成人型アトピー性皮膚炎患者の血清interleukin (IL)-6とhouse dust mite

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日皮会誌:104
(11), 1339-1345,
1994 (平6)
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成人型アトピー性皮膚炎患者の血清interleukin
(IL)-6とhouse
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dust mite抗原刺激による末梢血単核球のIL-6産生について
古川
康之
元木
良和
丸山
幸治
小嶋
幸夫
岩月
啓氏
金子
史男
要 旨
臨床像から成人型ADを1つの新しい皮膚病態とし
成人型アトピー性皮膚炎(atopic
患者の血清中のinterleukin
(peripheral
house
blood
dermatitis ; AD)
(IL) -6値と末梢血単核球
mononuclear
cells; PBMC)を
dust mite (HDM)抗原で刺激し,
IL-6産生量
を測定した.AD患者PBMCはHDM抗原刺激によ
り容量・時間依存的にIし6を産生した.
HDMdOOng/
てとらえる考え方も提唱されている2).AD患者では,
その80∼90%にhouse
dust mite
(HDM)抗原や卵白
抗原などの環境抗原および食物抗原に対する特異的な
lgE抗体が検出される3).しかし,ADの発症機序につ
いては未だ明らかとはいえないが,皮膚炎の発症には
lgE抗体およびT細胞の関与が示唆され,免疫応答の
ml)刺激24時間後のIL-6産生量は,AD患者では
異常,生理・生化学的異常,遺伝学的因子の関与など
2,634.7±852.3pg/mlであり,健常人(654.0±116.7
の様々な観点から研究が行われている4)
pg/ml)およびAD以外の皮膚炎(nonAD)患者
病変部のT細胞がクローン化され,その浸潤T細胞
(853.1±188.2pg/ml)に比して有意に高値であった.
が主にinterleukin(IL)-4,
一方,無刺激時のPBMC産生のIし6はAD患者で
helper T type 2 (Th2)細胞であることが示された6)7)
465.9±83.7pg/ml,
nonAD患者で377.2±63.5pg/ml
9).最近,
AD
IL-5, IL-10などを産生する
また,AD患者の血清中にはIL-4が高く8),末梢血T細
であり,それらはともに健常人(188.7±54.3pg/ml)
胞のIL-6産生が充進していること9)なども報告されて
より高値であった.AD患者PBMCのIL6産生量は
いる.一方,ADの発症において主にinterferon-
皮疹の重症度と相関して増加した.しかしながら血中
gamma(IFN-y),IL-2を産生するTh1細胞が演じる遅
総lgE値あるいはHDM特異的lgE値との間に明確
延型過敏反応の関与が示唆されている10)11)このよう
な関係は認められなかった.さらに,AD患者血清中の
にADの皮疹の発症に関する病態は複雑なサイトカ
IL-6は健常人よりも高率に検出され,そのレベルも高
イン・ネットワークによって形成されていると考えら
い傾向が認められた.以上の結果から成人型AD患者
れる.したがって,ADの皮疹発症機序の解明には,こ
の血清中にはIL-6が高く,またPBMCはHDM抗原
のサイトカイン・ネットワークを明らかにすることも
刺激によりIL-6を過剰産生すると考えられ,このIL-6
重要であり,そのひとつとしてわれわれはまずIL-6に
がADの病態形成に関与することが示唆される.
着目した. IL-6は一般に,B細胞を抗体産生細胞へ分化
誘導させたり12)表皮角化細胞の増殖を促進させる13)な
緒 言
アトピー性皮膚炎(atopic
どの作用を有し,ADの皮疹発症の病態に深く関与す
dermatitis ; AD)はアト
ピー素因を有する患者に生ずる慢性再発性皮膚炎であ
ることが推察される.今回は成人型ADを対象とし,
血清中のIL-6の動態およびHDMを抗原として末梢
る1).その臨床像は加齢とともに変化し,幼児期および
血単核球(peripheral
成人期には乾燥傾向が強く著明な苔癖化局面を形成す
PBMC)を刺激し,IL・6産生の可能性について検討し
blood
る.また,最近では成人型AD患者には顔面の浮腫性
た.
