バースト解析の基礎 端山和大 National Astronomical Observatory of Japan 1 2011年7月21日木曜日 干渉計を用いた重力波の検出 重力波の効果 ○ 潮汐力の効果で自由質点間の距離が変化する ○ +モード、Xモードの2偏波がある 距離の変化をマイケルソン干渉計の原理で検出する 自由質点の応答 レーザー光を直交する2方向に分ける ミラーに反射させ再結合。干渉光を光検出器で観測 干渉光量に対応する時系列データから重力波信号を抽出す る 半透明鏡 アンテナパターン +モード Xモード 光検出器 2 2011年7月21日木曜日 反射鏡 レーザー 重力波望遠鏡の感度 Seismic Noise! test mass (mirror)! Residual gas scattering! Beam! splitter! LASER! Wavelength & amplitude fluctuations! photodiode! Radiation pressure! "Shot" noise! Quantum Noise! A. Weinstein 3 2011年7月21日木曜日 重力波源と望遠鏡の感度 Core Collapse@10kpc 46 2011年7月21日木曜日 重力波望遠鏡ネットワーク H1 L1 GEO600 LIGO LIGO V1 VIRGO LCGT 5 2011年7月21日木曜日 バースト性重力波 パルサーからの連続波 コンパクト連星合体からの重力波 背景重力波 波形不明のバースト性重力波 超新星爆発 パルサーグリッチ 中性子星の星震(accreting mass等による) ガンマ線バースト 6 2011年7月21日木曜日 バースト性重力波源 超新星爆発からの重力波 Positive maximum Longer interval Shorter interval K. Kotake パルサーグリッチ ∆Ω/Ω~10-6 τ~50-500[ms]7 2011年7月21日木曜日 バースト性重力波源 中性子星の星震(accreting mass等による) 降着ガスが降り積もり外殻が重力でつぶれ、 エネルギーが重力波、X線などで放出。 ガンマ線バースト E. Coccia et al.(2004) 連星合体 高速回転大質量星によるhypernova SGR(Soft Gamma Repeater) 強磁場を持つ中性子星からのフレアー ..... 8 2011年7月21日木曜日 バースト重力波のデータ解析 感度曲線 感度曲線の周波数特性 狭帯域信号(ライン) データの非定常性 短いタイムスケールで感度、非定常雑音の 統計が変化 バースト性雑音(Glitch) 周波数 重力波との区別 Noise Floor Glitch H1 10 amplitude 5 0 ï5 ï10 0 5 時間[秒] 10 time (sec) 2011年7月21日木曜日 15 20 9 時間(1週間) バースト性重力波の検出 天体爆発によるバースト重力波の波形不定性が大きい。 望遠鏡が多くのバースト性雑音を含み、複数の望遠鏡を用いてさえコ インシデンスイベントが多い。 さまざまな情報を駆使して雑音と重力波を区別することが必要。 H1 H2 15 10 2011年7月21日木曜日 Coincident Glitch H1 H2 10 10 8 6 5 amplitude amplitude 4 0 2 0 ï2 ï5 ï4 ï6 ï10 0 5 10 time (sec) 15 20 ï8 0 5 10 time (sec) 15 Power Glitch H2 Power Glitch H1 1000 1000 60 60 800 800 40 600 20 400 0 frequency (Hz) 40 frequency (Hz) 20 600 20 400 0 200 ï20 ï20 200 ï40 0 2011年7月21日木曜日 5 10 time (sec) 0 15 11 ï40 5 10 time (sec) 15 解析プロセス 12 2011年7月21日木曜日 データコンディショニング Band-pass filtered(64-2000Hz) signals ï20 2 ホワイトニング x 10 1 strain どの周波数帯も同様に探査したい。 データの周波数特性をフラットにしてイベ 0 ï1 ント探査。 ï2 0 あとで周波数特性を戻してやる。 ラインの除去 0.02 0.04 0.06 0.08 time 0.1 0.12 0.14 ï18 強帯域ではあるが、非常に強いピーク。 ラインの強度変化等は検出効率を悪化さ せる。 重みをかけて影響を無くす等。 strain noise spectrum(Hz^-1/2) 10 Simulated line features: sinusoids ï20 10 ï22 10 ï24 10 ï26 10 2 10 frequency(Hz) 13 2011年7月21日木曜日 3 10 例:Linear Predictor Error Filter Linear Prediction Part: n番目のサンプルはその前M個のサンプルの線形和で表されると仮定する。 M x[n] = ∑ c[m]x[n − m] Prediction Error Part: 実データと比較する。 m=1 e[n] = x[n] − x[n] Training Part: Prediction Errorの自乗平均が最小になるようにc[m]を決める。 