日々自動更新する 安全在庫計算理論の詳細とその応用例 ■発表者■ 岡本達明(おかもと たつあき) ■共同研究者■ 浅野和徳、篠原靖幸、横井透、明松寿郎、堀淵浩二 イントロダクション 在庫管理システムのお話です。もし在庫管理に係る業務時間を 半分にできるシステム、運用方法があれば・・・・。皆さんどのように 思われますか? 今回は、そのような事を可能にした、システム、運用方法につい て「安全在庫の正確性」をキーワードに下記4点よりご報告します。 Ⅰ.数量的、金額的成果について →システムデモ Ⅱ.基幹技術「安全在庫の定義」について →ロジック説明 「安全在庫の正確性の担保」により可能となった事例 Ⅲ.店舗の特徴を反映した適正在庫金額の算出 →ロジック説明 Ⅳ.時間、人的成果について →在庫管理業務時間の半減化の検証 Ⅰ.数量的、金額的成果について →システムデモ システムデモ まずは、下記をご覧ください。 当該在庫管理システムのメイン画面となります。 メイン画面 メイン画面 特徴 特徴 安全在庫を 安全在庫を 日々更新させることにより 日々更新させることにより 最適な値を保ち続ける 最適な値を保ち続ける (前年度報告) 発注デモ画面 日々可変する安全在庫を日々自動更新させ、現在庫数と比較し て安全在庫量を割った薬品を自動ピックアップ、それら薬品が月 末に安全在庫収束するための発注量を自動計算します。 発注画面 発注画面 実在庫 安全在庫 発注量 (前年度報告)当在庫システムを用い運用した結果 下記グラフが、システムを用いた場合の技術面の結果です。ほと んど全ての薬品が○と▲が重なっています。つまり〆日に実在庫 が安全在庫付近に収束していることを示しています。 〈数量ベース〉 〈金額ベース〉 棚卸 使用薬品量分析(1000品目~) 2005.03 薬品A 薬品A 薬品B 薬品B‥ ●使用薬品群に対して、▲ ▲が安全在庫量(最低在庫 量)、○ ○が実在在庫量(棚卸時)。ほとんど全ての薬 品が○ ○と▲ ▲が重なっている。つまり安全在庫付近に 実在庫が収束している。 月間薬剤料を1とした時の月末在庫金額の割合 0.3~0.5 金額ベースでの解析。各月の使用薬剤量 金額で在庫金額を割ったもの。ほぼ全て の月でピッチが3割台になっている。 Ⅱ.基幹技術「安全在庫の定義」について →ロジック説明 安全在庫計算理論 安全在庫を極めて正確に保ち続けるための工夫 メイン画面 メイン画面 特徴 特徴 安全在庫を 安全在庫を 日々更新させることにより 日々更新させることにより 最適な値を保ち続ける 最適な値を保ち続ける 自動可変安全在庫計算理論の詳細 1薬品ごとに、連続する【3 3】日間の使用量合計を過去【3 3】ヶ月に 渡って計算し、その最大値を安全在庫とする。*【】は任意の値 105 220 230 0 84 84 240 過去3日の使用量合計 555 429 345 555 450 314 168 408 429 現在 薬品Bの使用量/日 10 30 0 0 100 0 0 安全在庫の定義方法 過去3日の使用量合計 40 30 100 100 100 100 100 ① まず、1日あたりの使用量を現在から過去にさかのぼりピックアップ 薬品Cの使用量/日 ② 次に連続する3日間の使用量合計を算出し、下段に表示させる。 100 40 20 10 300 100 200 ③ この計算を過去3ヶ月間に遡り行う。 過去3日の使用量合計 160 70 330 410 600 700 600 ④ 算出された値の中から最大値をピックアップし、安全在庫と定義する。 薬品Aの使用量/日 105 105 過去 100 100 400 400 最適な値を保ち続けるための工夫 ⑤ 1日当たりの使用量は薬品ごとに毎日蓄積されるので、その度同ロジックを行う ⑥ もし3日使用量合計の最大値に変化があった場合、安全在庫を更新させる 実際には、全医薬品にわたって計算します。 以上のように安全在庫を定義します メイン画面 メイン画面 安全在庫設定における従来のデメリット ①設定に労力を要する ②定期的な見直しが必要 当該システムの デメリットが完全に アドバンテージ 解消された。 (特徴)となった 「安全在庫の正確性の担保」により可能となった事例 Ⅲ.店舗の特徴を反映した適正在庫金額の算出 →ロジック説明 適正在庫金額設定方法 適正在庫金額 薬価 安全在庫数 かける × =合計 このような方法で算出した適正在庫金額は、 この適正在庫金額の設定方法を頭のスミに置いておいて下さい。 