潮紅発作,頚部のpoikiloderma様皮膚変化や体幹部
材料と方法
の浮腫性紅斑などを伴う例がみられ,その複雑化した
1.
mononuclear
AD患者,AD以外の皮膚炎(nonAD)患者およ
び健常人
福島県立医科大学皮膚科学教室(主任 金子史男教授)
平成6年2月24日受付,平成6年6月8日掲載決定
福島県立医科大学付属病院皮膚科外来を受診した成
別刷請求先:(〒960-12)福島市光が丘1番地 福島県
人型AD患者27名(平均年齢22歳,男性14名,女性13
立医科大学皮膚科学教室 吉川 康之
名,ステロイドの全身投与は行われていない),対照と
cells;
吉川 康之ほか
1340
してnonAD患者10名(末治療で中等症以上の急性湿
4. IL-6測定法
疹8名および接触性皮膚炎2名,平均年齢27歳,男性
PBMC培養上清中および血清中のIL-6濃度はサン
5名,女性5名)および健常人13名(平均年齢24歳,
ドウィッチ法によるenzyme-linked
男性7名,女性6名)を検討対象とした.成人型AD患
assay (ELISA)キット(トーレ・フジバイオニクス社
者の重症度は採血時における皮膚症状から判定し,阿
製)(測定可能範囲,10∼600pg/ml)を用いて測定した.
南ら14)の分類法を一部改編し,以下のように3grade
5.統計学的解析
(G)とした.G1:いわゆるアトピー皮膚(atopic
skin)
に加えて軽度の苔癖化局面を有するもの,G2:四肢や
検査値はmean土standard
immunosorbent
error
体幹に限局性の苔癖化局面を有するが広範囲でないも
Testを用い,pく0.05を有意と判定した.
の,G3:典型的なADで顔面蒼白や全身皮膚の乾燥肥
成 績
厚がみられ,かつ苔癖化の程度が著明で広範囲なもの
である.対象AD患者の内訳はG1:
of the mean
(SEM)で表示し,有意差の検定はMann-Whitney's
U
I. PBMCのHDM抗原刺激によるIL-6産生につ
8名,G2
: 12名,
いて
G3: 7名であった.なお,われわれが検討対象とした
1) HDM抗原刺激による成人型AD患者PBMC
AD患者の臨床検査値,特にlgEとHDM抗原に対す
のIL-6産生
る反応をまとめると,血中総IgE
AD患者PBMCの培養上清中のIし6値は,
(RIST)値は
HDM抗
2,393.3±453.11U/ml,Dermato皿aeoides pteronys
原(lOOng/ml)刺激により培養6時間以降経時的に増
sinus(Dp)特異lgE(RAST)値は,
加した.24時間および48時間培養上清のIL-6値(24時
3.34土0.35,
間:785.4±171.
Dermatopftaeoides血貨'nae
(Df)特異lgE(RAST)値
は,
Lymphoprep
(NYCOMED,
1). PBMC培養上清中Iし6値はAD患者,健常人とも
Oslo,
にHDM抗原の刺激用量に依存して増加した(Fig.
Norway)を
2).また,そのIし6は全て成人型AD患者が健常人よ
用いた比重遠心法により,主としてリンパ球含有の
PBMCを分離した.
medium
整し,
PBMCはhuman
りも有意に高値であった.さらにCon
lymphocyte
(クラボウ社製)を用いて5×105ce11S/mlに調
: K165,
A 刺激において
AD患者PBMCのIL-6産生量(4,087.1士l,042.5pg/
HDM抗原(島居薬品礼製,Dp・Df混合,
number
48時間:
329.0±233.5pg/ml)に比し有意に高値であった(Fig.
PBMCのHDM抗原刺激
対象者から5mlヘパリン(O.lml)加静脈採血を行
い,
48時間:1,132.0±347.3pg/
ml)は無刺激状態(24時間:224.1土137.8,
3.67±0.33であった.
