授業科目名 都市開発論 Urban Development 科目区分 担当教員名 対象年次及び学科 1〜2 地域マネジメント研究科 関連授業科目 費用便益分析,地域経済分析,地域産業連関分析など. 履修推奨科目 統計分析,経済分析,ゲーム理論. 髙塚 単位数 創 水準DPコード 2 時間割 分野コード 後期 学習時間 講義90分×15回+自学自習 授業の概要 本講義では,まず「まちが良くなる」あるいは「都市が改善される」とはどういうことか,という根本的な問いから 始め,経済学における二つの評価軸「効率性」と「公平性」について学ぶ.そして,この評価軸に基づいて,四国地 域等における事例を挙げながら,都市問題・都市政策に関するいくつかのトピック(交通政策,環境政策,開発規制, 産業立地政策など)について議論する.また,これらに関連する定性的・定量的分析手法についても学習していく. 授業の目的 政府の財政が厳しい今日,政策の合理性や説明責任が大きく問われるようになってきている.この授業では,国や自 治体が行う様々な都市政策が,どういった理由から正当化できるのか(あるいはできないのか)を学び,望ましい都 市のあり方を考える基礎を身につけることを目的としている. 到達目標 学習・教育目標 (工学部JABEE基準) 現実の都市問題や都市政策を,経済学的な観点から理解する力を身につけること. 成績評価の方法と基準 成績については,レポート・発表(50%) ,出席・発言・小テスト(50%)によって評価する. 授業計画並びに授業及び学習の方法 1.イントロダクション 「まちが良くなる」とはどういうことか. 2-3.経済評価の考え方 事業や政策を経済学的な観点から評価する手法の基本を学ぶ.具体的には,費用便益分析の基礎となる消費者余剰, 社会的純便益,効率性と公平性などの概念について学ぶ.また,都市政策を考える上で重要となる,外部性,ピグー 税といった概念についても学ぶ. 4-5.交通行動予測とモビリティ・マネジメント 近年,環境への影響,都心部の混雑,高齢化,中心市街地の活性化といった様々な観点から,公共交通の見直しが 行われてきている.公共交通機関の間での連携やパーク・アンド・ライド政策などは,公共交通利用促進策の一つと 考えられるが,その効果の見通しがないままに行われているケースが多い.ここでは,そういった政策の効果(公共 交通シフト効果)を予測する統計手法として,ロジットモデルを紹介する.また,心理的方策として近年注目を集め ている,モビリティ・マネジメントの手法についても紹介する. 6-7.CVMによるアメニティの評価 宅地造成,再開発,交通基盤整備などの都市開発は,自然や伝統的な街並みなど都市住民にとって価値あるアメニ ティを破壊する可能性を持っている.しかし,市場均衡を基礎とする費用便益分析は,市場を持たないアメニティの 評価をすることができない.CVM(仮想市場評価法)とは,アメニティの価値についての質問を直接住民にたずね, その回答を統計的に処理することで,価値を計測しようとする方法である.なお,CVMはアメニティだけでなく,市 場を持たないあらゆるサービスの評価を(原理的には)行うことが可能である. 8-9.都市・土地利用の基本モデル 都市経済学が,都市や土地利用の状態や変化を考える際に参照する最も基本的なモデル,単一中心都市モデル(ア ロンゾ型都市モデル)を紹介する.このモデルは,ミクロ経済学に基づく定性的なモデルであるが,付け値地代曲線 によって,視覚的に,直観的に理解することができる.次章以降の都市問題を考える際の基礎にもなっている. 10.学生によるプレゼンテーション1 社会的ジレンマ,離散選択モデル,CVMによる価値評価に関する課題について発表する. 11-14.開発規制,中心市街地活性化,コンパクト・シティ 都市開発はときに行政によって規制されることがある.線引き制度(区域区分制度)はその規制策の一つである. ここでは,線引き制度がどういったときに有効であるかを経済学的に考え,2004年5月に実施された香川県の線引き 制度廃止の是非について議論する.また,昨今問題視されている中心市街地の空洞化がどのようなメカニズムで生じ るのかを考え,中心市街地活性化政策やコンパクト・シティ政策について議論する. 15.学生によるプレゼンテーション2 開発規制,中心市街地活性化政策,コンパクト・シティ政策に関する課題について発表する. 教科書・参考書等 教科書は特に用いない. ■参考文献 (経済学の考え方) ・ラッセル・ロバーツ,2003. 『インビジブルハート:恋におちた経済学者』 ,日本評論社. ・八田達夫,2008, 2009.『ミクロ経済学Ⅰ・Ⅱ』 ,東洋経済新報社. (都市・地域経済学) ・佐々木公明・文世一,2000. 『都市経済学の基礎』 ,有斐閣. ・黒田達朗・中村良平・田渕隆俊,2008. 『都市と地域の経済学 [新版]』,有斐閣. (交通政策) ・藤井聡・谷口綾子,2008. 『モビリティ・マネジメント入門』 ,学芸出版社. ・土木学会土木計画学研究委員会編,1995. 『非集計行動モデルの理論と実際』, (社)土木学会. (環境政策) ・栗山浩一,1998. 『環境の価値と評価手法』 ,北海道大学図書刊行会. ・肥田野登編著,1999. 『環境と行政の経済評価:CVM(仮想市場法)マニュアル』,勁草書房. ・青山吉隆・中川大・松中亮治,2003.『都市アメニティの経済学』,学芸出版社. (開発規制) ・髙塚創,2003. 「線引き制度の意義と地方都市における課題」 ,井原健雄編著『本四架橋と地域経済:制度分析と整 備効果・政策課題』 ,14章,勁草書房. ・Edwin S. Mills, 1999. Truly Smart “Smart Growth”, Illinois Real Estate Letter, Summer 1999, pp.1-7. ・Jan K. Brueckner, 2001. Urban Sprawl: Lessons from Urban Economics, Gale, W.G. and Rothenberg Pack, J. (eds.) Brooking-Wharton Papers on Urban Affairs 2001, pp.65-89. オフィスアワー 事前にメール等で相談すること. 履修上の注意・担当教員からのメッセージ 課題においては,パソコン(統計分析ソフトSPSS)を利用して分析を行ってもらうこともあるので, 「統計分析」を 履修しておくことが望まれる.
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