従来の月間使用料ベースで計算した場合に比べ 以下の話が理解しやすくなると思います。 各薬品ごとの出かたを反映するので、店舗の特徴を捉えた値となる。 「安全在庫の正確性の担保」により可能となった事例 Ⅳ.時間、人的成果について →在庫管理業務時間の半減化 従来、毎日行う発注を、 2日に1回にすればいいだけのことでした。 H21.06.22のデータ 適正在庫金額と安全在庫設定日数の関係 薬品Aの使用量/日 過去3日の使用量合計 過去3日の使用量合計 230 314 0 168 84 408 84 429 240 345 105 105 同じ薬品でも設定を4日に変えると・・・ 薬品Aの使用量/日 過去4 4日の使用量合計 過去4日の使用量合計 230 398 安全在庫 安全在庫 3日設定 3日設定 0 408 84 513 84 429 240 345 105 105 安全在庫 安全在庫 4日設定 4日設定 納品のタイムラグを考えると、 納品のタイムラグを考えても、 毎日発注 2日に1回の発注 時間 お金。どちらが得か考える 実際に在庫業務時間の50%削減は達成可能か? モンテカルロシミュレーションによる結果(期待値) この、2009/06~07のデータシートの この、2009/06~07のデータシートの 赤字項目を:仮定(正規分布、標準偏 赤字項目を:仮定(正規分布、標準偏 差20%)として、モンテカルロシミュレ 差20%)として、モンテカルロシミュレ ーションを行い(度数分布にて表示)、 ーションを行い(度数分布にて表示)、 約1000カ月分にわたる期待値を計算 約1000カ月分にわたる期待値を計算 地点管理を除く検品・納品時間従来比(%) :48%≒1/2 地点管理を除く検品・納品時間従来比:52%≒1/2 (モンテカルロシュミレーションによる期待値) (2009年 6~7月からの結果) まとめ 上記結果より、発注に係る時間、労力は単純 計算で1/2まで削減された。対して金額増加は5 %の増加に止まった。 以上より本運用方法は非常に効率的であり、 経済的であると考察する。 しかしながら、本運用に関しては、安全在庫の 正確性の担保と任意に設定条件を変更できる環 境を整えて可能となるのではと考察する。 以上で発表を終わります。 ご清聴ありがとうございました。 本発表に際して、システム構築など大変ご助力頂きました、 オークラ情報システム株式会社、安藤様、山花様に感謝致します。 ■発表者■ 岡本達明(おかもと たつあき) ■共同研究者■ 浅野和徳、篠原靖幸、横井透、明松寿郎、堀淵浩二 よくあるご質問と回答 frequently asked questions FAQ 1 :リードタイムマッチングシステムとは? FAQ 2 :安全在庫計算は季節変動に対応できるのか? FAQ 3 :欠品が無くなると理解してよいのか? FAQ 4 :安全在庫は右肩上がりになるのではないか? FAQ 5 :システム導入に要する労力は?注意点は? FAQ 6 :システムランニングコストは? FAQ 7 :在庫金額は下がるのか? Return to FAQ frequently asked questions FAQ 1 :リードタイムマッチングシステムとは? 薬VAN導入店舗をネットワークでつなぎ、過剰品、不動品のグループ内効率的利用 を促すシステム。出庫予定日計算を利用し、従来の方法の不具合を解消させ得る。 系列店舗 過剰・不動 ① グループ内小分け可能薬品数(引きとってもらえたら助かる数量)を自動で計算し、 各店リアルタイムに算出表示する。 ② リードタイム(納期)を各店に設定する。 ③ 下記発注画面で、発注候補にピックアップされた薬品が、系列各店に過剰品、不 動品として存在した場合(小分け可能薬品がある場合)、出庫予定日とリードタイ ム(納期)をPCが比較し、当該薬品の出庫予定日までに納期が可能な場合に限り、 不足 発注先を当該系列店へと自動で変更する。 薬品A 7 発注画面 発注画面 5 3 リードタイム マッチング 出庫予定日 小分け可能数 Return to FAQ frequently asked questions FAQ 2 :安全在庫計算は季節変動に対応できるのか? 