30P2-am147 GM2 ガングリオシドーシス対する間葉系幹細胞を用いた ex vivo 遺伝子治療法に よるクロスコレクション効果の検討 ◯辻 大輔 1,4 ,難波 建多郎 1 ,浅沼 大祐 2 ,神谷 真子 3 ,浦野 泰照 3 ,伊藤 孝司 1,4 ( 1 徳島大薬・創薬生命工学分野,2 東京大学医学部・神経生物学分野,3 東京大学医学 部・生体情報学分野,4 NIBIO) [研究目的] GM2 ガングリオシドーシスは、リソソーム酵素である ȕ-ヘキソサミ ニダーゼ(Hex)の遺伝的欠損に基き、GM2 ガングリオシド(GM2)の過剰蓄積 を伴い、進行性に中枢神経症状を惹起する。現在のところ、この疾患に対する根 本的治療法が存在せず、新規の治療法が望まれている。本研究では、GM2 ガング リオシドーシスの一つである Sandhoff 病のモデルマウス(SD マウス)に対し、骨 髄から単離される多能性の幹細胞である間葉系幹細胞を用いた ex vivo 遺伝子治療 法を試み、治療効果が得られたので報告する。 [実験操作] 生後 16 週齢の SD マウス骨髄から間葉系幹細胞を単離し、株化を行 った(SD-MSC)。この SD-MSC に対し、改変型 Hex 遺伝子(modified HEXB; modB) をレトロウィルスにより遺伝子導入を行った後、SD マウス脳室内に移植し、脳内 における酵素活性測定及び新規に合成した蛍光基質を用いた活性染色により補充 効果を評価した。 [結果・考察] 作製した治療用ドナー細胞は、GM2 分解能を持った modified HexB を分泌することが明らかとなり、SD マウスの脳室内に移植後、脳室周辺に分布し ていた。また活性染色により、各脳領域において分泌された酵素が確認され、ク ロスコレクションが起こっていることが明らかとなった。さらに、発症後期には 運動機能の改善が認められたことから、ドナー細胞から供給される modified HexB のクロスコレクション効果によって長期的に中枢神経症状が改善されたと考えら れる。これらの結果から、本研究で構築した SD に対する ex vivo 遺伝子治療モデ ル系により、治療効果が認められることが明らかとなった。
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