バリバラ特集ドラマ「悪夢」アフタートーク

12月21日O.A.
バリバラ特集ドラマ「悪夢」アフタートーク
スタジオ出演
◆ハウス加賀谷(はうす・かがや)
・・・・ドラマ「悪夢」主演/お笑い芸人/統合失調症
日比野 和雅(ひびの・かずまさ)
・・・ 制作統括/NHKチーフプロデューサー
福岡 利武(ふくおか・としたけ)
・・・ 演出/NHKディレクター
ナレーション
◆安富 史郎(やすとみ・しろう)・・・・ 声優
はるな愛:は~い。 “バリアフリー・バラエティー”「バリバラR」の時間です。パーソナリティーのはるな愛で
す。よろしくピース!「バリバラ R」は、Eテレで放送している障害者情報バラエティー「バリバラ」
のラジオバージョンです。2週に渡って、バリバラで初めて挑戦したドラマ「悪夢」をお届けしてき
ました。今週も主演をされた、お笑い芸人のハウス加賀谷さんをゲストにお迎えし、さらに、ドラマ
の制作統括である日比野和雅チーフプロデューサーと、ドラマを演出した福岡利武ディレクターに加
わってもらいまして、ドラマのテーマについて深く掘り下げていきたいと思います。加賀谷さん、今
日もよろしくお願いします。
加賀谷 :こんにちは。か・が・や、でーす!
はるな愛:日比野さん、福岡さん、よろしくお願いします。
日・福 :はい、よろしくお願いします。
はるな愛:まずは、ドラマ「悪夢」のダイジェストをお聞きください。
録音①
バリバラ特集ドラマ「悪夢」ダイジェスト
幻聴:おまえはダメだ。
ナレ)主人公は、統合失調症に苦しむ青年、瀬戸山真(せとやま・まこと)。
真には、病気のため、シロイヒトの幻覚が見えてしまう。
さらに、幻聴も同時に聞こえてくる。しかし、そのことは隠しながら生きてきた。
真希:仕事してないもんね。障害のせい?
真
:違うよ。それは違うよ。
【面接会場】
真
:はい、なんでもできます。
面接官:なんでもできますって・・・。
ナレ) 働きたい意欲はあるが、面接は失敗ばかり。
1
ナレ) 社会に居場所がなく、次第に追いつめられていく真。
そんな時、偶然訪れた不思議な場所。
そこは障害者たちが思い思いに、 音楽やお酒、ダンスを楽しむラウンジだった。
紗江:あなた追われているんでしょ?落ち着くまでここにいなさいよ。
TASKE :人生カミングアウト!
ナレ)真は、ラウンジの面々から手荒い歓迎を受けながら、少しずつ変わってゆく。
光司:友達になってやろうか。
真
:ありがとう。
ナレ)そして、真の運命を左右する出来事が。
怪しい男から差し出されたのは、 禁断の果実。
怪しい男:これ食べたらな、障害がなくなるんやで。
真
:障害が治るんですか!?
怪しい男:障害もなくなるけど、記憶もなくなるというかな。軽なるちゅうか。
真
:えーっ!
ナレ) 記憶と引き替えに障害がなくなるという果実を食べるべきか、真はラウンジの仲間に相談する。
真
:おまえならどうする?
光司:俺が食ったらダウン症でなくなるのか、そうしたら俺は俺でなくなる。
紗江:私は、今の自分で未来を築きたいから。
真
:僕は、この実を食べて障害のない自分になりたいんだ。
光司:待て!全部忘れるんだぞ。俺のことも、ここにいる皆のことも。
真
:そんなことわかっているよ。
真希:僕はやだよ、僕はやだよー!
真
:僕は、僕・・・・。
はるな愛:・・というドラマですけども、裏話とか秘話とかを、じっくり聞いていきたいと思います。
まず、テーマの一つである統合失調症の世界ですけども、加賀谷さん自身も実際に幻覚を見る経験っ
てあったんですか?
加賀谷 :ありました。あのですね、過度な妄想が、バーッと膨らんで、誰かに命を狙われてるんじゃないかと
思ってしまったんですね。それで、僕が24〃5才の頃、4階の角部屋に住んでたんですけども、そ
この窓を開けると、向かいの建物の屋上とフェンスが見えたんですよ。で、ある日窓を見ましたら、
そこからスナイパーが、スナイパーですよ、ライフルで僕をねらってるんですよ。もちろんスナイパ
2
ーというのは、ゴルゴ13と渡哲也さんを足して2で割ったような本物のスナイパーですよ。
一同
:
(笑)
はるな愛:でも、そういう人が見えるってこと?見えたってこと?
