気体-液体 間の屈折率空白域を埋めるシリカエアロゲ

2005年度
千葉大学大学院自然科学研究科
理化学専攻
修士論文発表会
気体-液体間の屈折率空白域を埋める
シリカエアロゲルの新製法の研究開発
04UM1109
田端 誠
2006/02/07(Tue)
宇宙塵捕集 と シリカエアロゲル
宇宙空間において、高速で衝突する固体微粒子の捕獲
軽くて透明な固体
シリカエアロゲル
スポンジのような構造
密度0.02~0.3g/cm3 (調節可能)
捕獲粒子の確認が容易
真空中や広範囲な温度で安定
© NASA / JPL
2
高エネルギー実験 と シリカエアロゲル
チェレンコフカウンターの輻射体
チェレンコフ輻射の条件
1
1
n
θC
輻射の方向
cosc 
1
n
入射荷電粒子の種類と運動量に応じて、輻射体の屈折率を選択すれば
チェレンコフ発光の有無で粒子識別が可能
3
シリカエアロゲルの標準的な製法
調合
エアロゲル
ゲル化
超臨界乾燥
アルコゲル
洗浄
疎水化
洗浄
4
従来の製作可能な屈折率範囲
1.5
エ タノール
ρ =0.789
n=1.362
屈折率 n
1.4
水
ρ =1.00
n=1.33
メタノール
ρ =0.793
n=1.329
標準的な製法で製作できる
シリカエアロゲル
石英ガラス
ρ =2.22
n=1.47
1.3
1.005  n  1.08
0.02g/cm3
1.2
屈折率と密度の関係
n  1 
従来のシリカエアロゲル
1.1
二酸化炭素
ρ =0.00198
n=1.00045
1.0
0.0
0.5
1.0
1.5
密度 ρ [g/cm3]
シリカエアロゲル
2.0
2.5
 ~ 0.25
5
従来の製作可能な屈折率範囲
1.5
エ タノール従来のシリカエアロゲル
水
ρ =0.789
ρ =1.00
1.006
n=1.362
n=1.33
メタノール
1.005
屈折率 n
屈折率 n
1.4
1.3
1.2
石英ガラス
ρ =2.22
n=1.47
ρ =0.793
n=1.329
1.004
1.002
屈折率と密度の関係
n  1 
二酸化炭素
ρ= 0.00198
従来のシリカエアロゲル
n= 1.00045
1.000
二酸化炭素
ρ =0.00198 0.01
0.00
n=1.00045密度
1.0
0.0
1.005  n  1.08
0.02g/cm3
1.003
1.001
1.1
標準的な製法で製作できる
シリカエアロゲル
0.5
0.02
ρ [g/cm3]
1.0
1.5
密度 ρ [g/cm3]
2.0
0.03
2.5
シリカエアロゲル
 ~ 0.25
6
低密度エアロゲル製作の困難
超臨界乾燥
圧
力
屈折率の上昇
変形
透明度の低下
超臨界流体
液体
収縮
固体
臨界点(C)
PC
臨
界
圧
力
気体
臨界温度 TC
自然乾燥
温度
二酸化炭素オートクレーブ
PC  7.30MPa
TC  31.1C
エタノールオートクレーブ
PC  6.31MPa
TC  243.1C 7
高屈折率エアロゲル製作の困難
調合 (ゾル-ゲルプロセス)
加水分解 : mSi(OCH3) 4+ 4mH2O → mSi(OH)4 + 4mC
テトラメトキシシラン
蒸留水
縮重合 : mSi(OH)4 → (SiO2)m + 2mH2O
触媒
1%
高屈折率を目指した調合
溶媒の量が少ない
ゲル化が進行しない
溶媒
48%
テ トラメトキシ シ ラン
水
21%
30%
屈折率1.08を目指した調合比(体積比)
8
近年の製作テクニック
ガラスケース と ガラスプレート
ガラスケースにアルコゲルを成型する
超臨界乾燥時、アルコゲルにガラスプレートを載せる
ガラス-ゲル間の引力で、収縮が軽減される
屈折率 1.005 まで有効
多層一体型
下層がゲル化後、直ちに上層を成型する
異なる屈折率の層が、
化学的に結合して一体となる
9
二層一体型 低密度エアロゲル
低密度層(アルコゲル)
境界
屈折率 1.01 相当の下層
低密度層(エアロゲル)
屈折率 1.0037
下層
ガラスケースを使用した
二層一体型エアロゲル
© T. Fukushima (2004)
10
新製法~フレーム構造法
多層一体型の応用
フレーム構造
テフロンシート
