1999C5.1.4 重質油の新水素化分解技術の研究開発 1 研究開発の内容 重質油の分解法としては、水素化分解法や熱分解などの既存の技術があるが、運転 条件・収率・製品性状等の面からみて、克服しなければならない多くの課題がある。 すなわち、前者は非常に高い圧力と大量の水素を必要とし、多くの設備投資、運転経 費が必要であり、後者は収率や白油製品の性状に問題を残している。既存技術が抱え るこれら課題を解決し、また経済的にも優れた新しい国産技術のプロセス開発が必要 とされている。これに対し、本研究開発においては低い設備コスト、省エネ型で、か つ白油収率の高い経済性に優れた、残油分解プロセスを開発する。具体的には、従来 の水素化分解法と比較して、より温和な圧力条件で、かつ水素消費量も少ない活性炭 素を触媒とする新しい重質油分解技術を完成させることを目的として以下を実施した。 平 成 6∼ 8 年 度 小型触媒製造試験により活性炭素触媒調製法及び最適製造法を検討し、活性炭素性 能試験により活性炭素触媒を最適化した。 ガス流通方式のセミバッチ式オートクレーブ試験を行い、反応特性の解析と反応条 件の最適化、反応生成物の評価を行った。 平 成 9,10 年 度 本新水素化分解法を用いたプロセスを、製品需要に対しよりフレキシビリティのあ る 経 済 性 に 優 れ た も の と す る た め 、下 記 を 目 標 と し 、金 属 (鉄 )/活 性 炭 素 触 媒 の 性 能 向 上及び工業的適用法の最適化、触媒使用法及び消費量の低減化、活性炭素触媒の活性 評価、残渣油の用途開発に関する検討、プロセスの最適化及び経済性評価を実施し、 高転化率から低転化率までの対応が可能な技術の検討を行った。 低 転 化 率 * 高 転 化 率 転化率 白油収率 (%) (%) コ ー ク 生 成 率 (%) 65 95 60 80 0 5 * 残油は製品価値を有する 2 試 験 研 究 の 結 果 と 解 析 2.1 触媒選定 (1) 活性炭素調製法の探索 100 ルエンへの転化率(MCH 転化率)を測定し、 活性炭素の脱水素能を評価した。MCH 転化 率は原料炭素源中の固定炭素減少率の増 CO2賦活 80 MCH 転化率 (%) メチルシクロヘキサンの脱水素によるト E品 90 ロータリーキルンで活性炭素を調製し、 70 C品 60 A品 50 O2:3.6% 40 30 加に従って上昇して一定の平衡値となり、 O2:5.5% B品 20 O2:10% H2O 賦活 D品 F品 G品 10 0 この値は水蒸気賦活と二酸化炭素賦活で 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 固定炭素減少率 (wt.%) 異なり、水蒸気賦活の方が脱水素能が低い ヤルーン炭チャー CO2 賦活 ヤルーン炭チャー H2O 賦活 ヤルーン炭チャー H2O+Air 賦活 活 性 炭 素 が 得 ら れ る こ と が わ か っ た (図 2.1-1)。 Rhenish 褐炭チャー H2O 賦活 P.COKE A H2O 賦活 Feリッチ褐炭 H2O 賦活 図 2.1-1 MCH 転化率に及ぼす固定炭素減少率の影響 窒素吸着法による細孔構造の評価を行 い、二酸化炭素賦活の場合ミクロポアが多 1.4 いのに対し、水蒸気賦活の場合メソポア構 1.2 細孔容積 (ml/g) 造が発達した活性炭素となることがわか った(図 2.1-2)。 炭素源の評価では、ヤルーン炭ブリケッ トとヤルーン炭チャーでは同等の活性炭 素が得られることから、より取扱いが容易 D品 C品 1 O2:3.6% 0.8 G品 E品 A品 0.6 B品 0.4 O2:5.5% 0.2 O2:10% F品 0 なヤルーン炭チャーが、炭素源として有利 0 20 40 60 80 100 固定炭素減少率 (wt.%) なことがわかった。