季節変動経過日数 1日の使用量 3日間の使用量合計 安全在庫採用値 5 4 3 2 1 0 500 500 500 500 300 42 84 168 84 1500 1500 1300 842 426 294 336 336 266 1500 1500 1300 842 426 336 336 336 336 季節変動後の定常値までのタイムラグは3日間 季節変動後の定常値までのタイムラグは3日間 安全在庫計算値が、季節変動を完全に反映するまでには、約3日間のタイムラグが 存在する。3日後からは、完全に対応できる。(この3日間は毎日安全在庫が更新され る。この3日間は、上記例では、もし現在庫量が安全在庫量付近であった場合におい ては、3日間は担保できず、1日間のみ担保できる。即ち毎日発注の場合は問題ない。 2日に1回発注の場合は欠品の可能性は否定できない。ただし、実際は、現在庫量> 安全在庫量の時に書き換えが起こっているので上記ケースは稀である。また、上記 ケースのような場合は、得てしてPCより先に人が感知し得る。即ち、やや自動化の観 点からは不完全だが現状のシステムで対応できると考えている。また、別建てで(タイ ムラグをなくす)季節変動に対応した安全在庫計算理論も構築しているが、現段階で は搭載させていない。この理論はE-learningを介して配信予定などで参考にして頂き たい。 Return to FAQ frequently asked questions FAQ 3 :欠品が無くなると理解してよいのか? 欠品が無くなるというよりは、欠品が起こりにくい環境を構築でき るという表現が正しい。当然全く新規の薬品が処方された場合に は欠品が起こる。この場合を除外すると、「欠品が起こりにくい環 境」とは下記条件に置かれる期間を、可能な限り短くすることを指 す。マニュアルの場合、欠品を起こすことによって、人に感知され、 後追いで安全在庫を書きかえることになるが、本方式では、毎日 安全在庫を書きかえることにより、下記条件に置かれる期間は最 長で1日である。 欠品が起こりやすい環境…安全在庫を大きい方向に更新しなければならない例 今までの安全在庫量 (444錠) < 現在の在庫量 (520錠) < 更新された安全在庫量 (620錠) Return to FAQ frequently asked questions FAQ 4 :安全在庫は右肩上がりになるのではないか? むしろ、マニュアル設定の場合のほうが安全在庫は右肩上がりになる。本方 式では、安全在庫を計算するためのサーベイ期間を任意に制限することにより、 古くなった大きい値は排除され、自動で安全在庫の値は下がる。 現在 現在 過去 過去 任意の期間 任意の期間ex) ex)3か月 3か月 薬品Aの使用量/日 過去3日の使用量合計 過去3日の使用量合計 230 314 0 168 84 408 84 429 240 345 105 105 500 230 1100 314 0 168 安全在庫を大きい方向に更新しなければならない例…欠品という現象で、捉えることができる。 今までの安全在庫量 (444錠) < < 現在の在庫量 (520錠) < < 更新された安全在庫量 (620錠) 安全在庫を小さい方向に更新しなければならない例…現象として捉えられない。まして品目数が多いと・・・ 更新された安全在庫量 (220錠) 今までの安全在庫量 現在の在庫量 (444錠) (520錠) 300 Return to FAQ frequently asked questions FAQ 5 :システム導入に要する労力は?注意点は? PCを用いたシステムなので、データ送受信、ネットワークの設定、 操作方法の習得などが必要。導入までに約1か月程度は必要。 導入後、店舗の特徴に応じたシステム設定を行う。安定運用まで は2~3か月かかる。今までのマニュアルの感覚と本方法の感覚 の差のようなものがあるので、慣れるまで多少の時間を要する。 また、在庫量を最初にきれいに合わせておかないと当然正しい 運用はできない。実地棚卸を行ってから導入することになる。 別途社員教育が必要と考えている。本システムの理論、在庫の 理論などを学習した後、導入する方がスムーズ。本在庫理論全体 系はE-learningを介して16講座に渡り、配信予定なので参考にし て頂きたい。 Return to FAQ frequently asked questions FAQ 6 :システムランニングコストは? 営利、広告的な質疑応答に関しては、本学会の投稿規程に抵触 する可能性があるので、この場での回答は差し控えたい。 別途、是非お声掛け頂きたい。 