加賀谷 :それが現実なんですよ。あ、狙われてるっていう、ものすごい恐怖感です。
はるな愛:本当はいないんでしょ?
加賀谷 :本当はいないんですけど、そとのき僕は、そんなこと思っていなくて、現実としてしかとらえられな
いんですよ。その時は恐ろしくて、一番ひどい時は、窓から一番離れたお風呂場の角っこにいって
膝抱えて、口をガチガチさせて、殺される殺されるって震えてましたね。
はるな愛:じゃあ、このドラマの中で、真の幻覚でシロイヒトが何度もでてくるじゃないですか。
これは、じゃあ、すごくリアルな感じを表してたのね、その幻覚っていう意味で。
加賀谷 :そうですね。それプラス、人によっていろんな見え方だったりとか、いろんな症状が出たりするので、
僕はわかりやすいかなーと思って、圧迫というふうな感じで置きかえて、不安に押しつぶされそうな
気持ちだったりっていうのに持っていって、演じてみたんです。
はるな愛:福岡さんも、その辺は、そうやって幻覚で描いたんですか?
福岡D :そうですね。取材をして、加賀谷さんはスナイパーだったり、ほかの人は借金とりだったり、いろん
な形で見える・・・。
はるな愛:違うんだ。みんなそれぞれに。
福岡D :そうなんです。それをいろいろ考えまして、抽象的にある人から受ける圧迫感だったり、恐怖感だっ
たり、っていうのを象徴的に、シロイヒトだっていう形で表現しました。
日比野P:いやいやいや、でもね、最初ね、福岡さんね、シヒロイヒトじゃなくてね、全然違うゾンビだったん
ですよ。
はるな愛:えーっ(笑)ホラー映画になってしまう。
加賀谷
:そうなんです。僕、最初、脚本段階で打ち合わせに行ったときに、「加賀谷さん、僕ゾンビものにし
ようと思うんですけども」って言うので、
「そうですか」って言うしかないじゃないですか。
福岡D :ゾンビの幻覚っていうふうにして、すごいやりたかったんですけど、相談に行ったお医者さんにです
ね、
「そんなのが見える人はいないと思います」ってすごく言われてですね、それでいろいろ考えた
結果、抽象的な表現になって。
はるな愛:自分で、今、ゾンビでやってたほうがよかったとか、どうですか?今。
福岡D :でも、これでやったシヒロイヒトの表現は、すごく奥の深い人の恐怖みたいなことを描けたと思いま
すので、それはよかったかなと。
はるな愛:ちょっと聞きたいんですけど、福岡さんは、
「バリバラ」のバラエティを作っているのは(普段)一
緒に・・・?
福岡D :僕、バリバラのディレクターではなくて、普段はドラマ、この前の「ごちそうさん」とか作っていた。
日比野P:連ドラとか。
はるな愛:そうなんですか!もう出してくださいよー!
3
福岡D :
(笑)
日比野P:出た(笑)見る目がいきなりかわってるし。
加賀谷 :あのシロイヒトっていうのは、大駱駝艦(だいらくだかん)さんていう、世界的にも有名な舞踏の・・
彼たちなんですよ。
はるな愛:あの格好で踊ってるってこと?
