テクニカルホワイトペーパー: Cloud Backup - Oracle

ク ラ ウ ド 環 境 で の Oracle
Database のバックアップ
Oracle ホワイト・ペーパー
2008 年 9 月
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
はじめに .............................................................................................................. 3
クラウド・バックアップの概要....................................................................... 3
Oracle Secure Backup Cloud Module の提供開始 ........................................ 4
搭載された暗号化機能による完全なデータ・セキュリティと
プライバシの確保 ................................................................................... 5
ネットワークを最大限に利用したインテリジェント・バックアップ
................................................................................................................... 5
データベース・バージョン・サポート ............................................... 5
クラウド・バックアップの利点 ................................................................. 6
Amazon Simple Storage Service(Amazon S3) .......................................... 6
クラウド・バックアップの開始....................................................................... 7
Amazon S3 サービスに申し込む ................................................................. 7
Oracle.com または Oracle Technology Network(OTN)アカウントに
登録する......................................................................................................... 7
Oracle Secure Backup Cloud Module をインストールする ........................ 7
Oracle Recovery Manager(Oracle RMAN)を設定する ........................... 8
クラウド・バックアップの監視 ................................................................. 9
クラウド・バックアップのベスト・プラクティス....................................... 9
クラウド環境でのデータ保護..................................................................... 9
クラウド・バックアップのパフォーマンス最適化 ................................. 9
結論 .................................................................................................................... 11
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
はじめに
クラウド・コンピューティングは業界の新しい流行語となりました。クラウドと
は何なのか、また、クラウド・コンピューティングという言葉は実際に何を意味
するのかという定義はさまざまありますが、簡単にいえば、ほぼ無限に存在する
インターネット上(クラウド)のコンピューティング・リソースをユーザーが活
用できるようにするのがクラウド・コンピューティングです。従来の IT とは異な
り、クラウド・ユーザーは基盤インフラストラクチャの把握や管理がほとんどで
きず、クラウド・ベンダーの提供する API を使用してクラウドと通信しなければ
なりませんが、クラウドには柔軟性とユーティリティ・スタイルの価格設定とい
う最大の利点があります。ユーザーはリソースをセルフサービスで動的に割り当
て、電気や水道のような公共料金と同じように、使用した分だけ料金を支払うこ
とができます。
クラウドはおもに Web 新興企業や開発者から熱い支持を得ていますが、エンター
プライズ・ソフトウェアの不足、データ・セキュリティ、プライバシ問題などのさ
まざまな理由のため、企業でクラウドを完全に活用するのは困難です。オラクル
では、クラウドを企業に適用するための製品やサービスの提供を開始することで、
この課題に取り組んでいます。オラクルが提供する新しいクラウド対応製品を利
用して、クラウドを企業のオンプレミス・データセンターの延長として扱うこと
により、クラウドを活用して一時的で想定外の需要を満たすことができます。
オラクルが提供するクラウド対応製品の特長は、クラウド環境で Oracle Database
をバックアップできることです。また、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)
などのストレージ・クラウドをオフサイトの次世代バックアップ格納先として使
用できます。テープを使用した従来のオフサイト・ストレージと比較して、クラ
ウド・バックアップは信頼性とアクセス性が高く、ほとんどの場合すばやくリス
トアできます。
クラウド・バックアップの概要
企業ではオフサイト・バックアップにテープを使用してきました。テープはオフ
サイトの保管場所へ移され、事前に決められた期間保管されたあとに戻されて再
利用されます。
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