N 1 σ 2e = ∑ e[n]2 N n=1 14 2011年7月21日木曜日 例:Linear Predictor Error Filter 15 2011年7月21日木曜日 データコンディショニング ï20 前 5 x 10 band pass filterd at 64Hzï2000Hz 0 ï5 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.1 0.12 after conditioning 後 0.5 0 ï0.5 0 0.02 0.04 0.06 16 2011年7月21日木曜日 0.08 データコンディショニングの効果 ï4 検出効率 1 x 10 ï80 3.4 ï60 3.2 ï40 3 ï20 2.8 0 2.6 20 2.4 40 2.2 60 2 80 1.8 Without DC detection probability 0.8 0.6 緯度 0.4 0.2 0 ï4 10 ï3 10 ï2 ï1 10 10 false alarm probability 0 10 False Alarm Probability 1 With DC detection probability 0.8 0.6 Up 0.4 0.2 0 ï4 10 ï3 10 ï2 ï1 10 10 false alarm probability 0 10 17 2011年7月21日木曜日 ï150 ï100 ï50 0 50 経度 100 150 イベントトリガー データからバースト性信号を抽出する。 前回のmatched filteringに対応する。 波形不明のバーストサーチの場合、エネルギーが時間的に局在した信号を抽出する。 単独望遠鏡の場合 Excess power method 時間周波数空間上で強いエネルギーを持つイベントを探す。 複数望遠鏡の場合 コインシデンス解析 複数の望遠鏡データで検出されたイベントのコインシデンスを取る。 コヒーレントネットワーク解析 今日のメイン 始めの段階で、望遠鏡データ全てを重力波の到達時間差を考慮して結合。 18 2011年7月21日木曜日 Excess Power Method 時系列データをFourier(Wavelet)変換 により時間周波数空間に写す。 エネルギーが閾値を越える時間周波数ピ クセルを抽出する。 時間的に連続しているものを一つの信号 としてクラスタリングする。 イベントの再構成完了。 19 2011年7月21日木曜日 Coherent network analysis ⎡ x1 (t) ⎢ ⎢ ⎢ xd (t) ⎣ data ⎤ ⎡ F1+ (θ , φ ) F1× (θ , φ ) ⎥ ⎢ ⎥=⎢ ⎥ ⎢ F1d (θ , φ ) Fd × (θ , φ ) ⎦ ⎣ = detector response 重力波のレスポンス 重力波の再構成 x ⎤ ⎡ n1 (t) ⎥ ⎡ h+ (t) ⎤ ⎢ ⎥+⎢ ⎥⎢ ⎥ ⎢⎣ h× (t) ⎥⎦ ⎢ nd (t) ⎦ ⎣ ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ gravitational wave + noise ξi (t) = Fi+ (θ , φ )h+ (t) + Fi× (θ , φ )h× (t) h = (AT A)−1 AT x 重力波の抽出は逆問題を解く事と同じ。 天球位置(θ,ϕ)を変えながら、最も尤もらしい重力波(h)を探す。 20 2011年7月21日木曜日 Coherent network analysis ⎡ x1 (t) ⎢ ⎢ ⎢ xd (t) ⎣ x ⎤ ⎡ F1+ (θ , φ ) F1× (θ , φ ) ⎥ ⎢ ⎥=⎢ ⎥ ⎢ F1d (θ , φ ) Fd × (θ , φ ) ⎦ ⎣ A ⎤ ⎡ n1 (t) ⎥ ⎡ h+ (t) ⎤ ⎢ ⎥+⎢ ⎥⎢ ⎥ ⎢⎣ h× (t) ⎥⎦ ⎢ nd (t) ⎦ ⎣ h ⎤ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ ξi (t) = Fi+ (θ , φ )h+ (t) + Fi× (θ , φ )h× (t) h = (AT A)−1 AT x 最尤推定によって逆問題を解く。 全天において下で定義されるLikelihood statisticを計算する。 Lがバックグラウンドから見積もった閾値を越えたものを重力波候補 とする。 L = max(− x − Ah ) 2 where x 2 d = ∑ ∫ xi (t)T xi (t) dt i=1 data(x) − estimated signal(ξ ) 2 0 −1 h = (A A) A x T 21 2011年7月21日木曜日 T T バースト信号付近のLikelihood Sky-Map 22 2011年7月21日木曜日 Likelihood Sky-map 雑音のみの場合に、望遠鏡ネットワークに典型的なパターンが存在。 望遠鏡のネットワークコンビネーションでパターンが変化する。 重力波が入るとパターンが変化。 −20 1 x 10 0.5 0 H1-H2-L1 −0.5 雑音 雑音+信号 θ θ ϕ 2011年7月21日木曜日 −1 0 23 ϕ 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 各ネットワークの Likelihood Sky-map H1-H2-L1-V1 雑音 雑音+信号 H1-H2-L1-T2 24 2011年7月21日木曜日 各ネットワークの Likelihood Sky-map H1-H2-L1-V1-T2 25 2011年7月21日木曜日 Ill-Poseness of Inverse Problem アンテナパターン行列はある天球位置で逆問題がill-posedになる。 