Kobe University Repository : Kernel

 Kobe
University Repository : Kernel
Title
アジア・太平洋産業連関構造におけるハイアラーキ性の
検出 : キー・セクターとしての日米製造業(能勢信子博士
記念号)
Author(s)
福井, 幸男
Citation
国民経済雑誌, 162(5): 37-49
Issue date
1990-11
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00174685
Create Date: 2014-11-13
ア ジア ・太平洋産業連 関構造 にお ける
ハ イア ラーキ性 の検 出
-
キ一 ・セ クターとしての 日米製造業-
福
Ⅰ は
じ め
井
*
幸
男
に
すでに,福井 (
1
98
9,1
990
) において東南 アジア産業連関構造の-イア ラー
キ性について,数量的な検討を加 えた。そ こでは国際的な産業連関構造のなか
で, イソ ドネ シア鉱業,
.日米の製造業, シンガポールの製造業の基軸的な役割
を指摘 した。そ こで用い られた三角化の方法は,た しかにシステマテ ィックな
アプローチではあるが,三角化 された産業連関表におけ るキー ・セ クターの解
釈 は, この表 の視察 にもとづいた,直感的な考察であった。 とくに,上に述べ
たセ クターは,主要 な係数値や取引額 の流れを中心に解釈 した ものである。
本稿では,部門の序列順位の頑健度 とい う新 しい指標を用いて,前述のキー
・セ クターの正当性を主張す る。 この指標は,産業連関表 の三角化 の作業に基
礎 をお くもので,従来 とは全 く異なった タイプの指標である。計算結果は,荏
来 の結論を補強す るものであった。
98
9) は,1
97
5
年 アジア国際産業連関表の投入係数表の三角化にかん
福井 (1
す る実証分析をお こない, 「日本 とアメ リカが,東南 アジアの生産技術構造を
支 えている」 ことと, 「シソガポールが先進 2カ国 とイソ ドネシア ・マレーシ
暮 本稿は,佐野敬夫 ・玉村千治編 (1
98
9,1
9
9
0)をあ らたに展開したものである。筆者の一連の発
表にたいする神戸大学国際比較統計研究会等での参加者のコメソT
・
に感謝 したい。この研究会-の
参加を呼びかけて くださった能勢信子先生に厚 くお礼申し上げる。
3
8
第 162 巻
第
5 号
アを連結す る」 ことを指摘 した。
1
9
9
0
)は, アジア国際産業連関表の取引額表の三角化にか
つづいて,福井 (
んす る実証分析をおこない,-イアラーキ構造の中枢部にある 「日米の製造業
が,東南 アジアの産業連関構造を支 える背骨 の役 割 を 果 た している」 こと,
「とくに, 日本 の製 造業は東南 アジア各国および アメ リカか ら粗原材料を投入
し,国内で これを加工 して,部品 ・付属品等の中間財 として各国に産出 してい
,
/
3のウェイ トである」,
る」 こと 「アメ リカの製造業の役割は 日本製造業の約 1
ことを指摘 した。結論 として 「日本製造業 は東南 アジア経済の生産構造を貫徹
して流れ る一大長河である。怒涛のごとく,あ らゆるものをのみ こみ,はきだ
している」 と述べた。
「アジア太平洋圏において, 日米製造業等がキー ・セ クタ-である」 との論
述にある種の合理性を与えようとす るのが,本稿 の目的である。三角化の方法
を拡張 して,序列順位の頑健度の指標を作成することにより, この 目的ほ達成
された。
Ⅰ
Ⅰ モ
デ
ル
Ⅰ
Ⅰ
-1 デ ー タ
アジア経済研究所が作成 した 「
1
9
7
5
年アジア国際産業連関表 7部門要約表」
■
を使用す る。対象 国 は イソ ドネシア (
略称 , Ⅰ),マレーシア(
M), フィリピ
ン(P)
, シンガポール (S)
,タイ(
T)
, 日本(J),韓国(
K)
,アメ リカ(
A)の
計 8カ国,産業分軌 も 農林水畜産業,鉱業,製造業,電気 ・ガス ・水道業,
建設業,商業 ・運輸業,サービス業 ・そ の 他 の 計 7部 門 で あ り, 部 門 総 数
n-8×7-5
6 となる.