石油コークスはヤルー Vtotal ヤルーン炭チャー CO2 賦活 Vtotal P.COKE A 賦活品 Vtotal ヤルーン炭チャー H2O 賦活 Vtotal Rhenish 褐炭チャー賦活品 Vtotal ヤルーン炭チャー H2O+Air 賦活 Vtotal Feリッチ褐炭賦活品 Vmeso ヤルーン炭チャー CO2 賦活 Vmeso P.COKE A 賦活品 Vmeso ヤルーン炭チャー H2O 賦活 Vmeso Rhenish 褐炭チャー賦活品 Vmeso ヤルーン炭チャー H2O+Air 賦活 Vmeso Feリッチ褐炭賦活品 ン炭に比べ、賦活ガスと反応しにくく、細 孔構造もほとんど発達しなかった。 (2) 賦活方式の検討 図 2.1-2 固定炭素減少率とメソポア容積の関係 ロータリーキルンに比べ、賦活時間の短 縮・生産性の向上・装置の小型化が期待で 100 きる流動床方式による活性炭素の調製を キルンの 5∼6 倍となり、流動化により反 応が促進され賦活時間の短縮、装置の小型 化が可能と考えられた(図 2.1-3)。 得られた活性炭素の脱水素能、細孔構造 もキルンで調製のものとほぼ同等で、メソ ポア構造の発達は二酸化炭素賦活に比べ て水蒸気賦活の方が大きくなる傾向であ った。 以上から、ヤルーン炭チャーを水蒸気で 固定炭素減少率(wt.%) 検討した。流動床方式における賦活速度は、 973K(700℃) 1073K(800℃) 1123K(850℃) 1073K(800℃) 1123K(850℃) 80 流動床 流動床 流動床 キルン キルン 60 40 20 0 0 60 120 180 240 賦活時間(min) 図 2.1-3 賦活速度 (ヤルーンチャー/CO2)(20/40#) 賦活して得られる、脱水素能が低くメソポア構造の発達した活性炭素を選定した。 300 2.2 反応特性の解析と反応条件の最適化 (1) 水 素 化 分 解 反 応 基 礎 試 験 内 容 積 0.001m 3 の 水 素 ガ ス 流 通 方 式 の セ ミ バ ッ チ 式 オ ー ト ク レ ー ブ 装 置 に よ り 、 中 東 系 減 圧 残 油 (VR)を 原 料 と し た 水 素 化 分 解 反 応 基 礎 試 験 を 実 施 し た 。水 素 化 分 解 反 応 性 能 は 原 料 減 圧 残 油 中 の 525℃ + 留 分 が 、ガ ス 、コ ー ク お よ び 525℃ - 留 分 へ 転 化 し た 率 、 すなわち転化率と生成物収率の関係で反応特性を調べた。 (イ ) 触 媒 調 製 法 と 反 応 特 性 20 無触媒の場合、転化率の上昇に伴っ て急激なコーク生成量の増加が見られ る が 、鉄 /活 性 炭 素 触 媒 の 添 加 に よ っ て 、 分解反応時に生成する炭化水素ラジカ コーク生成率 (%) (a) 触 媒 効 果 708K 無触媒 693K∼703K 15 10 5 ルの重縮合が抑制されてコーク生成が 0 低減し白油化率が増加して、触媒の効 40 果 が 見 ら れ た (図 2.2-1)。ま た 、触 媒 を 、 微粒化して高分散することによって高 50 60 70 80 転化率(%) 90 100 7MPa, AC(C)4.75%/Fe 0.25%, 200 メッシュアン ダー い白油化率が得られた。 図 2.2-1 触媒効果 (b) 鉄 添 加 法 鉄源として、硝酸鉄水溶液を活性炭素に含浸させて鉄を担持し、硫化後に使用す る 実 験 室 的 な 基 礎 的 手 法 に 対 し て 、 安 価 な 天 然 パ イ ラ イ ト (二 硫 化 鉄 )を 活 性 炭 素 に 物理的に混合することも有効な方法であることを見出した。 (c) 炭 素 源 と 賦 活 ガ ス ヤルーン炭ブリケットと同様に、ヤルーン炭チャーを炭素源とした活性炭素も、 触媒として使用できることを確認した。