カリブ海周辺諸国のエネルギー産業 第25 回 - 石油エネルギー技術センター

JPEC レポート
2012年度
第 25 回
平成 24 年 10 月 30 日
カリブ海周辺諸国のエネルギー産業
米国エネルギー省(DOE)・エネルギー情報局(EIA)のレポートをベースとして、カリブ海に
面しているベネズエラとコロンビアおよびカリブ海に浮かぶ島嶼国のエネルギー産業の現
状について紹介する。
目次
Ⅰ.ベネズエラ(図1)
国名
:ベネズエラ・ボリバル共和国
独立
:1821 年(連邦共和国制国家)
通貨
:ボリバルフェルテ(VEF)
公用語 :スペイン語
人口
:約 3,030 万人(2012 年推定)
首都
:カラカス(約 400 万人)
名目 GDP:約 27 兆円(2012 年推定)
1.ベネズエラのエネルギー消費状況
2010 年のベネズエラ国内の総エネルギ
ー消費量は 3,200 兆 BTU で、エネルギー
Ⅰ.ベネズエラ
1. ベネズエラのエネルギー消費状況
2. ベネズエラの石油産業
3.ベネズエラの天然ガス産業
4.ベネズエラの電力供給
Ⅱ.コロンビア
1. コロンビアのエネルギー消費状況
2.コロンビアの石油産業
3.コロンビアの天然ガス産業
4.コロンビアの石炭産業
Ⅲ.カリブ海の島嶼国
1.カリブ海の島嶼国 の位置
2.島嶼国全体の石油産業
3.トリニダード トバゴについて
4.キューバについて
ミックス比率は石油 47%・天然ガス 28%・
水力23%・石炭2%であった。
ここ10年間、
液体燃料に対する政府の助成金支給によ
り、
石油の比率が 36%から 47%に上昇して
いる。同国は原発を保有していない。(図2)
図 1.ベネズエラの概略地図
図 2.ベネズエラの消費
エネルギー源の比率(%)
1
p.1
p.1
p.2
p.7
p.8
p.8
p.8
p.9
p.10
p.11
p.13
p.13
p.13
p.16
p.17
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2.ベネズエラの石油産業
ベネズエラは世界最大級の原油輸出国の 1 つであり、西半球最大の原油輸出国でもある。
石油分野がベネズエラ経済の最重要地位を占めている。石油輸出国機構(OPEC)の創立国の
1 つとして、ベネズエラは世界の石油市場で重要な役割を演じている。
(1)石油産業国有化の経緯
政府は 1970 年代に石油産業を国有化しベネズエラ国営石油(PDVSA)を創設した。1990 年代
に入り、石油産業の自由化を目指し民間企業の参加を促したが、1999 年に発足したチャベ
ス政権は既存のプロジェクトに対する税金とロイヤリティ料を上げると同時に、既存およ
び新プロジェクトにおける PDVSA の過半数所有権を義務付けた。2002 年に PDVSA の従業員
のほぼ半数がチャベス政権の規則に抗議し職場を放棄した。そのストライキの後、PDVSA
は 18,000 人の従業員を解雇し、政府の支配を固めるため内部組織を徹底的に見直した。
2006 年にチャベス政権は全プロジェクトにおける PDVSA の株式所有率を最低でも 60%とす
ることを義務付け、石油の開発と生産の国有化を完遂した。シェブロンとシェルを含む 16
社は新協定に従ったが、トタールとイタリアの Eni は強制的に株式を奪取された。最近、
チャベス政権は近年の石油生産量減衰を穴埋めするための投資を拡大するように、同国に
留まっている外国企業への圧力を増している。
今年 10 月 7 日に行われた大統領選挙でチャ
ベス大統領が 4 選されたため、今後も石油政策の変更はないものと思われる。因みに、同
大統領の任期は 2013 年 1 月 10 日から 6 年間に延長された。
(2)石油埋蔵量
OGJ 発表の 2012 年 1 月時点の石油確認埋蔵量は 2,110 億バレルで、世界第 2 位・西半球で
はトップである。2 年前の 2010 年時点で 994 億バレルであったものが、2011 年にオリノコ
地帯の超重質原油を確認埋蔵量に含むようにアップデートされ、対前年 1,000 億バレル超
も大幅に増えた。2012 年時点でも前年横ばいの 2,110 億バレルとなっており、世界シェア
の 13.9%を占めている。(表1)今後、PDVSA が埋蔵量の評価作業を実施している「Magna
Reserva プロジェクト」の調査がさらに進めば、3,160 億バレルを超える可能性がある。
(3)ベネズエラの原油
①在来型原油
ベネズエラの在来型原油は国際標準より重質で且つサワーである。そのため、ベネズエラ
原油の多くは同原油に特化した製油所向けとなっている。在来型原油を最も豊富に産する
地域はマラカイボ盆地であるが、その多くの油田は成熟している。業界のアナリストたち
2
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は最大減衰率25%の成熟油田の現状生産能力を維持するにはPDVSA が毎年30 億ドルも費や
さなければならないと見ている。
順位 ベスト 10
2012 年 石 2011 年 石 2010 年 石 2012 年
油確認埋
油確認埋
油確認埋 世界シェ
蔵量
蔵量
蔵量
ア
1.