Ⅰ
Ⅰ
-2 モ デ ル
本モデルは非競争輸入型の産業連関モデルである。国別の産業間中間取引を
あ らわす正方行列 X,産業別産出額べ ク レ レq
,投入係数
定義 され る。
ai
J はつ ぎのように
アジ7・
太平洋産業連関構造における-イアラ-キ性の検出
3
9
I-(xij),fori,i-1,・・-・.,56,
x-(
:I
:t
'
,.
'
:
.
二 x:)
q-(
XI
,--.
・
,XA
^)-(
xl
,-・
.
I
, X56),a
t
j
-Xl
,
.
/x
j
。
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ研 究 の方 法
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
-1 産業連関表の三角化問題の定式化
部門 1か らn までの番号を昇順に並 べ た 順 位 を N とす る.す なわち,N(
1
,2,--,n).そ して, これ らの番号 に か んす る n次の順列の集合を ZN
とす る。配列順 序 の 選 び 方 は,n
!個である。任意 の順列 2
T-(7
r
(1
),打(
2),
-,冗(
n))∈ZN にかん して,X(
7
T
)を 7
Cに したが って並べた産業連関表 と
X(T
E
)) を R(
X(
7
r
))-maX∑
す る.関数 R(
i
,J
X川 )H(
,
)で定義す る。 ある X
にたい して,
(1) R(
X(
7
E
*
)
)-maXR(
X(
7
r
))・
汀∈ZN
なる順序 打*を求め ることが厳密に可能な らば,産業連関表の三角化問題は完
全に解決 され る。
2
T
)をつ ぎ
あ る序列 7
Tのもとでの三角化の程度を測 る指標 として,線形度 l(
の よ うに定義す る。
I
‡
ナ
!
(2) )(
W)- 2]
.
i
,
J
Xi
j
/2
]
.
i
≒
JX
i
J
l
l
)
・
Z
l
J
また,線形度 l(
7
C
) の極限値を測 る指標 として,極限値 I
a(
冗) をつぎの よ
うに定義す る。
n
ナ
王
(3) }a(冗)- ∑ わJmaX(
xi
j
,XJ
f
)
/≡ ",
・
Xt
J
J
'
l
'
l
J
'
z
l
l
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
-2 コンピュータ・アルゴリズムTRIの要点
個の組合せをすべて生成す
7
T
*を見つけることは難か しい。 最悪の場合 ,n!
ることを覚悟 しなければならない.そ こで, W*の近 似 解 を求め るアル ゴ リズ
ムが登場す る。 コンピュータ ・アル ゴ リズムTR Iはその一つである0
説 明の簡略化のた削 こ,
.冗-N とす る。 いま,1
≦i
≦)
< k≦l
≦n なる i
,jに
'
-1 までの番号を昇順 に並べた順列を Z-(
i
,--,j
-1
)
かん して,iか ら )
第 162 巻
4
0
第
5 号
とす る.IO'
,-・
・
・
,k
)
,N2-(
I
,I),Nl
-(
1
,-・
.
・
,i
ll
,k+1,--,n)
についても同様である。
いま,順列 Ⅳ の JとJを互換 して得 られた新 しい順列 Ⅳ′は,Ⅳ′
-(
1
,--・
,
I,I
,・
.・
.
,n) となる. このとき,)iJを
l
I
J〒
∑
(
X
L
J
-X
j
`
)
Z
'
∈Z,
)
'
∈′
で定義する。.
この とき, JとJを互換すれば,産業連関表の主対角線左下の要
素の総和の変化は
.
Z
IJ
である。
つぎに,隣合わない 2つのグループを互換する場 合 を述 べ る。K-(
k十1
,
・
,l
) とす る。順列 N の Zと K を互換 して得 られ た新 しい順列 N〟は,
・
N′
′
-(
1
,・
・
・
-.
