アトピー性皮膚炎患者におけるEnzyme-Linked Fluorescence Assay

ただいま、ページを読み込み中です。5秒以上、このメッセージが表示されている場
合、Adobe® Reader®(もしくはAcrobat®)のAcrobat® JavaScriptを有効にしてください。
Adobe®日皮会誌:91
Reader®のメニュー:「編集」→「環境設定」→「JavaScript」で設定できます。
(8), 847-853, 1981 (昭56)
「Acrobat JavaScriptを使用」にチェックを入れてください。
なお、Adobe® Reader®以外でのPDFビューアで閲覧されている場合もこのメッセージが表
アトピー性皮膚炎患者におけるEnzyme-Linked
示されます。Adobe® Reader®で閲覧するようにしてください。
Fluorescence Assay(ELFA)の検討
穐 山
要 旨
対するlgE抗体をアトピー性皮膚炎2),慢性暮麻疹s'患
アトピー性皮膚炎患者において,20種の抗原に対す
る特異lgE抗体をEnzyme-Linked
(ELFA)を用い測定し,
富 雄
者について検討し報告している.
Fluorescence
RASTとの相関性,
Assay
ELFA陽
しかし,
RASTはisotopeを用いる検査法であり,試
薬の保存がきかない.被爆の可能性がある.価格が高い
性率ELFAと皮内反応との一致率について検討し以下
という問題点があり,必要検体量が多いという難点力;あ
の結果を得た,
る.また抗原についても制限がある.そこで最近radi-
1)抗mite
lgE抗体をELFAおよびRASTにより
oimmunoassayにかわる方法としてenzyme
測定した結果,
ELF
count (log)
sayが開発されつつあり,血清lgE値,
pく〔〕.001),
抗体の測定にも応用されつつある4)5)6)7)
A
value (log)とRAST
との間には有意の相関がみられ(r=0.9042,
-immunoasIgE抗体,
ELFAとRASTとの一致率は90.2%であった
今回,著者はアトピー性皮膚炎患者における,抗mite
2)
lgE抗体についてEnzyme-Linked
mite抗原に対するELFA陽性率は41.9%であ
Fluorescence
り,血清lgE値高値群において,また他のアトピー性
(以下,
疾患(喘息,アレルギー性鼻炎)を合併する群において
RASTの相関,
高くなる傾向がみられた.
し,またmiteのほか19種の抗原についてもELFAに
3)20種の抗原のうち,
mite, house
milk, Aspergillus, Cladosporium,
wheat.
4)
ragweed
dust, egg white,
Alternaria, wheat,
buck
で10%以上の陽性率がみられた.
ELFAと皮内反応との一致率は,65∼85%であっ
た
IgG
ELFA)とRASTにより測定し,
Assay
ELFAと
ELFAと皮内反応の一致率に一ついて検討
より特異lgE抗体を測定し,8種の抗原については皮
内反応との一致率も検討しえたのでその結果を報告す
る.
対象および方法
I I. 患者対象
主に学童期以降の四肢屈側あるいは躯幹に苔癖化病巣
はじめに
を有する典型的なアトピー性皮膚炎患者155例(気管支
アトピー性皮膚炎では,その重症例において血清IgE
喘息,またはアレルギー性鼻炎を合併する症例17例,非
値の上昇がみとめられるが,
合併例71例,および合併の有無が不明なもの67例),お
IgE抗体の病因論的役割に
ついては,いまだ明白ではない.
Ohmanら1)はRAST
よび対照として健康人32例についてELFAを中心に下
(radioallcrgosorbent
test)により種々の吸入性および食
記の検討を行なった.
餌性抗原に対する特異的lgE抗体の検索を行ない,ア
2. 方法
トピー性皮膚炎患者血清中に,これらの抗原に対する
(1)血清lgE値はPhadebas
lgE抗体の存在を証明している.著者もすでにRAST
た.
を用い, mite, house dust. egg white など8種の抗原に
(2)患者82名における抗mite
IgE
kit により測定し
lgE抗体をELFAお
よびRASTを用いて測定し,その相関性を検討した.