収縮率の小さなアルコゲルで型を形成する
内部に成型したアルコゲルは収縮が抑えられる
低密度エアロゲルの実現
ガラスケース・プレート
エタノール溶媒
エタノール超臨界乾燥
11
フレーム構造法による
低密度エアロゲルの試作
調合直後
フレームのアルコゲル
屈折率 1.01 相当
目的の低密度アルコゲル
(収縮しない場合) 1.0025 相当
7×7×1 cm3
12
フレーム構造法による
低密度エアロゲル
二層構造 (1.001)
二層構造 (1.0025)
3
密度 : 0.01227±0.00001 g/cm密度 : 0.01656±0.00008 g/cm3
(屈折率 1.0031 相当)
(屈折率 1.0041 相当)
厚さ : 19.0mm → 11.5mm (61%)厚さ : 19.0mm → 14.0mm (74%)
フレーム構造 (1.001)
密度 : 0.00880±0.00008 g/cm3
密度測定
(屈折率 1.0022 相当)
13
新製法~ピンホール乾燥法
調合
エアロゲル
自然乾燥
ゲル化
ピンホール乾燥
洗浄
超臨界乾燥
アルコゲル
疎水化
洗浄
ピンホール乾燥
調合・半熟成後のアルコゲルを
半密閉容器に入れ、徐々に溶媒を揮発させる
ゲル構造を壊さずに収縮
→ 密度(屈折率)増大
14
ピンホール乾燥 と クラック
ピンホール乾燥容器のデザインは
アルコゲルの収縮に大きな影響を与える
底面のクラック
最新版
表面のクラック
アルコゲルの
表面全体を
空気にさらす
反り
廉価版
15
疎水化 と クラック
疎水化
親水基
(再)洗浄工程でエタノールが浸透して
崩壊したサンプル (アルコゲル)
疎水化剤
(ヘキサメチルジシラザン)
疎水基
疎水化工程で
クラックが
発生したサンプル
(エアロゲル)
16
ピンホール乾燥法における
屈折率 と 透過長
45.0
Pinhole Drying Method
40.0
Reference
Transmission Length [mm]
35.0
透過長測定
分光光度計
λ=400nm
30.0
25.0
20.0
屈折率測定
フラウンホーファー法
λ=405nm
15.0
10.0
5.0
0.0
1.000
1.050
1.100
1.150
Refractive Index
1.200
1.250
1.300
17
ピンホール乾燥法における
密度 と 屈折率
1.300
Pinhole Drying Method
Reference
Standard Method
Refractive Index n
1.250
屈折率測定
フラウンホーファー法
λ=405nm
1.200
1.150
密度測定
重量 : 電子天秤
体積 : ものさし
1.100
n = (1.0022± 0.0007)+(0.2598± 0.0015)ρ
r = 0.9988
1.050
1.000
0.00
0.10
0.20
0.30
0.40
0.50
0.60
0.70
Density ρ [g/ cm3]
0.80
0.90
1.00
1.10
18
ピンホール乾燥法による
高屈折率エアロゲル
屈折率 : 1.2206±0.0009
(λ=405nm)
透過長 : 18.1±0.5mm
(λ=400nm)
大きさ : 57×36×9mm
収縮率 : 86ml → 18ml (21%)
初期屈折率 : 1.057
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まとめ と 応用
収縮を制御する新しい製法で、従来にない屈折率のシリカエアロ
ゲルを製作した。
フレーム構造法
ピンホール乾燥法
標準製法
1.002 1.005
1.08
1.265
標準製法で製作できる屈折率の範囲でもピンホール乾燥法を
用いることにより、透明度の高いエアロゲルが得られた。
より低密度のアエロゲルが製作できるようになり、変性の少ない
状態で宇宙塵の捕集が可能となる。
幅広い範囲の屈折率のエアロゲルが製作できるようになり、チェ
レンコフカウンターの輻射体として様々な運動量領域に対応する
ことが可能となる。
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