Oracle Secure Backup Cloud Module の提供開始
現在ではディスクが経済的になり、ストレージ・クラウド・ベンダーが魅力的な
価格でサービスを提供していることから、オフサイト・バックアップのアクセス
性と信頼性を高める新たな機会が訪れています。これを受けて、オラクルではク
ラウド上に Oracle Database をバックアップする機能の提供を開始します。新たに
提供を開始した Oracle Secure Backup Cloud Module を使用することで、オフサイ
ト・ストレージを使用している場合はローカル・ディスク・バックアップをスト
レージ・クラウドへ直接送信できるようになりました。このクラウド・バックアッ
プ・モジュールは Oracle Secure Backup 製品ファミリーの一部です。Oracle Secure
Backup は、オラクルの次世代テープ・バックアップ管理ソリューションです。
Oracle Secure Backup ではバックアップ先をテープにもクラウドにも指定できるの
で、柔軟性が高くなっています。
Oracle Secure Backup Cloud Module は、クラウドへの直接ストリーム・バックアッ
プにも使用できます。これは、Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)など
のサービスを利用して、データベースもクラウド上で運用している時にはとくに
便利です。
Oracle Secure Backup Cloud Module は Oracle Recovery Manager(Oracle RMAN)SBT
インタフェースを使用して実装されます。SBT インタフェースを使用することで、
外部バックアップ・ライブラリを Oracle RMAN とシームレスに統合できます。そ
のため、Oracle Secure Backup Cloud Module を使用すると、Oracle Database のすべ
てのサポート対象バージョン(Oracle9i Database Release 2 以上)をバックアップ
できます。データベース管理者は、クラウド・バックアップを実行するのに、既
存のバックアップ・ツール(Oracle Enterprise Manager、スクリプトなど)を引き
続き使用できます。
現在のところ、Oracle Secure Backup Cloud Module は Linux と Windows(32 ビット
のみ)の各プラットフォームに対応しています。
図 1:クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
搭載された暗号化機能による完全なデータ・セキュリティとプライバシの確保
Oracle Secure Backup では、バックアップを暗号化することで、データ・セキュリ
ティとプライバシを確保できます。ストレージ・クラウドなどアクセスできる環
境が公開されている場合は、データ・セキュリティとプライバシがとくに重要に
なります。ほとんどのストレージ・クラウド・ベンダーは、許可されたユーザー
だけがデータにアクセスできる強力なセキュリティを提供していますが、Oracle
Secure Backup ではデータソースの段階で暗号化されるので、データの移動中もク
ラウド環境での保管中も、バックアップ・データは暗号化された状態に保たれて
います。これにより、盗難や不正アクセスのリスクをさらに軽減できます。
ネットワークを最大限に利用したインテリジェント・バックアップ
ネットワーク帯域幅の消費とバックアップを完了するのにかかる時間もパブリッ
ク・インターネット上のクラウドにデータベースをバックアップする際に大きな
懸念となります。Oracle Secure Backup Cloud Module には、バックアップ・データ
のボリュームを合理的に最小化し、圧縮する機能が豊富に搭載されています。
Oracle Secure Backup は Oracle Database エンジンと緊密に統合されているため、
データベース内の未使用領域(ブロック)を特定して、そのバックアップをスキッ
プできます。一般的にデータベース管理者は、実際に使用するよりも多くの領域
を割り当て、その後の増量のための領域を確保しておきますが、未使用領域のバッ
クアップをスキップすることにより、バックアップ・サイズと時間を大幅に減ら
すことができます。さらに、Oracle Database 11g からは、Oracle Secure Backup で"
アクティブな" UNDO データ(バックアップ時に実行中のトランザクションに関
する UNDO データ)を特定することにより、すでにコミットされている UNDO
データをバックアップ対象から除外することもできます。データベースの UNDO
サイズは一般的に 10-100GB あるので、この最適化によってバックアップ・パ
フォーマンスを大幅に改善することもできます。
未使用領域と UNDO データ・バックアップの最適化は Oracle Secure Backup にし
かない機能であり、ほかのバックアップ製品では提供されないことは特筆すべき
重要な点です。
Oracle Secure Backup Cloud Module では、Oracle RMAN の豊富な圧縮機能も活用で
きます。これには Oracle Database 11g の高速圧縮バックアップ機能が含まれてい
ます。通常、Oracle Advanced Compression オプションが必要ですが、Oracle Secure
Backup Cloud Module ユーザーは追加コストなしでこの機能を使用できます。概し
てバックアップ・サイズは圧縮によって 50%縮小されます。バックアップ・サイ
ズが縮小されると、低速ネットワーク(パブリック・インターネットなど)でバッ
クアップを送信する時のバックアップ・パフォーマンスが向上するという直接的
な効果があります。
データベース・バージョン・サポート
Oracle Secure Backup Cloud Program は、Oracle Database のすべてのサポート対象
バージョン(Oracle9i Database Release 2 以上)をバックアップするのに使用でき
ます。
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
クラウド・バックアップの利点
従来のテープを使用したオフサイト・バックアップと比較して、オラクルのクラ
ウド対応バックアップ機能には次の利点があります。
•
いつでもアクセスし、すばやくリストアできる:ローカル・ディスクに