Return to FAQ frequently asked questions FAQ 7 :在庫金額は下がるのか? 総合的には下がると考えて良い。ただし、導入前の店舗状況にもよる。例えば、マンパ ワーで、適正な在庫金額を維持できている店舗では、金額は変わらない。確実に下げるこ とができるのは、時間、労力である。また、逆に適正在庫金額が上がる店舗もある。 このような事例は、-例えば、長期処方を多く受付る店舗でしばしば見られるが-本システ ムの特徴は、 A:正確な安全在庫を各薬品ごとに算出し、データを更新し続けることにより、各店舗の特 徴をとらえた適正在庫金額を算出し、その安全在庫量、その金額に収束させ得る B:かかる過程の労力削減 の2点に尽きる。即ち、適正在庫金額が上がる、下がるに関わらず、より適正な在庫金額を 計算した結果である。本在庫理論体系において、ポイントとなるのは、適正在庫金額に在 庫金額がどれだけ一致するかということだ。例えば、弊社R店の場合は、 ① 適正在庫金額÷平均薬剤料=0.494…店舗の目標値 ② 平均在庫金額÷平均薬剤料=0.487…店舗の現状 ③ (①:店舗の目標値)÷(②:店舗の現状)×100=102%…店舗の在庫管理達成率(在庫 管理の上手さ) となり、達成率102%ということだ。この達成率が新たな在庫管理の評価尺度である。 80%以上ならまずきちんとできていると考える。 本当は、この尺度の目標値を店舗の特色を勘案して、決めればなければならない。 店舗の在庫管理の上手さを図るのは、この尺度である。 詳細なデータ 安全在庫計算日数 H21.06.22のデータ 2日 3日 4日 5日 60日 7762330 0.34 8873371 0.39 9780695 0.43 10521381 0.47 90 8227829 9391618 10274051 11065608 0.36 0.42 0.46 120 8724882 9889980 10796767 11631306 150 0.39 9044994 0.40 0.44 0.48 0.52 10245647 11174534 12009426 0.45 0.50 0.53 安全在庫金額/在庫 割合 0.49 最大処方日数 98日 処方箋受付枚数 80枚/日 薬剤品目数 987品目 在庫管理の現状 一般的に薬局における在庫管理は、ほぼすべての薬品 について定量発注点方式が用いられており、発注は毎日 行われている。 定量発注と定期発注の違い 項目 定量発注点方式 定期発注点方式 やり方 一定量を発注 一定期間毎に発注 発注の時期 発注の間隔は決まっていない 発注の間隔は決まっている 発注量 一定 毎回計算なので変動する 何のためにするのか •発注経費の節約 •欠品の防止 •運転資金の節約 長所 •事務処理が簡単になる •在庫量が減る •発注回数が減る 短所 在庫量が増える 事務処理が多くなる 適応対象 •単価の安いもの •需要が安定しているもの •共通の部品 •手配期間の短いもの •安定して手に入るもの •高価なもの •需要変動の大きいもの •手配期間が長いもの 管理時の注意点 •定期的に在庫量をチェックする必要がある •発注点の定期的な見直しが必要 •需要予測の精度の向上 •品目ごとに管理 引用 http://www.sk-zaiko.com/gaiyou/gai01_syurui.html Return to FAQ frequently asked questions FAQ 1 :リードタイムマッチングシステムとは? 薬VAN導入店舗をネットワークでつなぎ、過剰品、不動品のグループ内効率的利用 を促すシステム。出庫予定日計算を利用し、従来の方法の不具合を解消させ得る。 ① グループ内小分け可能薬品数(引きとってもらえたら助かる数量)を自動で計算し、 各店リアルタイムに算出表示する。 ② リードタイム(納期)を各店に設定する。 ③ 下記発注画面で、発注候補にピックアップされた薬品が、系列各店に過剰品、不 動品として存在した場合(小分け可能薬品がある場合)、出庫予定日とリードタイ ム(納期)をPCが比較し、当該薬品の出庫予定日までに納期が可能な場合に限り、 発注先を当該系列店へと自動で変更する。 7 発注画面 発注画面 5 3 リードタイム マッチング 出庫予定日 小分け可能数
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