イーストスプリング・アジア・セミナーレポート セミナー開催日:2015 年 3 月 3 日 第1部 基調講演 21世紀のアジア 政策研究大学院大学 学長 白石 隆 氏 第2部 存在感を増すアジア株式市場 バリュー投資家の視点から イーストスプリング・インベストメンツ株式会社 運用部 シニア ファンド マネジャー 藤野 哲 第3部 アジア債券市場 その発展と投資機会 イーストスプリング・インベストメンツ (シンガポール)リミテッド 運用部 債券部門チーフ・インベストメント・オフィサー ブン・ペン・オイ イーストスプリング・アジア・セミナーレポートVOL.1 アジアの台頭で変貌する 世界の富と力 世界経済の新たな原動力として期待されるアジアは、今後どのような変貌を遂げるのか。 アジア研究の第一人者である、政策研究大学院大学学長の白石隆氏が (セミナー開催日:2015 年 3 月 3 日) これからのアジアの行方を語った。 ドで1,800 万人、インドネシアで300 万人の富裕層がいた (図 1)。 第 1部 基調講演 21世紀のアジア これが、10 年後の 2020 年には、中国で1 億 8,000 万人、インドで 6,700 万人、インドネシアで1,200 万人と4 倍に急増する見通しだ。 アジア全体(日本を除く) では3 億人以上になる。 政治、経済的には、中国の超大国化が進み、アジア太平洋地 域における存在感が一層増していく。これを受け、米国も同地域 重視へ政策の軸足を移している。 中国の 外交姿 勢 にも転 換 の兆しがある。2014 年 11月に北 京で開 催された APEC(アジア太平洋 経済協力会 議)で、習近 平 国家 主 席は周辺 国のインフラ投 資を支 援していく「AIIB(ア 政策研究大学院大学 学長 ジアインフラ投資銀行)」の創設などを発表した。中国主導で地 白石 隆 氏 域 経済の一 体化を推 進し、周辺 諸国に影 響力を拡大する狙い があるのだろう。 アジアの GDP シェアは 30%以上に 富裕層は 10 年間で 4 倍に急増 際通貨基金)がまとめた世界の名目GDP(国内総生産)の推移を見 けん引役として存在感増すメコン経済圏 ダウェー経済特区開発でバンコク潤う ると、G7(主 要 7 カ国)が占める割 合 は 1990 年 の 65.3%から 東南アジアでは、2015 年末に AEC(ASEAN 経済共同体)が 2018 年の 45%へ落ち込む。一方、1990 年に 20.1%のシェアしか 発足する予定だ。すでにインドネシアやタイ、マレーシアなどでは、 なかった新興国・途上国は 2018 年に 40.8%へ飛躍する見通しだ。 ほとんどの品目で関税をなくしており、カンボジア、ラオス、ミャン 新興国・途上国のなかで、とくに目覚しい発展を遂げているの マー、ベトナムの CLMV4 カ国も 2018 年に関税をほぼ撤廃する がアジアである。地域別の名目 GDP では、アジア太平洋は1990 方向である。 年の 22.9%から2018 年には 32.3%へ拡大する。一方、北米と 金融や小売りなど、サービスにおける規制緩和の動きは緩やか EU(欧 州連合)は 1990 年の 31.4%から2018 年には 23.3%と なものだが、メコン経済圏といった広域のインフラ整備について シェアを落とすことになる。 は政治的な調整メカニズムができてきた。 アジアでは急速に都市化が進行している。UN(国際連合)によ ASEAN 最大の課題は「安全保障」と「経済成長」である。後者 ると、日本を除いたアジアの都市人口は、2000 年の約 8 億人か に関しては、各国が“中所得国”に留まることなく経済を成長させ、 ら2030 年には約 15 億人に迫ると見られる。 いかに先進国入りを成し遂げるかが大きな焦点になっている。 富裕層も拡大する。2010 年の時点で、中国で4,000 万人、イン ASEAN 各国の状況はどうだろうか。アジア経済の新たなけん 21世紀に入り、世界の富と力の分布が変わりつつある。