,K,I,I
,・
・
・
・
・
.
,n) となる。 この とき,l
I
J
Kを
l
l
JK-l
I
J+l
I
K+l
J
K
で定義する.ただ し,l
I
K,んKについては
lIJ
と同様に定義す る。か くして,
(4) A
I
JK-Z
J+I
K+JK-(
JI+KZ+KJ)
J- ∑
となるOただ し,Z
xり とし,Z
K 等についても同様である.
i
∈Z,
j∈′
このとき,Zと K を互換すれば,産業連関表の主 対 角 線 左下の要素の総和の
gである (
Fukui(
1
9
8
6
,p.1
4
3
0
)
)
。
変化は んJ
三角化問題の近似解法 としてのコンビ3
.-タ ・ア リゴ リズム TRIは,l
t
J
K
の非負の最大値をみつけ, この Zと K を互換する方法である。
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
-3 修正 TRIの要点
第 1ステ ップにおいて,バ ランス ・ウェイ トとして,パラメータ L(
1
)(
>0
)
を導入 して,
(
Z
J+KI+KJ
)
+L(1)<(
I
J+Z
K+JK)
の場合のみ,Zと K を互換す るOすなわち,l
I
J
Kを
(5) l
I
J
E-l
I
JK-L(1
)
で定義 して,l
I
J
K
>0の場合 のみ,Zと K を互換するOいきな り,TRIを適
用すると,l
I
JK>0なる (
I
,I,K)の組が膨大 な数 に な り, コンピュータの
記憶容量が不足するか らである。何回かのイタレーションを繰 り返 して,l
I
J
E
アジア ・太平洋産業連関構造におけ る-イアラーキ性の検出
41
>0なる (
I
,I,K) の組がな くなれば,L(2)<L(1) なる L(2)を選択 して,
寛 1ステ ップと同様のステ ップを繰 り返す。順次 このステ ップを くりかえして,
a-0.
0
0
01にたい して,L(n)-α の場合の収束値を最適解 とす る. この αの
Jの下限を採用す るo
値 として,Ⅳの冒頭で述べ るよ うに,ai
Ⅰ
Ⅰ
ト」 頭建性の指標
ItJK
の非負の最大値がゼ ロとな る ときの序列 7
Eを第二種の相対的最適序列
∬2(
r
e
l
at
i
ve
l
yopt
i
ma
lor
de
r
i
ngoft
hes
e
c
o
ndt
ype
) とい う (
i
bi
dリp.
14
2
9
)。 このとき, 2
T-7
r
2で, )(2
T
)は最 大 とな るo Lか し,一般に,最大の
C
2の 1種類に限 らない。スパースな行列では複数の最
i(
2
T
)をもた らす序列は 7
適序列が存在する可能性が非常に強いか らである。 これ らの序列の総計を qと
-冗(
1
)とす ると,
す る.簡単化のために,打2
打(
1
)-(7
r(
1
)
(
1
),.
A・
,7T(
1
)
(
n))
n
・
(
2
)-(7
r(
2
)
(1
),-・
・
・
,T
E(
2
)
(
n))
-(TE(
q)(
1
),--,7T(
q)(
n))
7
E(
q)
な る q個 の最適解が存在す る.
これ ら q個の序列順位は全 く多様なのであろ うか。い くつかの特定部門の序
列順位が安定 しているか どうかは-イアラ-キ構造の実証分析の際にきわめて
重要な課題である。以下でこの点を検討す るための指標を導入す る。序列順位
iに入 る部門の頑健性を測 る指標を新 しく定義す る.頑健性 とは, q個の最適
序 列を通 じて,ある部門の序列順位が固定的である状態をさす。
まず, 行列 M (
A
)-(
m;
5
'
)(
k-1
,・
・
-・
,q), 序列順位行列 M -(
mり), 顔
健度 p(
i
)お よび総合頑健度 p*(
i
)を以下の様に定義す る.
m'
i
k
J
'
-1
i
f打(
A
)
(
i
)-冗(
.
