第3講: 宇宙は何からできているか? 1. 2. 3. 4. 2009.02.09-10 宇宙で最も沢山ある粒子 宇宙で2番目に多い粒子 宇宙で1番多い物質 宇宙で最も大量にあるエネルギー 島根大学集中講義 1 1. 宇宙に一番沢山ある粒子 ”光” 宇宙マイクロ波の宇宙論における役割 現代宇宙論の基礎 数学: 一般相対性理論 . (膨張宇宙は一般相対論の解: 観測で裏付け) 入力: 2009.02.09-10 ホットビッグバン 島根大学集中講義 2 晴れ上がり (宇宙マイクロ波) 宇宙の歴史 クォーク・ グルーオン プラズマ 。 現在 。 。 インフレーション ビッグバン… 10-44 秒 10-37 秒 10-10 秒 10-5 秒 3分 38 万年 2009.02.09-10 島根大学集中講義 10 億年 137 億年 3 ホットビッグバン 宇宙スープのレシピ 材 温度 3,000,000,000,000,000度 で1秒間煮沸する 料 56% クォーク 16% グルーオン 9% 電子・ミュー・タウ 9% W と Z 5% ニュートリノ 2% フォトン 2% グラヴィトン 1% ヒッグスボソン 秘密材料(特許) 暗黒物質 暗黒エネルギー 熱いスープ 2009.02.09-10 島根大学集中講義 4 一般相対性理論 (神の方程式) 1 Rμν- - gμνR = 8πGTμν 2 入力(神の一撃) 出力 ホットビッグバン アインシュタインは宇宙論を 宗 教 から科学に変えた 2009.02.09-10 島根大学集中講義 5 膨張宇宙の発見(1929) 遠い銀河ほど速く遠ざかる セファイド . 明るさによる距離 明るさによる距離 1929 エドウィン・ハッブル(1889-1953) 超新星 . 1998 赤方遷移 z 後退速度 2009.02.09-10 島根大学集中講義 6 2m 1m 2m -1秒 0 3m 4m 1秒 6m 2秒 宇宙の一様膨張: あらゆる点が互いに遠ざかる 空間が膨張: 2009.02.09-10 テントウムシは静止している。 島根大学集中講義 7 宇宙の膨張 ハッブルの法則: V=H0d H0=72 km/s/Mpc, H0=ハッブル定数 1Mpc=3.26 x106 光年 . . 銀河の遠ざかる速度は銀河までの距離に比例する。 最初に距離 1Mpc離れていると、1秒後には1Mpc+72km、 2秒後には1Mpc+144km離れる 最初に距離 2Mpc離れていると、1秒後には2Mpc+144km、 2秒後には2Mpc+288km離れる 2009.02.09-10 島根大学集中講義 8 ハッブル定数が表す三つの重要な量 * 1 十分遠くへ行くと、速度は光速度を超える。 宇宙の果て≒ c/H0=137億光年 * 2 時間をさかのぼると、ある時刻で一点に収縮する。 . 宇宙の年齢≒1/H0=137億年 * 3 物質の重力を振り切って膨張を続けられるか? 注: *1,*2 は近似式 2009.02.09-10 . 島根大学集中講義 9 脱出速度 地球からの脱出速度 11.2km/sec 地球の質量に依存する 2009.02.09-10 島根大学集中講義 10 宇宙の脱出速度 (物質だけ考慮した場合) 宇宙の大きさ ΩM = 物質密度 / 臨界密度 ΩM = 0 ΩM <1 ΩM = 1 ΩM > 1 現在 宇宙の脱出速度は 質量密度に依存する 臨界密度 ρc=1.x10-29gr/cm3 =5個の陽子/cm3 時 間 宇宙は永遠に膨張し続けるか? 2009.02.09-10 島根大学集中講義 11 ジョージ・ガモフ(1904-1968) 火の玉宇宙論提案者 αβ γ 2009.02.09-10 島根大学集中講義 論文 (19 48) Phys. Rev. 73(1948), 803 12 宇宙は熱かった 宇宙のあらゆる方向から来る 絶対温度2.7度の電波雑音 誕生後40万年の宇宙の姿 1965 ペンジャス・ウィルソン 宇宙マイクロ波の発見 (1965) 2003 2003 2003 10-5の精度 . WMAP (2003) 2009.02.09-10 島根大学集中講義 13 宇宙マイクロ波は何時の時代の光? 137億年 透明な宇宙 不透明な宇宙 . 光 = 水素原子形成 晴れ上がり 元素合成 ビッグバン . . 温度: 陽子・電子と ヘリウム原子核 のプラズマ 10億K 3000K 2.725K 宇宙は膨張: 低温に 2009.02.09-10 島根大学集中講義 14 インフレーション 宇宙構造の成長過程 ビッグバン 晴れ上がり 宇宙のしわが大きくなる 時 間 現在の宇宙 2009.02.09-10 こうして現在の宇宙ができた。 . . 