保存されたバックアップとほぼ同じように、クラウドに保存されたバッ
クアップにも常にアクセスできます。そのため、リストアを実行する前
に誰かに連絡する必要はありません。テープの送付やロードも必要あり
ません。ローカル・ディスクに保存されたオフサイト・バックアップと
同じように、管理者は標準ツール(Enterprise Manager、スクリプトなど)
を使用してリストア作業を開始できます。これにより、リストア作業が
速くなり、多くの場合停止時間を数日から数時間ないし数十分に短縮で
きます。
•
信頼性が高い:ストレージ・クラウドにはディスクが使用されるため、
テープよりも信頼できます。さらに、一般的にクラウド・ベンダーは可
用性と拡張性を確保するために、データの冗長コピーを複数保管してい
ます。
•
先行投資を必要とせず、無限に拡張できる:クラウドは、先行投資を必
要とせずに、ほぼ無限の容量を提供します。そのため、必要なバックアッ
プ・データを保存するための十分なテープやローカル・ストレージの準
備にユーザーが頭を悩ませる必要はありません。クラウドはシームレス
に拡張できます。ユーザーはクラウドを使用した時に、使用した分だけ
料金を支払います。
•
テープ・バックアップとオフサイト・ストレージのコストを削減できる:
クラウド・バックアップを使用することによって、テープの必要性が減
る、あるいはなくなるため、テープ・バックアップ・ソフトウェアのラ
イセンスやサポート、オフサイト・テープ・ストレージにかかるコスト
の大幅な削減につながります。
•
テストや開発の環境をすばやく準備できる:クラウド・バックアップに
はインターネットを介してどこからでもアクセスできることから、カス
タム・テスト、開発、または品質管理のための環境を構築するために、
データベースのクローンをすばやく作成できるようになっています。た
とえば、オラクルが提供する Amazon Machine Images(AMI)に含まれて
いる単純なスクリプトを実行することにより、Amazon S3 に保存されて
いるクラウド・バックアップのクローンを Amazon EC2 を運用しているマ
シン上に作成できます。AMI は仮想マシン・イメージであり、AMI を使
用することにより、インストールと設定が済んでいる Oracle データベー
ス環境を Amazon EC2 にすばやく移入できます。
Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)
Amazon Simple Storage Service(http://aws.amazon.com/s3)は、Amazon Web Services
(AWS)が提供するサービスです。Amazon S3 は、単純なWebサービス・インタ
フェースを提供します。このインタフェースを使用すると、いつでも、どこから
でも、どんな量のデータでも、Webに保存したり、Webから取得したりできます。
ユーザーは、Amazonが自社Webサイトのグローバル・ネットワーク運用に使用し
ているのと同じデータ・ストレージ・インフラストラクチャを利用できます。こ
のインフラストラクチャは、拡張性と信頼性が高く、高速で低コストです。
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
Amazon S3 は、クラウド環境でのデータベース・バックアップを実現するために
オラクルのパートナーとなった最初のクラウド・ベンダーです。今後、この機能
はそのほかのクラウド・プラットフォームやベンダーへ拡大される可能性があり
ます。
クラウド・バックアップの開始
Amazon S3 サービスに申し込む
Oracle Secure Backup Cloud Moduleの使用を開始するためには、まずAmazon S3 に
申し込みます。この申し込みは、Amazon S3 のWebサイト(http://aws.amazon.com/s3)
でおこないます。ユーザー登録が完了すると、Access Key IDとSecret Access Keyと
呼ばれる 1 組のアクセスIDが発行されます。これらのアクセスIDを取得するには、
Amazon S3 のWebサイトにアクセスし、ページの右上にある"Your Web Services
Account"ボタン上にカーソルを移動させて、「AWS Access Identifiers」リンクをク
リックします。
Oracle.com または Oracle Technology Network(OTN)アカウントに
登録する
Oracle Secure Backup Cloud Moduleをインストールするには、Oracle.comまたはOTN
アカウントが必要です。新規アカウントを作成するには、OTN Webサイト
(http://otn.oracle.com)にアクセスし、ページの上部にある「Sign In/Register for
Account」リンクをクリックします。
Oracle Secure Backup Cloud Module をインストールする
次に、Oracle Secure Backup Cloud Module のインストール・ツールを OTN からダ
ウンロードして実行し、クラウド・バックアップのインストールと設定をおこな
います。このインストール・ツールはオラクルが提供する AMI パッケージに含ま
れているので、Amazon EC2 へのオラクル・ソフトウェアの展開が容易になってい
ます。そのため、バックアップ対象データベースを Amazon EC2 で実行している
場合、インストール・ツールをダウンロードする必要はありません。このツール
はディレクトリ/home/oracle/scripts/osbws にあります。
次の手順でインストール・ツールを呼び出すことができます。
$java -jar osbws_install.jar -AWSID <AWS ID> -AWSKey <AWS Secret
Key>
-otnUser <OTN User ID> -otnPass <OTN Password> -walletDir <Wallet
Directory> -configFile <Cloud Backup Configuration File Name>
-libDir
<Location to store Cloud Backup Module/Library> -proxyHost
wwwproxy.
smallcompany.com
Oracle Secure Backup Database Web-Service Install Tool
OTN userid is valid.