また、水蒸気を用いて賦活した脱水素能の 低 い 活 性 炭 素 に よ っ て 、二 酸 化 炭 素 賦 活 品 に 比 べ て 水 素 化 分 解 に お け る 白 油 化 率 は 高いものとなる結果を得た。 残油リサイクルによる、高転化率 を達成することを目的とし、オート クレーブ反応試験によって生成した 分解油を蒸留分離して得られた残油 留 分 (525℃+)を 原 料 VR と 混 合 し て 、 リサイクル分解反応試験を行った。 45%転 化 率 の 残 油 、 65%転 化 率 の 残 油 を そ れ ぞ れ 、 重 量 ベ ー ス で VR:残 油 =65:35 に な る よ う に VR と 混 合 し た 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 転化率 (wt.%) (ロ ) 残 油 リ サ イ ク ル VR単独 VR/転化率45%残油混合 VR/転化率65%残油混合 0 反応時間 50 100 150 図2.2-2 反応時間と転化率 (VR/残油混合) 200 サンプルを用いた。 反応時間と転化率の関係で残油混 合 VR の 反 応 性 を 比 較 す る と 、VR 単 独 に 比 べ て 残 油 混 合 VR の 方 が 低 く 、ま た 混 合 し た 残 油 の 転 化 率 が 高 い も の の 方 が 低 く な っ た (図 2.2-2)。 転化率とコーク生成率の関係をみ 25 る と 、コ ー ク 生 成 量 は 残 油 混 合 VR の VR単独 コーク生成率(%) 方が高く、また混合した残油の転化 率 が 高 い も の の 方 が 高 か っ た 。 VGO 留 分 の 収 率 は 、 VR 単 独 の 方 が 高 く 、 ナフサ等その他の留分の収率は、あ ま り 差 が な か っ た (図 2.2-3)。 20 VR/転化率45%残油混合 VR/転化率65%残油混合 15 10 5 0 速 度 論 的 解 析 の 結 果 で は 、 VR 単 独 0 で は 435℃ に お い て 、転 化 率 95%に お 20 40 60 転化率 (%) 80 100 図2.2-3 転化率とコーク生成率 (VR/残油混合) け る 、 コ ー ク 生 成 率 が 2.8%で あ る の に 対 し て 、 45% 転 化 率 の 分 解 残 油 を 35%混 合 し た VR は 、転 化 率 95%に お い 以上、残油リサイクルによって、大 幅なコーク量の増加は見られず、本開 発 の 高 転 化 率 型 の 目 標 値 で あ る 95% 転 化 率 、 コ ー ク 生 成 率 5%は 可 能 な も の と 20 コーク生成率 (%) て 、コ ー ク 生 成 率 は 5.4%と 推 算 さ れ た 。 7MPa AC(C)4.75%/Fe 0.25% 200 メッシュアンダー 15 10 5 0 考えられた。 40 (2) 反 応 条 件 の 最 適 化 50 (イ ) 反 応 温 度 60 70 80 転化率 (%) 90 100 698K 703K 708K 713K 703K 30min+713K 30min(温度の2段) 703K 30min+713K 60min(温度の2段) 703K 30min+713K 105min(温度の2段) 無触媒 693K∼703K 圧 力 7MPa で 反 応 温 度 の 影 響 を 調 べ た 。 反 応 温 度 が 425∼ 435℃ の 範 囲 で は 、 転 化率とコーク生成率の関係は同様の傾 向 を 示 す が 、反 応 温 度 を 高 温 (440℃)に 図 2.2-4 反応温度の影響 すると、コーク生成率が急激に増加し た。より高温における反応では、反応 時 に 生 成 す る 炭 化 水 素 ラ ジ カ ル の 濃 度 が よ り 増 加 し 、こ の ラ ジ カ ル の 安 定 化 の た め に水素の供給が不足するとコークが生成してしまう。