提案書 化学・材料(13)

提案書 化学・材料(13)
(1)大学・学部学科・研究室名・氏名
産業技術総合研究所・サステナブルマテリアル研究部門・環境応答機能薄膜研究 G・田嶌一樹
(2)研究テーマ名(NEDO 助成技術 H21)
耐環境性能に優れた機能性酸化物薄膜・調光ミラーデバイス
(3)研究テーマの技術・開発段階
・基礎研究段階
・応用研究段階 ・実用化研究段階
(4)技術概要
調光ミラーデバイスは電気的に反射(鏡)⇔透明の状態変化を生じさせることができるため、複層ガラ
スあるいは遮熱フィルム用コーティング膜として住宅やビルの壁材や窓などに応用すれば優れた省エ
ネルギー効果が期待できます。例えば、日本の住宅全戸に複層ガラスを適用すると年間約 1700 万トン
のCO2を削減できます。我々は現在、調光ミラーデバイスの実用化に向け、材料の省使用化および代替
材料技術開発、ならびに環境試験による性能把握を実施しており、より優れた耐環境性能(高耐久性)
を付与することを目指しています。
【図の説明】調光ミラーデバイスの代表的な構造と外観写真および特性
ガラスおよび樹脂シート(PET)などを基材として用い、その上部に多層薄膜を室温プロセスで作製しま
す。数ボルトの電圧印加により、写真のような外観変化が生じ、特に太陽光に含まれる可視光のみな
らず熱(赤外光)を効果的に制御できます。光学特性は多層薄膜のチューニングにより実現可能です。
(5)特徴・訴求点
・ガラス窓から入る太陽エネルギーをスイッチングにより効果的に制御することができます。
・基材としてガラスおよびプラスチックなど樹脂シート(PET、PEN、PC)を任意に選択できます。
・全て固体薄膜材料のみで構成されます。その作製も常温で可能です。
(6)現在注力している応用分野、将来探索してみたい分野<複数分野可>
・【現在】建築業界(省エネルギー用窓材)、自動車業界(省エネルギー用窓材)、部材業界(フィルム)
・【将来】電気業界(電子デバイスなど電子機器・デバイス応用)
(7)実用化に向けた課題
・材料使用量低減や代替材料開発による実用的な量産技術開発
・調光ミラーデバイスの使用環境(温度、湿度、紫外線照射など)での劣化抑制
(8)企業に対する提案事項
・社会および企業のニーズなどの意見交換、および共同研究により応用開発を希望します。提案先イ
メージ:薄膜コーティング技術を保有するガラス・フィルムメーカなど部材メーカ/コーティング
ガラス・フィルムを応用した技術・製品開発に関心もしくは実績(知見)を有する企業・組織など。
提案書 化学・材料(14)
(1)大学・学部学科・研究室名・氏名
久留米工業高等専門学校・材料工学科・武藤浩行
(2)研究テーマ名(NEDO 助成技術 H21)
任意のナノコンポジット・ミクロ構造体を創製可能にする静電吸着複合法
(3)研究テーマの技術・開発段階
・基礎研究段階
・応用研究段階 ・実用化研究段階
(4)技術概要
ナノ粒子を自在にハンドリングしつつ、ナノ集積構造体の形態を反映した所望の微構造を有するナノ
コンポジット、ミクロ構造体を創製可能にする技術です。材料を選ばず、金属、セラミック、高分子
への適用が可能となります。具体的には、原料粉末同士の機械的混合に頼らない新規な複合手法(静
電吸着複合法)を確立したことにより、
(1)ナノデザインされたナノ集積構造体(ナノ粒子クラスタ
ー)の創製、
(2)これを用いた、微細構造が高次に制御された微細構造制御型ナノコンポジットの製
造を行います。母材粒子とナノ添加物の表面電荷をそれぞれ、相反するように(プラスとマイナス)
制御し、静電吸着させることで任意形状・形態のナノ集積構造体(ナノ粒子クラスター)を調製(図
1)した後、このナノ集積複合粒子を用いて、ナノコンポジット、ミクロ構造体を作製します(図2)
。
図 1
母材アルミナと炭素微小球表面の電荷を制
御して炭素被覆アルミナ複合粒子を作製した例
図2 図1の複合粒子を用いて炭素連続層を導入
し導電性アルミナを作製した一例(上)と炭素繊維
表面にシリカ粒子を被覆した構造体の例(下)
(5)特徴・訴求点
・材料の種類(高分子、金属、セラミック)、原料粉末の大きさ(ミリ、マイクロ、ナノ)、形状(粒
子、ゾル、ファイバー)を選ばない汎用性の高い複合手法です。
・複合材料の微構造が任意に制御できます。
・機械的特性の向上(高強度・高靭性化)、光学特性、電気伝導性、高しゅう動性、高熱伝導性、等々
の様々な特性を発現・改善することができます。
(6)現在注力している応用分野、将来探索してみたい分野<複数分野可>