2.
6pg/ml,
lot
ml,
n=7)は健常人(1,400.6±463.0pg/ml,
よりも有意に高値であった(pく0.01).
デストロフェノール法にて精製)添加
後,37で,5%COバンキュベーターにて培養した.各
2)ADおよびnonAD患者PBMCのHDM抗原
刺激条件により適時培養上清を採取し,
刺激によるIL-6産生の比較検討
した.刺激条件として,
IL-6測定に供
HDM抗原濃度(10,
ng/ml)および刺激時間(6,
24,
100, 1,000
48時間培養)の影響
を検討した.また,対照群として健常人,
のPBMCは,
Louis,
concanavaline
24時間制激し
USA)
A (ConA)
nonAD患者および健常人のPBMCにお
24時間刺激に
て比較した. HDM抗原刺激において,成人型AD患者
のIし6産生量(2,634.7±852.3pg/ml)は健常人
上清を採取した.さらに,AD患者および健常人の
PBMCは,
AD患者,
けるIL-6産生をHDM抗原(lOOng/ml)
nonAD患者
HDM抗原(lOOng/ml),
n=ll)
(654.0±116.7pg/ml)およびnonAD患者(853.1±
(SIGMA,
St.
10μg/mlを用いて24時間刺激培養し,
188.2pg/ml)に比して有意に高値であったが,
nonAD
患者と健常人の間では有意差を認めなかった.また,
上清中のIL-6値を比較検討した.
無刺激時において,成人型AD患者のIし6値(465.9±
3.血清中のIL-6
83.7pg/ml)およびnonAD患者のIし6値(377.2±
血清中のIL-6は成人型AD患者47名(平均年齢!8
63.5pg/ml)は健常人の値(188.7±54.3pg/ml)に比
歳,男性21名,女性26名)および健常人121名(平均年
齢23歳,男性65名,女性56名)について測定した.
患者の重症度はG1
: 23名,G2:
9名,G3:15名であっ
た.静脈採血し,分離剤入り汎用試験管により分離し
た血清をIL-6測定用として保存した.
して高値であった(Fig.
AD
3). HDM抗原刺激によるIL-
6産生量は無刺激に比し,成人型AD患者では約6倍,
nonAD患者は約2倍,健常人は約3倍にそれぞれ増加
した.
成人型アトピー性皮膚炎とIL-6
0 00
0
9-11
1
(iui/6d) 9-n一
0 0 0 0 0
0 0 0 0
0
6
0 4
0 2
0
8 l/6d)
−
1500
!3剥
0
incubationtime(hours)
Fig. 1 IL-6 production by PBMC
HDM
antigen in AD
patients (open circles:non
stimulation, closed circles: HDM
ulation, means土SEM.
: peripheral blood
0 0 0 0 。
00
00
00
00
4 3 2 1
(luvBd) 9-ni
bars : healthy
patients
controls
n = 6, 100 ; n=10,
patients
(HDM
by PBMC
stimulated
HDM
antigen
(HDM
O(ng/
0 (ng/ml)
with
(open
bars:
「);nニ13, 10 ;
1,000 ; n ―7), closed
bars:
AD
; nこ27, 10 ; n = 8, 100 ;
means土SEM)
6産生能の高い患者が散見された(Fig.
RAST陰性患者群のIし6値(Dp
3, Df:
100
of IL-6
patients and
controls
n = 23, hatched
by
PBMC
patients
n = 10, closed
bars : nonAD
: non-atopic
5b).なお,
: 558.0±238.0
;n=
; n = 5)は陽性群(Dp:
; n = 20, Df:3,047.9±755.8
;n=
18)に比し明らかに低値であった.
production
nonAD
1,147.5±390.2
2,946.3土682.0
(open
bars:
AD
2.成人型AD患者の血清中IL・6値について
血清中のIL-6は,成人型AD患者47大の27.7%,健
常人121人の2.5%に検出された(Table
1).検出され
patients n=
たAD患者の血清中IL-6値(99.5±59.7pg/ml)は,
10, means士SEM)
nonAD
of
5a)が,Dp・Df-RAST値の高いAD患者においてIL-
3 Comparison
AD
production
dose
1000
値との問には明らかな相関は認められなかった(Fig.