島根大学集中講義 15 宇宙の大規模構造 約30万個の銀河地図 30億光年の彼方 12億光年 . The VIRGO project シミュレーション SDSS map 2009.02.09-10 島根大学集中講義 17 宇宙マイクロ波を量子力学に従い 光の粒子・フォトンとして数えると フォトン数=400/cm3 星の光より圧倒的に多い 陽子・中性子・電子などの物質粒子の数は 物質粒子数= 0.2/m3 光は宇宙に最も沢山ある粒子 2009.02.09-10 島根大学集中講義 18 2. 宇宙で2番目に沢山ある粒子 ニュートリノはそこら中にあるが、誰も気づかない ニュートリノは電気的に中性で、貫通力が強い。 “電気力や強い力は働かないが、弱い力が働く粒子” ニュートリノの役割は? 2009.02.09-10 島根大学集中講義 19 太陽ニュートリノは地球を突き抜ける (実は鉛10光年分の厚さも通り抜ける) 太陽ニュートリノを調べれば、太陽の内部構造が判る。 (地球に600億個/cm2秒) 太陽 地球 (1億個に1個地球に当る) ニュートリノが燃焼速度をコントロールするので、 太陽は45億年間、静かに燃え続け、 生物の誕生進化を促した。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 20 ニュートリノ望遠鏡 岐阜県神岡鉱山にあるスーパーカミオカンデ 2009.02.09-10 島根大学集中講義 21 ニュートリノで星の内部が覗ける。 (星のX線写真) 2009.02.09-10 島根大学集中講義 22 太陽の8倍以上重い星の一生 ニュートリノが水素燃焼速 度をコントロールするので 核反応はゆっくりと進行し、 水素とヘリウム以外の 元素が星の中で作られる。 鉄以上の重元素は、 超新星爆発時に作られる。 爆発寸前の超新星 (赤色超巨星) (青色超巨星) 2009.02.09-10 島根大学集中講義 . 23 宇宙の元素組成 水素とヘリウムで99.9%を占める。 ビッグバン時に、水素とヘリウム そしてわずかな重水素と リチウムが作られた。 残りの重元素は全て 星の中と超新星爆発時に 作られた。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 24 太陽の8倍以上重い星の一生 太陽は50億年後に赤色巨星となり 外殻を吹き飛ばして 惑星状星雲になる。 芯は白色矮星になる。 太陽は45億歳、余命50億年 爆発寸前の超新星 (赤色超巨星) (青色超巨星) 2009.02.09-10 島根大学集中講義 . 25 . ニュートリノ爆弾 超新星が爆発して、中性子星やブラックホールができる。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 26 2002年ノーベル物理学賞 超新星爆発 . カミオカンデ 2009.02.09-10 島根大学集中講義 27 星の一生とリサイクル 2009.02.09-10 島根大学集中講義 28 ニュートリノの役割 ニュートリノを使えば、光や電波では見えない 星の深奥部を見ることが出来る。 45億年昔、太陽の近傍で超新星爆発が起こり、その衝撃波 を受けて太陽系が誕生した。 星の中の核融合をゆっくりと進行させ、種々の元素を合成す る手助けをした。 超新星爆発を起こし、元素を全宇宙に配給した。 太陽の燃焼速度をコントロールして、常に代わらぬエネル ギーを地球に与え続け、生命を発生進化させた。 つまりわれわれはニュートリノのお陰で存在する。 これらは全てニュートリノが弱い力を持つことが原因 2009.02.09-10 島根大学集中講義 29 ニュートリノは何処にいるか? 宇宙線(陽子) . ビッグバン 超新星 太陽 大気 高エネルギー . シャワー 地殻 (ウラニウム等) ビッグバンの化石ニュートリノは . まだ検出されていない。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 原子炉 加速器 30 ビッグバンからの宇宙(化石)ニュートリノは 宇宙のマイクロ波放射と同様にしてできた。 ニュートリノ数=330/cm3 (光は400/cm3) 光の次に沢山ある粒子。(通常粒子バリオンの100億倍) 宇宙ニュートリノが検出できれば、ビッグバン直後 (化石の光は38万年後) 1秒の宇宙の姿が判る。 宇宙ニュートリノの検出方法はまだ判らない。 そこら中に充満しているのに見えない幽霊粒子 Æ 無の粒子 2009.02.09-10 島根大学集中講義 31 3. 