サウジアラビア
2,645
2,601
2,599
17.4%
2.
ベネズエラ
2,112
2,112
994
13.9%
3.
カナダ
1,736
1,752
1,752
11.4%
4.
イラン
1,512
1,370
1,376
9.9%
5.
イラク
1,431
1,150
1,150
9.4%
6.
クウェ-ト
1,015
1,015
1,015
6.7%
7.
アラブ首長国連邦
978
978
978
6.4%
8.
ロシア
600
600
600
3.9%
9.
リビア
471
464
443
3.1%
10.
ナイジェリア
372
372
372
2.4%
15,232
14,696
13,542
世界合計
100.0%
表 1.国別石油確認埋蔵量ベストテン(億バレル)
②非在来型原油
ベネズエラ中部のオリノコ地帯の堆積層が莫大な量の非在来型の重質原油を保有している。
米国地質調査所(US-GS)はその推定可採埋蔵量を 5,130 億バレルと見ている。
PDVSA は 2005
年から「Magna Reserva プロジェクト」を開始し、オリノコ地帯を 4 エリア 28 鉱区に分け
各鉱区の埋蔵量の評価作業を実施している。その結果、2011 年の石油確認埋蔵量が対前年
増 1,000 億バレルを超えた。
当該プロジェクトの調査が進めばさらに増えると予測される。
表 2 のとおり、オリノコ地帯の開発プロジェクトには稼動中のプロジェクト 4 件
(Petroanzoategui、Petromonagas、Petrocedeno、Petropiar)、2 国間協定に基づくプロジ
ェクト 4 件(Junin-2、Junin-4、Junin-5、Junin-6)、カラボボ(Carabobo)鉱区の大規模プ
ロジェクト 2 件(Carabobo-1、Carabobo-3)がある。
3
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Existing and planned Orinoco Belt projects
Grouping
Project
Current/
Actual/
projected
planned
heavy
Startup
crude
date
production
Partners
Petroanzoategui
1998
(Petrozuata)
107,000
PdVSA (100)%
Petromonagas
1999
(Cerro Negro)
104,730
PdVSA (83.34%), BP* (16.66%)
Petrocedeno
(Sincor)
2000
144,000
PdVSA (60%), Total (30.3%), Statoil (9.7%)
Petropiar
(Hamaca)
2001
131,100
PdVSA (70%), Chevron (30%)
Junin-2
2012
200,000
PDVSA (60%), PetroVietnam(40%)
Junin-4
Bilateral
Agreements Junin-5
2012
400,000
PDVSA (60%), CNPC (40%)
2013
240,000
PDVSA (60%), Eni (40%)
Junin-6
2014
450,000
PDVSA (60%), Russian Consortium (40%)
Carabobo-1
2013
400,000
PDVSA (60%), Indian Consortium (18%),
Petronas (11%), Repsol YPF (11%)
Carabobo-3
2013
400,000
PDVSA (60%), Chevron (34%), Japanese
Consortium (5%), Suelopetrol (1%)
Active
Projects
Carabobo
Bid Round
Sources: PdVSA, Global Insight, Wood Mackenzie (単位 BPD)
*BP has agreed to sell their share to TNK-BP
表 2:オリノコ地帯の開発プロジェクト概要
図 3.オリノコ地帯のエリア分割図
4
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(4)石油の生産・消費・輸出
①石油の生産と消費
2011 年の石油生産量は約 247 万 BPD(原油 224 万 BPD、
残りはコンデンセートと NGL)であっ
た。ベネズエラ原油の生産量は測定方法論により異なってくる。即ち、オリノコベルトの
超重質石油そのものを原油としてカウントするケースとアップグレードした合成原油をカ
ウントするケースがある。