IMF(国 図1 拡大するアジアの富裕層・中間層 (単位:百万人) 下位中間層 2010 年 上位中間層 富裕層 2020 年 2010 年 2020 年 2010 年 2020 年 中国 520 530 120 390 40 180 インド 480 710 50 280 18 67 インドネシア 100 140 10 55 3 12 ASEAN 50 下位中間層:世帯年収 5,000∼15,000 米ドル、上位中間層:世帯年収 15,000∼35,000 米ドル、富裕層:世帯年収 35,000 米ドル以上 出所:経済産業省(2012) 150313(06) イーストスプリング・アジア・セミナー ─アジアの台頭で変貌する世界の富と力 引役として存在感を増すメコン経済圏の主要構成国であるタイ、 優秀な大統領といえる。 ミャンマー、ベトナムを順に見ていきたい(図 2)。 フィリピンの大統領は任期が 1期 6 年で、再選が禁じられてい まずタイでは、2014 年に再びクーデターが発生し、政治は当 る。2016 年に任期を終えるアキノ大統領の後をどんな人物が引 分、不安定にとどまるだろう。だが、経済的にはポジティブな側 き継ぐのかが今後の焦点になる。GDP の 10%以上を占める海外 面もある。前政権は政策の意思決定が困難な状態にあり、イン からの送金をいかにインフラやビジネス投資に呼び込んでいくか フラ整備も実質的に先送りを余儀なくされていた。しかし、政権 も、フィリピン経済のさらなる発展には欠かせない課題だ。 交代によって、これが現実的に前進し始めた。2015 年 2 月に安 東南アジアには、時期によって低迷している状況にある国もあ 倍首相がミャンマーのダウェー経済特区の開発協力を約束した れば、同じ時期に著しい成長を遂げている国もある。80 年代から が、高速道路、港湾などが整備されれば、大陸部東南アジアのハ 90 年代前半、ベトナムはカンボジア侵攻で制裁を受け、経済は危 ブとしてバンコクはますます重要となる。 機状態にあった。しかし、その一方、タイ、マレーシアの経済は年 ミャンマーでは、2011年以来、改革・開放が大いに進展した。 平均 10 パーセント近い速度で成長した。1997 年のアジア通貨 欧 米 諸 国も経 済 制 裁の解 除に動き出し、よほどのことがない 危機でインドネシアは深刻なダメージを受け、タイやマレーシアの と、後戻りはできないだろう。注目すべきは 2015 年秋に予定さ 経済も停滞したが、ベトナム経済が伸び、次いでフィリピンも成長 れている総選挙で、アウン・サン・スー・チー氏が 率いる民主 連 軌道に乗った。 盟が 政 権をとるかどうか、民主化が 進 展するかどうかに注目が 21世紀のアジアを見る際には、中小国が多く集まる東南アジア 集まっている。 については、中国やインドといった大国とは違う視点で、経済の ベトナム政府は、自国経済を世界及び地域に統合するという強 発展や政治の動向を地域全体として捉えていく必要がある。 い意思を持っている。ベトナムは国土の均衡ある発展を実現する ために、ホーチミン、ハノイという二つの産業集積地のバランスを 図 2 3つの経済回廊からなるメコン経済圏 とりつつ開発を進めていくことになろう。とくにハノイを中心とし た地域は、発展すればするほど近接する中国との経済的な連携 南北経済回廊 強化を余儀なくされるため、両国間の関係づくりも重要な要素と 昆明 中国 なってくる。あわせてASEAN 域内における産業競争力の強化を 進めていくことになるだろう。 順調な滑り出しのインドネシア新大統領 好調フィリピンはアキノ後継が焦点 南寧 ミャンマー ハノイ ラオス ネピドー ビエンチャン インドネシアでは、2014 年にジョコ・ウィドド大統領が誕生し た。すでに燃料費の補助金削減によって財政支出を抑制し、代わっ モーラミャイン コンケン タイ てインフラ投資を加速。同時に未加工資源の輸出を規制し、加工 資源の輸出を義務付けることで高付加価値産業への転換を図って いる。海洋インフラ整備などを進める「海洋国家構想」も打ち出し た。人事で苦労しているが、政策的にはなかなかうまくやっている といえる。 フィリピン経済は好調に推移している。