ベストフィット時のエラーの分散が増幅する。 90 N θ latitude 45 N 0 45 S 90 S 180 W135 W90 W 45 W 0 45 E 90 E 135 E180 E longitude ϕ 26 2011年7月21日木曜日 Injected signal: sineGaussian235HzQ9 Condition Number Ill-posenessはcondition numberによって特徴つけられる。 Cond(A) over the skymap of H1-H2-L1-V1 log10 scale Feature: Cond(A) , then, error of the solution Strength of Ill-poseness strongly depends on the sky location 27 2011年7月21日木曜日 Tikhonov regularization Tikhonov regularization: technique to address this Ill-pose problem Impose regulator on the maximum likelihood Regulator should be a function of the sky location Consider eigenvector of M=ATA: We can assume 0 (detectors are co-aligned) Condition number Cond(A) over the skymap Regulator so that condition number ~ 1 28 2011年7月21日木曜日 Effect of regulator regulatorを加える前は、Likelihood sky-mapはフィットポイントが 散乱している。 regulatorを加えると、フィットポイントは真のポイント付近に集中す る。 Before adding regulator After adding regulator 45 N 45 N 0 latitude 90 N latitude 90 N 0 45 S 45 S 90 S 180 W135 W90 W 45 W 0 45 E 90 E 135 E180 E longitude 90 S 180 W135 W90 W 45 W 0 45 E 90 E 135 E180 E longitude 29 2011年7月21日木曜日 Error of the regularized ML approach The error consists of two components: Bias and Variance Bias Variance Total error Bias g g 0 Bias 1 Bias + Variance corresponds to Gursel&Tinto formula corresponds to constraint coherent approach by Klimenko Variance Variance 30 2011年7月21日木曜日 History of LIGO sensitivity 31 2011年7月21日木曜日 LIGO-VIRGOネットワークを用いたバーストサーチ Upper limit on GW energy for a 153Hz burst ~2x10-8M⦿c2 at 10kpc, ~0.05M⦿c2 at 16Mpc Abadie et al., PRD 81, 102001 (2010) 32 2011年7月21日木曜日 バースト重力波の検出に向けて o kmクラス望遠鏡での観測S5, S6で非定常雑音(グリッチetc)はbackgroundを 悪化させた。複数の望遠鏡間でも頻繁にaccidental coincidenceがみられた。 o 要求されるFalse Alarm Prob.(FAP)を満たすために検出しきい値は高く設定 され、結局非定常雑音が重力波のアッパーリミットを支配した。 o 検出するべきblind injectionも、最終的にrejectされた。 blind injection signal o kmクラス望遠鏡での観測S5, S6で非定常雑音(グリッチetc)はbackgroundを悪化さ せた。複数の望遠鏡間でも頻繁にaccidental coincidenceがみられた。 o 要求されるf.a.p.を満たすために検出しきい値は高く設定され、結局非定常雑音 が重力波のアッパーリミットを支配した。 o 検出するべきblind injectionも、最終的にrejectされた。 33 2011年7月21日木曜日 重力波の初検出 Discoveryには FAPが10-6 必要 Blind injectionイベント : P ~ 0.01 (veto後) もしLIGOS5ネットワークと同じf.a.pであるとすれば、あと104ほどPを下げる必要が ある。 下げるための2つの方法: o Backgroundを下げる。 o Astrophysical counterpartによって、時間的、空間的コインシデンスをと る。 