長崎大学医学部皮膚科教室(主任 吉田彦太郎教授)
Tomio Akiyama : Evaluation of Enzyme・Linked
Fluorescence Assay(ELFA) in Atopic Dermatitis
昭和56年3月17日受理 特掲
ELFAの方法:antigen
bonate buffer, pH
濃度に溶解し,
coating
buffer (0.05M
・car-
9.5)に抗原を蛋白量として5μg/mlの
Disposo
Tray
の各wellに250μlずつ注
別刷請求先:(〒852)長崎市坂本町7−2 長崎
入し,4°0,
overnight静置後,0.05%Tween
大学医学部皮膚科教室
で2分間,5回洗瀧する.② つぎに,
incubation
20-PBS
buffer
848
穐山 富雄
Enzyme-Linked
Fluorescence
Assay(ELFA)
抗体をELFAを用い検討した.なお陽性基準は健康人
for Detection
のELFA値より定めた.すなわちmean-│-2sd・以上を
口
antigen
z 5 ug/tnl in antigen
coating
陽性とした.
buffeり250 ]il/wellj 4・C,overnight
L wash 5xuith
回 test
PBS-Tween
抗原として,鳥居薬品より提供をうけた次の20種を用
2C
serum s 1:50
いた.
diluted in incubation
buffei°・200
Ill/well; 4°C・
゜vernight
L wash
Sx with
PBS-Tween
回 anti-h・jman IgE(rabbit)
in incubation
L−5x
with
diluted
L wash 5Xwith
200μ/uell; 37°C,
60min
(viii) Penicillium
20
37°C,
60rain
PBS-Tween
20
回 10-^H MOP in diethanolamine
buffer(pH
9.81
into
Shionogi
O.IM K2HPO4-K0n
10.4)
wheat,
(xx)
luteum,
(ii)
milk,
house
(vi)
Asp-
cladosporioides,
(ix) Alternaria kikuchiana,
rice, (xii) wheat,
green soybean,
(xvii)
dog
(v)
(vii) Cladosporium
albicans, (xi)
(xiv)
farinae)
yolk,
crab,
(xv) bamboo
(xviii)
(xiii)
shoots.
mackerel,
(xix)
(feather)
なお,抗原量は原則として5μg/mlに調整したが,
to stop
reaction
green
tube and add 2.0
m10f
buffer(pH
Candida
buck
ragweed,
add 50 Hi of lM K2HPO4-KOH buffer(pH
− the
transfer
(x)
(xvi) shrimp,
!
200pl/well; 37°C,
100min
L
曰
white, (iv)
ergillus fumigatus.
■
alkaline phosphatase
conjugated goat anti一
回 rabbit igG z 1: 50 diluted in incubation buffer.
200
u l/wellr
(Dermatophagoides
dust, (iii) egg
: 1:200
buffer,
PBS-Tween
( i ) mite
20 。
10.4)
dog
soybean,
bamboo
(feather),
shoots, shrimp,
crab, mackerel,
Alteraariaでは10μg/ml,
yolkでは2.5
μg/mlに調整した
□
fluorospectrophotometer
Z Ex - 370 nm,Em . Ai5 nm
(4)皮内反応は鳥居薬品製の下記の8種の抗原を用
い行なった.なお皮内反応の判定は直径9mm以上の紅
Fig. 1 Enzyme-L
inked
Fluorescence
Assay (ELFA)
斑を伴った膨疹がみられた場合を陽性とした.
( i ) mite
i2%
BSA,
0.002%
Na
azide, 0.05%
Tween
20-PBS)
igatus,
で50倍稀釈した被検血清を各wellに200μIずつ注入
し,4
°0,
overnight静置後0.05%Tween
分間,5回洗脳する.③ つぎに,
20-PBS
incubation
で2
buffer で
60分incubate後,
した抗ウサギlgGヤギ血清を,
phosphatase
incubation
稀釈し,各Wenに200μl注入し,37°C,
後,
0.05%
Tween
を標識
buffer で50倍
60分incubate
0.03M
(pH=9.8)に溶解した10-*
M
Cladosporium
luteumタ(viii)
farinae),
milk,
diethanolamine
・ 4-methyl
buffer
umbelliferyl
phosphate溶液を各wellに200μ1住人し,37°C,
100
ragweed
unit/ml以上であった.喘息,またはアレルギ一性鼻炎合
併の有無が判明した88例のうち,単独群では33例(46.5
%),合併群では14例(82.4%)が700umt/ml以上であ
であった.
なお,多くの報告およびわれわれの成績において正常
人の95%以上は700unit/ml以下であり,
をlgE値高値群とした.
