H19-臨床試験-一般-013 医療技術実用化総合研究事業 :研究課題名「悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節の同定と転移の検索 」 研究目的: 本研究の目的は、日本人の悪性黒色腫患者を対象に、統一された手技でセンチネルリンパ節生検を多施設 共同研究として実施し、特にセンチネルリンパ節の同定に用いられている検査薬の安全性と有効性を評価す ることである。 実施体制: 研究概要: 主任研究者:斎田俊明 共通プロトコールの概要 <評価予定の薬剤> インジゴカルミン注第一、ジアグノグリーン注、パテ ントブルー スズコロイド注射用、テクネチウムスズコロイド(99 mTc)注射用、フィチン酸ナトリウム注射液、過テク ネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液 <方法等> 症例の選択基準:手術前の一般的な画像検査に て所属リンパ節転移のない悪性黒色腫患者で、原 発巣が真皮内へ浸潤しているとみなされるもの、あ るいは潰瘍を伴うもの 方法:Tc99mで標識されたコロイド剤と生体色素を 用いてセンチネルリンパ節の同定を行う。リンパ節 の病理組織学的検索に際しては、最低限リンパ節 の最大割面標本のHE標本に加えMART-1(あるい はMelan-A)とHMB-45の免疫染色を行う。センチ ネルリンパ節の同定率と有害反応について調べる。 (信州大学医学部皮膚科) 分担研究者:山崎直也 (国立がんセンター中央病院皮膚科) 協力施設(計22施設) 熊本大 新潟県立がんセンター 札幌医大 神戸大 京都府立医大 名古屋市立大 大阪市大 埼玉医大国際医療センター 岐阜大 旭川医大 福岡大 東京大 大分大 千葉大 宮崎大 自治医大 広島大 滋賀医大 筑波大 名古屋大 浜松医大 富山県立中央 H19-臨床試験-一般-013 工程: 1.平成20年3月に平成19年度の会議を開催した。会議に先立ち、個々の施設での検査の実情(方法、症例数)を アンケート調査した。会議では、この調査結果をもとに、使用する生体色素と濃度、RI製剤と量、検査方法につ いて討議し、共通プロトコールを作成した。 2.平成20年4月より新規症例登録を開始した。症例はプロトコールを満たした平成19年1月以後の症例も含めた。 3.平成20年12月に、平成19年1月から平成20年10月までの症例について、中間解析を行った。平成21年1月10 日に会議を開催し、中間解析結果について討議した。また、インドシアニングリーンの有効性に関する報告や生 体色素による見かけ上の酸素分圧低下を起こした症例についての報告がなされ、対応について討議した。 4.平成21年12月、3年間に集積された症例を検討し、えられたデータに基づいて評価を行った。 研究成果: 総症例数(平成19年1月~平成21年10月)は668例で、センチネルリンパ節の同定率は97.9%(654/668)であった。 コロイド剤別の同定率は、スズコロイドは96.3%(237/246)、フチン酸は99.2%(361/364)といずれも高く、欧米の データと遜色ない同定率がえられた。 使用された生体色素は、パテントブルーが609例、インドシアニングリーンが 87例、インジゴカルミンが34例、メチレンブルーが1例であった。RI法を併用した597例のうち、センチネルリンパ節 が一方の方法でしか同定できなかった症例が6.5%あり、両者の併用が望ましいと思われた。センチネルリンパ節 が同定できなかった14例中8例は、原発巣が頭頚部に存在しており、同部位原発の場合はセンチネルリンパ節の 同定が困難になることが予想された。有害反応については、欧米で報告されたアレルギーや色素の残存を起こし た症例はなく、他にも特に重篤なものは認められなかった。色素によるパルスオキシメーターの見かけ上の数値の 低下を認めた症例が散見されたが、診療上問題は起きなかった。この見かけ上の低下について、術前に麻酔科医 へ説明を行う必要があることを確認した。 結語: 今回用いられた共通プロトコールは、センチネルリンパ節の同定において非常に高い精度を示し、また有害反応の 少ない有益な方法であることが示された。
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