善し、監査の
強化を図った。
○ 適正な物品購入契約を推進するため、契約担当者と履行検査員を別に指定し、内部牽制機能を強化した。
【検証結果】
過去において、物品購入等について不適切な経理手続が把握されたが、指導教養や体制強化により適切
な経理処理が行われているものと認められる。今後、再発防止に向け、会計経理の透明性を確保するため
の取組を推進する必要がある。
2 非違事案の防止に重点を置いた監察の強化
○ 年1回の総合監察、四半期ごとの随時監察のほか、平成20年度から、警察庁監察結果の改善状況を点検
する「検証型」監察を取り入れるなど、監察を強化し、非違事案の防止を図った。
○ 第1四半期における身上把握・指導に関するもの、異動期、夏期、年末、夜間・休日等における当直勤務、
けん銃管理に関するもののほか、全国で発生している非違事案の予防監察として、業務主管部門と協議した
監察項目等により随時監察を実施するなど、非違事案の防止に重点を置いた監察を強化した。
【検証結果】
平成19年11月以降、懲戒処分者はなく、職員の意識改革は進んでおり、引き続き、県民の信頼を揺るぎない
ものとするため、非違事案未然防止のための各種施策を強化する必要が認められる。
第8 公安委員会の管理機能の一層の充実と警察改革の推進状況の不断の検証
1 警察改革の推進状況にかかる報告聴取と検証
○ 警察改革の推進状況、今後の課題や問題点等について、年1回、定例会議において公安委員に報告し、
公安委員から提言を受け、それを業務に反映させて、各施策を推進した。
【検証結果】
公安委員への適宜適切な報告と、公安委員からの提言を業務に反映させることにより、警察改革推進状況
の検証が不断に行われた。
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