後者は前者より約 10%少なくなるが、
DOE は後者を採用している。
2011 年の原油生産量は対前年 10 万 BPD 増加したが、2009 年レベルと同等である。2001 年
以来、総石油生産量は約 1/4 減少している。その主な原因は成熟油田の生産量減少や設備
の維持補修問題である。一方、国内消費量は 2001 年以来 39%増加したため正味の輸出量が
減少している。
(図4)
図 4.ベネズエラの石油生産量と消費量の年次推移(千 BPD)
②石油の輸出
2010 年に 170 万 BPD の石油を輸出したが、1997 年のピーク(306 万 BPD)に比べ約 50%も落
ち込んでいる。地理的に近いことと米国のメキシコ湾岸製油所がベネズエラ産重質原油を
処理する設計がなされていることから米国向けが大きなシェアを占めるが、近年はその量
が落ちてきている。現在、米国の輸入原油に占めるベネズエラ原油の比率はカナダ・メキ
シコ・サウジアラビアに次いで 4 番目となっている。2011 年に米国はベネズエラから 95
5
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万 BPD の石油(原油と製品)、カリブ海の米国領ヴァージン諸島からベネズエラ産原油を精
製した製品を 19 万 BPD 輸入している。しかし、近年ベネズエラは原油輸出先を米国から離
れてカリブ海諸国・アジア・欧州向けに多角化しようとしている。とりわけ、中国向けが
2005 年に 2 万 BPD だったものが
2011 年には 23 万 BPD と急速に伸
びている。(図 5)
ベネズエラは近隣のカリブ海諸国
や中米諸国へかなりの量の石油
(原油と製品)を供給している。そ
の 価 格 は 「 Petrocaribe
Initiative」に基づき市場価格よ
りも低く且つ有利な期間融資条件
が付いている。しばしば、現金取
引の代わりにバーター協定による
長期返済条件の場合もある。
別途、
キューバとの間には単独の石油供
給協定がある。産業筋によれば、
キューバに対してベネズエラが優先的に 40 万 BPD 超の石油を供給することになっている。
因みに、
「Petrocaribe Initiative」
とは近隣諸国が特恵の支払い条件で
図 5.ベネズエラの原油輸出先(2011 年実績、%)
ベネズエラ産石油を購入する石油同盟で、2005 年に発効しベネズエラおよび近隣の 18 ヵ
国が加盟している。
(5)製油所
2012 年 1 月時点で、国内に 1 つの石油精製コンプレックスと 4 つの製油所があり原油精製
能力合計は 128.2 万 BPD である。これら全てを PDVSA が所有しており、内訳は以下のとお
りである。
・ベネズエラ北西部・ファルコン州パラグアナ石油精製コンプレックス(94.0 万 BPD)
・北東部・アンソアテギ州プエルトデラクルス製油所(19.5 万 BPD)
・北西部・カラボボ州エルパリート製油所(12.7 万 BPD)
・西部・スリア州マラカイボ製油所(1.5 万 BPD)
・北東部・アンソアテギ州サンロケ製油所(0.5 万 BPD)
又、図 6 のとおり、PDVSA は海外にも相当な石油精製権益を保有している。PDVSA の 100%
子会社 CITGO をとおし、米国で 3 製油所(原油処理能力合計:75.5 万 BPD)を操業、1 製油
所(19 万 BPD)の株式の 50%を所有している。
従って、
米国での石油精製権益合計は 85 万 BPD
となっている。他に、カリブ海諸国で 64.2 万 BPD、欧州で 3.3 万 BPD の石油精製権益を保
6
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有している。
現在、
ベネズエラは国内の精製能
力拡大と世界の精製市場への参入
を計画している。国内では 2020
年までに40万BPD超の精製能力追
加を計画している。一方、国外で
の注目すべき計画には中国石油天
然ガス有限公司(PetroChina)と合
弁で中国広東省に製油所新設(40
万 BPD)、エクアドル国営石油
(Petroecuador)と合弁でエクアド
ルのマナビ州に製油所新設(30 万
BPD)、ブラジル国営石油
(Petrobras)と合弁でブラジル
北東部に製油所新設(23 万 BPD)
などがある。
図 6.国内および海外における PDVSA 保有石油精製能力
(2011 年実績、1,000BPD)
3.ベネズエラの天然ガス産業
(1)天然ガスの埋蔵量
OGJ 発表の 2012 年 1 月時点の天然ガス確認埋蔵量は 5 兆 5,190 億 m3 で、西半球では米国
に次いで第 2 位である。
(2)参入している天然ガス企業