HDMantigen(ng/ml)
between
various
n = 23, 1,000 ; n=12),
cells.
l
Fig.
Fig. 2 IL-6
healthy
: house dust mite,
1し6 : interleukin 6,PBMC
mononuclear
lOOng/ml stimヽ
n = 5)
AD : atopic dermatitis, HDM
10 100
HDM antigen (ng/ml)
stimulated with
健常人(54.2±21.1pg/ml)に比して高い傾向にあった
dermatitis
が,統計学的有意差は得られなかった.なお,成人型
3)成人型AD患者の重症度および血中IgE
(RIST,RAST)とPBMCのIL・6産生量の関係
AD患者の重症度と血清中IL-6値とに明らかな相関は
認められなかった.
HDM抗原(lOOng/ml)刺激24時間後のPBMCの
考 按
IL-6産生量を重症度別に比較した.AD患者のG2およ
近年,ADの発症機序に関して,
びG3では,
トカインであるIL-4,
IL-6値は健常人とnonAD患者に比し高
Th2細胞由来のサイ
IL-5などとlgEとの関与が指摘
く,統計学的に有意であっ凪また,ADの重症度に相
され15)
関してIL-6産生量が増加し,G2とG3は他のGl,
サイトカイン・ネットワークのdysregulation'''
nonADおよび健常人に比して有意に高値であった
疹出現に役割を演じていると推定されている.われわ
(Fig. 4).なお,無刺激時の重症度別IL-6産生量はそれ
れは,成人型AD患者の皮疹部で炎症性細胞などによ
ぞれG1
り産生されるIL-6に着目し,AD患者血清中のIし6値
ml,G3
: 273.1±48.7pg/ml,
G2 : 645,8±132.Opg/
: 39!j±215.8pg/mlで,健常人:188.7±54.3
19)その皮疹部におけるTh2細胞の浸潤による
を測定するとともに,
8)が皮
PBMCをHDM抗原で刺激し
pg/mlよりも高い傾向にあり,G2において統計学的に
てIL-6産生の有無を検討した.さらに,その皮疹の形
有意差を認めた(p<0.01).
成および血中lgE値との関連について考察した.
AD患者のIgE-RIST値およびlgE-RAST値と
AD患者のPBMCは,
HDM抗原(lOOng/ml)
24時間刺激によるPBMCの
IL-6産生量との相関を検討した.
IL-6値とIgE-RIST
HDM抗原刺激6∼48時間の
比較的早期にIL-6を産生した.また,AD患者の
PBMCはHDM抗原の用量依存的にIL-6を産生し,
1342
吉川 康之ほか
AO
4 Relationship
of
AD
with
and IL-6
HDM
between
production
antigen
n = 10, hatched
closed
bars:
(open
the disease
by PBMC
AD
means土SEM)
G : grade
of the disease
stimulated
controls
patients
patients (G1:n
G3:n―6),
severity
bar : healthy
bar : non
AD
19E・RIST (lU/ml)
severity(grade,G)
Fig.
Fig.
︵一EI︶;
(Hii/6d)9-ii
3
nonAD
一一一一一一。
叩 00 00 00 0
80 60 40 20
(│UJ/6d) 9-ni
normal
n=10,
= 7, G2:n=こ10,
5 Relationship
PBMC
IgE
between
stimulated
(a)
circles
or
: Dp-spe
with
IIDM-specific
・ic
IgE,
IL-6
HDM
IgE
closed
production
antigen
(b)
in
circles
by
and
sera
totaJ
(open
: Df-specific
IgE)
Dp・.
