宇宙物理学 I 2008年度 総研大講義 井岡 邦仁 居室:研究本館202号室,内線:6216,メール:[email protected] 火曜日 9:00-11:00 (4月15,22,5月13,20,27,6月17,7月1,8,15,9月2,9) 6月3 (KEK夏期講習) 6月10,24 (出張) ⇒ 補講:未定 7/22?, 9/16? ファイル: http://research.kek.jp/people/ioka/lecture/ 講義計画 講義のねらい 宇宙の豊かな階層構造の基本構成要素である星の構造と進化について, 高エネルギー天体現象との関連も含めて解説する. ⇒ 大雑把な見積もり(オーダー評価)で全体像をつかむスキル 1.はじめに 2.星の進化 2.1.力学平衡 2.2.エネルギー輸送 2.3.熱核反応 2.4.主系列星 2.5.太陽ニュートリノ問題 2.6.主系列後の進化 2.7.白色矮星 2.8.中性子星 3.星の死 3.1.超新星爆発 3.2.ガンマ線バースト 4.高エネルギー天体現象 4.1.パルサー 4.2.降着円盤 4.3.宇宙ジェット 4.4.超新星残骸 5.宇宙の高エネルギー素粒子 5.1.高エネルギー宇宙線 5.2.高エネルギーガンマ線 5.3.高エネルギーニュートリノ 5.4.重力波 1.はじめに 宇宙の階層構造 人間,地球,太陽(星),太陽系,銀河, 銀河団,大規模構造,宇宙 ⇒ 星が基本構成要素 人間,分子,原子,原子核,クオーク 膨張宇宙 昔は高エネルギー状態(素粒子との接点) 高エネルギー天体 星が進化しブラックホールや中性子星を作り 高エネルギー素粒子を生む(これも接点) 人間ー地球 月から見た満地球 by 月周回衛星かぐや(SELENE) 人間 ~100cm ~50kg 地球 ~6400km ~6×1024kg 月 ~1700km ~7×1022kg サイズは大きく異なる 密度は? 地球ー太陽 ひので衛星によるX線写真 太陽 半径 R◉~7×1010cm 質量 M◉~2×1033g 光度 L◉~4×1033erg/s 表面温度~6000K 中心温度~1.6×107K 年齢~46億年 距離⇒単位に 1AU~1.5×1013cm 地球をボールぐらいと 思うと,太陽は? 太陽系 水星,金星,地球,火星,木星,土星,天王星,海王星 冥王星(r<39AU)⇒準惑星(2006年8月) 太陽系外縁天体が多数存在.エリス>冥王星 木星:直径~70000km,~2×1027kg (~全惑星質量),~5AU 太陽系外縁 小天体(氷の塊)の集団 太陽系外縁天体 (エッジワース・ カイパーベルト天体) 短周期彗星の巣 現在まで~千個発見 オールト雲は未発見 オールト(1950)が 長周期彗星の 巣として提案 Sednaはその候補かも? NASAの Stardust 探査機が撮像した Wild - 2 彗星の核 ヨーロッパの探査機ジオットが撮像したハレー彗星の核 NASAの Deep Space 1 探査機が撮像した Borrely 彗星の核 NASAの Deep impact 探査機が撮像した Tempel-1 彗星の核 なぜ凸凹? 理科年表 隣の恒星 恒星=自ら輝く星 最も近い恒星: ケンタウルス座の アルファ星 ~4.3光年~1.4pc pc ~3pc 1’’ Sun AU 現在~msecが限界 ⇒どれくらいの 距離まで年周視差 を用いて距離を 測れるか? 距離の測定は 天文学の大問題 ~30pc 銀河アーム 銀河円盤の厚さ ~300-1000pc アームは明るい星 の作るパターン. 質量の分布は 円盤状 (密度差は<5%) ~300pc 銀河 ~1011M◉ ~1000億個の星 (核子の~90%は 恒星内に存在) (1) バルジ (2) 円盤 (3) ハロー ~3kpc 回転速度 ⇒ ダークマター 渦巻き銀河の模式図 球状星団 ~104-6M◉ 古く重元素が少ない (~1/100 Z◉) 種族II(PopII)が多い バルジ 種族IIが多い 中心に巨大BH ハロー 早期型 楕円銀河 晩期型 ディスク ガス⇒星形成 重元素が多い 種族I(PopI)が多い 渦巻き銀河 Hubble系列 棒渦巻銀河 Kennicutt 06 衛星銀河 LMC ~1010M◉ 距離~50kpc SMC ~109M◉ 距離~54kpc ~30kpc 局所銀河群 ~300kpc Andromeda galaxy (最も近い銀河) ~3×1011M◉ 距離~700kpc 結構スカスカ 銀河団 Virgo銀河団 ~1500銀河 距離~20Mpc まわりの銀河と Virgo超銀河団 を形成 (Disk成分+ Halo成分) ~3Mpc 大規模構造 ~30Mpcの凸凹 (1) 超銀河団 (2) Filament, Wall (3) ボイド 自己重力系 初期条件の 非一様性 ~30Mpc w/ spectrum 3D Sky Map (2 billion light yr~700Mpc) Color: luminosity 66,976 out of 205,443 gal. 2D Sky Map SDSS 2.5m telescope Tegmark+ 日本のすばる望遠鏡 ~130億年前まで見れる 密 度 揺 ら ぎ Tegmark+ 階層的構造形成 Springel+05 宇宙 一様等方(等方+宇宙原理) 黒体放射 3K~3×10-4eV 1eV=1.6×10-12erg ⇒ ~1000光子/cm3 CMB 宇宙マイクロ波 背景放射の 温度揺らぎ ~10-4-10-5 平均2.725K 揺らぎ0.0002K WMAP衛星(5yr) Stefan-Boltzmann定数 銀河座標 北極 銀河北極 銀河中心方向 銀河中心 太陽系 南極 平面に射影 電磁波 宇宙膨張 Hubble則 ⇐ 後 退 速 度 Hubble, Proceedings of the National Academy of Sciences 15 (1929) 赤 方 偏 移 距離⇐Cepheid変光星の光度・周期関係 ⇒ Big Bang 宇宙年齢は有限 ~H0-1~137億年 これを1年と思うと我々はいつ生まれた? ドップラー効果 v: 今はc z: 赤方偏移 Cepheid変光星 周期光度関係 <MV> = -2.81 log P(day) - 1.43 適用範囲: 7Mpc (M101) on Ground; 25Mpc by HST Cepheidは超巨星 ⇒ 遠方まで観測可能 Pop I 型星 ⇒ 楕円銀河(や球状星団)には含まれない Hubble Key Project Virgo cluster Freedman+01 遠く=昔 ダークエージ ? Larson&Bromm(02) Hubbleは1925年に アンドロメダ銀河が 外銀河であることも 示した. 我々の銀河は宇宙 の一部にすぎず, 宇宙は想像以上に 大きい. 人類の世界観を変えた 宇宙の平均密度 宇宙のサイズ ~cH0-1~3Gpc 遠く=昔(CMBは昔の光) 平均密度 本来,一般相対論が必要だが, Newton重力 脱出速度の式 v=c, r=cH0-1 我々は異常に固まった状態! 大きな構造のまとめ ・ 我々は地球という惑星に住んでいる ・ 惑星が太陽の周りをまわって太陽系を作る ・ 太陽のような星が集まって銀河を作る ・ 銀河が集まって銀河団を作る ・ 銀河団が集まって大規模構造を作る ・ 宇宙は一様等方 ・ 宇宙は膨張している ・ 宇宙はスカスカ=我々は非常に濃縮されている ・ 星は基本構成要素 ・ その理解が他の理解に繋がる(例:宇宙膨張) ・ なぜ~1M◉?なぜ~1R◉?なぜ6000K? 宇宙の階層構造 g/cm3 1020 クォーク 核子 中性子星 1010 100 ・さまざまなスケール → オーダーで議論 ・宇宙論的 ~1028cm ~100億年 (遠い=昔) ・中性子星 ~106cm ・重力が本質的 白色矮星 原子 太陽 人 太陽系 10-10 銀河 銀河団 10-20 10-30 宇宙 10-10 100 1010 1020 1030 cm 星の一生 中心で核融合 水素→ヘリウム→炭素→・・・→鉄 星の進化は主に質量で決まる M<0.08M太陽 水素が燃えない → 褐色矮星 0.08M太陽<M<0.45M太陽 ヘリウムが燃えない →ヘリウムの白色矮星 0.45M太陽<M<8M太陽 炭素が燃えない → 炭素の白色矮星 8M太陽<M<13M太陽 Ne、Mgまで進む。電子捕獲後 超新星爆発して中性子星? 13M太陽<M 鉄まで進み重力崩壊。 外層が飛べば中性子星? 