AWS credentials are valid.
Creating new registration for this S3 user.
Created new log bucket.
Registration ID: 0f0a8aac-dad0-6254-7d70-be4ac4f112c4
S3 Logging Bucket: oracle-log-jane-doe-1
Create credential oracle.security.client.connect_string1
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
OSB web-services wallet created in directory
/orclhome/dbs/osbws_wallet.
OSB web-services initialization file /orclhome/dbs/osbwst1.ora
created.
Downloading OSB Web Services Software Library.
Downloaded 13165919 bytes in 204 seconds.
Transfer rate was 64538 bytes/second.
Download complete.
Extracted file /orclhome/lib/libosbws11.so
例 1:クラウド・バックアップ・インストール・ツールの実行
上記の出力例にあるように、ソフトウェアのダウンロード、ユーザーの AWS ID
を含むウォレットの作成、クラウド・バックアップ構成ファイルの作成など、ク
ラウド・バックアップ・モジュールのインストールと設定に必要なすべてのステッ
プはインストール・ツールによって自動的に実行されます。
インストール・ツールの実行方法や、すべての引数内容の詳細については、イン
ストール・ツールの Readme ドキュメントに記載されています。
Oracle Recovery Manager(Oracle RMAN)を設定する
この手順では、バックアップを実行するたびにクラウド・バックアップ・モジュー
ルの設定情報を指定する必要がないように、それを RMAN リポジトリに保存しま
す。これはオプションですが、強く推奨されている手順です。
RMAN> configure channel device type sbt parms
'SBT_LIBRARY=/orclhome/lib/libosbws11.so
ENV=(OSB_WS_PFILE=/orclhome/dbs/osbwst1.ora)';
using target database control file instead of recovery catalog
new RMAN configuration parameters:
CONFIGURE CHANNEL DEVICE TYPE 'SBT_TAPE' PARMS
'SBT_LIBRARY=/orclhome/lib/libosbws11.so
ENV=(OSB_WS_PFILE=/orclhome/dbs/osbwst1.ora)';
new RMAN configuration parameters are successfully stored
例 2:Oracle RMAN の設定
上述の手順により、クラウド・バックアップのためのシステム設定がすべて完了
します。これで、通常使用している RMAN コマンドを使用して、クラウド・バッ
クアップを実行できます。
すべてのクラウド・バックアップ処理は、ローカル・ディスクやテープを使用し
たバックアップと同じ方法で、Oracle RMAN によってカタログ化されるため、リ
ストアやリカバリを完全に透過的かつシームレスに実行できます。つまり、リス
トアまたはリカバリ処理を開始すると、クラウドからの必要なデータが Oracle
RMAN と Oracle Secure Backup Cloud Module によって自動的にリストアされるた
め、ユーザーによる操作はとくに必要ありません。
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
クラウド・バックアップの監視
オラクルでは、クラウド・バックアップの基本的な監視とレポートを提供するた
めの無償 Web ポータル、Oracle Cloud Control を公開しています。このポータルで
は、バックアップの保存に使用されているクラウド・ストレージの総計、バック
アップ時に測定されたネットワーク・パフォーマンス、リストア処理などについ
ての詳細を提供しています。Oracle Cloud Control には、インストール・ツールの
実行時に提供された OTN ユーザー名とパスワードを使用して、OTN からアクセ
スできます。
図 2:Oracle のクラウド・バックアップ・レポート作成ポータル
クラウド・バックアップのベスト・プラクティス
クラウド環境でのデータ保護
オラクルでは、クラウド・バックアップの暗号化を強くお奨めしています。先に
述べたとおり、バックアップを暗号化することによって、データをセキュアに保
ち、不正アクセスから保護することができます。バックアップの暗号化設定に使
用されるRMANコマンドの詳細については、『Oracle Backup and Recovery Guide』
(http://download.oracle.com/docs/cd/B28359_01/backup.111/b28270/rcmconf a.htm#
BRADV89467)をご覧ください。Enterprise Managerでバックアップをスケジュール