宇宙で一番多い物質 暗黒物質 (物質としては最も大量にある) 2009.02.09-10 島根大学集中講義 32 現代天体物理のミステリー 暗黒物質の存在 暗黒物質とは正体不明の光らない物質 あちこちに塊となって存在するので、 重力効果で検知可能 1933年にツヴィッキーが指摘 (Fritz Zwicky、1898-1974) 2009.02.09-10 島根大学集中講義 33 宇宙の見える星の量 ハッブル望遠鏡で 100億光年彼方の 深宇宙を覗く ここに3000個の 銀河 2009.02.09-10 島根大学集中講義 34 約30万個の銀河地図 . 30億光年の彼方まで 全宇宙では 1000億個の銀河 それでも 見える星の量は 臨界質量の ~0.5% SDSS map 2009.02.09-10 島根大学集中講義 35 暗黒物質の存在証明 1. 渦巻き銀河の回転速度 剛体回転(車輪タイプ) 回転速度V A BC Vは r に比例 A B C 中心からの距離r ケプラー回転(惑星タイプ) A 質量M 2009.02.09-10 . 回転速度V C B 島根大学集中講義 A B C 中心からの距離r 36 期待される渦巻き銀河の回転曲線の形 剛体回転 ケプラー回転 速度 暗黒物質 観測 中心からの距離 2009.02.09-10 島根大学集中講義 37 暗黒物質の証拠:例2 (超銀河団内銀河の乱雑運動) かみのけ座銀河団 2.9億光年 2009.02.09-10 島根大学集中講義 38 暗黒物質の証拠:例3 (銀河団: 巨大X線源) 巨大銀河団MS1054-0321 2009.02.09-10 島根大学集中講義 39 重力レンズ効果による像の歪み 大質量 2009.02.09-10 島根大学集中講義 40 暗黒物質存在の証拠 例4 重力レンズ レンズ 遠くの光源 (銀河、銀河団) 光の経路 2009.02.09-10 島根大学集中講義 41 アインシュタインリング観測例 2009.02.09-10 島根大学集中講義 42 ハッブル宇宙望遠鏡が発見した重力レンズ効果 2009.02.09-10 島根大学集中講義 43 2009.02.09-10 島根大学集中講義 44 結論: 宇宙の物質量は臨界質量の28% そのほとんどが暗黒物質 通常物質(陽子・中性子など)は4% Æ 暗黒物質は通常物質ではない 最有力候補は,素粒子統一理論で予言する ニュートラリーノ や アクシオン 注: ニュートリノは暗黒物質ではなかった。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 45 4. 宇宙で最も多いエネルギー形態 . (暗黒エネルギー) 暗黒エネルギーはどうやって発見されたか? 暗黒エネルギーの正体は何か? 宇宙の終焉はどうなるか? 2009.02.09-10 島根大学集中講義 46 宇宙の運命は? ΩM = 物質密度 / 臨界密度 宇宙の大きさ ΩM = 0 ΩM <1 ΩM = 1 ΩM > 1 現在 時 間 宇宙は膨張し続けるか? 再収縮するか? 2009.02.09-10 島根大学集中講義 47 宇宙の運命を知るために、過去の膨張速度を調べた。 . 方法: 遠方銀河の速度と距離を測定 速度: ドップラー効果による光の赤方遷移 距離: 標準光源の明るさを測定 過去 未来 現在 2009.02.09-10 島根大学集中講義 48 宇宙の運命を知るためには、 (1)過去の膨張速度を調べる。 . 方法: 遠方銀河の速度と距離を測定 速度の測定: ドップラー効果による光の赤方遷移 (易しい測定。) 距離の測定: 標準光源の明るさを測定 (結構難しい。) (2)宇宙にある物質量を調べる。 方法: 2009.02.09-10 . 星や銀河の数を数える。速度分布を測る。 重力レンズを使う。 島根大学集中講義 49 絶対光度のわかっている光源があれば、 見かけの光度から距離がわかる。 見かけの明るさ 2009.02.09-10 島根大学集中講義 . 50 Ia 型超新星 絶対光度が判っているので、標準光源として最適 I, II型: 水素がない(ある)。Ia 型: Si がある。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 . . 51 Ia 型超新星であることは、 スペクトル(色の分布)で判る。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 . 52 補正前 補正後 光度曲線 Ia型超新星であることは、 スペクトル型から判る。 