(2)ELFAおよびRASTによる抗mite
させ,各wellの反応液を,
の相関
・ リソ酸カリ
10.4)に移し混合して,島津―RF
ヶイ光分光光度計を用いExitation
. 510型
370nmj
445nm,にてヶイ光強度を測定した(Fig.
なお,
RAST
(3)
fum-
(vii) Penic-
成 績
分incubateする.⑥ つぎに,1M・リソ酸カリbuffer
2mlのO.IM
(ii ) house
Asperがllus
cladosporioides,
(pH匹4)を各wellに50μ1注入して,反応を停止
btポer (pH
(v)
った. 健康人32例では2例(6,3%)が700unit/ml以上
20-PBSで2分間,5回洗脳する.
⑤ つぎに基質として,
(iv)
アトピー性皮膚炎では155例中78例(50.3%)が700
0.05%Tween20-PBS
で2分間,5回洗脳し,④ alkaline
il卵m
(vi)
white,
(1)血清lgE値
200倍稀釈した抗ヒトlgEウサギ血清を各wellに200μI
注入し,37°C,
(Dermatophagoides
dust, (iii) egg
1).
RAST法にっいてはPharmacia社Phadebas
kit により測定した.
mite抗原のほか19種の抗原に対する特異IgE
Emission
横軸にRAST
700uiiit/ral以上
IgE
count (log)を,縦軸にELFA
(1og)をとって回帰式を求めると,
がえられ,相関係数は0.9042
の相関を示した(Fig.
value
Y=0.9284X-1.8306
(p<0.001)であり,有意
2)トまた,
成績との一致率は,90.2%であった(Table
(3)各種抗原によるELFA陽性率
抗体
ELFA成績とRAST
l).
849
アトピー性皮膚炎におけるELFA
ELFA value
(log)
RAST
COUnt
(1Qり
Fig. 2 Correlation between ELFA
Table l Correlation between ELFA
Cases
ELFA
RAST
(十)
(十)
(十)
(−)
0
(−)
(十)
8
(−)
(−)
and RAST
and RAST
ZL?八
Co ncidence
rat o(%)
value
(log)
2.0
36
争@一1・い・一一一・
(74/82) 90.2%
1.5
38
i ) mite抗原について
曙--・・--・・・・
●
!
1.0
また,
(65例)であり,
IgE高値群では64.1%と高く,
@一一一一一 4ee一e
患者155例における陽性率は41.9%
IgE値が高くなれ
ばなるほど陽性率が高くなっている(Fig-
3, Table
2).
∼︱︱・︱
゛゛●ミ゛
(
to mite
:
4
き
1
皮内反応陽性群では陰性群に比して陽性率が高く(陽性
1
鼻炎合併群では非合併群に比して陽性率が高くなってい
S
82.4^,非合併群36.6%).
こ
・一一
る(合併群,
IS一9e
群75.0%,陰性群22.2^),また,喘息.アレルギー性
なお,健康人32例では1例のみが陽性であった.
(ii)
mite以外の抗原に.ついて
house
dustタegg
Patients
Controls
um,
white, milk,
Alternaria, wheat,
buck
く700
Aspergillus, Cladospori-
wheat, ragweedなどで10
Fig
3
ELFA
values
ア卵- 2000-
to mite
and
4000IgE
levels
Table 2 Incidence of positiveEL FA in patients with atonic dermatitis
IgE level(Unit/ml)
positiveELFA (%)
lgEく,700
(15/77)19.5%
700≦lgE<2000
(22/37)59.5%
2000≦lgEく4000
4000≦IgE
(13/21) 61.9%
(15/20)75.0%
(15/77)19.5%
(50/78)64,1%
(65/155) 41.9%
850
穐山 富雄▽ づ \
Table 3 !ncidence of positive ELFA
Antigens
Cases
Mite
Positive ELFA
41.9
House dust
38
23.6
Egg white
60
n.7・
Yolk
57
,0
38
Aspergillus
37
10.8
Cladosporium
36
11.1
Penicillium
37
0
Altemaria
57
Candida
57
17.5 ‥−
Antigens
Mite
House dust
Ragweed
Egg white
Milk
Aspergillus
Cladosporium
Penicillium
低く,
Positive ELFA
60
5.0
Wheat
60
16.7
60
28.3
wheat
Greensoybeans
57
5.3
Bamboo shoots
Shrimp
57
3.6
57
0
Crab
55
Mackerel
57
7.0
38
28.9
56
1.8
’’ Ragweed
EL FA
and intradermal
(%)
0
test
ELFA
(-)
Skin test(−)
Coincidence
ratio(%)
5
14
76.3
12
16
65.8
2
21
67.7
2
3
25
83.3
0
11
1
22
64.7
30
2
2
3
23
83.3
31
2
2
8
19
67.7
31
0
0
8
23
74.2
ELFA
(十)
Skin test(十)
38
15
4
38
9
1
31
0
8
30
0
34
ELFA
(十)
Skin test(−)
green soybean,
dog
(feather)では陽性率が
yolk, Petiicillium, Candida,
例陰性であった(Table
between
Cases
%以上の陽性率がみられたがrice,
shoots, mackerel,
Cases
Rice
Dog (feather)
0
4 Correlation
Antigens
Buck
ヽ34.2 二八
Table
bamboo
(%)
155
Milk
in patients with atopic dermatitis
shrimp,
crabでは全
3).
