Oracle9i Real Application Clusters を核とした 交通管制システムの構築事例 日本信号株式会社 モータリゼーションの進行とともに過密化し、複雑化する交通 の流れを、安全かつ効率的にコントロールして、都市の交通機 能を確保する ―― それが、交通管制センターの役割である。 中でも、首都圏は交通量も多く、そのスムーズな管制への期待 も大きい。日本信号株式会社は、そのような交通管制システム のリプレース案件を推進。大量の交通状況データを、高い信頼 性と安定性の下にハンドリングするこのシステムを、Oracle9i Real Application Clusters( RAC )を核に再構築した。 Oracle9i Real Application Clusters を核とした 交通管制システムの構築事例 日本信号株式会社 安全でスムーズな交通の流れを築くために 自由にさまざまな分析を図ることができる柔軟な環境を、保証す 交通管制センターの使命は、交通の安全と円滑化を支え、良好な る必要があります。そのためには、 リアルタイムな交通量や速度 交通環境を確保することだ。そのために、 リアルタイムな交通量 データなど、各路線や交差点ごとの多岐にわたる生データを、長 やクルマの流れなどの情報を収集し、交通情報板や放送などで提 期間にわたって保つ仕組みを、築かなければなりません。また、今 供。さらに、そのデータを基に信号機の点灯コントロールを行い、 後も加速度的に増加する交通量にシンクロした拡張性が図れるこ 円滑な交通を実現しているのである。 とも、必須条件となってきます。さらにコストや運用性を考慮しま 昭和40年代初頭から全国で展開されてきた交通管制は、現在す すと、当然そのプラットフォームには、IAサーバを採用するべきで でに第7次の計画を迎えている。その中で、各県単位でそれぞれ ある、という結論に達しました。また、テラバイト・オーダの大量 システム整備が進められてきた。時間帯やシーズン、天候などに データをハンドリングする必要があり、 しかも社会要請に応えな よって大きな変動を生じる交通状況は、まさに「生き物」である。 がら、非常に短期間で構築を進めなければなりません。これらの したがって、信号機に設置された車両感知器がキャッチするリア 要件を満たすには、データベースを新たに作り込むよりは、汎用 ルタイムな車の流れを収集し、的確な指示を下すことによってス 性の高いOracle Databaseを上手く活用することが得策です。 ムーズな流れを作り出す必要があるのだ。 そこで、Oracleソリューションの構築や運用に実績のある富士ソ さらにそのデータを集計し、統計学的な解析を行うことによって、 フト ABC を、パートナーに選んだのです」 最適な交通施策の策定を支援するデータウェアハウス的な活用 刻々と変化する大量の交通データを高頻度で更新し蓄積しなが も、益々重要になってきた。すなわち交通管制は、交通の流れを ら、安定的に活用するためには、システム的な負荷分散を図る必 制御する「定点」的な位置づけからさらに高度化を進め、現在で 要もある。そこで国内外の事例を調査・検討した結果、クラスタ は「交通の流れの最適化を生み出すための戦略基盤」へと、その ウェアとして大きな可用性を発揮する Oracle9i RAC の採用が 役割を進化させているのである。 決定された。 旧来のシステムにおいても、早い時期から交通情報の収集による 「社会基盤を支える公共システムとしての償却期間の長さや、交 各種の管理とともに、さまざまな解析によって、今後の交通予測 通の安全を支える堅牢性、 コストパフォーマンスなどを総合的に や施策立案に関わる意思決定支援を行う戦略的なシステムが構 考慮して、当初から OS には Linux を想定しました。また、戦略的 築・活用されてきた。 なデータの蓄積∼活用や管制業務に求められるレスポンス速度 「そのためには、主要幹線道路上に設置された信号機と車両感知 の実現などから、サーバやストレージなどハードウェアに求められ 器から送られるデータを、24 時間×365 日休みなく収集する必 る容量を割り出しました。その結果、ストレージは2テラバイトを 要があります。しかし旧来のシステムは、処理パワーやキャパシ レイヤー構成にした合計 4 テラバイトを用意。さらに富士ソフト ティの面でそろそろ限界が近づいていたことも事実です。そこで ABCのアドバイスもあり、Oracle9i RACを構成するサーバは3 『コストと構築期間を圧縮しながら、より高いパフォーマンスを発 ノード構成にして、負荷分散と信頼性をさらに高めることにしたの 揮し、将来にわたる拡張性にも優れたシステムへのリプレースを です」 (久保田氏) 図りたい』というのが、今回の最大要件だったのです」 (岩崎氏) また、DB サーバの選定に関しては、HP が Oracle9i RAC におけ るベンチマークを公表している唯一のベンダであること、さらに 厳しい要件に応える Oracle との高い親和性を実現していることなどが評価され、HP システムのあり方を追求 ProLiant DL580を選定。