・【現在】セラミック粉末業界、化粧品業界
・【将来】生体分野(多孔質人工骨、アパタイトナノコーティング)、電気業界(フォトニック結晶)
(7)実用化に向けた課題
・複合粒子の生産性向上のための装置・システム構築
(8)企業に対する提案事項
・新規複合材料製造に向けた各企業(粉末プロセス技術を保有する/機能性材料の技術開発・商品開
発に関心もしくは実績を有する(もしくは知見を有する)企業・組織など)との意見交換とを含め
た、試作サービス、委託研究、共同開発を提案します。
提案書 化学・材料(15)
(1)大学・学部学科・研究室名・氏名
群馬大学大学院・工学研究科・機械システム工学専攻・半谷研究室・半谷禎彦
(2)研究テーマ名(NEDO 助成技術 H21)
低コスト(50%以上)・生産性に優れる高機能ポーラスアルミニウム作製技術
(3)NEDO 助成テーマの技術・開発段階
・基礎研究段階
・応用研究段階 ・実用化研究段階
(4)技術概要
軽量かつ衝撃吸収性・吸音性・制振性等に優れた金属素材は,自動車部品・建築部材など多くの分野
で切望されています.それらを具備したポーラスアルミニウムを低コストかつ高生産性により作製す
る技術を開発しました.摩擦攪拌接合によりアルミニウム合金中に発泡剤を混合させるため,通常の
圧延材からダイカスト材,純アルミニウムから高強度アルミニウム合金まで,様々な種類の合金をポ
ーラス化することが可能です.
図1
図2
アルミ 板
加熱
発泡剤
摩擦攪拌接合
プ リ カ ーサ
A1050
ポーラ ス アルミ
A6061
高延性
高強度
【図 1】アルミニウム合金板の間に発泡剤を挟み摩擦攪拌接合を行うこと
で,発泡剤がアルミニウム中に分散したプリカーサが作製できます.プリ
Alポーラス
メタル
カーサを加熱することでポーラスアルミニウムが得られます.板を変える
だけで様々な特性を有するポーラスアルミニウムが作製可能です.
FeFe
【図 2】ポーラスアルミニウムを複合化することができます.例えば,高
延性アルミニウム合金と高強度アルミニウム合金の傾斜機能化や,緻密な
鉄鋼材料とポーラスアルミニウムの複合化などです.サンドイッチパネルなども容易に作製可能です.
(5)特徴・訴求点
・原材料コスト・生産時間を従来技術よりも 50%以上削減可能と試算しております.
・ポーラスアルミニウムの複合化が容易で更なる高機能化が実現できます.(図 2 参照)
・ダイカスト材を利用することで,ポーラスアルミニウムにリサイクル性を付与できます.
・アルミニウムに限らず,マグネシウムや銅,鉄などにも応用可能と考えております.
(6)現在注力している応用分野、将来探索してみたい分野<複数分野可>
・【現在】自動車関連・航空宇宙関連など運輸機器関連業界.特に低燃費車.
・【将来】工作機械・産業機器関連,建築部材関連,電子部品関連など.
(7)実用化に向けた課題
・各産業で求められる具体的な製品仕様やコストレベルの把握,および量産技術の補完
(8)企業に対する提案事項
・ポーラスアルミニウム利用の各産業におけるニーズに関する意見交換,およびポーラスアルミニウ
ム作製における技術相談・共同開発を提案致します.提案先イメージ:運輸機器の設計・運輸機器
部品製造・素材製造に関心もしくは実績を有する(あるいは知見を有する)企業・組織など.
提案書 化学・材料(16)
(1)大学・学部学科・研究室名・氏名
産業技術総合研究所・エネルギー技術研究部門・ナノエネルギー材料グループ・大久保將史
(2)研究テーマ名(NEDO 助成技術 H21)
配位空間・へテロ界面の融合制御による低コスト・高機能な二次電池正極材料
(3)研究テーマの技術・開発段階
・基礎研究段階
・応用研究段階 ・実用化研究段階
(4)技術概要
リチウムイオン 2 次電池は、その高いエネルギー密度と、小型化・軽量化に柔軟性が高い特性から電
気自動車や携帯端末機器など近年のさまざまなエレクトロニクス機器のエネルギー源として利用され
ています。我々は、リチウムイオン 2 次電池用正極材料として、プルシアンブルー類似体(PBA)を応
用する研究を進めています。PBA は、充放電サイクル特性が著しく劣ることから検討例が少なかったの
ですが、これまでに、100 サイクルまで容量劣化を示さない PBA の合成に成功しました。今後は、PBA
のサイクル劣化抑制の知見を生かして、低コストでさらに高容量・高耐久性・高出力な PBA 正極材料
の研究開発を進めます。
Normalized discharge capacity (a.u.)