ELFA(−)
Skin test(十)
られ, mite, house dustなどに対する抗原による皮内反
応,およびRAST陽性例が多くみられること1)2)ま
た,本症の皮膚病変部組織におけるlgE結合肥満細胞
の増加がみられる8)ということより,本症の発症におい
(4)ELFAと皮内反応の一致率
てもIgE-mediatedの反応が何らかの形でおこっている
miteなど8種の抗原における一致率は65∼85χであ
可能性を十分に示唆するものと考えられる.
った(Table
4).
しかし,本症の皮膚病変は周知のごとくlgEの関与
miteでは一致率ぱ76.3%でありELFA,
もに陽性が15例(39.5%)にみられた.
はELFA陰性,
skin test と
house
dust で
skin test 陽性が12例みちれ,一致率は
65.8%とやや低いがELFA,
skin test とともに陽性が
9例(23.7%)にみられた.
mite,
house
陽性,
skin test と
milk, ragweedではELFA
skin test 陰性例が多くCladosporiura,
umではELFA陰性,
遅延型の湿疹病変の特徴を有し,また,皮内反応陽性例
でもそれによる誘発反応により皮膚病変を多くの場合再
現できず'>. ≪感作療法における有効率は低い10)この
ようなことよりlgE抗体がいかなる機序によりアトピ
dust以外の抗原ではELFA,
もに陽性の症例は少なく,
するいわゆる即時型膨疹反応とは考えにくく,むしろ,
Penicill・
skin test 陽性が多くみられた.
ー性皮膚炎の病態生理に関与するものか,現在のところ
全く不明といわざるをえない.
著者らは以前よりアトピー性皮膚炎における畑Eの
役割について検討を加えてきた2)11)
考 按
今回,著者は抗mite
アトピー性皮膚炎では気管支喘息,アレルギ一性鼻炎
Linked Fluorescence Assay (ELFA)がRASTにかわる
などのアトピー性疾患と同様,血清lgE値の上昇がみ
方法として有用であることを証明し,
lgE抗体測定法として,
Enzyme-
ELF Aを用いて
851
アトピー性皮膚炎におけるELFA
mite抗原のほか19種の抗原についても特異lgE抗体を
性率がみられた.しかし,
測定することができたので,その結果について2∼3の
shoots.mackerel. dog (feather)では陽性率,は低く,
検討を加えたい.
yolk, Penicillium, Candida, shrimp, crabでは全例陰性
rice, green soybean, bamboo
特異lgE抗体の検出法として開発されたRAST12)は
であった.また,皮内反応との一致率は65∼85%であっ
I型アレルギーにおけるレアギン検出法として,ショッ
た. miteなど8種の抗原についてRASTの成績と比
ク,肝炎誘発などの危険性を有する皮内反応P-K反
.較してみるとmite,
house dust, egg white, Aspergillus,
応,あるいは誘発反応にかわる方法として,また減感
Cladosporiutnについてはほぼ同様の成績であったが,
作療法におけるlgE抗体量の変動などをみることによ
milk, ragweedではELFAがPenicilltimではRAST
りI型アレルギーを検討する手段として有用であるとい
が明らかに陽性率が高かった.これは用いた抗原の精製
うことはいうまでもない.しかし,本法はisotopeを用
など質的な違い,あるいは担体の違いによるものと考え
いる検査法であり試薬の保存がきかない,被爆の可能性
られる.また,
がある,価格が高い.必要検体量が多い,測定できる抗
ては抗原の純化の問題,組織に結合したlgE抗体と血
原に制限があるなど多くの欠点がある.そこでradioi-
清中のlgE抗体の量的あるいは質的な問題,
mraunoassayにかわる方法としてenzyme-immunoassay
の抗体の関与などが考えられるが真の原因は不明であ
がlgE値.