ベネズエラ国営石油(PDVSA)が最大の生産者且つ配送者であるが、複数の民間企業
(Repsol-YSP、シェブロン、スタットオイルなど)が参入してきている。
(3)天然ガスの生産と消費
図7にあるように2011年の
天然ガス生産量は 311 億
m3(1.1 兆 ft3)、消費量は
340億m3(1.2兆ft3)であっ
た。消費量が生産量を上回
7
図 7.ベネズエラの天然ガス生産量と消費量の年次推移
(10 億立方フィート)
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っており、ベネズエラは天然ガスの純輸入国となっている。輸入元は主に米国とコロンビ
アである。国内消費の大部分が成熟油田の原油増進回収(ガス注入)に使われている。
4.ベネズエラの電力供給
ベネズエラの 2010 年の
年間総発電量は 1,050 億
kWh で、
その 72%は水力発
電が占めた。2009 年から
2010 年にかけての大干
ばつでダムの水位が低下
し、
チャベス大統領は
「電
力危機」を宣言し、政府
は電力需要削減政策を実
施した。その結果、2010
年の総発電量は 2008 年
に比べかなり減少した。
図 8.ベネズエラの電源別発電量の推移(10 億 kWh)
(図 8)
Ⅱ.コロンビア(図 9)
国名
:コロンビア共和国
独立
:1831 年(共和制国家)
通貨
:コロンビアペソ(COP)
公用語 :スペイン語
人口
:約 4,660 万人(2012 年推定)
首都
:ボゴタ(約 770 万人)
Llanos 盆地
名目 GDP:約 29.2 兆円(2012 年推定)
1.コロンビアのエネルギー消費状況
2009 年のコロンビア国内の総エネル
ギー消費量は 1,300 兆 BTU で、エネル
ギーミックス比率は石油が最大で、以
図 9.コロンビアの概略地図
下水力・天然ガス・石炭と続いている
が、ここ 10 年間は天然ガス消費量が上昇している一方、豊富に産出する石炭のほとんどを
輸出に回している。電力需要の大部分は水力に依存、原発は保有していない。
8
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2.コロンビアの石油産業
政府が行った一連の規制改正が石油・天然ガス分野の増産の動機付けとなって、外国の資
本家にとってより魅力的になってきている。さらに、政府は上流の石油産業を蘇らせるた
めコロンビア国営石油(Ecopetrol)の部分的な民営化を実施した。同時に、ここ 10 年間で
石油・天然ガスインフラに対するゲリラ攻撃も減り、国内の治安状態も改善されてきた。
今後、石油を増産するには石油輸送インフラと石油精製部門に対し多くの投資が必要とな
る。
(1)参入している石油企業
エネルギー分野の政府機関は鉱山エネルギー省で、国が炭化水素資源の全てを所有してい
る。政府は外国企業により多くの投資機会を与える政策をとってきた。即ち、上流部門で
は外国企業が石油ベンチャー事業の権益の 100%を所有して、コロンビア国営石油
(Ecopetrol)と競合することを許容している。現在、多くの国際石油企業が上流部門に参入
しているが、Ecopetrol が同国の石油生産量の 60%を生産し、同国最大の石油生産企業の地
位を維持している。
(2)石油埋蔵量
OGJ 発表の2012年1 月時点の石油確認埋蔵量は対前年1 億バレル増え20 億バレルである。
(3)石油の生産・消費・輸出
コロンビアの主な原油生産地はアンデス山脈の麓の丘陵地帯と東部のアマゾン ジャング
ル地帯であるが、近年は同国中部の Meta Department も重要な生産エリアになってきてい
る。Meta Department のリャノス盆地には同国最大の Rubiales 油田が存在している。2011
年の原油生産量は 92.3 万 BPD で、2008 年(59.5 万 BPD)に比べ 35%伸びた。この上昇傾向は
続いており、2012 年 3 月実績では 95.1 万 BPD に上昇、2012 年末までに 100 万 BPD に達す
ると予想されている。(図 10)一方、国内石油消費量の 2011 年実績は 29.8 万 BPD で生産量
を下回っており、コロンビアは石油の純輸出国となっている。石油輸出先のトップは米国
で、2011 年には原油と石油製品を合わせて 42.2 万 BPD 輸出した。次いで、中国・日本の
順となっている。最近、石油輸出を促進するために石油をコロンビアの太平洋岸に移動す
るインフラ建設プロジェクトの融資に中国が関心を示している。今年 5 月、中国開発銀行
はコロンビア原油とベネズエラ原油をコロンビア南部の太平洋岸に移動するためのパイプ
ライン建設工事(輸送能力 60 万 BPD)に融資する予備協定に署名した。