)
(
)
I
)
,f
orj-1, --,n
mi
k
,
'
-0
mi
j-
ot
he
r
is
w
e
q
≡ m'
f
k
5
'
A-I
p(i
)-mり/q
42
第 162 巻
第
5 号
i
)
i
/
仰 q
p*
(
i
,-〔
k
ql(
1
/(
k・1
)
)(
-i
k
・
i
・-- A
, q
ただ し,q(
i
)-max〔
q-i
,i
-1
〕,i
-k
>0
,i
+k≦qである.
定義 より,序列順位行列 M (
1
)
-Iとなる。q-1の とき,すべての iについ
i
-m'
i
k
I
'
-1 となって,M (
1
)
-M -Ⅰとな り,p(
i
)-p
*(
i
)-1 となる。
て,mi
すべての部門の序列順位は確定 してお り,-イアラーキ構造は頑健である。
Ⅰ
Ⅴ 計測結果 (
投入係数表)
本研究では,投入係数表の三角化の計測作業を実施 した.
,
.
≧0.
0
0
0
1 なる
ai
8
8個を作業の対象 とした。 この レベル以下の数値はすべてゼ ロとし
投入係数 8
た。
Ⅰ
Ⅴ -1 計 測 作 業
TRI適用に際 しての産業番号の序列 として,次の 5種類の序列を初期値 と
した。 カッコ内の数字は部門番号 (
第 1表参照)を示す 。(
1
)
公表産業連関表の
序列,すなわち (
01
,0
2
,-・
-,5
6
)(
2
)
日本農林水畜産業 (
3
6
)を先頭に した序
36
,37
,--,5
6
,01
,
列 (
-
川,3
5
)(
3
)
アメ リカ農林水畜産業 (
5
0
)を先頭に
した序列 (
5
0
,51
,--・
,5
6
,01
,--,4
9
)(
4
)
影響力係数の大 きい部門か ら
5
)
シソガポ-ル農林水畜産業 (
2
2
)を先頭に した序列 (
2
2
,2
3
,並べた序列 (
6
,01
,--・
,2
1
)0
-,5
′
),(
2
′
)
,(
3
′
)の 3種炉が線形度が
計測結果は,第 1表に示 され る.序列 (1
最大であった。記号 ダッシュ ′ほ,収束解を意味する。た とえば,(
1
′
)は(
1
)
杏
初期値 とする収束解である。ステ ップ 7の エ(
7
)-0.
0
0
01で収束 した。
(
1
′
)は線形度は )
(
7
E
)-1
6
.
1
2
1
3
/1
8
.
8
5
3
5-0.
8
5
5
1である。(
2
′
)および (
3′
)
の l
(冗) も同 じ値をもつO (
4′
)お よび (
5′
)の )
(
n
:
)は これ より小 さかった。
i(冗)の極限値 と考 えられ る I
a
(
冗)は 0
.
8
6
7
7であるので,三角化の計測は成
功 しているといえる。ちなみに,わが国の1
9
7
5
年産業連関表に もとづ く三角化
(
7
E
)-0.
9
1
3
,l
a
(
冗)-0.
91
7である (
福井 (
1
9
8
7
)
,p.1
3
4
).
の計測結果は,i
腎
⋮打
幣
描
。器
措
鵠
漂
漂
器
器
即諾
水道業(S)
-- ≡
器
芳
ヽ
ノ )
S) T
獣は 剰
-
郎昔
甘
苦
Tp 剰t 獣
\
.
)
T
∫ヽ
諸
) ヽノ
P) S
剰e 部
1- -
水道業(T)
描
ヽ
′ ヽ
I
.
M)p
水道業
(
M
)
.