これに対し、反応の前半を低 温で行い、後半で温度を高める 2 段 10 Fe3%+AC(C)5% 7MPa Fe3%+AC(C)3% 7MPa Fe3%+AC(C)1.5% 7MPa Fe3%+AC(C)5% 10MPa Fe3%+AC(C)3% 10MPa Fe3%+AC(C)1.5% 10MPa 効 果 が 見 ら れ た (図 2.2-4)。 (ロ ) 反 応 圧 力 圧 力 を 上 昇 さ せ る と 、10MPa ま で は コーク生成の抑制に大きな効果が見 ら れ た が 、 10MPa 以 上 で は 圧 力 の 効 コーク生成率 (wt%) 反応を行うと、コーク生成の抑制に 8 6 AC 1.5% AC 3% AC 1.5% 4.3-9 反応温度の影響 図 10MPa 4 AC 5% AC 3% 10MPa AC 5% 10MPa 2 果は少なくなる傾向であった。この 圧力の効果は、水素化を担う鉄の添 加 割 合 が 高 い 方 が 大 き く 現 れ た (図 2.2-5)。 0 70 80 90 転化率(%) 100 反応温度:435℃ 図 2.2-5 転化率とコーク生成率の関係(圧力の影響) 14 (ハ ) 触 媒 添 加 量 の 影 響 混合して使用する方法で、それぞれ の添加量を変えて反応特性を調べた。 天然パイライト単独の場合、転化率 の増加と伴にコークの生成量は増加 コーク生成率 (%) 12 天然パイライトと活性炭素を物理 10 8 6 4 2 するが、活性炭素を共存させると転 0 40 化率の高い領域においてもコーク生 成量は増加せず、活性炭素がコーク 50 60 70 80 転化率 (%) 90 100 FeS2(as Fe 3%) (10MPa) 生成の抑制に有効であることが明ら FeS2(as Fe3%)+AC(C)(5wt%) (10MPa) か に な っ た (図 2.2-6)。 AC(C品)(4.75wt%)+FeS2(0.25wt%)(7MPa)(698K∼708K) 図 2.2-6 触媒添加量の影響 2.3 反応生成物の評価 (1) 留 出 油 の 性 状 本水素化分解の留出油は、ディレードコーカーに比べて、ナフサ、灯油の留分では オ レ フ ィ ン が 少 な く 水 添 の 効 果 が 出 て い る が 、脱 硫 効 果 は 低 く 硫 黄 分 は コ ー カ ー と 同 程 度 で あ る 。軽 油 の セ タ ン 指 数 は わ ず か に 高 い が 、デ ィ ー ゼ ル 燃 料 と し て は セ タ ン 指 数 が 低 く 硫 黄 分 が 高 い 。直 留 系 に 比 べ て 軽 油 の 低 温 特 性 は 優 れ て い る 。減 圧 軽 油 は 直 留 系 よ り 硫 黄 分 は 若 干 高 い 。こ の 留 出 油 は 通 常 の 条 件 で 水 添 二 次 処 理 す る こ と に よ っ て 、 JIS 製 品 ス ペ ッ ク を 満 足 す る 脱 硫 油 の 採 取 が 可 能 と な る こ と が わ か っ た 。 (2) 反 応 生 成 物 の 組 成 変 化 分 解 油 の 減 圧 残 油 (525℃ + )留 分 を 溶 剤 分 別 で 分 画 し 、 反 応 進 行 に 伴 う 、 飽 和 分 、 芳 香 族 、レ ジ ン 、ア ス フ ァ ル テ ン 量 の 変 化 と 転 化 率 の 関 係 を 調 べ た 。無 触 媒 で は 反 応 進 行 と 伴 に ア ス フ ァ ル テ ン が 増 加 し 、こ の ア ス フ ァ ル テ ン が 転 化 し て コ ー ク が 多 量 に 生 成 す る (図 2.3-1)。 鉄 /活 性 炭 素 を 添 加 す る と 、 ア ス フ ァ ル テ ン の 増 加 は 無 く 、 コ ー ク 生 成 は わ ず か と な る 。