またストレージには、HP StorageWorks 以上の要件に対して日本信号株式会社(以下:日本信号)が考慮し MSA1000 が選ばれた。 たポイントを、高橋氏はこう語る。 以上のように、交通管制システムの「あるべき姿」を、高いコスト 「益々戦略的な役割を増してきた交通管制システムは、いつでも パフォーマンスの下で実現する提案と、信号機メーカーとして交 日本信号株式会社 久喜事業所 交通情報システム技術部 課長 高橋 圭治 氏 日本信号株式会社 久喜事業所 交通情報システム技術部 係長 岩崎 茂久 氏 日本信号株式会社 久喜事業所 交通情報システム技術部 係長 久保田 聡 氏 富士ソフトABC株式会社 オラクル室 室長 福田 啓 氏 通管制業務や周辺システムを熟知し、多くの実績を築いてきた姿 考えたのです」 勢などが高い評価を基盤に、日本信号のプランが実装に移された 実は Linux+Oracle9i RAC+OCFS という組み合わせは、日本 のである。 では先例がなく、今回が初の試みだった。そこで、Oracleのエン ジニアにも参加を仰ぎ、逐次チューニングを図るといった作業が 日本初の Linux + Oracle9i RAC +OCFS 構成とともに 重ねられた。そんな努力が功を奏し、最終的には求めるパフォー 高度な耐障害設計を追求 マンスを実現することができたのである。 また、実際の工期は約3ヶ月という厳しいものだったが、その経緯 また、実際の構築プロセスは、先ず HP ProLiant DL580×1台の に関して、富士ソフトABCの福田氏は以下のように語っている。 シングル構成を築き、次いで同2台によるRACを構築。さらに最 「今回の案件は、 データ量や求められるパフォーマンス、工期など 初の 1 台をここに組み込むことで、3ノードの RAC 構成を完成さ の面でも、非常に難易度の高いものでした。そこで、導入に先立っ せた。ここでも、 ノードを逐次的に増やし、必要に応じて処理能力 て日本HPのOracleソリューション・センターで、さまざまな条件 をフレキシブルに拡大することができる RAC のスケールアウト 下でのベンチマークを実施しました。おかげで、事前に確証を得 の魅力が実証される形となった。 ることができました。また、今回Linux上にOracle9i RACを構築 「システム全体の構成は、Oracle9i RAC を構成する3台の HP することになりましたが、データベースを RAW デバイスで管理 ProLiant DL580 と、データ集計を図る『統計サーバ』、ブラウザ する上で、Linuxでのパーティション数の制限などの問題が発生し 上で管制官へのインターフェースを築く『Webサーバ』、交通管 ました。そこで、テラバイト・レベルのデータをスムーズにハンド 制を巡る周辺システムとの通信を司り、総体としての整合性を保 リングしたいというニーズに応えるために、OCFS(Oracle Clus- つための『変換サーバ』、そして車の走行路をトレースし、起点∼ ter File System)によってファイルシステムの効率化を図ろう、と 終点間の経路を推定する役割を果たす『 OD( Origination/ 交通管制システム概要図 隣接官制センターや高速道路管理者 ●交通情報表示板 交通管制センター 渋 滞 中 情報の交換 DBサーバ HP ProLiant DL580×3台 (Oracle9i RAC) 渋 滞 中 ●交通情報ラジオ ストレージ HP StorageWorks MSA1000 (Oracle9i RAC) ●車両感知器 情報を集める 情報の提供 交通情報 ラジオ 統計サーバ HP ProLiant DL580 ●FAX/電話/ラジオ 変換サーバ HP ProLiant DL380 G3 主要地点に設置、車の数、 速度等を計測 Webサーバ HP ProLiant DL380 G3 ODサーバ HP ProLiant DL380 G3 交通規制や交通整理機器など への指令 指 令 コントロール 信号機を交通状況に応じて 自動コントロール Destination)サーバ』の合計7台のサーバと、先程も申し上げた Oracle9i RAC での 3 台構成により交通 (高橋氏) RAID構成の4テラバイトのストレージとなっています」 ProLiant DL580 管 制システムの 中枢を担っている H P ちなみに『統計サーバ』には、DB サーバと同様の HP ProLiant DL580を採用。その他3台のサーバにはHP ProLiant DL380 G3 が選定された。 