国外で働く労働者から 東西経済回廊 ダウェー バンコク カンボジア ベトナム プノンペン ホーチミン 南部経済回廊 の国内への送金が消費の追い風になり、フィリピン経済を下支え している。ベニグノ・アキノ大統領が効果的な政策を打ち出してい ることも大きい。高度人材の育成に多額の予算を投入し、インフ ラの整備にも力を入れている。アキノ大統領はフィリピン史上最も ○資料および講演内容には、講演当時の見解および予想に基づく将来の見通しが含まれますが、これは事前の通知なく変更したり修正したりする ことがあります。また、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 ○当資料で使用しているグラフ、パフォーマンス等は参考となるデータを提供する目的で作成したものです。数値等は過去の実績や将来の予測を示 したものであり、将来の成果を保証するものではありません。 ○当資料は信頼できると判断された情報等をもとに作成しておりますが、必ずしもその正確性、完全性を保証するものではありません。当資料の内容は 作成日時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。 イーストスプリング・インベストメンツ株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 379 号 加入協会:一般社団法人投資信託協会、 一般社団法人日本投資顧問業協会 イーストスプリング・アジア・セミナーレポートVOL.2 アジア株式の投資機会を 捉える4つの視点 日本を上回る規模まで成長したアジア株式市場。 イーストスプリング・インベストメンツ株式会社 運用部シニア ファンド マネジャーの (セミナー開催日:2015 年 3 月 3 日) 藤野哲が、4 つの視点からアジア株式の投資魅力を探る。 尺度)、④運用スタイルの 4 つの視点で掘り下げていきたい。 第 2 部 存在感を増すアジア株式市場 バリュー投資家の視点から まず、リスクの視点から2000 年以降の 15 年間を振り返ると、 リーマン・ショックが起きた 2008 年を含む期間において、アジア株 式のリスクは米国、日本、欧州などの主要市場と比べて一段と高く なっている。しかし、アジア株式のリスクから為替の要因を除くと、 日本株式のリスクと大差ないことが分かる。つまり、アジア株式のリ スクが相対的に高いのは為替の影響が大きいといえるだろう。 次 に、リターンの 視 点からアジア 株 式 の 特 徴を探っていく。 イーストスプリング・インベストメンツ株式会社 運用部 シニア ファンド マネジャー 藤野 哲 2000 年 以 降のアジア指 数とアジア・パシフィック指 数の累 積リ ターンは主要市場を上回っている。また、基準日から3 年間または 5 年間投資を行ったと仮定した 「ローリングリターン」の推移を見て も、同様の結果となる (図 1)。ここで重要なのは、より投資期間の 日本を上回るアジアの株式時価総額 長期投資でより顕著な アジア株式の高いリターン 長い 5 年ローリングリターンでこの傾向が顕著である点である。 アジア経済の発展とともに、アジア株式の市場規模は拡大して 配当割引モデルとは、将来の配当金を期待収益率で割り引いて アジア株式のリターンの高さは一般に、 「アジア地域の経済成 長力が高いから」といった漠然とした理由で語られることが多い が、ここでは配当割引モデルを用いて考えたい。 い る。2015 年 1月末 時 点の 時 価 総 額 は、浮 動 株を調 整した 現在価値にして理論株価を求める手法を指す。その計算式である MSCI 指数ベースではアジアは 375 兆円と、日本の 317 兆円を 「株 価 P=次期配当予想 D1÷(期待収益率 r−配当成長率 g)」を 上回る。また、世界株式の代表的な指数である MSCI ACWI に 変形すると、 「期待収益率 r=予想配当利回りD1/P+配当成長率 おけるシェアは、アジアが約 9%、アジア・パシフィックが 11% 超 g」となる。