第4章 生産衛生 牛群管理

第4章�生産衛生�
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牛群管理�
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平成27 年7月8日�
4時間目�
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7)牛群の繁殖管理・・繁殖学で詳細を学習!�
•  牛群の健康を維持し、効率よく乳生産目標を達成するために
は繁殖成績の向上が重要�
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繁殖成績評価の指標として活用される項目:�
�分娩間隔、�
�空胎期間とその分布、�
�分娩後の初回授精までの日数、�
�初回授精受胎率、�
�平均授精回数、�
�総受胎率、�
�繁殖障害による淘汰率�
7)牛群の繁殖管理�
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繁殖障害の指標�
�卵胞嚢腫�
�子宮内膜炎�
�胎盤停滞�
�流産�
�難産���
��などの発生率�
卵胞嚢腫�
•  卵巣機能異常疾患�
•  性ホルモンの分泌異常�
•  排卵に必要な黄体形成ホルモンの産生・分
泌されない(原因は?)�
•  卵胞が異常な大きさまで発育�
•  分娩間隔の延長・・・大問題!�
•  高タンパク・低エネルギー飼料給与??�
•  牛体の慢性疾患によるストレス??�
卵胞嚢腫�
子宮内膜炎�
•  繁殖障害の中で最も発生が多い�
•  子宮粘膜層の炎症は、精子の運動と生存、
子宮に降下する胚の発育を妨げる。�
•  胚の早期死滅と着床の阻害・・流産�
•  Streptococci, Staphylococci, 大腸菌、
Arcanobacterium pyogenes等の常在菌
感染�
子宮内膜炎�
胎盤停滞�
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分娩後の発症率は7-15%程度�
子宮内膜炎、産褥性子宮炎などが継発�
受胎成績の低下�
胎盤の自然剥離は分娩後6-8時間で排泄�
これ以上長時間に排泄が無ければ本症�
•  原因:ビタミンE、セレンの摂取不足?�
•  ����母体の免疫機能と関係?�
胎盤停滞�
流産�
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原因は多様�
ネオスポラ症�
Neospora caninum コクシジウム原虫�
犬の腸管上皮で増殖しオーシストとなる�
糞便中に排泄、妊娠牛が感染�
胎盤と脳で増殖・・流産:タキゾイト、シスト�
感染胎盤を犬が摂取・・感染環の成立�
ネオスポラ症による流産・国試に良く出る!�
7)牛群の繁殖管理�
•  分娩後30日から実施される定期的な繁殖検診に基
づき、�
•  �子宮分泌液の性状�
•  �子宮修復の状態や卵巣の状態�
•  �授精50日前後に妊娠診断を行う�
•  �未受胎牛を把握�
•  受胎率向上のためにはボディコンディションを基礎
にした栄養管理と産後疾患の予防�
8)蹄の管理衛生�
•  蹄病�
•  乳量減少、淘汰率の上昇、薬物治療などにより
経済的損失大�
•  発生�
•  �牛群の多頭化�
•  �飼育管理の省力化�
•  �フリーストール方式の普及で多発傾向にある�
蹄病の怖さ
•  痛みがあると食べられない。 •  食べられないから乳が出ない。
蹄病の症状・・これは大動物外科学の領域�
•  蹄底潰瘍�
•  白線病�
•  趾皮膚炎�
•  趾間フレグモーネ�
蹄病発生の要因�
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年齢�
乳期�
体重�
削蹄�
栄養管理�
牛床構造�
敷き料�
環境�
蹄病の管理要因�
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適切な削蹄�
ふん尿処理�
パドックやストールのサイズと管理�
敷料�
栄養管理�
蹄薬浴�
蹄病はなぜ起こる?�
•  猫や犬が足にケガをした場合、3本足になっ
ても走り回る。�
•  象の場合では、巨体が支えられなくなって死
に繋がる。�
•  体重の重い動物ほど脚の健康は重要。�
乳牛の場合�
•  コンクリート牛床上で繋がれたままでの寝起
きは不自由で、そのために、特に後肢の関節
(飛節)が牛床での打撲や摩擦によって傷付く
ことが多い。�
•  敷料が豊富に投入された単飼舎において粗
飼料で飼育されている繁殖和牛には見られな
い。�
関節炎、蹄病の原因�
•  コンクリート牛床での後肢関節(飛節)の打撲、擦過�
•  脱毛・・腫脹・・肥厚・・こぶし大から小児頭大での内
容液の貯留した膿胞化�
•  アンモニア化した尿中に浸りきったままの蹄は劣化
し蹄病を起こしやすくなる�
•  運動不足の乳牛は、過長蹄や変形蹄となる�
飼養管理との関係�
•  濃厚飼料の多給�
•  慢性的なルーメンアシドーシス�
•  ルーメン内ではエンドトキシンやヒスタミン、
或いは乳酸などの蹄の毛細血管に障害をも
たらす毒素が大量に生産�
•  筋肉を麻痺させ、血流が停滞すると、蹄の内
圧が上昇、充出血や浮腫、痛みなどを伴った
栄養性の蹄病である蹄葉炎は発生�
