J 生体超分子物理研究室 研究室 原子間力顕微鏡を製作し,急速凍結した生体試料の割断面 を解析するための技術開発を行っています.また,膜蛋白 質が自己集合して作るサッカーボール様球殻構造体,それ らが融合して作るチューブ構造体や平面構造体に関する研 究を行い,生体膜の高次構造を人工的条件で制御する方法 を開発しています. 2 )生体イオンポンプの4次元構造機能解析 生体膜には色々な種類の能動輸送系が見つかっており, ATP分解エネルギーを利用するもの,基質の酸化エネル * 神山 勉 教授 Tsutomu Kouyama, Prof. ギーを利用するもの,光エネルギーを利用するものと,実 に様々です.しかし,膜内外の濃度勾配に逆らって物質を 村上 緑 助教 Midori Murakami, Assist. Prof. 輸送する点では同じです.当研究室では,すべての能動 北島智美 技術補佐員 Tomomi Kitajima, Technical Staff 輸送系に共通した作動原理が存在するのではないかとい 神田美幸 技術補佐員 Miyuki Kanda, Technical Staff う作業仮説の下に研究を行っています.具体的には,光駆 動プロトンポンプとして働くバクテリオロドプシンを研究 命現象の解析技術が近年飛躍的に進歩し,特に分子 対象に取り上げ,膜融合を利用して作成した三次元結晶 レベルでの理解は格段に深まっています.同時に, のX線構造解析( 3 次元)に,時間・pH・圧力などもうひ 生命誕生以来の数十億年の間に構築された生物の階層構 とつの物理パラメータを加えて(+ 1 次元) ,基底状態お 造は極めて奥深いものであり,「生命」をより深く理解す よび各反応中間体について立体構造を求めてきました.こ るには,異なる階層で起こっている現象を包括的に解明 の 4 次元構造解析による一連の研究成果を基に,バクテリ していくことが重要であると認識されはじめています. オロドプシンはプロトンだけでなく水分子の輸送をも司る 当研究室では,分子レベルおよび細胞レベルで起こって “水分子/プロトン対輸送体”であるという仮説を提唱し いる様々な現象を調べ,それぞれの階層および階層間を ました.この研究をさらに発展させるため,未解明のNお 支配する法則について研究しています. よびO光反応中間体の構造機能解析,および他の生体ポン プの構造解析にも挑戦しています. 1 )生体膜の高次構造形成の解明 細胞を包む原形質膜,あるいは細胞内小器官や分泌顆粒 3 )光受容膜蛋白質のX線結晶構造解析 を包む膜は,厚さが 5 ナノメートルの脂質二重層と,これ バクテリオロドプシンの研究で培われた技術を利用し に貫入または吸着して存在する蛋白質から構成されていま す.これらの生体膜は裏表が区別できる非対称構造体であ り,物質輸送や情報伝達など,生命維持に必須な諸反応を 促す特殊な反応場を提供しています.そこでは,膜の構成 分子の変形・運動に起因する高次構造の形成・消滅が起こ り,膜融合に代表される巨視的な変形も認められています. 当研究室では,生体膜で起こるこれらの現象を理解するた め,生体膜の高次構造の解析およびそのために必要な技術 開発を行っています.具体的には,フリーズフラクチャー 神山勉教授 J研の構成員一同 役型受容体(GPCR)のモデル蛋白質として知られていま す.市販薬の半数がGPCRを標的分子としており,GPCR の立体構造は創薬研究への応用が期待されているために, 当研究室の成果は非常に注目されています.ロドプシン についても 4 次元構造解析を行い,GPCRの活性化機構を 明らかにすることを目指しています. て,光エネルギーによって機能を発現する様々な膜蛋白 質について構造解析を進めています.これまでに,光合 成系の光捕集クロロフィル複合体(LHC-II)および視物 質ロドプシンの結晶化に成功しています.最近では,ス ルメイカのロドプシンの結晶構造解析に成功し,2.5Å分 解能で立体構造を解明しました.ロドプシンはG蛋白質共 生 http://bio.phys.nagoya-u.ac.jp/ *連絡先 [email protected] FAX 052-789-2436 Fig. 1 バクテリオロドプシン球殻構造体が自己集合 した六方晶結晶表面の原子間力顕微鏡像 教授:1/助教:1/技術補佐員:2/DC:0/MC:3/G30 student:1 50 Fig. 2 バクテリオロドプシンの立体構造とプロトンチャネル Fig. 3 J研で構造解析された光受容膜蛋白質 左上:アーキロドプシン−2の三量体構造,右上:LHC−II球殻構造体の正 二十面体構造,下:スルメイカロドプシンの生体膜中での二量体構造 大学院生院生指導で配慮している点 るよう配慮しています.蛋白質の構造解析に興味のあ る院生には,高輝度放射光施設(SPring-8)にでかけ, 回折データを収集してもらうとともに,先端技術の開 発にも挑戦してもらいます. 当研究室では,物理的測定手段(分光測定,X線回折, 電子顕微鏡観察など)を習得することに加え,生体試 料の精製に必要な生化学的手法,及び複雑な構造解析 に必要な計算機技術についての知識を短期間に得られ 51
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