IgE抗体測定法としても検討されている
4)5)6)7)_今回,著者はalkaline
Enzyme-Linked
Fluorescence
を用いた
このようにmite,
Assay (ELFA)を用いて
特異lgE抗体の測定を行なったが,アトピー性皮膚炎
IgE
house dust など多くの抗原で高率
にELFAによる特異lgE抗体か陽性であるということ
は,アトピー性皮膚炎の皮膚病変部組織におけるIgE
抗体値(ELFA
value)はRASTにより測定した抗mite
IgE以外
り,今後解決されるべき課題と思われる. 卜
phosphatase
患者82名において測定した抗mite
ELFΛと皮内反応との不一致の原因とし
IgE
抗体値
(RAST
count)と非常によく相関した(r=0.9042,
P<
0.001).またELFA成績とRAST成績との一致率は一
せると非常に興味深い.すなわち,経皮的あるいは経粘
膜的に進入したmiteなどの抗原がlgE抗体産生を促
し,産生された特異lgE抗体か皮膚組織における肥満
部の症例で,用いた抽出抗原の質的な違い,あるいは
感度の違いなどによると思われるELFA陰性,
結合肥満細胞の増加がみられる8)ということと考えあわ
細胞に結合し,経皮的あるいは経粘膜的に進入してきた
RAST
抗原と反応することによりhistamineなどのchemical
陽性という不―致例がみられたが90.2%と高く,かつ
mediatorを遊離し,アトピー性皮膚炎の病態の一部を
ELFA成績と皮内反応成績との一致率は76.3%であっ
形成するものと考えられるト
た.これらのことよりELFAは特異lgE抗体測定法と
してたえうるものと思われた.また,
アレルギーのI型反応はその抗原の皮内注射により5
ELFAには前述し
―15分の間に,注射部位に紅斑,膨疹を生じてくるが,
たRASTにみられるよ5な欠点がなく,とくに,必要
ある場合にはそれにひき続いて同一部位に紅斑,硬結,
検体量が微量で,かつ抗原をpaper
癈痕を生じてくる.この後者の反応もIgE
disc にラベルする必
dependent
要がなく,精製された抗原さえあれば容易にできる点で
であり,組織学的には浮腫,リンパ球,単球,多核白血
特異lgE抗体測定法としてRASTに優るものと思われ
球,好酸球の浸潤,好塩基球の脱穎粒およびフィブリソ
る.
の沈着であり13)これはlate
ELFAによる抗mite
例中,65例)であり,
lgE抗体の陽性率は41.9%
(155
IgE高値群,あるいは喘息,アレ
この細胞浸潤はdelayed
phase reaction とよばれ,
hypetsensitivity
r eaction のそ
れに比較して軽度である.また,このlate
phase reaction
ルギー性鼻炎合併群では明らかに高い陽性率を示した
は好塩基球が主な細胞成分でありcutaneous
が, IgE低値群,あるいは喘息,アレルギ一性鼻炎を合
hypersensitivityの表現とも考えられる13)矢村14)はIgE
併しない群でも,それぞれ19.5%,36.6%の陽性率を示
値が高く,
している.これらの成績はすでに報告しているRAST
による患者好塩基球からのhistamine遊離率が71%であ
による結果とほぼ同様であった.