加賀谷 :そうなんですよ。一切言葉を発せずに。
福岡D :体で表現する人たちに、この意図を伝えて、真っていう人を圧迫するっていうことで、その動きなり・・
一緒に考えて。
はるな愛:だからすごい、こだわっていたと思うんですよ、シロイヒト。
日比野P:すごい、もう超アート作品ですから。かっこいいよね。
はるな愛:すごい思いました、私も。
福岡D :ありがとうございます。そう見ていただければ。
はるな愛:日常の街の中から、迫ってくるんだっていうのが分かるっていうね。
日比野P:それで、シロイヒトが出てくるところ、襲われるところで、後半になってくると、加賀谷さんとコラ
ボするじゃないですか。コラボと言うかなんていうか。あそこがまたコメディなのか、シリアスなの
か、あのせめぎ合いの演技が、とてもすごい。
加賀谷 :あそこは、撮り終わった瞬間に、福岡さんとこに走っていって、
「今ので、誤解生まれませんかね?」
って。怖くて、ちょっと。
福岡D :そうですね。僕も、誤解生みそうですけど、ここまでやったらやるしかないと思って「OKですよ」
と。
日比野P:あれは、とてもいいシーンに仕上がったと思いますけどね。
はるな愛:で、また、気になったのが、真が「普通になりたい」ってノートに書きつぶしていて、シロイヒトも
「おまえは普通じゃない」というセリフが何度も出てくるところあるじゃないですか。あそこなんか
どう思います?上からどんどん「普通じゃない」って迫ってくる感じとか。
加賀谷 :あのですね、普通って、すごい難しいと思うんですよね。で、沙江さんも最初に言うんですよね。僕
がラウンジに行ったときに、
「健常者っていうのは、心身ともに健康な人。そんな人いるかしら」っ
ていうふうに言うんですよ。そのセリフを聞くと・・・ラウンジの入口に「健常者お断り」っていう
ふうに紙が書いてあるんですよ。あれは逆に、障害者とか健常者っていうのは、すごくあいまいなも
ので、お店の前にたった人が、
「俺は健常者だ」って、思い切る以外は、入っていいと思うんですよ。
そういうふうな感じで思いましたね。
日比野P:あの張り紙はね、ドラマで貼るかどうかで、結構、もめたよね。
福岡D :もめましたね。
加賀谷 :つかみあいでしたもんね。
一同
:
(笑)
はるな愛:どういうことですか?
4
日比野P:だから、あそこは誤解を生むんじゃないかと。「健常者お断り」ってバーンと貼って、誤解を生む可
能性は勿論あったんですけど、そこはね、ただ、なんていうのかな、つるっとなんか、あそこのラウ
ンジに入ってほしくないな、っていうのがあったんですね。
はるな愛:そっか。
日比野P:それで、とにかく、あそこで1つめ、ザラザラした感じ。見てる側にザラザラした感じで、ひっかか
りをもってほしいなっていうのがあって。見ていくうちに「健常者お断り」っていう意味が、
単純に障害者だけでクローズドの世界を作りたい、っていうのではなくて、そういう発想、その健常
者と障害者と分ける発想が、そもそもどうなのよ、っていうのが、そのあとの会話で描けるっていう
か。
はるな愛:なるほどねー。福岡さんも、それは同じ意見だったんですか?
福岡D :僕は、怖かったですよね。やっぱり僕は普段ドラマをずっとやってるので、バリバラ見て面白いなと
思ってましたけど、作ってみると、難しいというかですね。どこまでの表現がいいのか悪いのかがす
ごく考えないと、難しくてですね・・。
日比野P:一般のね、バリバラじゃない普段作ってるドラマだと、あれはないの?
福岡D :あれはない、ないと思いますね。あの感覚・・。まあ、普段作ってるドラマの感覚でやると、これ何
もできない・・・。
一同
:
(笑)
はるな愛:あ~、そうなんだ。
福岡D :その世界に入らないところなので。
はるな愛:でも、なんで入らないんですか?
福岡D :そうなんですよね。僕もこれ作って、すごく思ったんですけども、何でやらないんだろうなと思って。
面白い、いいお芝居だし、感動的なんです、すごく。
日比野P:新たな次元あると思いませんか?実は。
福岡D :そうですよね。そうなんです。だから、なかなかこういうキャスティングにしても、話にしても
ドラマでは取り扱わない形のところですけど、すごく作品としては、面白みがあると思ったので。
加賀谷 :その取り扱わないのは、普通じゃないですよねって思っちゃうんですよね。
日比野P:そうなんですよ。だからこれまでも、障害者ドラマといえば、役者さんが障害者を演じるっていうの
が必ずあるわけじゃないですか。いやいやどうなの、それはっていう、そこに障害者が出てこないん
ですよ。
はるな愛:でも、そこに演技力ってあると思うんですけども、今回どうでした?みんなの正直なところ。
福岡D :僕は、すごく不安で、けんちゃんにしても、加賀谷さんにしても、どうなんだろ?って思って、すご
く不安で不安でしょうがなかったんですけど、話をして、リハーサルをしていくうちに、すごいどん
どんどんどんうまくなるんですよ。顔つきが変わっていくんですよ、なんか。
で、その変わっていく感じで、あ、これはいけるな、というのはすごく思いました。
はるな愛:なんか指導とかもしたんですか?