Dermatophasoides Me切符ssinus.Df:
刀心
matophasoides farinae
severity
者PBMC培養上清中では低値を示す24)が,血清中で
Table 1 Serum
IL-6 levels in AD
patients and
hea】thy
controls
は高値であるとの報告も認められ25)われわれが検討
したIL-6とともにproinflammatoryなサイトカイン
total
number
healthy controls
AD patients
121
47
AD : atopic dermatitis, IL
detectable (%)
IL-6(pg/m1)
means土SEM
3(2.5)
54.2土21.1
13(27.7)
99.5土59.7
として炎症を増強する可能性がある.
AD患者PBMCのIL-6産生能とADの重症度と
IgE-RIST
・IgE-RAST
値との関連の検討では,
HDM
抗原刺激によるIL-6産生充進は苔癖化面積から判定
interleukin
したADの重症度に対してのみ相関が認められた.こ
のことは皮膚表面のバリアー能の低下しか苔癖化面積
その産生能は,健常人やnonAD患者に比し充進して
いた.さらに,無刺激時においてADおよびnonAD患
が広いほど環境抗原が経皮的に侵入し易く,流血中の
者PBMCのIL-6産生は健常人に比し増加していた.
T細胞および皮疹部の炎症性細胞が既に活性化状態
一方, ConA刺激においてAD患者PBMCのIL-6産
にあると推定されるが,抗原の侵入と皮膚炎および苔
生は健常人よりも高かっか.これらの成績から,AD患
癖化病変の形成に関してはさらに表皮細胞と真皮の細
者のPBMCは抗原やmitogenに対して反応性が先進
胞などとの相互的な検討が必要である.一般に,AD患
しており,AD患者は,
者では血中lgE値が高値であるものが多いが,重症度
HDM抗原刺激によりIし6を過
剰産生することか示唆された.
Toshitaniら9)は
との相関や治療による変動については,重症ADで血
PBMCをT細胞とモノサイトに分離し,AD患者の
中lgE値が低値を示す症例が認められることなども
T細胞から産生されたIし6は健常人に比し有意に高
報告されており意見が分かれている26)
いことを報告している.
われの成績からはAD患者PBMCのIL-6産生量と血
IL-6は,T細胞にIL-2を産生
させ,間接的にB細胞にgermline
を増強させるのみでなく,
成熟IgE
IgE mRNA
の発現
IgEクラススイッチ以降の
mRNAの発現に対しても増強作用を示すた
30)今回のわれ
中lgE値に明確な相関は得られなかったが,血中の
igE値の上昇には他の多くの因子も関与していること
を反映しているものと考えられる.一方では,AD患者
め, IgE産生系に促進的に働く20)21)ことが知られてい
の血清中においてIL-6は健常人に比し高頻度でかつ
る.さらに,
相対的に高く検出された.血清IL-6高値を示す疾患で
IL-6はB細胞を成熟抗体産生細胞へと分
化させる作用も有するlo)ため,AD患者における高
ある慢性関節リウマチでは,その血清中のIL-6はC反
lgE血症への関与が推察される.他方,Iし6はIL-1や
応性蛋白(CRP)・赤沈・血小板数の減少などの炎症
tumor necrosis factor-alpha (TNF-α)などのサイト
マーカーと相関する31ト33)とされており,ADにおいて
カインによって線維芽細胞,モノサイトなどからも誘
も血清中IL-6は炎症症状の程度を反映していると考
導される22)23)
えられる.
XNF-αはmitogen刺激によるAD患
1343
成人型アトピー性皮膚炎とIL-6
環境抗原のHDMはADの増悪因子である34)
36)
けるIL-6の役割についてさらに詳細な検討が必要で
われわれの実験結果からAD患者はHDM抗原の刺
ある.
激により1し6を過剰産生する可能性が示唆され,これ
稿を終えるにあたり,血清中IL-6の測定に御指導いただ
きました北海道大学医学部細菌学教室皆川智紀教授に深謝
はIL-6の起炎作用からAD症状の増悪に関与すると
考えられる.さらに,
IL-4,
Iレ5,
いたします.