従って、配当成長率が経済成長率に一致すると仮定す まで成長しており、その存在感は増している。 ると、期待収益率は予想配当利回り分だけ経済成長率を上回る アジア株式の投資機会を捉えるには、どのようなアプローチが こと(r > g)になる。逆にいうと、経済成長率の高い市場ほど株 効果的だろうか。①リスク、②リターン、③バリュエーション(投資 式の期待リターンが高くなる。実際に、アジアは他地域をしのぐ 経済成長力を持っており、株式の高い期待リターンのドライバー 図1 地域別の 5 年ローリングリターン となっている。 350% また、アジアは ROE(自己資本利益率)の水準が高いことも株 アジア・パシフィック 300% 式の高い期待リターンのドライバーとなっている。企業の持続的 アジア 250% 欧州 な成長力を示す「サステイナブル成長率」は、ROE と内部留保率 米国 を掛けて算出される。内部留保率は1から配当性向を引いたもの 日本 200% だが、アジア株式の配当性向は 40% 超と相対的に高いため、内 150% 部留保率は低くなる。しかし、高い ROE に支えられたアジア株式 100% のサステイナブル成長率は、日本や欧州よりも高くなっている。 50% PBR は約 1.6 倍と割安な水準 配当効果がリターンの大きな源泉 0.0 -50% 2000 年 1月 ∼04 年 12月 02 年 1月 ∼06 年 12月 04 年 1月 ∼08 年 12月 06 年 1月 ∼10 年 12月 08 年 1月 ∼12 年 12月 10 年 1月 ∼14 年 12月 出所:ブルームバーグの数値を基に、イーストスプリング・インベストメンツ株式会社が作成。日本はMSCIジャパン、米国 はMSCI 米国、欧州はMSCIヨーロッパ、アジアはMSCI AC アジア(除く日本)、アジア・パシフィックはMSCI AC アジ ア・パシフィック (除く日本)の 2000 年 1月から2015 年 1月の指数値(税引前配当込み、米ドル建指数の円換算) を基 に、開始月を2000 年 1月から2010 年 2月とする122 期間について、各 60 ヵ月間の騰落率を算出。 3 つ目の視点は、バリュエーションだ。これまで高いパフォーマン スを生み出してきたアジア株式は「割高」のイメージを持たれがち である。実際はどうだろうか。アジア各市場の足元のバリュエー 150318(07) イーストスプリング・アジア・セミナー ─ アジア株式の投資機会を捉える4つの視点 ションを見ると、ばらつきがあることが分かる(図 2)。例えば、フィ る。アジア市場 全 体では、リーマン・ショック前の 2007 年には バリュー投資が生み出す超過収益 割安銘柄を絞り込むファンダメンタルズ分析 約 3 倍まで上昇した PBR(株価純資産倍率)が、2012 年以降は 私たちイーストスプリング・インベストメンツは、こうしたアジア株式市 1.6 倍付近で推移している。バリュエーションが低いとその後の 場の特徴を活かした運用戦略を提供しているが、本日はそのうちの 2 株 価の上昇余地が大きいことから、現在は投資を行うのに適し 戦略をご紹介したい。ひとつは純粋なバリュー・アプローチの 「バリュー た環境といえるだろう。 戦略」 であり、もうひとつはバリュー・アプローチに加え 「インカム」 (配 最後の視点は、運用スタイルである。アジア・パシフィックのバ 当収益) の獲得を目指す 「バリュー+インカム戦略」 である。どちらも時 リュー指数とグロース指数について、2000 年以降の累積リターン 価総額の規模は問わず、50から70 の銘柄保有を目安としている。 を比べると、バリュー指数の 4.1 倍に対し、グロース指数は 2.7 両戦略に共通した運用の特徴は次の 3 点に集約できる。まず、 倍にとどまっている。基 準日から 3 年間投 資を行った場 合のリ 経験豊富な少数のメンバーで構成されていること。次に、極端に ターンである「3 年ローリングリターン」でも、バリュー指数はグ 割安な銘柄の分析に集中すること。そして、企業の中長期的なサ ロース指数を安定的に上回っており、その優位性は明らかだ。