T
l
. 剰 山新
水道業(
P)
川川弼
剰日 新
)
水道業(
Ⅰ
∼- ∼- 1- -
ノ
)
M
1ヽ
。- 0-0- 0--
313521 013107 082903 291508 152031 4121291
42414 504242 205050215353 535151 510154 545401 383838 555555 565656 525252 020202
諜
器
ヽノ ー
∫) K
漂
(
水道業
K)
温
器
ヽ
一
′ ヽ′
K) A
帯
芯
E
i
i
:
A)
昔
3134 0835 2931 4129 4241 5042 5350 5153 1551 5454 2020 2121 0101 3838 5555 5656 5252 0202
㈲課
水道業
(
∫)
水道業(A)
16.
121316
121116
1175
16.
121316
1213
剰
じ
封
獣
紘
3
7<
:
4
3
5
5
2
0
9
8
7
6
4
3
】
ウ
1
アジ ア国際 産業連 関表 の三角 化 におけ る第 二種 の相対 的最 適序 列
第 1蓑
4
3
'
アジア ・太平洋産業連関構造における-イアラーキ性の検出
0.
85
51 0.
8551 0.
85
51 0.
851
1 0.
85
49
4
4
第 162巻
第
5 号
国 際産業連関表の特性を考 えると,三角化の計測は予想以上に うま くいった と
・
みて よい。
これ ら 5種類の最適序列は初期値 を異にす るが,部門の序列順序は類似 して
2
位か ら5
6
位までの 5部門は同一である,②順位 2
8
位か
いる。 とくに,①順位5
ら3
3
位 までの 6部門は (
5
′
)を除いて同 じである。
Ⅰ
Ⅴ-2 複数の第二種の相対的最適序列の存在
第 1表に示 した (1
′
),(
2
′
)
,(
3′
)の 3種類の第二種の相対的最適序列は同 じ
i(
冗) をもちなが ら,その序列順位は異なっている.そ こで,本節では, この
一
他に最適序列は存在 しないか どうかをシステマティックに検討する。三角化さ
れた投入係数表の視察か らこの作業は部分的にはある程度可能ではあるが,全
・
体的なチ ェックはほ とん ど不可能である.
そ こで,
∼新たにステップ 8として,エ(
8
)-0とした計測を実施 した。すなわ
t
JK-0なる第二種の相対的最適序列を検出するためにおこなった. この
ち, l
とき(4)
式か ら, (
〟+KI
+KJ)-(
I
J+Z
K+JK) が成立する0 第 1表の収束
.
解(
1'
)以外に4
5
9
個検出された。すなわち,)
(
7
T
)-0
.
8
5
5
1を持つ序列は唯一で
5
9個存在する。主対角線をはさんで要素の
あるのではな く,少な くとも他に 4
I
,I,R) の組が4
6
0
個検出された ことになる. これを入れ換え
総計が等 しい (
て も三角化の程度は改良されない。 これ らの 4
6
0個の最適序列を書 き出す こと
はスペースの関係で省略す る。
第 1図は,第 1蓑の (1
′
)以外に4
5
9
個存在す ることが判明した第 2種の相対
的最適序列にかんして,互換すべ き始 点 の iと 終点の lを書 き出 しているO
I
JK-0なる (
(
,
I,A) の組にかん して,序列番号 iとこれに対応
すなわち, )
す る最大の lの組合せ (
i
,I
)を,i
-1か ら i
-56にわた って,記述 した もので
遇 では,(
0
1
,--I
,2
8
,2
7
,2
9
,3
0
,-・
・
.
.