34 2011年7月21日木曜日 重力波初検出に向けて Final FAP ~ P x (Δt x N/T) x (A/180)2 1% 1% 1% ↖天球位置推定が20°で実現 ↖event rate 1/day, Δt=180[s]で実現 0.1% 0.1% 0.01% 1% ↖理論家、データ解析家 ↖実験家、データ解析家 -6 10 に到達が可能 35 2011年7月21日木曜日 マルチメッセンジャー観測 中性子星連星合体 ガンマ線バースト ガンマ線 X線 可視光 秒 日 36 2011年7月21日木曜日 週 マルチメッセンジャー観測プロセス S6に行われたLow-latency on-line data analysisの流れ。 EMのパートナー望遠鏡にアラートを送るまでに大体30分程度。 37 2011年7月21日木曜日 マルチメッセンジャー観測プロセス リアルタイムバーストサーチにより、重力波イベント候補の推定天球 位置を電磁波望遠鏡に送り、フォローアップ観測を依頼 逆に電磁波望遠鏡からのトランジェントアラートを受けて、重力波 データを解析 探査依頼エリア 2011年7月21日木曜日 イベント候補の天球位置の推定 天球位置の推定 H1L1V1ネットワークでのバースト 重力波が入っている時の Likelihood sky-map 例えば50%エラー領域は、領域 がlikelihoodが真の位置以上かつ エラー領域の中に真の位置がMC シミュレーションで50%の確率 で含まれる領域のことをいう。 エラー領域のトータルの面積の ルートをとったものがLVCで用 いられている角度分解能。 39 2011年7月21日木曜日 マルチメッセンジャー観測プロセス リアルタイムバーストサーチにより、重力波イベント候補の推定天球 位置を電磁波望遠鏡に送り、フォローアップ観測を依頼 逆に電磁波望遠鏡からのトランジェントアラートを受けて、重力波 データを解析 位置、時間、波源 2011年7月21日木曜日 EM観測をトリガーとした重力波サーチ γ線、X線等の観測情報をトリガーとした重力波サーチ 重力波源:GRB、SGR、パルサーグリッチ、、、、 重力波、電磁波望遠鏡の情報を統合して行うマルチメッセン ジャー観測の一つ。 電磁波イベントの時間、空間情報による探査効率の改善 検出の信頼性の向上 GRBトリガーサーチ Off-source On-source GRB 41 2011年7月21日木曜日 Off-source SGR1806-20 hyper flareからの重力波サーチ Dec. 27th, 2004に起きたSGR hyperflare 距離:6-15kpc, E~1046erg, ~6分継続 LIGO Hanford(4km)が運転していた。 92.5HzQPOに関連する重力波のサーチ Eiso=4.3x10-8M⦿c2 42 2011年7月21日木曜日 GRBからの重力波サーチ S5(2005-2007)中に発見された 中性子星連星合体を仮定したGWサーチ 137個のGRBを探査した ApJ 715 1435(2010) Upper limitをつける為の信号モ デル:SineGaussian at 150Hz with 0.01M⦿c2=1.8x1052erg Upper limitを距離に換算 バーストGWサーチ ApJ 715 1438(2010) 43 2011年7月21日木曜日 GRB070201からの重力波サーチ Konus-Wind, INTEGRAL, MESSENGER, Swiftによって検出 M31に所属?、~770kpc LIGO Hanfordが運転していた。 Inter-Planetary Network 3-sigma error region (Mazets et al. ApJ680,545) 解釈 バーストサーチで重力波は発見されず。 波形をSine Gaussianと仮定した時のGW energyのリミットは 5x10-4M⦿c2 Inspiralサーチも行ったが重力波は発見され ず。 最も可能性が高い解釈: M31内で起きたSGR giant flare 2011年7月21日木曜日 Abbott et al., ApJ 681, 1419 (2008), Mazets et al., ApJ 680, 545 ; Ofek et al., ApJ 681, 1464 44 トリガーサーチ パルサーグリッチに関連した重力波 ニュートリノに関連した重力波 X線バーストに関連した重力波 ..... 45 2011年7月21日木曜日 LCGT世代の望遠鏡ネットワーク 望遠鏡ネットワークのアンテナパターン。(>1/√2のエリア) HLV HLVJ HLVJA B.Schutz(2011) 46 2011年7月21日木曜日 LCGT世代の望遠鏡ネットワーク B.Schutz(2011) 47 2011年7月21日木曜日 バースト重力波のSky position推定 LHVでは>10°だが、LHVJではほとん 10 どの領域で~1° マルチメッセンジャー観測に重要! 1 48 2011年7月21日木曜日 M.Drago et al.(2011) 超新星爆発のイベントレート Galactic rate ~1 per 30–50 years Expect one core-collapse SN within 5 Mpc every 2–5 years S. Ando et al. 2005 [PRL 95, 171101] 49 2011年7月21日木曜日 重力波望遠鏡で見える距離 P.Shawhan(GWPAW,2011) 50 2011年7月21日木曜日 まとめ エンド 51 2011年7月21日木曜日
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