一 ステイナブル利益を中心としたバリュエーション判断に独自性を 方、規模別では、大型・中型・小型に大きな差異は見られない。 持つこと。なお、運用チームは運用プロセスのうち、約 80%の時 最後に、配当の重要性についても触れておきたい。一般的にア 間をファンダメンタルズ分析に費やしている。 ジア株式は「成長」のイメージが強いように思われるが、アジア株 アジア株式の配当利回りが他市場より高いことは前述のとおりだ リピンやマレーシアは割高である一方、中国や香港は割安であ 式の配当効果は他市場に比べて顕著に大きく、リターンの重要 が、 「バリュー+インカム戦略」 ではさらに高い配当利回りを実現してい な要素となっている。事実、アジア株式の配当利回りは主要市場 る (図 3)。ポートフォリオは特定の市場やセクターに偏らず、バランス を上回っており、1 株当たり配当の成長がそれを支えている。そ 良く投資を行っている。いい換えると、相対的に配当利回りが低い市 の背景には、アジアにおいて配当を重視する企業文化の浸透が 場やセクターにも投資機会は存在し、偏りのないポートフォリオ構築が あり、1998 年に 5 割に過ぎなかった有配企業の割合は、2013 可能だということだ。また、当戦略はリスクを抑えることを目的としてい 年には 9 割超にまで伸びている。また、利益の水準は経営環境 ないが、設定来の実績リスクは対ベンチマークで1∼2 割低くなってい によって大きく変動するが、配当の水準は安定しているという点 る。また、運用パフォーマンスは1 年、3 年、5 年、設定来のいずれ は長期投資家にとって魅力的に映るだろう。 の期間においてもベンチマークを上回っている。 イーストスプリング・インベストメンツは、 「バリュー投資は長期 図 2 アジア・パシフィック指数の PBR の推移 的に超過収益を生み出す」という信念を持つ。発掘した割安銘柄 3.5 をさらに絞り込んで長期投資を行うことにより、今後も超過収益 フィリピン 3.3 3.0 の獲得を目指していく。 図 3 バリュー+インカム戦略とその他主要市場の実績配当利回り 2.5 (%) +1 標準偏差(2.2) マレーシア 2.0 2.0 平均(1.9) 1.5 5.0 -1 標準偏差(1.6) 中国 1.5 2.0 香港 1.4 1.0 0 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 3.1 3.0 1.0 0.5 4.5 4.0 2010 2012 2014 出所:MSCI、ブルームバーグの数値を基に、イーストスプリング・インベストメンツ (シンガポール) リミテッドが作成。期間は 1996 年 1月末から2015 年 1月末。アジア・パシフィック指数はMSCI ACアジア・パシフィック (除く日本)。 2.5 戦略 アジア・パシフィック 先進国 1.9 1.8 米国 日本 出所:ブルームバーグの数値を基に、イーストスプリング・インベストメンツ (シンガポール) リミテッドが作成。2014 年 12月 末時点。アジア・パシフィックはMSCI ACアジア・パシフィック (除く日本)、先進国はMSCIワールド、米国はMSCI 米国、 日本はMSCIジャパン。指数の 「実績配当利回り」 はブルームバーグの集計による過去 12 ヵ月実績配当利回り。戦略の 「実績配当利回り」 はイーストスプリング・インベストメンツ株式会社の集計。 ○資料および講演内容には、講演当時の見解および予想に基づく将来の見通しが含まれますが、これは事前の通知なく変更したり修正したりする ことがあります。また、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 ○当資料で使用しているグラフ、パフォーマンス等は参考となるデータを提供する目的で作成したものです。数値等は過去の実績や将来の予測を示 したものであり、将来の成果を保証するものではありません。 ○当資料は信頼できると判断された情報等をもとに作成しておりますが、必ずしもその正確性、完全性を保証するものではありません。