ミリ波レーダを用いた濃煙空間可視化システムの研究開発

Annual Report No.19 2005
ミリ波レーダを用いた濃煙空間可視化システムの研究開発
Research and Development of Visualization System for
dense smoke space utilizing Milliwave Radar
A41101
代表研究者
青 木 義 満
芝浦工業大学 工学部情報工学科 助教授
Yoshimitsu Aoki
Associate Professor, Faculty of Engineering, Dept. of Information Engineering,
Shibaura institute of Technology
In recent years, crisis managementユs response to terrorist attacks and natural disasters, as
well as accelerating rescue operations has become an important issue. We aim to make a
support system for firefighters using the application of various engineering techniques such
as information technology and radar technology. In rescue operations, one of the biggest
problems is that the view of firefighters is obstructed by dense smoke.
One of the current measures against this condition is the use of search sticks, like a blind
man walking in town. The most important task for firefighters is to understand inside situation of a space with dense smoke. Therefore, our system supports firefighters' activity by
visualizing the space with dense smoke. First, we scan target space with dense smoke by
using millimeter-wave radar combined with a gyro sensor. Then multiple directional scan
data can be obtained, and we construct a 3D map from high-reflection point dataset using 3D
image processing technologies (3D grouping and labeling processing). In this paper, we
introduce our system and report the results of the experiment in the real smoke space situation and practical achievements.
ステレオ計測やレーザ計測を用いたシステム
研究目的
などが考えられるが、煙が充満した空間の計
火災現場における、消防士の救命・消火活
測は不可能である。また、熱赤外線画像を用
動を妨害する大きな要因は、目の前に充満す
いる手法も提案されているが、煙の薄いとこ
る濃い煙(濃煙空間)が消防士の視界を遮る
ろでは有効であるが、炎や高温の煙が存在す
ということである。現状では、消防隊員は手
る場合には計測不可能である。また、近年、
に検索棒という発光する棒を持ち、周囲の物
数々の救助ロボットの開発が進んでいるが、
体や人の体に当たる感触を探りながら空間を
消防士自身が行う救助活動に比べて、状況判
認識し、救助活動を行っている。そこで、立
断、意思決定能力及び、移動性に問題が生じ
ち込める煙の中の様子を迅速かつ的確に見透
る。そこで、消防士自身が装着できる程度の
かし、空間情報を作成、提示することができ
高い携帯性を持ち、煙を中を見透かすことの
れば、火災現場における救助活動を支援する
できる可搬型の計測システムの開発を進める
ことができると考える。
に至った。
空間の三次元情報を取得する方法として、
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本研究では、小型のミリ波レーダ及びジャ
The Murata Science Foundation
イロセンサを用い、濃煙の中を計測し、得ら
る方位情報を取得する。ミリ波レーダを多方
れたデータをもとに、濃煙空間内部の様子を
向に向けて得られた反射強度信号データを処
把握できるシステムを提案する。我々は、煙
理することで、空間の3 次元地図を構築する。
を透過し距離計測が可能なセンサーとして、
本稿では、提案システムについて述べるとと
ITS において前方車両検知用に開発が進めら
もに、煙充満空間内における計測実験の結果
れているミリ波レーダに着目した。任意の固
を報告する。
定計測地点より、装置を多数方向に向けなが
ら空間をスキャンし、得られた反射信号強度
− 以 下 省 略 −
の分布から空間の距離データを取得する。同
時にジャイロセンサにより得られた方位情報
を元に多方向の距離データを統合し、三次元
的な画像処理を施すことにより、空間の 3 次
元地図を作成する。また、作成した 3 次元地
図をヘッドマウントディスプレイなどの装着
型表示デバイスで消防士に提示・可視化する
ことで、隊員の空間認識能力を増強させて作
業支援を行う。
概 要
テロリズムや、自然災害に対する救急活動
の迅速化および危機管理は非常に重要な課題
となっている。本研究では、火災現場におけ
る、消防士の救命・消火活動の支援システム
の構築を目指す。火災現場において、消防士
の救急活動の大きな妨げとなるのは、室内に
充満する濃い煙が視界を遮るということであ
る。本研究では、煙が立ちこめた空間を見透
かした 3 次元地図を作成・表示するシステム
の開発を目指している。それによって、火災
現場で活動を行う消防士の空間認識能力、意
思決定を支援することを目的とする。計測装
置として、76GHz ミリ波レーダ装置を用い
る。ミリ波レーダは、霧や雨、雪、煙などに
強い透過性を示し、1 次元スキャンにより、
前方の対象物までの距離情報を取得すること
ができる。本研究では、ミリ波レーダと同時
に、ジャイロセンサによりレーダの向いてい
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