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図 10.コロンビアの石油生産量と消費量の年次推移(千 BPD)
(4)製油所
2012 年 1 月時点のコロンビアの原油精製能力合計は 29.085 万 BPD である。国内に 5 製油
所があり、内訳は同国北東部マグダレーナ川沿いの Barrancabermeja-Santande 製油所
(20.5 万BPD)とカリブ海に面したCartagena 製油所(8.0 万BPD)および3 つの小規模製油所
(0.3 万 BPD 以下)で、全て Ecopetrol が所有している。
3.コロンビアの天然ガス産業
(1)天然ガスの埋蔵量
OGJ 発表の 2012 年 1 月時点の天然ガス確認埋蔵量は対前年 200 億 m3(0.4 兆 ft3)増の 330
億 m3(4.7 兆 ft3)で、大半はリャノス盆地(図 9)に存在している。
(2)参入している天然ガス企業
現在、シェブロンがコロンビアにおける最大の天然ガス生産企業となっており、国内需要
量の約 65%を供給している。又、同社は Ecopetrol と共同で、コロンビア最大の非随伴ガ
ス田であるカリブ海 Guajira 海盆の Chuchupa ガス田を操業している。
(3)天然ガスの生産・消費・輸出
図 11 の通り 2010 年の天然ガス生産量は 113 億 m3(3,980 億 ft3)、国内消費量は 91 億
10
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m3(3,210 億 ft3)であった。大部分が油田の原油増進回収(ガス注入)に使われている。2007
年以降、天然ガス生産量が消費量を上回り、コロンビアは天然ガスの純輸出国になってお
り、ほとんどがベネズエラ向けにパイプラインにて輸出されている。
図 11.コロンビアの天然ガス生産量と消費量の年次推移(10 億立方フィート)
(4)炭層メタン
非在来型天然ガス資源である炭層メタン(CBM)は石炭堆積層から発生する。
米国アラバマ州
拠点の Drummond 社は「コロンビアの炭鉱は最大 620 億 m3(2.2 兆 ft3)の炭層メタンを埋蔵
している」と述べている。同社は La Loma 炭鉱と El Descanso 炭鉱から炭層メタンを抽出
する契約を Ecopetrol と締結した。今後、炭層メタンはコロンビアの天然ガス確認埋蔵量
を劇的に増やす可能性がある。
4.コロンビアの石炭産業
2010 年時点のコロンビアの可採石炭埋蔵量は 56.43 億トンで、南米最大である。コロンビ
ア炭は硫黄含有量 1%未満の比較的クリーンな石炭である。2010 年に 8,200 万トン生産し、
560 万トンを国内消費し残りを輸出した。
2010 年のコロンビアの石炭生産量は 2000 年に比
べ倍増したが、政府は 2019 年までにさらに 2010 年値の倍増を目指している。(図 12)コロ
ンビアはオーストラリア、
インドネシア、
ロシアに次いで世界第 4 位の石炭輸出国である。
2010 年の輸出先実績は欧州 48%、米国 17%、ラテンアメリカ及びカリブ海諸国 14%、中国
7%、他のアジア諸国 6%、その他の国 8%となっている。特に、米国とコロンビアは石炭分野
で重要な貿易関係にある。2010 年にコロンビア炭が米国の輸入石炭合計の 75%、2011 年に
は 73%を占めた。
11
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図 12.コロンビアの石炭生産量と消費量の年次推移(100 万トン)
図 13.コロンビア炭の輸出先(%)
12
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Ⅲ.カリブ海の島嶼国のエネルギー産業
1.カリブ海の島嶼国の位置
図 14.カリブ海の島嶼国の位置図
カリブ海に浮かぶ島嶼国は上図(図 14)の西端から東回りに、キューバ→英国領ケイマン諸
島→ジャマイカ→バハマ→英国領タークス カイコス諸島→ハイチ→ドミニカ共和国→米
国領プエルトリコ(米国の自治連邦区)→米国領ヴァージン諸島→英国領ヴァージン諸島→
英国領アンギラ島→セントマーチン島(北部はフランス領、南部はオランダ王国の構成国)
→フランス領セントバーツ島→オランダ領サバ島→オランダ領セントユースタティウス島
→セントキッツ ネーヴィス→アンティグア バーブーダ→英国領モントセラト島→フラン
ス領グアドループ島→ドミニカ国→フランス領マルチニーク島→セントルシア→セントビ
ンセント グレナディ-ン→バルバドス→グレナダ→トリニダード トバゴ→オランダ領ア
ンティル→アルバ(オランダ王国の構成国)の順に位置している。因みに、良く似た国名の