5
福岡D :
「こういうふうに」というのは言いましたけど、やらせると、やらせられてます、みたいになるのが
一番僕はよくないと思ったので、うん。本人がお芝居を楽しんでやりたいっていうところを、うまく
引き出したいなと思ったので。それででもね、やってみて、みなさんすごく個性的なお芝居で。
はるな愛:ふーん。ほんとに。
日比野P:キャラ濃いでしょ?みんな。
はるな愛:キャラ濃いけど、でも、ぐっとセリフに、ドスンと残してくれるんですよね。心に、みんなの。
加賀谷 :でもなんだかんだいっても、みんな個性強いじゃないですか。自分の個性の出し方を知ってるんです
よね。
福岡D :そうなんですよね。
加賀谷 :みんなわかってるんですよ、実は。
福岡D :自分の味の出し方・・・。
はるな愛:すごい熱弁。わかってるのね?じゃあ。
加賀谷 :わかります、わかります。
福岡D :それがドラマだと、役者さんも色んなキャラを作るのを考えて考えて作って、衣装がこうで・・・
とかってドラマを作っていくのに、今回そういう意味でいうと、みなさんすごくいろんなキャラクタ
―、個性豊かなキャラクターを、そのまんま引き出せば・・・見たことのない深い・・人間ってなん
なんだろな、みたいなところまで、魅力が・・・。
はるな愛:魅力が出てきたのね・・・。
福岡D :はい、そこがすごく面白かったです。
はるな愛:じゃあ、続いてのテーマにいきましょうか。
福岡D :さて、このドラマの鍵をにぎるのは「食べたら障害がなくなるという実」。しかし、食べると同時に、
記憶もなくなってしまいます。この実を、「食べるのか、食べないのか」っていうが非常に鍵になる
んですけども、ドラマに参加して出演していただいた障害のある方々に意見を聞いてみましたので録
音をお聞きください。
録音②
食べると障害と記憶のなくなる実、食べる?食べない?
加賀谷:これをあなたは食べますか?
男性1(左半身まひ)
:食べます、普通に動き回りたいです。記憶がなくなっても、私のこと覚えてくれている人がおれば、
それでいいです。
女性1:(脳性まひ)
両手両足悪いんですけども、本当にあらゆる苦労をなめてきました。
で、この果物を食べて新しい人生を歩みたいです。
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女性2:(性同一性障害)
私は食べます。小さい頃からずっと女性やと思って生きてきたんですね。
実生活の姿が逆の姿なんで、そういった生活するのは本当にしんどいんですね。
ですんで、もし記憶がなくなってもいいので、今すぐにでも、食べたいです。
男性2:(脳性まひ)
モテるって保証があれば、食ってみたいですね。でも、この顔で障害なくても、モテないと思うか
らねえ。悩むとこだなあ。
女性3:(脊椎側わん症)
やっぱり、家族とかお友達とか、お世話になった人たちの記憶とかをなくしたくない。
でも、例えば、食べて、消化したらまた元通りだったら食べてみたい。1回だけ。
どんな生活かなって思いますね。
加賀谷:あなただったら食べますか?
男性3:(脊髄性筋委縮症)
食べないですねー。
“寝たきりキャラ”で売ってるので、障害がなくなると、目立たなくて困ります。
加賀谷:あなたなら食べますか?
男性4:(ダウン症)
いえ、食べません。お母さんの作った料理とかうまいので。
男性5:(視覚障害)
今まで、辛いこととかも、結構あったりもしたんですけど、やっぱり健常者には味わえない喜びも
あったりすると思うんですね。そういう記憶を大事にしたいなーっていうのがありますかね。
はるな愛:ん~。
「実を食べる、食べない」のところ、このドラマでは、途中ドキュメンタリーになっていまし
たよね?ドラマなのに、みなさんほんとの意見を言ってるんですよね?
福岡D :そうですね。
加賀谷 :みなさんに聞いたんですよ。で、だいたい4対1ぐらいの割合で、「食べない」っていう人の方が
多かったです。
はるな愛:加賀谷さんならどうします?
加賀谷 :僕は、実際にあっても、食べないですね。
はるな愛:どうして?