当資料の内容は 作成日時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。 ○MSCI 指数は MSCI Inc. が算出している指数です。同指数に関する著作権、知的財産権その他の一切の権利は MSCI Inc. に帰属します。また MSCI Inc. は、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。 イーストスプリング・インベストメンツ株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 379 号 加入協会:一般社団法人投資信託協会、 一般社団法人日本投資顧問業協会 イーストスプリング・アジア・セミナーレポートVOL.3 急拡大するアジア市場の 魅力に迫る アジアの債券市場は拡大しており、多様な投資機会を提供している。 イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッドで債券部門チーフ・インベストメント・オフィサーを (セミナー開催日:2015 年 3 月 3 日) 務めるブン・ペン・オイがアジア債券市場発展の背景と、その魅力について語る。 を投資に還流させることを目的に、2003 年にアジア・オセアニア 第 3 部 アジア債券市場 アジア債券市場:その発展と投資機会 地域の中央銀行・通貨当局の主導で発足した。2003 年に米ドル 建て債券を対象とした「アジア・ボンド・ファンド1」、続いて 2005 年にはアジア現 地通 貨建て債券を対象とした「アジア・ボンド・ ファンド 2」を設定した。また、2008 年には ABMI ロードマップ を導入し、ガバナンスの強化をはじめ、市場のインフラ整備や企 業の起債を後押ししてきた。 イーストスプリング・インベストメンツ (シンガポール)リミテッド 運用部 債券部門チーフ・インベストメント・オフィサー ブン・ペン・オイ アジア債券市場は、他市場との比較でも魅力的な利回りを提供 している。外貨建てアジア債券市場は、米ドル建ての米国社債市 場との比較でも、投資適格社債およびハイイールド社債など比較 可能なカテゴリー間では、相対的に高い平均格付けながら高い利 回り水準となっている(図 1)。 ABMI が市場拡大の成長ドライバーに 流動性の課題も改善傾向 加えて、ボラティリティ(価格変動率)については、アジア以外 アジア債券市場は近年、拡大が著しい。米ドル建てを中心とす 水準を実現している。リスク・リターン特性を見ると、アジア債券 る外貨建て債券市場は過去10 年間で年率 12% となる拡大を遂 は他の海外資産クラスと同等かそれ以下のリスク水準でありなが の新興国と比較して低位にあり、米国のボラティリティと近い動 きで、いわば G7(主要 7カ国)並みのボラティリティで高い利回り げてきた。さらに現 地 通 貨 建て債券市場は同年率 17%の拡大 ら魅力的なリターンを上げている(図 2)。 ペースとこれを上回る。債券市場に占める社債のウエイトも増加 一方、課題である流動性についてはどうか。アジア各国の経済 している。このアジア債券市場拡大を推進してきたのが、 「アジア は健全な発展を遂げており、信用格付けは投資適格格付けに収 債券市場育成イニシアティブ(ABMI)」だ。 斂してきた(図 3)。これが投資家層の拡大につながり、ABMI に ABMI はアジア債券市場の活性化を通じて地域の豊富な貯蓄 よる継続的なサポートもあり、市場流動性は大幅に改善している。 図1 国・種別の平均利回り(%) 図 2 リスク/リターン比較 アジア債券 対 その他資産クラス(円ベース) 8 12 ● アジア・ハイイールド社債 7 10 6 ● 新興国国債 5 リターン ︵年率 %︶ 4 3 2 1 0 アジア・ハイ イールド社債 (米ドル建) 新興国 ドル建 国債 新興国 現地通貨建 国債 米国ハイ イールド 社債 BBB−* BBB+* B+ アジア債券 アジア債券 米国 先進国国債 (ドル建)(現地通貨建) 投資適格 社債 日本国債 ■ アジア株式(除く日本) ● アジア債券(ドル建) 8 ● アジア債券(現地通貨建) 6 先進国国債 ● ● 米国債/政府機関債 ■■ 世界株式 米国株式 4 2 ● 日本国債 平均格付け BB− BBB+ A A− AA A+ 0 0 5 10 15 20 25 30 リスク (年率 %) 出所:ブルームバーグ、イーストスプリング・インベストメンツ (シンガポール) リミテッド、JPモルガン、BofAメリルリンチ、シ ティグループ、HSBC、2015 年 1月末日。