1.0
Li+
現有技術
0.8
0.6
0.4
従来材料 PBA
0.2
0.0
0
20
40
60
80
100
Cycle number
PBA 電極への Li 挿入反応
PBA 電極の充放電サイクル特性
PBA における Li 脱挿入反応を安定に行う現有技術により、PBA を実用材料として検討することが可能となった
(5)特徴・訴求点
・リチウムイオン 2 次電池用正極材料として、PBA を安定に使用する技術を確立しました。
・Co,Ni ベースの現行材料と比較して、Fe を主に使用するためにコスト的に優位です。
・LiFePO4等と比較して、電子伝導の観点から高出力化に優位です。
(6)現在注力している応用分野、将来探索してみたい分野<複数分野可>
・【現在】リチウムイオン 2 次電池
・【将来】新規な蓄電デバイス
(7)実用化に向けた課題
・高容量化
・コインセル、ラミネートセル等の安全性
(8)企業に対する提案事項
・リチウムイオン電池の安全性・耐久性に関する試験技術を保有する企業・組織など、PBA の正極材料
への応用に関して意見交換や共同開発を提案します。
提案書 化学・材料(17)
(1)大学・学部学科・研究室名・氏名
東北大学・大学院工学研究科バイオ工学専攻・生体機能化学講座タンパク質工学分野・梅津光央
(2)研究テーマ名(NEDO 助成技術 H21)
非食物性バイオマスのセルロース糖化工程コストを飛躍的に低減するセルラーゼ設計技術
(3)研究テーマの技術・開発段階
・基礎研究段階
・応用研究段階 ・実用化研究段階
(4)技術概要
バイオ燃料や化成品を作るにはリグニンの除去等の前処理をした後、原料に含まれるセルロースを低
分子糖類へと糖化処理しなければならないが、従来の手法ではこの糖化工程でのコストが高く、バイ
オ燃料の実用化における最大の課題とされてきた。そこで我々は、抗体工学・ナノバイオ工学で培っ
たドメインクラスター化技術を活かし、非食物性バイオマスであるセルロースの糖化工程コストを飛
躍的に低減できる人工セルラーゼ・セルロソームを開発しています。これまでに、セルラーゼがセル
ロース結合機能を持つドメインとセルロース分解機能ドメインが構造・機能的に独立しているモジュ
ール酵素であることに着目し、酵素をモジュール単位で分割し、ナノ粒子などを核として結合機能ド
メインを3次元的に再編成することによって、酵素活性を十数倍向上させることに成功しています。
今後は、セルラーゼだけでなくリグニンやプラスチックを分解する酵素などへも応用していく予定で
す。
【図の説明】セルラーゼは、セルロースへ吸着することによって酵素分解能力を高めています。スト
レプトアビチンやナノ粒子を核として、セルロース結合ドメインを多価に持つセルラーゼを作成する
ことによって、酵素活性を十数倍向上させることに成功しています。
(5)特徴・訴求点
・既存の固体分解酵素の機能を簡単に高機能化できます。
・ドメイン単位での発現調製になるため、タンパク質発現系の開発に負担をかけません。
・ナノ粒子を用いてクラスター化できますので、タンパク質だけの時と比較し低コストで、ナノ粒子
の機能も利用できます。
(6)現在注力している応用分野、将来探索してみたい分野<複数分野可>
・【現在】バイオリファイナリー関連のナショプロ (特にセルロース・リグニン関連)
・【将来】酵素メーカー、およびバイオ展開を模索しているナノ材料企業
(7)実用化に向けた課題
・幅広い酵素へ対応可能であることの実証
(8)企業に対する提案事項
・バイオ展開を模索しているナノ材料企業との意見交換・共同研究
・セルラーゼ以外の酵素を用いたクラスター酵素開発に関する意見交換・共同開発
提案書 化学・材料(18)
(1)大学・学部学科・研究室名・氏名
山形大学・大学院理工学研究科・古川研究室・古川英光
(2)研究テーマ名(NEDO 助成技術 H21)
走査型顕微光散乱による超微量ゲル試料の構造解析システム
(3)研究テーマの技術・開発段階
・基礎研究段階
・応用研究段階 ・実用化研究段階
(4)技術概要
ゲル材料は化粧品、芳香剤、コンタクトレンズのほか、細胞培養基板、創傷被覆材、薬物放出剤とい
った医療器具、砂漠緑化、汚泥処理、水質改善、電池などの環境ビジネスなど幅広く使われています。
従来手法ではゲルの含水率(膨潤率)分析による開発がなされてきましたが、より機能的なゲル材料
を作製するための構造的解析によるアプローチは、ゲルの不均質性が構造解析の障害となるため困難