TNF-αなど多くの
サイトカインが症状の出現に関与し,複雑なサイトカ
本論文の要旨は第42回,43回日本アレルギー学会および,
イン・ネットワークを形成して病態に関与すると推察
第57回日本皮膚科学会東部支部学術大会において発表し
される.今後はこのサイトカインーネットワークにお
た.
文
1)
Wise
F,
The
Sulzberger
M
1933 Year
献
: Editorial
Boofe of
Syphlology,Year
Book
remarks.
ln:
DermatoloRy and
Medical
Publバ934,
Secretion
of IL-2, IL-4 and IFN-y
antigens
38
in a patient
12)
2)西岡 清,向井秀樹,上村仁夫,他:重症成人型ア
Complementary
トピー性皮膚炎患者の経過,日皮会誌,98:
leukin
873-877,
produce
3)笠松正憲,辻 卓夫:アトピー性皮膚炎患者に対
4)
Tupker
JP
Pinnagoda
and
history
to
irritans,
of
atopic
f)ermatol, 123:199-205,
5)
Pike
MG,
ity
DT
in
6)
Nater
of
skin
dermatitis,
Br
J
P, Turner
intestinal
eczema,
van
Reijisen
J
FC,
FC,
et
specific
T-cell
patients
with
MW,
Immunol,
90
Sager
N,
House
subjects
clones
of
A,
atopic
:
CAFM,
Th2
phenotype
in
J Allersy Clin
in
dermatitis,
801-810,
G,
cells
/
et
the
a1:
skin
Allergy
of
C/加
1992.
ELISA
Toshitani
JM
cells
/
Grewe
from
Inひest
M,
Th工like
lesional
atopic
1993.
JC,
et
skin
sc,
6
patients
al : In
with
:
situ
299
Li
S, Hanifin
production
by
atopic
304,
/
to
/回心
dermati-
USA,86
expression
the
Y,
Koga
T,
clinical
in
D, et al:
high
stimulates
levels
in
proliferation
of
PrnrNatl A cadSrf
1989.
Immunosorbent
farinae)抗体の測定,アレルギー,31
244-251,
1982.
15)
U, Pawelec
Reinhold
P,Kreysel
G, Wehrmann
H-W
cultured
peripheral
patients
with
16)
Mosmann
TR,
cells : Different
tion
lead
W, Kukel
: Cytokine
blood
severe
Coffman
release
mononuclear
atopic
to di汀erenL
S,
from
cells of
dermatitis,
Ada
1989.
RL: THl
patterns
:
and
of lymphokine
functional
TH2
secre-
properties,
Parronchi
severity
S,
Hori
P,Macchia
and
D, Piccinni
bacterial
established
M-P,
antigen-specific
from
atopic
profile of cytokin
donors
et al:
T-cell
show
production,
a
Proc
1991.
18)森 晶夫,奥平博一:アレルギーの発症機序,診断
: 1157-1162,
1993.
19)前田啓介:アトピー性皮膚炎におけるT細胞の
of
Dermatol, 101
Imayama
J, Yourish
(ELISA)を用いた抗ダユ(Dermato-
the
役割,臨床免疫,25
in
20)
of
Modulation
: 401,
Gauchat
RNA
necrosis
Kubota
and
: 6367-6371,
と治療,81
1993.
11)
to
324 : 73-76,
Nat! Acad
Sci
USA,88 : 4538-4542,
T
1993.
interferon-y(IFN-y)
is linked
dermatitis,
keratinocytes,
different
Chan
Dぼmatol, \00
cytokine
Nature,
Krueger
cultured
clones
interleukin
derived
tis,
10)
A, Ansel
: Increased
inter-
B lymphocytes
6 is expressed
skin
Allergen-
法)とア
トピー性皮膚炎患者における血清値について,ア
: 878-882,
RM,
psoriatic
17)
interleukin-4測定法(Sandwich
9)
et al:
Anna Rri)I mmunol,7
: 145一173, 1989.