ドミニカ共和国とドミニカ国は全く別の国である。
2.島嶼国全体の石油産業
(1).島嶼国全体の石油産業の概要
トリニダード トバゴを除き、カリブ海の島嶼国は全て石油の純輸入国である。
「San Jose
Pact」に基づき、バルバドス、ドミニカ共和国、ハイチ、ジャマイカはベネズエラとメキ
シコから好条件で石油を輸入している。2005 年にほとんどの島嶼国がベネズエラに支援さ
13
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れた「Petrocaribe Initiative」に署名した。そのプログラムに基づき、ベネズエラはこ
れらの国に対し市場価格よりも低く且つ有利な期間融資条件付きで原油と石油製品を販売
している。別途、キューバはベネズエラとの間に単独の石油供給協定を結び、キューバに
対してベネズエラが優先的に40万BPD超の石油を供給すると同時に割引料金で輸出してい
る。カリブ海の島嶼国は米国市場に近いことにより、いくつかの島は石油精製と石油備蓄
の重要なセンターとなっている。近年、世界的な石油価格の高騰が石油に大きく依存して
いるカリブ海の島嶼国の経済を損なう懸念から、当該諸国は代替エネルギー資源を促進す
る方法について議論を深めている。
(2).島嶼国全体の製油所
下表(表 3)のとおり、カリブ海の島嶼国全体には 14 製油所があり、その原油精製公称能力
合計は 159 万 BPD である。
Major Oil Refineries in the Caribbean
表 3. カリブ海の島嶼国の製油所能力(BPD) (赤字が閉鎖された製油所)
小規模製油所は国内需要向けに、より大きな製油所は米国向けを主とした海外市場向けに
精製している。最近、当該地域の大規模製油所は新興国の新設製油所および自国産の安価
な天然ガスによって稼動している米国の製油所と競争することが困難であると気付いた結
果、2012 年に入り最大規模の 2 製油所(米国領ヴァージン諸島とアルバの各 1 製油所)がシ
14
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ャットダウンした。
これにより、
現在のカリブ海の島嶼国全体の実動製油所数は 12 に減り、
その原油精製公称能力合計は 40%ダウンして 100 万 BPD に落ちている。因みに、2012 年 2
月にシャットダウンした米国領ヴァージン諸島の製油所(35.0 万 BPD)では、同製油所の敷
地内に位置する総容量 3,200 万バレル(510 万 kL)の石油貯蔵タンク群は引き続き石油貯蔵
基地として使用されている。
(3).島嶼国全体の石油備蓄基地
カリブ海の島嶼国の石油備蓄基地の概要は下表(表 4)のとおりである。主要な石油備蓄基
地はアルバ:1、バハマ:2、オランダ領アンティル:3、米国領プエルト リコ:1、セント
ルシア:1、トリニダード トバゴ:2、米国領ヴァージン諸島:1 の合計 11 ヵ所で、石油
備蓄能力合計は 13,840 万バレル(2,200 万 kL)である。
これらの基地は米国の重要な石油備
蓄センターとしての役目を担っている。
表 4. カリブ海の島嶼国の石油備蓄基地能力(百万バレル)
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3.トリニダード トバゴについて
(1).トリニダード トバゴの石油産業
トリニダード トバゴの石油生産量がカリブ海の島嶼国の石油生産量合計の大部分を占め
ている。2006 年に同国の石油生産量は 17.8 万 BPD に達したが、その後 5 年間徐々に落ち
続け 2011 年の石油生産量は 13.5 万 BPD(9.2 万 BPD が原油とコンデンセート、残りは NGL)
であった。減衰の主な原因は油田の成熟化である。一方、2011 年の同国の石油消費量は 4
万 BPD で、石油の純輸出国になっている。因みに、米国には 7.6 万 BPD(2011 年実績)輸出
している。
(2).トリニダード トバゴの天然ガス産業
カリブ海の島嶼国の中ではトリニダード ドバゴのみ天然ガス産業が振興している。トリ
ニダード トバゴは米国への最大の LNG 供給国で、且つカタール、インドネシア、マレーシ
ア、オーストラリアに次いで世界第 5 位の LNG 輸出国である。1999 年に同国最初の LNG ト
レインが稼動して以来、トリニダード トバゴの天然ガス生産量は劇的に増加した。2010
年には 2000 年実績の 3 倍を超える 420 億 m3(1.5 兆 ft3)の天然ガスを生産した。政府の助
成により国内消費量も着実に増加し、
2010 年の消費量は 10 年前の 2 倍超の 221 億 m3(0.78