でした。そこで我々は、2003 年にゲルの内部構造の厳密測定に特化した走査型顕微光散乱(略称
SMILS(スマイルズ))を世界に先駆けて提案し、SMILS が機能性ゲル材料研究における強力なツールであ
ることを実証してきました。誰もが利用できる実用型 SMILS の製品化を最終目標として、1μℓの超微
量ゲル試料を簡便に構造解析できる実用型 SMILS システムのプロトタイプ開発を進めています。
【図の説明】 網目サイズイメージングの模式図。例えば 10μm ステップで 1mm 四方の領域内の 100×
100 カ所を走査することにより、ゲル微粒子内部の網目サイズ分布について 1 万画素の網目サイズイメ
ージを得ることができます。微粒子内部の構造についての情報が、視覚的・直感的に得られます。
(5)特徴・訴求点
・ 動的光散乱法そのものの利点として、非破壊、非接触で分析を行うことができるほか、可視光を使
うので安全で、X線や電子顕微鏡に比べて、小型化が可能です。一方、動的揺らぎを分析する原理に
基づくことで、ナノスケールの構造に関する情報が得られるため、非常に広い時空間領域(100ns∼
1h, 0.1nm∼数mm)をカバーできます。
・ SMILSの利点として、不均質なサンプル、格段に微量なサンプル、高粘度や複雑な形状など、これ
まで測定できなかった透明度やスケールで測定ができます。
・ 本研究で開発される標準化技術とイメージング技術により、専門家が不在でも日常的に利用し、研
究や開発、製造管理に対して効果的なデータが得られるようになります。
(6)現在注力している応用分野、将来探索してみたい分野
・【現在】化学・材料・繊維・化粧品・食品・医薬品・電池・再生医療など
・【将来】医療機器・化学分析機器・福祉機器などへの組み込み、センサ・アクチュエータの開発
(7)実用化に向けた課題
・研究開発や製造工程の現場で誰もが利用できる高いユーザビリティの実現
(8)企業に対する提案事項
・本装置の実用化に関する意見交換、本装置を活用した材料開発や装置開発に関する共同開発、本装
置に関する研究会/フォーラムの開催を提案いたします。提案先イメージ:ゲル材料の技術開発・商
品開発に関心もしくは実績を有する(あるいは知見を有する)企業・組織など。
提案書 化学・材料(19)
(1)大学・学部学科・研究室名・氏名
大阪バイオサイエンス研究所・神経機能学部門・小早川令子
(2)研究テーマ名(NEDO 助成技術 H21)
匂いに対する情動反応分析・制御技術による香料・化粧品・創薬開発
(3)研究テーマの技術・開発段階
・基礎研究段階
・応用研究段階 ・実用化研究段階
(4)技術概要
匂い分子はヒトや動物の情動や行動に様々な影響を与えます。情動とは食欲、性欲、恐怖、母性など
のヒトや動物が生きていく上で欠かせない本能を制御する心の働きです。我々は神経回路の改変とい
う独自の手法を用いて、匂いに対する情動反応に異常のある各種モデル動物を開発しました。写真は
特定の嗅細胞を除去することで、天敵の匂いを感知できるのに、その匂いを危険であると判断できな
くなった恐怖情動の異常マウスです。これらのモデル動物を用いて様々な情動を制御する神経回路や
情動を評価する指標を発見しました。情動を引き起こす神経回路は新たな創薬ターゲットになります。
事業化としては、哺乳類の匂いに対する情動を先天的に制御する神経回路の機能に関する独自の知識
を基に、匂い分子を用いて各種情動を理論的に制御する技術を開発することで、例えば母性や性的な
情動などに訴えかける匂い分子を香料や化粧品の開発につなげるなど、各種情動を制御する神経回路
に係る香料や創薬の開発につなげるビジネス展開を目指しています。
(5)特徴・訴求点
・嗅覚神経回路の機能に基づいた新たな香料・香水の情報を提供可能です。
・嗅覚神経回路の機能に基づいた新たな創薬ターゲットの情報を提供可能です。
・既知の匂いに比較して10倍も強い恐怖活性を持つ匂い分子を提供可能です。
・情動の定量分析が可能です。
(6)現在注力している応用分野、将来探索してみたい分野
・機能的な香料・香水 ・害獣・害鳥忌避剤
・各種情動をコントロールする創薬
(7)実用化に向けた課題
・各種匂い分子のフィージビリティースタディー
・各種匂い分子の安定化法、散布法の確立
・ヒト嗅細胞の活性を薬理的に遮断する方法の開発
(8)企業に対する提案事項
・害獣・害鳥忌避剤の共同開発を提案します。
・新たな機能的な香料・香水のヒトに対するフィージビリティースタディーの共同実施を提案します。