8)笠松正憲,辻 卓夫,三浦真理子:高感度
レルギー,42
that induces
DarrK,
Yp.np.rp.ol,69
: 497-502,
Schiling
T
Grossman
Oehr
1992.
mite-specific
with
H,
for a novel human
immunoglobulin,
phagoides
aeroallergen-
dermatitis,
: 184-192,
Immunol,89
(BSF-2)
Assay
IRむest Dび・matol。86:
Brijnzeel-Koomen
Feldmann
dust
K, Harada
DNA
膚炎におけるEnzyme-lined
permeabil-
al : Skin-derived
atopic
T, Yasukawa
14)阿南貞雄,赤星吉徳,吉村正子,他:アトピー性皮
1986.
Kalthoff
7)
PJ,
Role
Boulton
: Increased
atopic
101-104,
RJ,
Hirano
Interleukin
1990.
Heddle
Atherton
1994.
J, Coenraads
: Susceptibility
dryness
13)
: 221-224,
RA,
dermatitis, ノ
1986.
する抗アレルギー剤内服治療と血清interleukin-4
値の変化,臨皮,48
for dust mite
atopic
Dermatfil,20: 85・ 87, 1993.
-39.
1988.
with
Y:
bodies
JF,
: 1057一1064,
Aversa
of IL-4
synthesis
in
induced
human
H, et
germline
B
factor-α, anti-CD40
or transforming
1993.
G, Gascan
growth
cells by
monoclonal
a1:
epsilon
tumor
anti-
factor-βcorre-
1344
吉川 康之ほか
lates
with
levels
of IgE
munol, 4
: 397-406,
1992.
21) Vercelli D, Jabara
HH,
dogeneous
Eur J
IL-6-dependent
22) Wakefield
PE, James
: 675-685,
factor
K, et a1: En-
human
IgE
WD,
synthesis,
Samlasia
and
CP,
stabilize IL-6
and
matitis,
messenger
Sumimoto
K, Furue
peripheral
Serum
blood
der-
30)
IER.
plasma
concentration
tumor
and
atonic
in atopic der-
645,
concentrations
M:
in atopic dermatitis,
SJ, MacKie
seborrhoeic
dermatitis.
Total
AW,
Heiner
DC,
31)
Brozik
Interleukin
different
IgM
acute
32)
6 levels
phase
tive
deficiency
active
atopic
1662-1667,
28)
DTO,
of a T-cell
dermatitis,
Thyresson
matoses.
Pierson
DL,
AI : Selec-
subpopulation
in
/ Immunべ 124
:
: Correlation
J
M, Kirkham
and
7?み回心atol,
JV
serum
and
19 : 22-25,
of
urticaria./l冗h
G0,Bennich
H, Hoegman
N : Immunoglobulin
Levels
: The
patients
in
atopic
E
in
dermatitis
De.rm.atol, \00
: 12-16,
1969.
derand
6
Damme
JV,
in synovial
with
rheumatoid
inflammatory
arthritides,
1988.
1990.
TAE,
role
T,
1992.
JP,
: Interleukin-6
other
100 : 63-69,
Platts-Mills
a1
Rheumatol,
in rheumatoid
ArthritisRheum, 31 : 1041-1045,
35)
with
systemic
of interleukin
disease
F, Devogelaer
C, Snick
誌,
al:
B, Gibson
estimation
of systemic
/
Houssiau
arthritis
and
production,
B, Corkill
a measure
Nagant
K, et
fluids of patients
factor
protein
G : Serial
dermatitis,
1980.
Tuhlin L, Johansson
C,
BA,
Levinson
in
1992.
Dasgupta
33)
arthritides
rheumatoid
: 63一68,
Panayi
in synovial
患者のダニ貼付試験,病理組織学的検討,日皮会
Bongiovanni
: IgE
1973.
l, Meretev
27) Schuster
DL,
RM
Detmatolユ07:712-715,
M, Rosztoczy
34)伊藤 篤,向井秀樹,西岡 清:アトピー性皮膚炎
JF, Wong
:
Reisner
7 Allergy Clin Immunol, 54 ". 94-99,
1974.