,5
6
)
,(
0
1,
あ る.た とえば∴軍_
--・
,2
8
,2
9
,2
7
,3
0
,--・
,5
6
)
,(
0
1
,--,2
8
,2
9
,3
0
,2
7
,・
・
--,5
6
)
の 3種煩の最適序列が検出されるO
3
1
,3
2
,3
3
)と (
5
2
,5
3
,5
4
,5
5
,5
6
)の産業は,全 く移動 して
序列順位 (
4
5
アジア ・太平洋産業連関構造におけ る-イアラーキ性の検出
1
9
2
0
21
2
8
(
1
8
)
2
7
(
5
)
2
7(5)
2
3
2
7(
l
l
)
2
4 2
7(4)
2
5 2
7(4)
2
6 3
0(
1
0)
2
7 3
0(3)
〓 目 迎 ﹄ 51一
51
第 1図 第 2種の相対的最適序列の種類*
*
下線の始点は
(
初期値 (
01,02,--・
,56))
i,終点はJを示す。カッコ内の数字はTRIで検出された序列の個数を示す。
いない。他の4
8
個の産業が第 1図の特定の範 囲で揺れ動 いて 4
5
9個の相対的最
適序列を形成 しているのに反 して,全 く移動 していない。
で検 出されたの 4
6
0個の (
I
,I
,K)
注意すべ き点はつ ぎの 3点であるO こ=・
第 162 巻
46
第
5 号
の 組を個別的にチ ェックす ると,要素がすべてゼ ロである (
I
,
I
,K)の組であ
る ことが明か となる。前節で述づた ように,国際産業連関表の要素が全部詰 ま
8
% (-8
8
8
/
5
6
2) の要素
一
つていれば, この ような事態は起 きないであろ うが,2
しか詰 まっていないスパースな行列を対象にしているので, これは避けえない。
:
第二に,国際産業連関表では,い くつかの首座小行列が対角行列を形成 してい
る事情がある。 これ らの部門間の序列は無差別 となる。た とえば,4部門が対
一
角行列であれば,4!
(
-2
4
)個の第二種の相対的最適序列が存在す ることにな
る。第三に, コンピュータ ・アルゴ リズムTRIで検出した第二種の相対的最
適 序列は 4
6
0個を数えるが,実際にはこれ以上存在する.TRIの深索範囲は
す べての組合せに及ばず,そのごく一部にすぎないか らである。
Ⅰ
Ⅴ-3 キー・セクターの確定
第 2図は縦軸に総合頑健度 p*(
i
)杏,横軸に序列順位の 1位か ら降順に とっ
i
)の 1位か ら5
6
位 までの p*(
i
)を
ている。実線は,(
l
l
)にかんす る序列順位 (
,
計測 した結果を示す。 た とえば,順位 2
9
位の p*(
i
)は 0
.
9
8
9である。第 1蓑の
.
最適序列 (
1
′
)の第 2
9位には, シンガポールの商業 ・運輸業 (
2
7
)が きて い る
絵 合 頑健度
2 4 6 8l
ol
≡1
41
6】
82
0 222
42
62
830 32343
63
84
042 44J
I
64
85
05
25
45
6
序列爪
床に
第 2回 総合頑健度の計測
- (
1
′
) --・(
2′
) - ・(
3
′
)
アジア・
太平洋産業連関構造における-イアラーキ性の検出
4
7
(〔
2
9
〕の欄 の右 の数字は部門番号2
7である)。 この 0.
9
8
9とい う数字は,つ ぎの
6
0個の最適序列の順位 2
9
位には,(
1
′
)の 2
6位の部門番号
よ うに計算 され る。4
1
8が 3回,2
7位の部門番号 3
0が 3回,2
9位 の部門番号 2
7が 4
5
2回,2
8位の部
8が 2回入 る. したがって,p*
(
2
9
)-〔
(
1
/
4
)
3+(
1
/
3
)
3+4
5
2+(
1
/2
)
2
〕
/
門番号 2
6
0個の序列を通 じて第 2
9位に
A6
0-4
5
4.
7
5
/
4
6
0-0.