輝度 Ia型の証明 (珪素吸収線) 2009.02.09-10 島根大学集中講義 53 超新星の見つけ方 . Supernova 1998ba Supernova Cosmology Project ハッブル 望遠鏡 写真 3週間前 現 在 地上観測 写真 引き算後 超新星発見 2009.02.09-10 地上撮影より衛星撮影の方が鮮明 島根大学集中講義 55 加速宇宙の証拠 暗い 加速 減速 明るい 超新星は、赤方遷移zの関数として、 近傍 (z<1)で一度暗くなり、遠くで明るくなる Æ “宇宙初期には減速膨張、途中から加速膨張” 2009.02.09-10 島根大学集中講義 56 2009.02.09-10 島根大学集中講義 57 加速宇宙は可能か? •重力は万有引力 Æ 通常物質は膨張を減速させる 加速度 = - G X{M(質量)+3P(圧力)} アインシュタイン ニュートン . •負の圧力があれば加速に転じることは可能 •真空のエネルギーは、正のエネルギー • かつ負の圧力を持つ • Æ アインシュタインの宇宙項 (反重力の存在) 2009.02.09-10 島根大学集中講義 58 結論: 暗黒エネルギーが存在する 暗黒エネルギーとは、 物質の形態をとらないで、一様に広がってい る正体不明のエネルギーの総称 (注: 暗黒物質はかたまりとして散在する) 暗黒エネルギーの候補: 宇宙項 現代用語 宇宙項=真空エネルギー 2009.02.09-10 島根大学集中講義 59 一般相対性理論は宇宙が膨張もしくは収縮 の途中であることを示す。 アインシュタインは宇宙を安定させるために、 斥力としての宇宙項を導入した。 1927年に宇宙の膨張が発見されると、わが生 涯最大の過ちであるといって、宇宙項を放棄 した。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 60 暗黒エネルギーの正体 ? アイタ! 2重のミスだわ い 2009.02.09-10 島根大学集中講義 61 宇宙項が復活した 宇宙項は、数学的には方程式に入れても良いが、アインシュタイ ンは入れる必要性を認めなかった。 現代用語では、真空エネルギーと言う。 斥力であるから加速膨張をもたらす。 宇宙論研究者は、宇宙初期にインフレーション(急激加速膨張)が あったと信じている。 インフレーションを引き起こした真空エネルギーは、その後、熱化 して電磁波や物質となり、完全に消えたと思われていた。 明らかに、自然はごくわずかな真空エネルギーを残すことを選ん だのである。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 62 インフレーション期の真空エネルギー密度 ~10 90gr/cm3 現在の真空エネルギー密度 ~10-29gr/cm3 どうやって、完全に消さずに、120桁もの小さい量を残せるの か? 科学史上最大の計算ミス? Æ 小数問題 どうして今になって現れたのか? Æ 偶然問題 宇宙論研究者は今、途方にくれている。 Æ 21世紀物理の最大課題 2009.02.09-10 島根大学集中講義 63 これまでに述べた4つの主題は互いに関連している。 一般相対論の要請 輻射密度 物質密度 真空エネルギー密度 Ωrad+ ΩΜ + ΩΛ =1- ΩK ~0 0.26 0.74 宇宙の曲率 =0: インフレーション ~0: 三角測量測定 0 宇宙の全エネルギー密度は、臨界密度に等しい 偶然問題: Ωrad~D-4, ΩΜ~D-3, ΩΛ=定数 2009.02.09-10 島根大学集中講義 64 宇宙物質の組成 暗黒物質 2009.02.09-10 島根大学集中講義 . 65 宇宙の終焉は? 加速膨張: Hは時間と共に大きくなる。 減速膨張 Æ 宇宙の果てはどんどん拡がる 加速膨張 Æ 宇宙の果てはどんどん狭まる。 淋しい宇宙: 加速膨張宇宙では、遠くの銀河から消え去り、 最後はアンドロメダ銀河以外の隣人は、皆居なくなる。 ~1000億年 悲しき宇宙: その前に、天の川銀河はアンドロメダ銀河と衝突する。 ~50億年 人類の運命は? 太陽が赤色巨星となり地球を飲み込む。 ~50億年 2009.02.09-10 島根大学集中講義 66 まとめ 宇宙で1番数の多い粒子はフォトンで、ビッグバン の化石 宇宙で2番目に多い粒子は、ニュートリノ。 ニュートリノは星のサイクル、重元素合成に大きな 役割を果たす。 暗黒物質は、宇宙で宇宙で最も多い物質形態。 正体は不明。 暗黒エネルギーはエネルギー的には、宇宙で最大 量を誇り、加速膨張をもたらすが、正体は不明。 2009.02.09-10 島根大学集中講義 67 第3講 宇宙は何からできているか? 終わり 2009.02.09-10 島根大学集中講義 68 2009.02.09-10 島根大学集中講義 69
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