蹄病は多因子疾患�
蹄の解剖学�
球節�
冠関節�
蹄関節�
蹄底潰瘍�
•  削蹄を怠ると徐々に蹄
尖が伸びて反り返る。�
•  負重点が蹄後部に移
動�
•  蹄底真皮を圧迫�
•  出血、壊死、慢性炎
症・・・潰瘍�
白線病�
•  蹄壁と蹄底の接
合部である白線が
離開し、この部分
に土砂などの汚染
物が穿孔して、真
皮を圧迫したり、
膿瘍を形成する。�
•  牛は疼痛のため
跛行�
牛の乳頭状趾皮膚炎�
原因菌Treponema brennaborense
高温多湿な時期にフリーストールで
飼育されている泌乳初期の経産乳
牛に多発する傾向�
趾間皮膚炎�
•  趾間隙の軽度の細菌
感染症�
•  皮膚表面だけに炎症が
起こり、腫脹や疼痛は
通常ない�
•  慢性になると趾球に広
がる�
•  Dichelobacter nodosus�
趾間腐爛(フレグモーネ)�
•  趾間隙から始まる急
性または亜急性の壊
死性感染症�
•  球節下の皮膚組織の
腫脹・フレグモーネ、
著しい疼痛と跛行、発
熱、食欲減退�
•  壊死桿菌�
•  Fusobacterium
necrophorum�
趾間腐爛(フレグモーネ)�
•  一般的に雨が多く、泥
濘化した土壌環境で
起こる�
•  極度に乾燥した牧野
でもおこる�
•  放牧している乳牛に
見られる一般的な病
気�
9)遺伝性疾患の制御�
•  乳牛の遺伝性疾患として遺伝子診断が可能
なもの�
ホルスタイン種乳牛における�
•  牛白血球粘着不全症(BLAD):β2インテグリ
ンの欠損による粘着不全�
•  牛複合脊椎形成不全症(CVM):多くは早期
に流死産となる�
•  常染色体単純劣性:種雄牛側の疾患遺伝子
保有牛が明らかとなった�
牛白血球粘着不全症�
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Bovine Leukocyte Adhesion Deficiency�
BLAD�
ホルスタイン牛のみ発症�
常染色体性単一完全劣性遺伝疾患�
白血球の粘着分子の遺伝子の変異�
キャリアー牛は正常�
免疫不全状態・・数ヶ月から1年まで生存�
牛白血球粘着不全症�
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常在菌による感染を繰り返す�
特徴的な血液所見�
白血球数の激増�数万から十数万/mm3�
殆どが好中球�
高ガンマグロブリン血漿�
臨床症状が悪化しても化膿病巣は作らな
い・・・好中球が感染部に行けない�
牛白血球粘着不全症:
(BLAD:Bovine Leukocyte
Adhesion Deficiency)
•  本症は、CD18β鎖の変異によって発生する常染色
体劣性の遺伝性疾患です。白血球の粘着蛋白質の
一種であるCD13/CD18インテグリンのうちCD18(β
鎖)の欠損により、白血球が疾患部位に付着できな
くなります。
•  このため、常在する病原菌に対しても抵抗性を欠き、
発熱や下痢を繰り返し、傷の治癒不全、口腔などの
粘膜潰瘍、歯肉炎、などを起こし、生後数ヶ月で死
亡してしまいます。
牛白血球粘着不全症�
牛白血球粘着不全症�
内皮細胞上での白血球の�
ローリング�
β2インテグリン�
接着分子�
•  �血管内皮細胞は、感染などの炎症時に、TNF-αにより刺激され、表面
に、E-セレクチン(接着分子)を発現する。白血球(好中球)は、血管内
皮細胞表面に発現したE-セレクチンと、結合する(弱い接着)。�
•  さらに、好中球は、サイトカイン(IL-8など)により活性化されインテグリン
(LFA-1)を発現し、血管内皮細胞表面のインテグリンリガンド
(ICAM-1)と結合する(強い接着)。そして、好中球は、血管内皮細胞間
を遊出して(潜り抜けて)、組織内の感染などによる炎症巣へ、浸潤する。�
牛複合脊椎形成不全症�
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Complex vertebral malformation (CVM)�
常染色体性単純劣性遺伝�
ホルスタイン牛のみの発症�
流産胎子および新生子の脊椎形成不全�
頸椎および胸椎の短縮�
両前肢手根関節や飛節の左右対称的な湾曲
と捻転�
•  本症は、胚の発生初期に細胞内で体節や脊椎の分
化に関与するSLC35A3遺伝子の突然変異により発
生する常染色体劣性の遺伝性疾患です。
•  主な症状は流・死産による出生率の低下、あるいは
新生子の奇形による死亡がみられます。
•  奇形の特徴は、頚部や胸部脊椎の短縮、両前肢手
根骨関節や飛節関節の左右対称的収縮と捻転で、
心奇形を伴なう場合もあります。
10)酪農場の防疫(バイオセキュリティ)
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(1)施設と防疫
(2)外来者、車両、物品の搬入
a. 外来者 b. 車両 c. 飼料等
(3)牛群の把握
(4)導入牛に対する対策(着地防疫、隔離など)
a. 導入時の観察 b. 導入後の観察 c. 作業服 d. 野生
動物 e. その他
(5)農場内の作業
(6)牛舎消毒
(7)異常牛が疑われた場合の対応
(8)酪農場における海外伝染病の侵入防止対策
11)今後の課題�
•  わが国の飼料事情、飼養環境や管理方法に影響を
受ける�
•  病気として、乳房炎、蹄疾患、第四胃変位が上位