こ れ は 熱 分 解 で 発 生 す る ラ ジ カ ル が 触 媒 に よ っ て 安 定 化 さ れ 、 ラジカルの重縮合による新たなアスファルテン生成が抑制されるためと考えられた。 無 触 媒 100 AC(C)(5%)+FeS2(as 100 Fe)(10%) Gas 90 累 積 収 率 (wt.%) Gas 90 Satu Naph 80 70 Kero Aroma 60 Naph 80 Satu Kero 70 60 GO 50 VGO 40 30 GO Aroma 50 40 30 Resin VGO Resin 20 20 10 10 Asph Coke 0 Asph 0 0 20 40 転 化 率 60 80 100 0 20 (wt.%) 図 2.3-1 反応生成物の組成変化 40 転 化 率 60 (wt.%) 80 Coke 11 0 00 2.4 金 属 (鉄 )/活 性 炭 素 触媒の性能向上及び工業的適用法の最適化 コーク生成率 (%) (1) 天 然 パ イ ラ イ ト の 微 粒 化 触媒性能向上を目的とした、油中粉砕に よって天然パイライトを微粒化において、 混合油として使用した市販軽油の反応への 影 響 を 調 べ た 。原 料 VR に 軽 油 と 微 粒 化 さ れ たパイライトを仕込んだ後、蒸留により軽 20 空気中粉砕 4.5μm 油中粉砕 1.9μm 油中粉砕 6.3μm 15 10 5 0 0 油 分 を 除 去 し 微 粒 パ イ ラ イ ト の み VR に 混 合 20 40 60 80 100 転化率 (%) 図2.4-1 パイライト微粒化の効果 Fe10% さ れ た 状 態 で 反 応 試 験 を 行 っ た 。そ の 結 果 、 微 粒 化 パ イ ラ イ ト の 粒 径 が 2mm∼ 6mm の 範 囲 したままのものと比べて、大きな性能向上 は 見 ら れ な か っ た (図 2.4-1)。 (2) 金 属 の 高 分 散 化 微粒な鉄の高分散化が可能と考えられる、 コーク生成率 (%) では、従来の空気中粉砕、また軽油を含有 油溶性の鉄化合物を用いた反応試験を行っ 20 パイライト0.75%/AC(C)5% 15 担持Fe0.5%/AC(C)5% ナフテン酸Fe0.1%/AC(C)5% 10 ナフテン酸Fe0.5%/AC(C)5% 5 0 0 た。油溶性鉄化合物には、ナフテン酸鉄を 20 40 60 80 100 転化率 (%) 石油系スピリットに溶解させたものを用い、 図2.4-2 油溶性鉄の効果 そ の ま ま VR と 混 合 し た 。 従 っ て 、 石 油 系 ス ピ リ ッ ト 中 の ナ フ テ ン 酸 鉄 の 濃 度 が 4.91% と 薄 く 、 鉄 そ の も の の 添 加 量 は 低 く な っ た 。 ナ フ テ ン 酸 鉄 0.1%(as Fe)の 場 合 、 分 解 速 度 も 速 く 、 触 媒 効 果 が 見 ら れ ず 、 コ ー ク 量 も 16%と 大 き な 値 と な っ た 。 0.5%の 場 合 コーク生成は抑えられているが、パイライト混合および担持鉄と同程度であり、より 高 い 性 能 を 示 す デ ー タ は 得 ら れ な か っ た (図 2.4-2)。 (3) 反 応 モ デ ル 解 析 触媒性能の向上を目的とし、触媒種である鉄と活性炭素の反応特性を明確に定量化 す る た め 、 反 応 生 成 物 で あ る Gas, Naphtha, Kerosene,Gas Oil,VGO,Coke の 収 率 と 、 残 油 の 溶 剤 分 画 組 成 (Saturate,Aroma, Resin,Asphalten)デ ー タ を 基 に 、反 応 モ デ ル を k4 S a t u k1 k5 Aroma k6 k2 k7 Resin k8 k3 A s p k9 初期値 原料減圧残油 100 Fe3%,AC(C)5% Base+20 ℃ l o (Gas∼GO) VR Satu Aroma Resin Asp lo vgo coke k1 組 成 (wt.