加賀谷
:それは、例えば、あそどっぐ君(脊髄性筋萎縮症の男性)が、「寝たきりキャラで売っているので、
目立たなくなるので困ります」っていう理由で(を言っているので)あえて(僕も)言うんですけど
も、僕は、精神疾患を持っていなかったら、17(才)でお笑いの世界に飛び込もうとは思わなかっ
7
たんですよね。それがあったから、今、僕は、この人生を歩いていけてるんだ、っていうのがすごい
強いんですよ。
はるな愛:私もちょっと考えたんですよ、このテーマで。私も一緒で「食べないな」
、と思って。
やっぱり私もこうやって生まれてきて、男の子で生まれて、女の子になったから、こうやっていろん
な人に出会えて、こうやってお仕事もいただけてるし、ま、辛いですよ。多分時期が、もっと若かっ
たら食べたかった。中学ぐらい。
加賀谷 :あ~そうですね。
はるな愛:ただ、今になったら、少しずつ・・やっぱり・・そうですね、まあ、もちろん辛いことって一気にな
くなれへんけど、でもやっぱり食べないですね。
加賀谷 :僕もそうですね。その時期ってありますよね。
はるな愛:だから、ドラマ見てて、いきなりこういうテーマが、ポーンって投げかけられるのも、ちょっとなん
か斬新で・・だからこういうドラマいいですね。みんな考えると思いますよ。
日比野P:この実を・・
(食べるかどうか)ドラマのストーリーの中に、最初なかったんですよ。最初は。
はるな愛:そうなんですか?これ、インタビューシーンも?
日比野P:ドラマの台本作りの時になかったんですよ。これ、最初は。
はるな愛:そうなんだ。
日比野P:これはなくて、いわゆる統合失調症の青年、加賀谷さん演じるところの真が、ラウンジでいろんな人
たちと出会って、自分の障害を受け入れていく、成長物語だけになってたんですよ。
そうするとなんかね、つるつるだったんだよね。
福岡D :んー。
日比野P:なんか考えられないよな、みんなが、みたいな。なんかないかな、なんかないかなって言って、西宮
の障害者自立生活センターっていうところで、同じようなことを障害者の人たちに聞いてるという話
が福岡さんから出てき、よし、それを持ちこもうと。
はるな愛:で、福点さんがキャスティングされ・・・。
日比野P:もう、すぐ福点さんに・・怪しい感じで。あれ、持ち込んでから、大変なことになったね。
福岡D :
(笑)
はるな愛:そうなんですか?
日比野P:だって、食べたほうがいいのか、食べないほうがいいのかの結末を、どうしよう、みたいな。
はるな愛:もうドラマのエンディング、2つ出来ちゃったみたいな感じなんですか?
日比野P:そうなんですよ。じゃあ、もうやっぱり食べないよな、普通なって。この流れからいくと、食べない
方向でいくじゃないですか。でも、きっと食べたらどうなるのかって知りたいよね、どうしよって、
やっぱり食べるだなって、っていって。七転八倒ですよ、ストーリーを作る方は。
加・福 :
(笑)
はるな愛:やあ、でも、よかったですよ、入れてもらって。考える機会になりましたよ。
日比野P:それで、一つね、ストーリー作るときに、玉木さんにこの設定持ちこんだら、やっぱりどういうふう
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に考えたらいいんだろう、ぼくたちは、障害のある人のこと障害のない人、社会のこと・・。その時
に、玉木さんに、注意してほしいと言われたことがあって、「例え、食べたから幸せになる、障害が
治る、イコール幸せだっていうふうに作らないほうがいいよ」って。だから、ビフォーアフターで、
障害が、食べたらなくなる。それはいいと。ただ、なくなるイコール幸せだっていうふうに、ってい
うのは違う話だと。
はるな愛:そうですよね。
日比野P:だから、そこから、なるほど、食べても不幸になることだってあるね、と。そこは別の話だと。じゃ
あ、1回不幸にしてみようかっていって、不幸の脚本も1回作ったんですよ。そしたらえらいことに
なりました(笑)
。
福岡D :えらいへこむ展開に(笑)。
はるな愛:そうなんだ(笑)。
♪インターミッション
はるな愛:はるな愛の「バリバラR」
。今日は、バリバラ特集ドラマ「悪夢」のアフタートークを、主演をされ
たハウス加賀谷さん、日比野チーフプロデューサー、演出を担当した福岡ディレクターとともにお送
りしています。あの、ちょっと聞きたいんですけど、制作中で、何か苦労したところとかありました?