9
8
9 となる。検出された 4
入 った部門のなかで, シンガポールの商業 ・運輸業 とは異なる部門がきたのが,
重 複を許 して 8部門ある。
3
1
,3
2
,3
3
)と (
5
2
,5
3
,5
4
,5
5
,5
6
)の ところで p*(
i
)-1
実線は,序列順位 (
とな り,切れてい る。 これ らの部門に全 く順位の変更がないのである。他 の4
8
個 の産業が第 1図の特定の範囲で揺れ動 いて 4
5
9個 の相対的最適序列を形成 し
ているのに反 して,全 く移動 していない。す なわち, これ らの 8部門は,国際
t
的な-イアラーキ構造 のなかで不動 の位置を占めているキ一 ・セ クターである。
2
4
)
, イソ
そ れ らは,-イアラーキ構造の中位に位置す るシンガポール製造業 (
0
3
)
,韓国製造業 (
4
5
)と最下位に位置す る日本製造業 (
3
8
)
,ア
ドネシア製造業 (
5
5
)
, アメ リカサー ビス業 (
5
6
)
, アメ リカ製造業 (
5
2
)
,イ
メ リカ商業 ・運輸業 (
02
)である。前者を国名 の頭文字を とって,SIKキー ・セ ク
ッ ドネシア鉱業 (
タ ーと呼び,後者の 5部門を JAIキ一 ・セ クターと呼ぶ.
I
Vl4 キー・セクターの序列の頭建性
た しかに,第 1表の (
1
′
)においては,序列 3
1位か ら3
3位に SIKキー ・セ
2
位か ら5
6
位に JAIキー ・セ クター 5部門が不動
クタ-3部 門が入 り,序列5
の 位置を 占めたO他の部門がある序列範囲のなかで不確定であるのに対 して,
これ らのセ クターは常に安定的であった. これは このシ リーズにおいてた また
まその よ うに並んだのだろ うか。
7
T
)に達 した (
2′
)お よび (
31
)の第二種の相対的
本節では,(1
′
)と同一の l(
最 適序列にたい して, 2つのキー ・セ クター ・グループの頑健性をチ ェックす
る。 まず, これ らのセ クターの順位は,(1
′
)と全 く同等である (
第 1表参照)
t
J
K-0を満た
こ とを確認す る. この最適序列にたい してTRIを適用 して,l
4
8
第 162 巻
第
5 号
す (
I
,I,K)を求め,同一の )(7
r
) を持つ最適序列を求める.
1
′
)と同 じ順位のと
計算の結果は,第 2図の 2つの点線で示 される。共に,(
ころで切れている。(
2′
)では,407個の最適序列が検出された。 このなかで,
序列順位3
1
位か ら3
3
位,および序列順位5
2
位か ら5
6
位には部門の変更は全 くな
位か ら3
3
位に SIKキー ・セ クタ -3部門が,
い。第 1列 と同 じく,序列順位31
52
位か ら5
6
位に JA Iキ- ・セクター 5部門が入 っている. (
3′
)では,4
4
3個
の最適序列が検出されているが,同 じ結果を得た。
Ⅴ お わ
り に
以上の分析では,複数の第二種の相対的最適序列の存在に注 目して,頑健皮
の指標を導入 した。.計算結果は,SIKキー ・セクター 3部門 (シンガポール
製造業(
2
4
),イン ドネシア製造業(
03
),韓国製造業(
45
)
)が,国際的な-イア
ラーキ構造のなかで中位の不動の位置を占めているキ一 ・セ クターであること,
お よび,JA Iキー ・セクター 5部門 (日本製造業(
3
8
)
, アメ リカ商業 ・運輸
莱(
5
5
)
,アメ リカサービス業 (
5
6
)
,アメ リカ製 造業 (
5
2
)
,イン ドネシア鉱業
(
02
)
)が最下位に位置するキー ・セ クターであることを強 く示唆 している。
とくに, 日本 とアメ リカが,東南アジアの生産技術構造を支 えていることを
示唆 している。さらに, シソガポールが先進 2カ国とイソ ドネシア ・マレーシ
アを連結す る働 きをもつ ことを示唆 している。
つ ぎの点が,重要である。経済発展が 自立的であるためには, 日米以外の 5
カ国の産業, とくに製造業の生産が国内の各種の生産を刺激 しなければならな
い。 しか し,た とえば, 日米両国の多国籍企業の生産が現地の関連の原料,部
品産業を誘発 しているかど うかについては様々な計量分析が必要である。
本研究によれは,途上国の工業化の努力は,原料,部品,機械,資材などを
先進国か ら輸入 していることを強 く示唆 している。せ っか くの工業化が,途上
国 自体の所得の拡大や雇用の増大に貢献 していない可能性があ り, この点は今
後の課題 としたい。
アジア ・太平洋産業遵開溝道における-イアラーキ性の検出
4
9
本稿は,投入係数表に限 った分析であ り,取引額蓑はまだ残 され ている。 さ
らに,頑健度 の指標の統計学的考察, とくに,TRIの探索範囲 との関係で初
期解の序列順位の先頭部分で頑健度が高 くで る原田の体系的考察など,統計学
的に残 された課題は多い。
参
福井幸男,『
産業連関構造の研究-
考
文
献
生産技術 とノ
、イア ラーキ』
,1
9
8
7
年 6月,啓文社。
,「国際産業連関表におけ る- イア ラーキ構造 の検 出」,佐野敬夫 ・玉村千治編
『アジア国際産業連関表 シ リーズ No.
