日本から世界の第一線へ飛び出した エフェクトアーティスト

日本から世界の第一線へ飛び出した
エフェクトアーティスト
ユーザー事例
米岡 馨 / Kei Yoneoka
早 稲 田 大 学 第 2 文 学 部 卒 業。 デ ジタ
©2010「SPACE BATTLESHIP ヤマト」製作委員会 ルハリウッド卒業。アニマ、アニマロイ
ド、Digital Media Lab、Omnibus
Japan、OXYBOT などへて 2011 年4月よ
米岡 馨氏は、東京を拠点に過去 9 年間映画や CM、
りエフェクトテクニカルディレクターとし
ゲームシネマティックなどのハイエンド CG を手がけ
て Pixomondo で働く。
特にどのショットにあなたは関わってい
ましたか ?
るエフェクトアーティスト。当初は、ジェネラリス
私は OXYBOT のエフェクトスーパーバイザーとし
トとしてキャリアをスタートさせ、その専門分野はエ
て「空母破壊」エフェクトの 90% を担当しました。
フェクトだけでなくモデリングやテクスチャ、ライ
このショットはかなり複雑でした。監督は「ヤマトが
ティング、コンポジットまで手がけていた。しかし数
敵の空母のエンジンを砲撃するけど、敵空母のエンジ
年前よりエフェクトに注力。その結果、日本でリアル
ンは特殊なエネルギーで動いているから、エンジンが
な宇宙での戦いを描く最初の挑戦を行った作品でもあ
爆発したときに小さなブラックホールが発生して空母
る「SPACE BATTLESHIP ヤマト」のエフェクトを担当
全体をばらばらに破壊しながら吸い込んでいく。吸い
し た。「SPACE BATTLESHIP ヤ マ ト 」 は、 2010 年 に、
込んだ後にエネルギーが逆流して巨大な爆発が発生す
70 年代の人気アニメーション「宇宙戦艦ヤマト」を
る」と説明しました。このショットは、かなり難しい
実写映画としてリメイクされた大ヒット作品。こうし
タスクになると感じましたね。今まで慣れ親しんでき
た実績を重ね、米岡氏は日本を飛び出し、今は 2011
たパーティクルフローやリアクターのような普通の手
年 4 月からエフェクトテクニカルディレクターとして
法ではできないだろうと思いました。
Pixomondo のベルリン支社で働いている。
ヘン、シュツットガルト、ロサンゼルス、上海、北京、
どの cebas 製品を使ったのですか ? そ
の理由を教えてください。
トロントにスタジオを持つ世界的なビジュアルエフェ
thinkingParticles を空母の破壊シーンで使いました。
クト企業。VFX を手がけた作品には、
「2012」
「エンジェ
オブジェクトをばらばらにしたい時、いくつかの方法
ル ウォーズ」「Ninja Assassin」などがある。
がありますが、この作品では、破片はブラックホール
Pixomondo は、ベルリン、フランクフルト、ミュン
に吸い込まれるところが重要です。だから、破片はグ
「SPACE BATTLESHIP ヤマト」への参加の
きっかけを教えてください。
今回のプロジェクトのメインのプロダクションであ
る白組に所属する山崎 貴監督が「SPACE BATTLESHIP
ヤマト」を始めた時、監督は難易度の高く複雑なエフェ
クトをできるパートナーを探したそうです。最終的に
私の作品を見た監督は、当時 OXYBOT に所属してい
ラビティーやボルテックスといったスペースワープを
た私にエフェクトをオファーしてくれました。難しく
用いて操作できるパーティクルでなければならない
複雑な VFX をいくつか担当することになりました。学
し、さらに、破片はブラックホール内で消滅させなけ
生のときから山崎監督をリスペクトしていたので、こ
ればなりません。そのため、プロジェクトのかなり初
のオファーは大変嬉しかったです。私にとって「SPACE
期の段階から thinkingParticles を使うことを決めまし
BATTLESHIP ヤマト」は、山崎監督と初めて仕事をし
た。私にとって、これが thinkingParticles を主要なエ
た記念すべき作品です。
フェクトに使う最初のプロジェクトでした。
一番難しかった点と、それをどのように
解決しましたか教えてください。
このエフェクトは、非現実的なシチュエーションで
すが、説得力が必要です。もちろん現実世界でブラッ
クホールが何かを吸い込んでいるのを見たことがあり
ません。当然、リファレンスになるものもない。そこ
で、銀河や星雲、竜巻などの写真をブラックホール自
体のルックとして研究しました。次に、破壊の動きの
部分についてですが、竜巻がどのように建物を壊すか
を参考にしました。でも、竜巻は、ブラックホールよ
うに空母を吸い込むわけではありません。そのため、
ほとんどのアニメーションは想像によるもので、物理
的に正確なシミュレーションというよりは、アーティ
スティックな側面から取り組みました。最終的には、
キーフレームアニメーションとパーティクルアニメー