失敗すればブラックホール 宇宙の組成 宇宙のほとんどは水素とヘリウム 我々を作るCやOはCMBの頃ほぼゼロ 星が元素合成して超新星でばらまく 周期律表 超新星-ダークエネルギー 超新星を使った Hubble図 ⇒ Hの時間進化 ⇒ 密度の進化 ⇒ Dark Energy の発見 光 度 距 離 Astier+06 赤方偏移 Radiation: 0.005% Chemical Elements: (other than H & He) 0.025% Neutrinos: 0.17% Stars: 0.8% LCDM H & He: gas 4% Cold Dark Matter: (CDM) 25% + inflationary perturbations + baryo/lepto genesis Dark Energy (L): 70% Kolb 08 白色矮星の密度 白色矮星の半径~地球半径~太陽半径/100 太陽の密度 ~1g/cm3(角砂糖が1g) 白色矮星の密度 ~1トン/cm3(角砂糖が1t) 中性子星は? 小さい構造 ~10-1eV~103K ~10eV~105K ~106eV~1010K ~108eV~1012K 以下 ~1011eV~1015K 小さい=高エネルギー 不確定性関係 ⇒ 加速器 up to ~TeV (LHC) 電磁波 宇宙の歴史 Hubble膨張 ⇒昔ほど高密度, 高温,高エネルギー ⇒力の統一 宇宙は膨張して 冷えていく 現在は冷え切った 宇宙? 背景放射 ~MeV以上まで続く Strong+04 LHC Cosmic ray E<1015-16eV (Knee) F∝E-2.7 おそらく銀河の超新星残骸 LCR~1041erg/s~0.1ESN/tSN 直接証拠はない 1015-16<E<1018eV (Ankle) ~1eV/cm3 ~(宇宙背景放射) F∝E-3-3.2 銀河起源? 単純にはSNRでは<1014eV 1018eV<E 1 particle/km2/century Bhattacharjee&Sigl(00) F∝E-2.7 銀河系外 AGN? GRB?? 何を意味するか? 黒体放射だとすると,密度が高いほど高温 ⇒ 中性子星は最も高密度の天体 e<1054erg/(106cm)3 ⇒ T<10MeV ⇒ 何らかの非熱的過程が必要 Cosmic Jet AGN(活動銀河核) ~106-9M☉BH Microquasar Pulsar ~10M☉BH 中性子星 物理機構は? GRB L~1051erg/s~1044W E~1052erg, e~TeV 粒子加速 もの同士の衝突→衝撃波 粒 子 の 数 衝撃波統計加速(フェルミ加速) LHCのように電場による加速ではない 統計的加速 → べき乗スペクトル 熱的分布と異なる エネルギー 高エネルギー宇宙物理 新しい天体の数が増え、新しい発見が続くだろう Kifune plot GLAST HESS MAGIC CANG.III VERITAS UHECR,,GW? 多粒子多波長観測 GLAST (2008) 50MeV300GeV g線 HESS,MAGIC,VERITAS CANG. TeV g線 LIGO,LCGT 重力波 AUGER (2007) UHECR IceCube TeV-EeV さまざまな 粒子による 観測が始ま りつつある 背景ニュートリノ(想像) Spiering arXiv:0804.1500 全体像 ウロボロスの蛇 白色矮星 星 超新星爆発 中性子星 有機的に 繋がっている ブラックホール アウトフロー(ウインド,ジェット) 粒子加速 衝撃波 高原文郎: 宇宙物理学(朝倉書店)1999. S. L. Shapiro and S. A. Teukolsky: Black Holes, White Dwarfs and Neutron Stars (John Wiley and Sons) 1983. G. B. Rybicki and A. P. Lightman: Radiative Processes in Astrophysics (John Wiley and Sons) 1979. 小山勝二,嶺重慎 編: シリーズ現代の天文学8巻 ブラックホールと高エネルギー現象(日本評論社)2007. 岡村定矩他 編: シリーズ現代の天文学1巻 人類の住む宇宙(日本評論社)2007. 理科年表 J. Binney and M. Merrifield: Galactic Astronomy (Princeton University Press) 1998. 佐藤文隆: 宇宙物理(岩波書店)1997.
© Copyright 2024 ExpyDoc