6-
国際産業連関表 の作成 と利用』, アジア経
済研究所 ,1
9
8
9
年 3月,3
21
-3
41
ペ ージ。
,「東南アジア経済 におけ る生産構造の連関2
)
る- イア ラーキ構造の検出(
アジア国際産業 連関表 におけ
』,佐野敬夫 ・玉村千治編 『アジア国際産業連関表
シ1
)-ズ No.1
4- 国際産業連関表 の作成 と利用』, アジア経済研究所 ,1
9
9
0
年 3月
1
2
3
-1
51
ペ ージO
,「日 ・米 ・ASEAN 諸 国の多国間産業連関分析」,経済 研 究 論 集
金子敬生
(
広島経済
大学), 8巻 1号 (
1
9
8
5
年),1
-2
6ページ。
,「経済の基本的構造の決定(1)」,三 田学 会 雑 誌
尾崎巌 ・石 田孝造
(慶応義塾大学),6
3
巻 6号 (1
9
7
0年),1
5
33ページ。
,「産業構造分析 と経済発展」,経済論策 (京都大学),141巻2,3号 (1988年),
1
2
-40ペ ージ。
Che
ner
y,H.
B.&T.Wat
anabe,'
t
I
nt
e
r
nat
i
onaICompar
i
s
onsoft
heSt
r
uct
ur
eof
瀬地山敏
Pr
oduct
i
o
n"
,Ec
o
no
me
t
r
i
c
a,Vol
.2
6,No.
4(Oct
.1
9
5
8
),pp.
4
8
7
-5
21.
Fukui
,Y.
,"
A Mor
ePowe
r
f
ulMet
hodf
orTr
i
angur
al
i
z
i
nghput
l0ut
putMat
r
i
c
e
s
and t
he Si
il
m
ar
i
t
y ofPr
oduct
i
o
n St
r
uct
ur
e
s
,
" Ec
o
no
me
l
r
i
c
a,Vol
.5
4,No.
6
(
Nov.1
9
8
6
),pp.
1
4
2
5
-1
4
3
3.
Fur
ukawa,Sリ I
nt
e
T
nat
i
o
n
all
n
buト
Ol
E
E
PI
L
tAnal
ys
z
'
S
,I
ns
t
i
t
ut
e ofDe
ve
l
opi
ng
Ec
onomi
e
s
,1
9
8
6.
I
ns
t
i
t
ut
eofDe
ve
l
opi
ngEc
onomi
e
s
,I
nt
e
r
nat
i
o
nalt
n
L
)
u
E
Ou
t
L
I
u
tTab
l
efo
rASEAN
Co
unE
7
・
i
e
s1
97
5,1
9
8
2.
ukui
,`
`
TheFundame
nt
alSt
r
uc
t
ur
eof t
he l
npuトOut
put
Si
mps
on,D.& ∫.Ts
Tabl
e
s
,An I
nt
e
r
nat
i
onalCompar
i
s
ons
,
" Re
v
i
e
wo
f Ec
o
no
mi
c
sand St
at
2
'
s
t
i
c
s
,
Vol
.
47
,No.
4(
J
ul
y,1
9
6
5
),pp.
4
3
4
-4
4
6.