るアトピー性皮膚炎患者にmite抗原を皮内注射し,注
mite抗原以外の抗
mite抗原による皮内反応陽性で,
basophil
mite抗原
原についてみるとmiteがその主要抗原と考えられる
射1時間後に皮膚病変部に強い痘痕を生じ,やがて皮膚
house dust"
病変部から紅斑とともに血清様の浸出物が出現,同時に
Altemaria,
egg white, milk, Aspergillus, Cladosporium,
wheat,
buck
wheat,
ragweedで10%以上の陽
眼球結膜の発赤,流涙をおこしてきた症例を報告して
852
穐山 富球
アトピー性皮膚炎におけるlgE抗体の関与を強く示唆
histamineがhistamine-2
している. また,矢村14)はhistamine liberator である
T-cellに作用してdelayed
compound 48/80をモルモット皮内に反復注射することに
すると考えられており21)アトピー性皮膚炎においても
より,アトピー性皮膚炎類似の病変をおこしてくること
高lgE値,あるいはhistaraine遊離と,
を報告し,アトピー性皮膚炎はアレルギー機序,あるい
た白血球機能不全との関係が解明されっつある23)26)
は生理的,物理的刺激が皮膚肥満細胞,あるいはlate
以上のことより,アトピー性皮膚炎にみられる皮膚症
phase reaction として血中から皮膚局所病変に動員され
状,および細胞性免疫能,あるいは好中球機能の低下は
た好塩基球からのmediatorsの遊離をおこすことによっ
allergenが皮膚肥満細胞に結合した特異lgE抗体と反
ておこってくると考えている.
応して, histamineなどのchemical
一方,本症では,ツベルクリン反応,
ることによりおこる一連の免疫反応の結果,生じたもの
DNCB反応など
receptor を介してregulatory
type hypersen sitivity'を抑制
T-cellを含め
mediator を遊離す
の細胞性免疫能の低下がみられ,モの低下は皮膚炎が
と考えることも決して根拠のない空論とはいえないであ
重症な例,高lgE値群で著明であり,皮膚炎の軽決と
ろう.
ともに回復してくるといわれ15)16)末梢血リソパ球の
アトピー性皮膚炎における特異lgE抗体の意義か明
T-cellの減少17)18)19)種々のmitogenや抗原刺激に対
らかとなった現在,数々の利点をもつELFAが今後の
,するリソパ球幼若化率の低下がみられ19)20)その減少,
アトピー性皮膚炎の病態生理の解明に大きく役立つもの
低下は高lgE値群でより著明である19)と報告されてい
と考えられる.今回の著者の研究がその礎石となれば幸
る,また,本症では,ウイルス・細菌などの感染を受け
いである.
やすく,好中球の貪食能は皮疹の重篤な例ほど低下して
本論文の要旨は第30回日本アレルギー学会において発
いるJl)!2)
表した.
白血球機能とlgEあるいはhistamineとの関係につい
稿を終えるにあたり御指導,御校閲を賜りました吉田
ては,いくつかの報告がなされている.すなわち,
rat
におけるlgE産生がT-cellによりregulateされている
ことが報告され23)またmouseにおけるdelayed
彦太郎教授,ならびに御指導あるいは御協力いただいた
高橋勇博士,阿南貞雄博士,松山俊文先生,吉村正子先
type
生に深く感謝申しあげます.
hypersensitivityにおいては肥満細胞から遊離された
文
献j
1) Ohman, S. & Johansson, S.G.O.: Allergen specificIgE in atopic dermatitis, Ada Dぴ-
Clin.
matouenび・,54:
283-290, 1974.
2)穐山富雄:アトピー性皮膚炎におけるRASTの
S.,
検討.アレルギー,26 : 521-526, 1977.
3)穐山富雄,村山史男,山浦英明,阿南貞総,高
橋 舅,吉田彦太郎,笹岡和夫:慢性募麻疹に
ciasis
in Guatemala,
IgE
antibodies
おけるRASTの検討.西日皮膚,40
J. Trap. Med.
Hyg.(投稿中).
: 678-681,
7)
Aル,gタ,10: 203-209,
Anan,
S., Akiyamぽ,
Yoshida,
Zea,
H.,
1980.
T., Ushりima,
Sakamoto,
G.F.:Immunological
volvulus
antigen
N., Nonaka,
M。,
Aoki,
II, Detection
specific against
using ELISA
of IgG
清lgE測定法の検討.臨床免疫,10
: 1075 1080, 1978.
5) AH, M・, Rarr】anarayanan, M・, ConncU, J.T.,
Nalebuff. D・J・,Fayemi, A.O. and Mesa-
9)増田 勉:アトピ`一性皮膚炎,アトピー性アレ
Tejada, R.: An immunoperoxidase assay for
serum ragweed-specificIgE, Ann. Aル尽丿,42:
231-235, 1979.