アジア・ハイイールド社債(米ドル建)及びアジア債券(米ドル建) はそれぞれ JPモルガン・アジア・クレジット・インデックス (JACI)非投資適格債とJACI インデックス、米国ハイイールド社債はBofAメ リルリンチ US ハイ・イールド・インデックス、アジア債券(現地通貨建) はHSBCアジア・ローカル・ボンド・インデックス、新 興国ドル建国債と新興国現地通貨建国債は、JPモルガンEMBIGとJPモルガンGBI- EM グローバル・ブロード・インデッ クス、米国投資適格社債は、BofAメリルリンチ US コーポレイト・インデックス、先進国国債はシティグループ世界国債イ ンデックス、日本国債はBofAメリルリンチ日本国債インデックス。 格付けはS&P 社の格付け。 * 出所:ブルームバーグ、イーストスプリング・インベストメンツ (シンガポール) リミテッド 2000 年 12月∼ 2015 年 1月の月次リ ターン (円ベース) を使用。アジア・ハイイールド社債及びアジア債券(ドル建) はそれぞれJPモルガン・アジア・クレジット・イン デックス (JACI)非投資適格とJACIインデックス、新興国国債はJPモルガンEMBIG、アジア債券(現地通貨建) はHSBC アジア・ローカル・ボンド・インデックス、先進国国債はシティグループ世界国債インデックス、米国債 / 政府機関債はシティグ ループ・US・ トレジャリー /エージェンシー・インデックス、日本国債はBofAメリルリンチ日本国債インデックス、アジア株式(除 く日本) はMSCIアジア (除く日本)、世界株式はMSCI ACワールド、米国株式はS&P500インデックス。 150317(02) イーストスプリング・アジア・セミナー ─ 急拡大するアジア市場の魅力に迫る インド、中国、インドネシアが アジア債券市場をリード りに、2007 年のオフショア債券市場の創設など、さまざまな制 2013 年のバーナンキ・ショックに続き、2014 年には米国の され、現在、中国債券市場の発行体数、残高ともに急拡大してい 度の導入により、政府主導で債券市場の活性化を目指している。 海外投資家からのアクセスが限られていた中国市場が徐々に開放 テーパリング(量的金融緩和縮小)が発 表されたことで、新興国 る。海外投資家の間では、国内市場への投資や為替取引への規 からの資金引き揚げの可能性が懸念され、フラジャイル・ファイ 制に加えて、足元の貸出し急増と不動産市場での過大評価に懸 ブ(脆弱な 5 通貨)への不安感が高まった。 念を持つ向きもある。また、デフォルト(債務不履行)の事例が少 こうした背景から、アジア通貨の対米ドルの価値も下落し、ア なく、倒産法制などの不透明さの指摘もある。それだけに、オン ジア債券のバリュエーションは割安な水準となっている。一方で、 ショア市場とオフショア(CNH)市場との利回り格差、社債市場 経 済ファンダメンタルズは引き続き良 好であり、信用格付けも の魅力的なスプレッドなど、見過ごされている投資機会も多い。 1997 年のアジア通貨危機以降の改善基調が続いている。ここ インドネシアにおいても、新政権や中央銀行に対する信認改 で注目される投資機会が、インド、中国、インドネシアの市場だ。 善が大きなプラス要因といえる。政府はインフレをコントロールし これら 3 カ国はアジア経済の中では大国の位置付けだ。 つつ、燃料補助金を削減し、その財源をインフラ投資などに効率 インドでは 2014 年の総選挙で新政権が誕生したことで、ガバ 的に再配分している。