する際に、暗号化を有効にすることもできます。
クラウド・バックアップのパフォーマンス最適化
クラウド・バックアップはパブリック・インターネット上で実行されることから、
そのパフォーマンスはインターネットのネットワーク・スループットによって大
きく左右されます(一般的には 1 接続あたり 1MB/秒未満)。さらに、個々のユー
ザーによる過剰なリソース消費を防ぐために、クラウド・ベンダーがセッション
を制限することもあります。オラクルが実施した内部テストによると、Amazon S3
では個々のセッションの読取りまたは書込みスループットを 2-3MB/秒前後まで
としていますが、並列処理と圧縮を適切に組み合わせることで、40-50MB/秒のバッ
クアップ速度を達成できました。次の表にテストの詳細と測定結果をまとめまし
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
た。
テスト環境
オラクル本社の
未圧縮のバック
圧縮後のバッ
データベース
アップ速度
クアップ速度
完全バック
アップ時間
(ネットワーク・
アップ時間
(10%デルタ)
スループット)
(250GB)
10Mbps
40Mbps
(64 RMAN
(64 RMAN
(8x2GHz CPU、 チャネル)
チャネル)
データベース
増分バック
2-6 時間
30 分-1 時間
2 時間
<20 分
16GB RAM)
Amazon クラウ
ド内のデータ
ベース
CPU によって
35Mbps
(特大 Amazon
(16 RMAN
EC2 インスタ
チャネル)
制限される
50Mbps 以上
(32 RMAN
チャネル)
ンス)
表 1:クラウド・バックアップのパフォーマンス
上記の結果から、次の結論を導くことができます。
•
Amazon EC2 で実行しているデータベースのクラウド・バックアップより
も、オンプレミス・データベースのクラウド・バックアップのほうが遅
くなります。これは、パブリック・インターネットのネットワーク帯域
幅による制約があるからです。
•
圧縮は、ネットワーク帯域幅の制約を克服するのに非常に有効なツール
です。オラクル本社のデータベースの場合、圧縮を利用したことにより、
バックアップ速度が 4 倍速くなりました。
•
大量の並列同時ストリーム(RMAN チャネル)も、とくにオンプレミス・
データベースのクラウド・バックアップの速度を速めるのに役立ちます。
表 1 にあるように、オラクル本社のデータベースのピーク・パフォーマ
ンスは 64 チャネルで達成されました。
これらのテスト結果に基づき、オラクルではクラウド・バックアップのパフォー
マンスを最適化するために、次のことを推奨しています。
•
複数の RMAN チャネルを使用してください。Oracle Database 11g よりも
前のバージョンでは、各データファイルのバックアップに使用できる
RMAN チャネルは 1 つに限られています。そのため、並列処理はデータ
ベースのデータファイル数までに限定されてしまいます。しかし、Oracle
Database 11g にはデータファイル内の並列処理機能があるため、1 ファイ
ルのバックアップの並列処理に複数のチャネルを使用できます。
•
バックアップを圧縮し、新しい Oracle Database 11g の高速圧縮バックアッ
プ機能を使用してください。Oracle Database 11g よりも前のバックアップ
圧縮と比べて、Oracle Database 11g の高速バックアップ圧縮の速度と効率
(CPU オーバーヘッド)は大幅に向上しています。
•
データベースの完全バックアップは週に 1 回とし、平日に増分バックアッ
プを実行することを検討してください。これにより、バックアップが速
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
くなり、ネットワーク帯域幅を大幅に節約できます。Oracle RMAN のブ
ロック・チェンジ・トラッキング機能を使用して、平日の増分バックアッ
プのパフォーマンスを最適化してください。
結論
クラウド・コンピューティング分野が素晴らしく進歩することによって、企業に
は新たな機会が訪れています。オラクルは、クラウド環境でデータベースをセキュ
アかつ効率的にバックアップできる機能を提供することで、クラウドを企業に役
立てる取組みを先導しています。クラウド環境でのバックアップは、信頼性が高
く、いつでもアクセス可能で、ほとんどの場合にすばやくリストアできる、次世
代のオフサイト・バックアップ・ストレージ・ソリューションを企業に提供しま
す。クラウド・バックアップには常時アクセスできることから、テープを使用し
たオフサイト・ストレージではできなかった新たな可能性が開かれています。容
量が無限であり、価格設定が消費ベースで非常に魅力的なクラウドを活用するこ
とで、企業は先行投資を回避し、即応性、効率、競争力を高めることができます。
オラクルがその道を開きます。
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
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Oracle Corporation 発行「Oracle Database Backup in the Cloud」の翻訳版です。
クラウド環境での Oracle Database のバックアップ
2008 年 9 月
著者:Sushil Kumar
Oracle Corporation
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