Barbaro
and
1983.
Gurevich
fluid
1992.
R, Roberts
K, Cobb
of infantile
・IC IgE levels,召r/ £^ermatol. 108
arthritis,
ne-
Frier
diagnosis
atopic dermatitis and other common der-
as
M, Kasajima Y,
EE, Irons JS, Patterson
IgE
spe
19
1992.
matitis,Arch Dis CWEd,ら7: 277-279,
Tohenson
M,
atopic
Sci, 3 : 172-180,
T : Increased
factor-alpha
Kerr
dermatitis
with
RNA,
of rL-4, IL-2, IFNby
S, Kawai
Hamamoto
VM,
: Early
local
cells of patients with
J Dermatol
necrosis
fibroblast IL-6
Y, Hama
TNF-alpha
mononuclear
26)
et al:
1990.
Y : Production
gamma,
tumor
stimulate
T, Sasaki
Ishibashi
crosis
and
145 : 161-166,
24) Takahashi
Yates
matoses, Arch
v : IL-1
synergistically
Immunol,
29)
639
1989.
1991.
Lentz
production
25)
Arai
necrosis factor, J Am Acad Dermatol,
23) Elias JA,
/
\ntfm
RM
Immunol,19 : 1419-1424,
Tumor
24
production,
of
CHw
Mitchell
dust
mite
EB,
Rowntree
allergens
Exi) Dermatol,8
in
S,et
atopic
: 223一一247,
1983.
36)
August
eczema,
111
PJ
A
: 10-11,
: House
preliminary
1984.
dust
mite
study,
causes
即J
atonic
DermatoL
成人型アトピー性皮膚炎とIL-6
Interleukin
(IL)-6
stimulated
Production
with
House
Patients
Yasuyuki
Kikkawa,
with
Mite
Antigen
Adult
Type
Atopic
Motoki,
Iwatsuki
The
serum
(PBMC)
stimulated
from
much
2634.7士852.3,
non AD: 853.1士188.2,
of IL-6 produced
by PBMC
of AD
pg/ml). The
Medical
PBMC
mononuclear
and healthy controls.
patients with AD
(99.5±59.7
stimulated
than
did non
AD
and 3 0f 121 (2.5%)
pg/ml)
with HDM
cells
immunosor-
were
higher than
antigen (100 ng/ml)
or healthy
controls (AD:
Pg/ml, respectively). The levels
correlated with the disease severity as determined
results indicate that PBMC
of AD
non AD. The IL-6 overproduction
of AD.
blood
by peripheral blood
sera from
role in the pathogenesis
words: adult
College
studied using enzyme-linked
healthy controls: 654.0±116.7
patients was
Kojima。
Kaneko
antigen were
healthy controls and/or
(Jpn J Dermatol
Yukio
for publication June 8,1994)
higher levels of lし6 in patients with AD
lichenified lesions. These
Key
Maruyama,
levels of IL-6 detected in AD
those in healthy controls (54.2±21.1
in
Prof. F. Kaneko)
detected in 13 0f 47 (27.7%)
serum
Cells
IL-6
in patients with adult type atopic dermatitis (AD),non
A D,
IL-6 levels were
healthy controls. The
produced
Serum
Dermatitis
Fukushima
24,1994: accepted
with house dust mite (HDM)
Mononuclear
and
levels of interleukin {IL)-6 and IL-6 production
bent assay (ELISA)
Increased
February
Kohji
and Fumio
of Dermatology,
(Director:
(Received
Blood
Dust
Yoshikazu
Keiji
Department
by Peripheral
1345
are more
by PBMC
sensitive to HDM
after HDM
by
than those of
stimulation may
play a
104: 1339∼1345, 1994)
type atopic dermatitis, interleukin-6, house dust mite antigen, serum levels,peripheral
mononuclear
cells