また、RACを構成する各ノードやアプリケーション・サーバ群は、 スイッチング・ハブを介して、すべて二重化されたギガビットLAN 援など、システム本来の成果や貢献度が増してくるはずです。近 で結ばれた。さらにRAID構成されたディスクは、ストレージ・ルー く、Oracle9i RACを構成するサーバの増設とストレージを増設 タを介してやはり二重化されたファイバ・チャネルで結ばれ HP することを予定していますが、必要に応じて段階的なシステム拡 StorageWorks セキュア パス ソフトウェアを構成。すべての機 張が図れる点も、本システムのメリットのひとつです。より長期的 器が、多重化された高速伝送経路で結合されることによって、優 な視点に立って、富士ソフトABCや日本HPの協力を得ながら、随 れたレスポンスの実現とともに、Oracle9i RACの可用性をさら 時チューニングや検証を実行。交通政策や社会・時代のニーズな に高めるデザスタ・トレラント体制を実現したのである。 どと歩調を合わせながら、 システムの発展に貢献していきたいと 考えています」 (岩崎氏) さらに成長し続けるシステムとして… 「本システムは、円滑な都市交通の要を築く極めて戦略的なもの 日々拡大し続ける交通量の中で、管制業務は益々複雑化し、その です。今回、官公庁や産業界を見渡しても、他に例を見ない先進 支援を図るシステムにも恒常的な成長が求められている。そこで 的な技術や手法を駆使して、交通管制のあるべき姿を築けたこと 最後に、今回のシステム最前線を担った皆さんに、それぞれの立 を大変光栄に思います。今後さらに富士ソフトABCとのスクラム 場から今後の豊富や展望を語ってもらった。 を強化し、 システムの成長に貢献していきたいと思います。日本 「私達は、今後もより良いシステムを構築する為のソリューション の提供に注力していきたいと考えており、その一助として社内に HPには、その進捗に則した納入タイミングや、内外の最新情報の 提供などをお願いしたいですね」 (高橋氏) 『オラクル室』など専門部隊を設けております。その意味でも今 回の案件を通じて、非常に良い経験をさせていただいたと感謝し ております。今後さらに日本 HP や Oracle との連携を強めなが ら、日本信号様とともに、 システムの成長を支援していきたいと考 えています」 (福田氏) 「交通管制システムは、重要な社会インフラとして、長期にわたっ て運用されるものですので、日本 HP には今後の拡張性ととも 日本信号株式会社 本社/東京都豊島区東池袋 3-1-1 サンシャイン 60 47 階 久喜事業所/埼玉県久喜市大字江面字大谷 1836-1 設立/昭和 3 年 12 月 15 日 資本金/ 68 億 4,646 万 7,640 円 社員数/ 1,582 名 URL / http://www.signal.co.jp/ 事業内容/鉄道信号保安装置、道路交通安全システム、駅務自動 に、保守部品の供給やサポート体制の充実をお願いしたいと思 化機器 、航空旅客総合システム、駐車管理システム、カードシス います。今後とも、既存資産の継承性や有効活用を図りながら、 テム、出入管理システム、案内表示装置、特機機器、空港地上安全 より費用対効果の高いシステムに鍛え上げていきたいですね」 システム、産業設備安全装置、パーキングメータ及びパーキング チケット、駐車場案内システム、合成樹脂製品など各製品に関す (久保田氏) る工事、設計及び監督 「これから情報の蓄積が進めば進むほど、各種分析や意思決定支 お問い合わせはカスタマー・インフォメーションセンターへ 03-5304-6660 月∼金 9:00 ∼ 19:00 土 10:00 ∼ 18:00(日、祝祭日、年末年始および 5/1 を除く) HP 製品に関する情報は http://www.hp.com/jp/ HP & Oracle 製品に関する情報は http://www.hp.com/jp/oracle/ Microsoft 、Windows および Windows NT は、米国における Microsoft Corporation の登録商標です。 UNIX は、The Open Group の登録商標です。 Oracle は、米国における Oracle Corporation の登録商標です。 記載されている会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。 記載事項は 2003 年 10 月現在のものです。 本カタログに記載された内容は、予告無く変更されることがあります。 © Copyright 2003 Hewlett-Packard Development Company,L.P. 日本ヒューレット・パッカード株式会社 〒140-8641 東京都品川区東品川 2-2-24 天王洲セントラルタワー XXX0000-01
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