R.H.: Specific
6) AH, M・, Nalebuff, D.J・, Ramanarayanan,
R。
Fayami, A.O. & Mesa-Tりada, R.: Assay of
穐山富雄:乳児アトピー性皮膚炎における血清
IgE antibodies against June and Timothy
grasses by an immunoperoxidase
technique,
12)
結合細胞の検索.アレルギー-,
1974.
and
technique, j哨.
8)高橋 勇,阿南貞雄t皮膚組織におけるIgE
23 : 348-353,
ルギーの意義.日本皮膚科全書,Ⅲ,
原出版,東京,
1967, 373-381.
Di Prisco de Fuenmayor,
dermatitis,
&
Onchocerca
1978.
4)橋本正勝,熊坂一成,土屋達行,河野均也,土
屋俊夫:Enzyme-iramunoassay (EIA)による血
10)
Y.
studies on onchocer-
M.C.
1, n.金
&
Champion,
hyposensitization
Brit.j. 励田・,101:697-700,
in
atopic
1979.
11)高橋 勇,山浦英明,船元富美子,笹岡和夫,
lgE濃度.西日皮膚,39
Wide,
Diagnosis
L., Bennich,
: 194-198,
H.
&
Johansson,
1977.
S.G.O.:
of allergy by in-vitro test for allergen
853
アトピー性皮膚炎におけるELFA
antibodies,£四cet,2: 1105-1107,
13) DeShazo,
R.D.,
Levinson,
& Davis, R.W.:The
Evidence
for
1967.
late phase
activation
of
system in an IgE-dependent
J.Imrnunoloぴ,122:
with
A.I., Dvorak,
H.F.
skin reaction;
the
coagulation
reaction in man,
692-698, 1979.
atopic dermatitis, Clin. exp. Immu・loL,
118一126,
20)
Lobitz,
W.C,
Honeyman,
21)
city of the neutrophil
Forsbeck,
M.,
Hovmark,
A.
Patch testing, tuberculin
↑ionw ith
dinitrochlorbenzen
niliniりfpatients with
& Skog,
testing and
E.:
sensitiza-
nitrosodimethyla-
atopic
dermatitis, jdα
j)m
16) Uehara,
reactivity,A
17) Buckley,
dermatitis and
「h. Derm。113:
R.H.: The
merits of human
Braathen,
B and
Rajka,
L.R.,
1226-1228,
functions and
1977.
measure-
T-lymphocytes,
血むesl.
Derm., 67: 381-390,
18)
tuberculin
j・
1976.
T.B.
&
G.: Lymphocytes subpopulations,
and
G.:Decreased
complement
atopic dermatitis, Ada
日皮会誌,90
Okumura,
: 1121-1128,
K.
&
homocytotropic
J.Immunology,
24)
Askenase,
106:
Zachariae,
responsiveness
K., EUegaard,
H.: PPD
of lymphocytes
T.: Regulation
formation
and
1019一1025,
P.W.: Mechanisms
J., Thulin,
and
mitogen
介om patients
-
of
in the rat.
splenectomy,
1971.
of hypersensitiarrival and
function in tissue hypersensitivity reactions, /.
25) .Hanifin, J.M.
663-670, 1977.
Thestrup-Pedersen,
Dぴ謂どitovener.,
53:
III. Effect of thymectomy
Dぴm.,98: 521-528,
H。and
capapatients
1980.
Tada,
antibody
cepts of atopic
19)
in
22)武 誠:アトピー性皮膚炎の免疫学的検討.
torsin patients with atopic dermatitis, Brit. J.
1978.
in
279-282, 1973.
Alletgyびin. Immunol.,
伍c-
Winkler,
phagocytic
leucocytes
vity;Cellular interaction, Basophil
FφΓΓe,φ.,
Natvig,
serum immunoglobulins
Michaelsson,
with
23)
M.:Atopic
&
immunity
two adults with atopic dermatitis, Brit.J. Derm。
86: 317-328, 1972.
1165-1171,
15)
J.F.
N.χV,: Suppressedcell mediated
14)矢村卓三:アトピー性皮膚炎.日皮会誌,90:
1980.
27:
1977.
26)
Ring,
&
64:79-89,
Lobitz,
dermatitis,
J.: Atopic
general vasoactive
1979.
W.C.: Newer
dermatitis;
mediator
Arch. Allergy Aか/.か四回・,59:
con。
Arch. Dびm.,
A
113:
disease
dysregulation,
233-239,
of
瓦1.
1979.