%) VGO 50 Coke 525℃+ 93.4%,VGO 6.6% 溶剤分画組成(wt.%) Satu 8.3,Aroma 35.6 Resin 45.4,Asp 図 2.4-3 反応モデル 10.7 0 0 100 時 間 (min) 200 図 2.4-4 計 算 値 と 実 験 値 の 比 較 300 構 築 (図 2.4-3)し 、 速 度 論 的 解 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 生 成 物 の 濃 度 変 化 の 実 験 値 と 計 算 値 は 良 い 一 致 (図 2.4-4)を 示 し た 。 この解析結果から、活性炭素触媒はレジンから新たなアスファルテンの生成と、ア スファルテンからコークが生成する経路を抑制し、重質留分の重質化とコーク化を防 ぎつつ、反応を進める上に効果を持つことが検証された。 2.5 触媒使用法の最適化及び消費量の低減化 討で、水蒸気賦活でメソポア細孔構造を 発達させた活性炭素は、コーク生成を抑 制する能力が大きいという結果が得られ た。そこでメソポア比率の異なる活性炭 素 を 用 い て 、 原 料 で あ る 減 圧 残 油 (VR) の 20 15 AC(C) 10 5 AC(B) 0 0 吸着試験を行い、活性炭素の細孔構造と 吸着特性の関係を調べた。その結果、メ AC(A) (wt%/mL) 活性炭素の物性と反応特性に関する検 25 脱アスファルテン率/全細孔容積 (1) 活 性 炭 素 の ア ス フ ァ ル テ ン 吸 着 選 択 性 0.2 0.4 0.6 0.8 1 メソポア比率(細孔容積基準) 図 2.5-1 メソポアとアスファルテン選択性 ソポア比率の大きい活性炭素ほど吸着量 が 大 き く な り 、 吸 着 後 の VR 中 に 残 っ た ア ス フ ァ ル テ ン 濃 度 か ら 求 め た 脱 ア ス フ ァ ル テ ン 率 は 、 メ ソ ポ ア 比 率 の 大 き い 活 性 炭 素 ほ ど 高 く な る こ と が わ か っ た (図 2.5-1)。 (2) 活 性 炭 素 の 細 孔 構 造 と 反 応 特 性 20 活性炭素触媒の細孔構造と反応特性の る抑制効果が大きいことが明らかとなっ た (図 2.5-2)。こ の こ と か ら 重 質 留 分 や ア スファルテンと親和性を持つ活性炭素は、 コーク生成率 (wt.%) 関係を検討した結果、メソポア構造の発 達した活性炭素ほどコークの生成に対す 無触媒 7MPa 15 Fe5%/AC5% 10 AC(A):A AC(B):B AC(C):C B435℃ B430℃ A425℃ C435℃ B425℃ 5 反応の過程において分解生成油の重縮合 やコーク生成の抑制に、かかわりを持つ ことが推察された。また、活性炭素上で はアスファルテンの吸着、脱離が繰返さ れ、活性なサイトは常に有効であり、す C425℃ 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 転化率 (wt.%) 図 2.5-2 転化率とコーク生成率(細孔容積の影響) なわち触媒活性は維持されている可能性が認められた。 (3) 流 通 式 連 続 反 応 装 置 に よ る 活 性 炭 素 触 媒 の 反 応 性 能 評 価 流通式連続反応で活性炭素触媒の反応性能と、反応器 1 槽または直列 2 槽での反応 試験を行い、反応器性能の確認および触媒使用法を検討した。 (イ ) 反 応 性 能 評 価 各 留 分 の 収 率 分 布 は バ ッ チ 試 験 と ほ ぼ 同 様 で あ っ た が 、 転 化 率 80∼ 90%に お い て も 生 成 油 中 の コ ー ク 生 成 率 は 0.3%程 度 と バ ッ チ に 比 べ て 非 常 に 少 な く 、中 間 留 分 も 多くなった。これはバッチ反応器では極端に軽質化した油分と未反応の重質油分の 二 極 化 が 起 き 、相 分 離 し 易 い 状 況 で あ る が 、流 通 式 で は 反 応 器 内 が 完 全 混 合 の た め 、 軽質油分と重質油分の相分離が起きにくく、アスファルテン等重質化したコーク前 駆体が分散され、重縮合による重質化が抑制されるためと考えられた。 完全混合槽槽列モデルとして滞留 時間と転化率の関係を求め、流通 式反応試験結果と比較した(図 2.5-3)。 そ の 結 果 、 流 通 式 反 応 デ 転化率 (%) バッチ試験で得た速度式を基に、 ータは完全混合槽槽列モデルでほ ぼ表せることが確認できた。 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 2.6 活 性 炭 素 触 媒 の 活 性 評 価 バッチ試験において得られた結果を 基に、コーク前駆体の生成を抑える目 的 で 、1 段 目 の 反 応 器 に お い て 低 温 で 比 較 的 マ イ ル ド に 反 応 を 行 い 、2 段 目 で 温 度を上げて高転化率を目指す、温度 2 段反応試験を実施し、コーク抑制効果 と触媒活性評価を行った結果、温度 2 滞留時間 400 200 N=1実験値 N=2実験値 N=1実験値 N=2実験値 600 800 図2.5-3 完全混合槽槽列モデルと実験値 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 5 4 転化率 (%) (1) 活 性 評 価 415℃ 415℃ 425℃ 425℃ 3 転化率 コーク 1 0 段 反 応 で は 約 200 時 間 の 高 転 化 率 運 転 2 コーク(wt.%) (ロ ) 反 応 器 性 能 50 でも触媒性能は安定しており、生成油 100 経過時間 (h) 0 200 150 図2.6-1 温度2段反応 中にコークはほとんど見られなかった いならば、原料通油量から触媒メーク ア ッ プ 量 を 計 算 す る と 、 最 大 で も 1wt% で済むことが推察できた。 (2) 脱 メ タ ル 2 段反応で得られた生成油中のニッ ケ ル (Ni)、 バ ナ ジ ウ ム (V)量 か ら 、 原 料 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 HDM,HDS (%) (図 2.6-1)。200 時 間 、 触 媒 の 劣 化 が 無 HDNi HDV HDS 50 70 80 90 100 転化率 (%) 図2.6-2 活性炭素触媒の脱メタル性能 VR の 脱 ニ ッ ケ ル (HDNi)、 脱 バ ナ ジ ウ ム (HDV)率 を 調 べ た 結 果 、原 料 VR の Ni は 60 鉄 /活 性 炭 素 触 媒 は 脱 メ タ ル 性 能 に 優 れ て い る こ と が わ か っ た (図 2.6-2)。 脱 硫 率 は 、 60∼ 80%で あ っ た 。 1 段目の反応器と 2 段目の反応器の 触媒上に堆積したメタル量を調べると、 1 段目の反応器の触媒には 2 段目反応 器の触媒のほぼ倍近くのメタルが堆積 しており、脱メタルは主に 1 段目で起 こ っ て い る 。 ま た 、 100 時 間 使 用 後 と メタル堆積量 (wt.