cSUR Annual Report in 2011 都市環境向上のための市街地の風通しの最適化に関する研究 SARR11005 樋山 恭助 1. 活動概要 市街地を通る風は,市街地底部で生成,排出される汚染 質や排熱を希釈するほか,夏期には人に適度な冷涼感を与 える。このように,市街地に有効な風を確保することで都 市空間の環境向上を図ることの意義は大きい。 しかし現時点では,風通しと市街地の密集度の定量的な 関係や,風通しの日常生活への影響の定量的な評価はいま だ明確でない。そこで,本研究は市街地の風通しの測り方 とその評価手法の概念の構築を活動目標とする。 本 PJ は,平成 20 年度より活動を開始しており,現状ま でに風通しに影響を及ぼす要素の検討,及び風通しの評価 手法の開発を実施してきた。平成 23 年度は,本プロジェ クト成果の最終報告として,英文図書を出版した 2. 出版概要(図-1,2) 2.1 タイトル Ventilating Cities - Air-flow criteria for healthy and comfortable urban living 2.2 出版元 Springer-Verlag 2.3 出版日 2012 年 1 月 31 日 2.4 ページ数 197 頁 2.5 国際標準図書番号 ISBN-10 : 9400727704 ISBN-13 : 978-9400727700 2.6 目次 1. Introduction Part1: Wind Environment and Urban Environment 2. Sea breeze blowing into urban area; as a mitigation of urban heat island phenomenon 3. Thermal adaptation in outdoor and effect of wind on thermal comfort 4. Health Risk of Exposure to Vehicular Emissions behind Wind Stagnant Street Canyons 5. Pollutant Transport by Wind in Dense Urban Areas Part2: Criteria for Assessing Breeze Environment 6. Legal regulations for urban ventilation 7. New Criteria for Assessing Local Wind Environment at Pedestrian Level and the Applications 2.7 編者 樋山恭助・東京大学・生産技術研究所・助教 加藤信介・東京大学・生産技術研究所・教授 2.8 共著者 川本陽一・東京大学・工学系研究科・特任助教 吉門 洋・埼玉大学・工学部・教授 大岡龍三・東京大学・生産技術研究所・教授 速水 洋・電力中央研究所・上席研究員 黄 弘・清華大学・公共安全研究センター・准教授 M. V. Khiem・気象庁(ベトナム)・研究員 Hom Bahadur Rijal・東京都市大学・環境情報学部・講師 星子智美・東京大学・工学系研究科・特任助教 山本 和夫・東京大学・工学系研究科・教授 中島 典之・東京大学・工学系研究科・准助教 Tassanee Prueksasit・チュラロンコン大学(タイ) ・講師 中尾 圭佑・東京大学・工学系研究科・大学院生 卜 震・Mott MacDonald(中国) ・Senior Building Physics Specialist Mahmoud Farghaly Bady Mohammed・アシュート大学 (エジプト)・助教授 2.9 概要 本刊行物は,Ventilating Cities と題して,都市の風通し の最適化を考えるために必要となる「なぜ都市に弱風環境 が必要か?」 「都市はどのように換気されるか?」 「弱風環 境をどのように評価するか?」に視点を向けた知見を提供 するものである。副題は,Air-flow criteria for healthy and comfortable urban living としている。 本刊行物は大きく 2 つのパートに分類される。 Part1 では,「Wind Environment and Urban Environment」 と題して,風環境が都市環境に与える恩恵と,逆に十分な 風環境が確保されない空間において発生するリスクに関 して多角的な視点から論じる。第 2 章では「Sea Breeze Blowing into Urban Area; As a Mitigation of Urban Heat Island Phenomenon」と題して,ヒートアイランド現象の緩和に対 する海風の役割を説明する。世界人口の半数は海岸線から 100km 以内に住んでいると言われており,海風を利用する ことで快適で安全な都市環境を得られることのポテンシ ャルを,この恩恵を最も受けることが可能な大都市・東京 を対象に論じる。第 3 章では,「Thermal Adaptation in Outdoor and Effects of Wind on Thermal Comfort」と題して, 風環境による暑熱環境の緩和効果に関して展開する。第 4 章では,「Health Risk of Exposure to Vehicular Emissions behind Wind Stagnant Street Canyons」と題して,都市の居住 域内で発生する汚染物質による人体への健康被害リスク を定量化する手法を示す。第 5 章では, 「Pollutant Transport by Wind in Dense Urban Areas」と題して,第 4 章で述べた ような都市居住域内での汚染物質発生に対するリスクア セスメントを行う際,どのように都市内の汚染物質の拡散 現象をモデル化するべきか,理論と風洞実験により検討し た内容を紹介する。 Part2 では, 「Criteria for Assessing Breeze Environment」と 題して,Part1 で必要性が明示された都市の換気を最適化 することを念頭に置き,この最適化のために必要となる都 市換気の評価手法のあり方を展開する。第 6 章では, 「Legal regulations for urban ventilation」と題して,現在の都市の換 気に対する法規制やガイドラインを概説する。この中で, Global COE Program “Center for Sustainable Urban Regeneration” the University of Tokyo cSUR Annual Report in 2011 現状の規制等による制御に残る問題点を明確にし,次章に おける評価手法の提案の位置づけを明確にする。第 7 章で は,「New Criteria for Assessing Local Wind Environment at Pedestrian Level and the Applications」と題して,これまでに 確立されていない,都市換気の定量的で絶対的な評価手法 を提案する。この評価手法を用いることで,都市域内にお ける汚染質発生に対する安全性や,暑熱環境緩和といった 快適性を得ることの出来る風環境を提供する都市形態を 検討することが可能となる。 図-1 カバー正面 図-2 序文 Global COE Program “Center for Sustainable Urban Regeneration” the University of Tokyo
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