ションのコンビネーションによって解決しました。
代表的なショットの製作過程を教えてく
ださい。
白組の VFX チームは基本的に Autodesk Maya を使っ
ていたので、私は空母のモデルを OBJ フォーマット
で受け取り Autodesk 3ds Max にコンバートしました。
コンバート後、そのモデルを obj to Particle オペレー
©2010「SPACE BATTLESHIP ヤマト」製作委員会 ターを使って thinkingParticles に取り込んでいます。
問題はどのようにして空母を破壊し数万の破片を扱
うかでした。当時私の thinkingParticles の経験はそれ
ンだけで理想的なタイミングのアニメーションをつけ
トライアンドエラーを繰り返すことができたのです。
ほどではなかったのですが、ライトの影響範囲によっ
るのは難しいので、空母はキーフレームアニメーショ
thinkingParticles がなければこのような複雑なエフェ
て、Fragment オペレーターをコントロールできる機
ンで行いました。最初にシンプルに移動と回転のア
クトは達成できなかったでしょう。
能は、非常に直感的で説得力のある結果が得られまし
ニメーションとラティス変形を元のオブジェクトにつ
た。より高密度の細かい破片が欲しい時は、破片のエッ
け、その後 thinkingParticles 内のオブジェクトにキー
ジや断面からインスタンスジオメトリの破片を容易に
フレームアニメーションをトラックさせました。そし
このプロジェクトで一番面白かったこと
ややりがいのあったことは何ですか ?
出すこともできました。
てブラックホールの中心から外側へと自然にかつ徐々
日本ではこのようなスケールの大きい SF 映画はあ
に、キーフレームアニメーションをさせたオブジェク
まり多くありません。自分にとって非常に貴重な体験
こうした破片を FumeFX の煙のパーティクルソース
トからパーティクルへと切り替えました。このような
でした。さらに山崎監督と働いて自分の役割を果たせ
としても使い、ブラックホールの渦やコアのエレメン
複雑なシチュエーションにおいても thinkingParticles
たことは、自分にとって最もやりがいのあるものでし
トのホールドアウトとしても使っています。それらの
は非常によく機能してくれました。
た。監督のこのプロジェクトに対するビジョンは非常
エレメントを Frantic Films 社のプラグイン「Krakatoa」
cebas 製品を使ってみていかがでしたか ?
に明確でしたが、同時にエフェクト制作において、か
thinkingParticles の ワ ー ク フ ロ ー は、 多 く の 時 間
なりの裁量を自分に与えてくれました。そういった点
を節約しクオリティを保つのに貢献しました。私は、
でも、山崎監督と一緒に仕事をできたのは楽しかった
エフェクトのクオリティはいかに多くトライアンド
です。
近々公開される仕事を可能であれば教え
てください。
特定のオブジェクトに入ったパーティクルを消去
私は Pixomondo で先日ジョージ・ルーカス監督の
「Red
Tails」の仕事を終えたばかりです。今はブラッド・ペ
でレンダリングしています。thinkingParticles のグルー
プオブジェクトは、Krakatoa のマットオブジェクトと
して非常によく機能しネットワークレンダリングにお
各パーティクルに対して重力の割り当て
イトン監督の「Journey 2 : The Mysterious Island(邦題 :
センター・オブ・ジ・アースの続編)」に関わっています。
いても非常に安定していました。
エラーを繰り返せるかにかかっていると考えていま
さらに、別の難題もありました。キーフレームアニ
す。このショットでいくつか手作業によるプリフラグ
映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」
メーションからパーティクルアニメーションへの移行
メントアプローチをとりましたが、ほとんどの破壊
監督・VFX:山崎貴
です。空母はブラックホールの極端に強い重力に引っ
システムは完全にプロシージャルなものでした。そ
©2010 SPACE BATTLESHIP ヤマト 製作委員会
張られ曲げられます。パーティクルのシミュレーショ
のため、スムーズなワークフローを損なうことなく
thinkingParticles™ for 3dsmax
開発元:cebas Visual Technology Inc.
thinkingParticles に関する詳しい情報は、www.tmsmedia.co.jp をご覧ください。
国内輸入元代理店
株式会社ティーエムエス 〒141-0021 東京都品川区上大崎4-5-37 山京目黒ビル409 Tel. 03-5759-0320 Fax. 03-5759-0327
https://www.tmsmedia.co.jp/