兆 ft3)を記録した。(図 15)
図 15.トリニダード トバゴの天然ガス生産量と消費量の年次推移(10 億立方フィート)
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しかし、新しいガス田の発見が少なく、表 5 にあるように、ここ 5 年間に天然ガス確認埋
蔵量は急激に減少している。2006 年に 7,330 億 m3(25.88 兆 ft3)であったものが、2011 年
には 4,080 億 m3(14.416 兆 ft3)にまで減少している。
表 5.トリニダード トバゴの天然ガス確認埋蔵量(兆立方フィート)
4.キューバについて
(1).キューバの石油産業
キューバの 2011 年の国内石油消費量は 17.0 万 BPD であった。一方、同年の石油生産量は
5.5 万 BPD で、不足分をベネズエラから輸入しており、キューバは石油の純輸入国となっ
ている。近年、キューバ沖の海盆(特にメキシコ湾内の海盆)での石油探査に大きな関心が
向けられている。
米国地質調査所(US-GS)はメキシコ湾キューバ海域の北部と西部に位置す
る北キューバ海盆に未発見石油が 46 億バレル存在すると評価している。一方、キューバ国
営石油(Cupet)はキューバ沖の全海盆の未発見石油の合計が 200 億バレルを超えると見積
もっている。しかし、当該海域での試掘実績は極めて少ない。昨年、世界最大の経済情報
企業Global Insightはキューバで操業中の数社がメキシコ湾内のキューバの排他的経済水
域(EEZ)の深海部で 5 つの試掘井を掘削する計画であると報じた。一方、スペインのレプソ
ル社(Repsol)は今年初めからキューバのEEZ のN26 鉱区で試掘井1本の掘削を始めている。
(2).キューバの天然ガス産業
油田から若干量の随伴ガスは出ているが、今のところ天然ガス産業として特記すべき事項
はない。今後、探査中のキューバ沖の海盆(特にメキシコ湾内の海盆)で大規模なガス田が
発見される可能性はある。
<出典および参考資料>
1. ベネズエラ関連の出典および参考資料
(1)米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート:“Venezuela Country Analysis Brief”、
http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=VE )
(2)OGJ Petroleum Insights 、
http://petroleuminsights.blogspot.jp/2012/01/worlds-top-23-proven-oil-reserves.h
tml )
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(3)Wikipedia 、Orinoco Belt、
http://en.wikipedia.org/wiki/Orinoco_Belt )
(4)Wikipedia 、Petrocaribe 、
http://en.wikipedia.org/wiki/Petrocaribe )
2. コロンビア関連の出典および参考資料
(1)米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート:“Colombia Country Analysis Brief”、
http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=CO
(2)Wikipedia 、Colombia 、
http://en.wikipedia.org/wiki/Colombia )
3. カリブ海諸国関連の出典および参考資料
(1)米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート:“Caribbean Country Analysis Brief”、
http://www.eia.gov/countries/regions-topics.cfm?fips=CR&trk=c )
(2)Wikipedia 、Caribbean 、
http://en.wikipedia.org/wiki/Caribbean )
(3)img5.blogs.yahoo.co.jp 、
http://img5.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/3b/69/skpanic/folder/1451685/img_1451685_409
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