加賀谷さん。
加賀谷
:これはですね、タイトルは、
「悪夢」なんですけど、一番これ悪夢だなと思ったシーンがあったんで
すけども、シーンというより、現場が一番「悪夢」でしたね。
一同
:
(笑)
はるな愛:どういうこと?(笑)
加賀谷
:あのですね、これはですね、ドラマ班の方とバリバラ班の方が、合同で作ってくださったんですよ。
で、僕けっこう睡眠時間が大事なので、ちょこちょこちょこちょこ寝てたんですね。
はるな愛:それは障害のあれで・・・?
加賀谷 :そうですね。睡眠障害もちょっとあるんで。で、そうすると、ドラマ班の人とかが、僕が寝ていると
「加賀谷さん、大丈夫ですか?」って、ものすごい心配するんですよ。
一同
:
(笑)
加賀谷 :
「具合悪いんですか?大丈夫ですか?」
「
(僕は)全然大丈夫です。ただ、横になってるだけです。
」っ
て、逆に気を遣って眠れなかったんです。
一同
:
(笑)
はるな愛:そうなんだ。みなさん知らなかったら、何事だと思うもんね。
日比野P:そっとしといてって、感じですね。
はるな愛:あーそうか。そう考えたら、障害もってる出演者の方多いから、わからないこともいっぱいあったん
じゃないですか?福岡さんも。
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福岡D :わかんなかったです。何をどう接していいかも難しかったですし、ただまあ、とにかくドラマをとに
かく作るっていうことで、みなさん、一生懸命やっていただいて、その一生懸命のがんばりがすごく
て、こんなの見たことないっていうぐらい。
はるな愛:日比野さんは、どうでした?ドラマを今回作るということで、苦労したなというとこは?
日比野P:苦労したなって、もう脚本につきますね。
はるな愛:これ、脚本は?
日比野P:脚本家の宇田学さんという・・大阪局で作っている「ボーダーライン」っていう消防士のドラマの作
家で、それと・・福岡ディレクターと、わたくしと、三人でトリオでね・・・
はるな愛:どれぐらい日にちかかったんですか?
福岡D :延々やってましたね。2ケ月ぐらい、延々・・。
はるな愛:台本だけで?
日比野P:台本だけで。
はるな愛:そっかー。
日比野P:難しいですね。
はるな愛:1時間って、短くないですか?私ちょっと思ったんですけど。
福岡D :短かったですね。
はるな愛:2時間ぐらい、いろいろ、もうちょっとほかの人のも、描いてほしいなと思っちゃった。
日比野P:まあね、プロデューサーが予算とってこれなかったという、その分(笑)
。
一同 :
(笑)
福岡D :だから、カットしたシーンもすごくあって、もったいないんですよ。
はるな愛:じゃあ、またね、続編もあってほしいなと思うぐらいですもん。
加賀谷 :ほんとに悩んでたみたいで、1ケ月に1回ぐらい、福岡さんが僕にメールしてくるんですよ。
「なんか案があったら教えてください」って。命の電話ならぬ、命のメールだと思って。
一同
:
(笑)
加賀谷 :わかんないんで、返答しなかったんですけど。
一同
:
(笑)
はるな愛:それぐらいみんなで意見出しあって。
福岡D :どうしたらいいかっていうのが、難しかったですし。
はるな愛:そうかー。何を大切にしたんですか、結果、皆で話し合って、まずは。
日比野P:結果、愛になったね。やっぱりそのザラザラしたい、というのが、バリバラの一つの・・常に問いを
投げかける番組じゃないですか。だからこの障害者ドラマは、単純に障害者の人を見て、いい話を聞
いて感動するっていう、今までのドラマじゃないものにしょう、で、考えてもらうドラマにしよう、
っていうことを考えながらも、でも感動はいるよね、ドラマだもんね、という話になり、で、どうす
る?そこが難しかったよね。
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福岡D :そうですね。どういうドラマにするか。で、結果的にも、なかなか見たことのないドラマにはなって
ると思うんですけど、そこに到達するのは、ほんとうに・・・。
はるな愛:愛はどこで出したんですか?福岡さん。
福岡D :愛はですね、愛は、おっぱいでですね。おっぱいが愛だっていう、わかりにくいんですけどね。
はるな愛:一番最後のところですよね。