そのほか、政府主導による経済開発や汚 ナンス体制の改善が期待される。中央銀行によるインフレ抑制の 職撲滅への取り組みなどもマクロ経済の改善を促進している。イ 実現で、ファンダメンタルズは回復基調にある。また、原油価格の ンドネシアでは、短期の投機資金の流入に対する規制は残るも 下落や政府の燃料補助金の削減から、現状財政収支のバランス のの、国債市場の外国人保 有比 率がおよそ4 割に達するなど、 が維持されつつある。インドは、規制制度の簡素化や源泉徴収税 海外投資家による現地債投資が先行している。 率の軽減など、海外投資家による投資資金誘致にも取り組んでい る。一方で、国内債券市場への海外投資家枠を設定しており、現 ラ関連を中心とした社債市場は海外投資家にとって貴重な投資機 ファンダメンタルズを幅広くモニタリング 複合的な分析を通じて銘柄を厳選 会となっている。 成長著しい 3 カ国はもちろん、アジア各国の経済は先進国から 中国では、2002 年の QFII(適格外国機関投資家制度)を皮切 新興国まで様々な発展段階にあり、その多様性がアジア債券市 状では国債市場への新規投資は制限されている。その中でインフ 場の投資妙味だ。その多様性ゆえに明確な投資哲学が必要なの 図 3 アジア諸国の信用格付けの推移 AAA AA+ AA AAA+ である。中長期での投資リターン獲得においては、投資家のリス シンガポール 香港 マカオ 中国 , 台湾 韓国 A ABBB+ BBB BBBBB+ クに対する認識の変化が引き起こす本源的価値からの乖離(ミ ス・プライシング)に投資機会を見出すことができる。そのために は、景気循環において生じる金利動向とクレジット・スプレッドに おける投資機会を見極めることが重要だ。 マレーシア タイ イーストスプリング・インベストメンツの債券運用プロセスでは、個 インド,フィリピン インドネシア タルズ分析で内部格付けを行い、その後バリュエーション分析に BB BB- 別企業の健全性や財務耐性を示す各指標の推移からファンダメン よって割安銘柄を特定し、需給関係をテクニカル分析で見極める。 B+ イーストスプリング・インベストメンツはアジア最大級の資産運 B 用会社として、経験豊富な債券運用チームによる独自のアプロー B2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 出所:Moody’ s、S&P、Fitchの現地通貨建長期国債の格付けを元にイーストスプリング・インベストメンツ (シンガポール) リ ミテッドが作成 チを活かし、アジア債券市場拡大の恩恵を投資家の皆様に還元し たいと考えている。 ○資料および講演内容には、講演当時の見解および予想に基づく将来の見通しが含まれますが、これは事前の通知なく変更したり修正したりする ことがあります。また、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 ○当資料で使用しているグラフ、パフォーマンス等は参考となるデータを提供する目的で作成したものです。数値等は過去の実績や将来の予測を示 したものであり、将来の成果を保証するものではありません。 ○当資料は信頼できると判断された情報等をもとに作成しておりますが、必ずしもその正確性、完全性を保証するものではありません。当資料の内容は 作成日時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。 ○MSCI 指数は MSCI Inc. が算出している指数です。同指数に関する著作権、知的財産権その他の一切の権利は MSCI Inc. に帰属します。また MSCI Inc. は、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。 イーストスプリング・インベストメンツ株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 379 号 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