福岡D :そうですね。そこのためにもみたいな・・・で、このドラマみて、みんないろんな方が、感想がマチ
マチなんですね。
「泣けた」っていう人もいれば、
「ゲラゲラ腹抱えて笑った」って人もいれば、なん
かほんとに「ザラザラしたというか、考えさせられるような感じだった」っていう人もいて、それだ
け、いろんな取り方ができるドラマになっているっていうのがすごい面白いなと思いましたね。
はるな愛:今まで、いろいろ有名なドラマ作られてますけど、それにはない意見ですか?やっぱり。
福岡D
:そうですね。普通、こっちがある程度レール敷いて、(例えば)夫婦仲がよくなってよかったーとか
いうところに導こうとする作り方でしたけども、今回、見る人によって、いろんな取り方ができるっ
ていうのが、すごくチャレンジグで。
はるな愛:はあ~、すごいね。新しい形を作りましたね。ほんとに。
日比野P:形になってないって感じが・・・
(笑)
日・福 :
(笑)
はるな愛:でも、すごい私よかった。だから尺が短いから、展開がどんどん早すぎて、っていうのはあったんで
すよ。
日比野P:あ~それはあるね。反省点だね。
はるな愛:もっと、見たいし、真希ちゃんをもうちょっと描いてもいいんじゃないかなって。
福岡D :そこもあったんです。
日比野P:泣く泣く落ちてるんです。
はるな愛:あーそうなんだ。ほんとはどういうのがあったんですか?真希ちゃんのシーンは。
加賀谷 :あのですね、真希ちゃんは、僕がおんぶして、線路脇をずーっと歩きながら、ちょっといいこと言う
んですよ、僕が真希ちゃんに。
「親や、人の目ばかりを気にしていないで、自分が好きなことをやん
ないと、僕みたいになっちゃうよ」みたいなことを言ったりして。
はるな愛:まさに、それ自分に差し替わる・・・。
加賀谷 :そうなんですよ。自分に言ってるっていう。
はるな愛:ああ、そっかあ。面白い。ドラマ作りって深いんですね。でもほんと又見たいと思います。
福岡D :ありがとうございます。また是非、来年もチャレンジして、いろんな方を主役にすれば、また違った
見たことないドラマができるかと思いますし。
日比野P:もう1つやりたいのがあるんですよね?福岡さんの構想の中には。
はるな愛:え、なんですか?教えてください。
日比野P:障害者ドラマ。
福岡D :僕、次やりたいと思ったのは、健常者の人と障害者の人の心が入れ替わる・・
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加賀谷 :あー、大林信彦監督的な。
福岡D :はい、作ってますけど・・
日比野P:
「転校生」的な。
はるな愛:あのね、監督に監督を例えるって、一番ね、納得しづらいよね。
一同
:
(笑)
はるな愛:イラっとくるんじゃないですか?
加賀谷 :すいません、すいません。
福岡D :大丈夫です。入れ替わるっていうことが、何が見えてくるだろうっていうのと・・・。
はるな愛:お互い気づく、見えてくるものと。
福岡D :気づいてくると思うんですよ。
はるな愛:見たくなかったことを。
福岡D :新しい発見もたくさんあると思いますし。
はるな愛:それは映画とかにして、しっかり描いてほしいなあ。
福岡D :そうですね。
はるな愛:バリバラ的にもね。
福岡D :笑いあり、涙ありにも持っていきやすいと思いますし。
はるな愛:その時は、ぜひみなさん、今回、出た演者のみなさんをね、ぜひ、採用してほしいですね。
加賀谷 :そうですね。
福岡D :なんかうったえる目が2人ともさあ・・
一同
:
(笑)
はるな愛:私達もそうやし、ひしひしと皆からの声が聞こえますから。お願いします。
加賀谷 :使ってください、使ってください。
福岡D :わかりました。
はるな愛:ということで、素敵なお話どうもありがとうございました。
加賀谷 :ありがとうございました。
はるな愛:さて、はるな愛の「バリバラR」いかがでしたか?
宛先は郵便番号540-8501。NHK大阪放送局、
「バリバラの係」です。
メールは、番組ホームページから送っていただけます。
ホームページのアドレスは、nhk.jp/baribara です。
来週の「バリバラR」も、どうぞお楽しみに。はるな愛でした!バイバイ!
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