% on Fresh Cat.) 80∼ 85%、V は 92∼ 96%除 去 さ れ て お り 、 4 1段目 2段目 3 2 1 0 0 50 100 150 通油時間 (h) 図2.6-3 触媒上に堆積したメタル量 200 200 時 間 使 用 後 の 触 媒 上 の メ タ ル 堆 積 量 は 時 間 に 比 例 し て お り 、 こ の 範 囲 で は 活 性 炭 素 の 脱 メ タ ル 活 性 は 維 持 さ れ て い る こ と が わ か っ た (図 2.6-3)。 2.7 残 渣 油 の 用 途 開 発 (1) 残油の性状 反応進行に伴う分解残油の性状変化の傾向を調べた。鉄単独に比較して活性炭素添加の場 合、転化率を上昇させても、残油のノルマルヘプタン不溶分の増加はわずかであった。転化 率が 30%を越えると、ノルマルヘプタン不溶分のシクロヘキサン不溶分への転化が始まり、油 質の変化が認められた。残留炭素は転化率が 60%を越えると増加が始まるが、触媒による差異 は少なかった。軟化点は転化率が 45∼60%を越えるところから上昇が始まるが、活性炭素添加 の場合、より高い転化率までこの軟化点の上昇が抑えられた。総じて、活性炭素を添加した 場合、高転化率領域まで残油性状は比較的良質に維持される傾向であった(図 2.7-1)。 80 nC7 cHx 10 5 0 150 Fe3%+AC5% 軟化点 (℃) Fe3%+AC5% 残留炭素(wt.%) 不溶分 (wt.%) 15 60 100 40 20 0 0 50 転化率(wt.%) 100 Fe3%+AC5% 50 0 0 50 転化率 (wt.%) 100 0 50 転化率 (wt.%) 100 図 2.7-1 残油性状(10MPa) (2) 用途の検討 (イ) 重油混合基材 5 (転化率 60∼65%)において得られた残油の、 C 重油基材適合性評価を行った。その結果、 JIS 3 種 1∼3 号に規定されている規格は適 合することを確認した。しかし反応器 1 段 の反応ではスラッジの生成が見られ、安定 性に改善余地が見られた。これに対し低温 /高温での反応器 2 段反応を行い、それぞ れ 1 段(N=1)、2 段(N=2)反応で得られた残 油を FCC の LCO と混合して、安定性をスポ スポットNo. (-) 流通式連続反応装置で低転化率モード 4 3 転化率 2 N=1 N=2 N=2 N=2 1 60.9% 60.8% 69.2% 84.8% 0 0 10 20 30 40 50 60 LCO混合比率 (vol.%) 図2.7-2 LCO/残油混合品安定性評価 ットテストで評価した。その結果、2 段反 応によってスラッジの生成が抑えられ、安定性が改善されることがわかった(図 2.7-2)。 (ロ) 他の用途 残油の用途としては、未反応残油の蒸留カットポイントを変更することで、VGO 得率の減 少とはなるが、アスファルトとして利用が可能である。また製品アスファルトに直接混合 することも可能と考えられる。さらに、液体燃料として直接の燃焼、セメントキルン、部 分酸化原料、脱瀝原料、コーカー原料等の用途に使用が可能と考える。 2.8 プロセススキームの最適化と解析・評価 (1) プ ロ セ ス 検 討 試 験 プロセススキームの検討に際し、ポイントとなる反応器型式の検討や、特にボトム 回りの固液の取扱い上必要となる、スラリーに関するデータ蓄積を行った。 (イ ) 反 応 器 型 式 の 探 索 反 応 器 型 式 と し て 気 液 固 3 相 流 動 層 を 想 定 し 、 コ ー ル ド モ デ ル 装 置 で 空 気 /水 /ガ ラスビーズを用いて、液流速、ガス流速、粒子密度等をパラメータとして混合特性 を調べた。その結果、流動層内の液滞留時間分布、固体濃度分布等の混合特性には、 ガス流速が重要な因子の一つであることがわかった。 (ロ ) ス ラ リ ー の レ オ ロ ジ ー 特 性 プ ロ セ ス で は 、触 媒 の 供 給 ま た 反 応 後 の 廃 触 媒 /コ ー ク の 循 環 や 排 出 等 ス ラ リ ー を 取扱うため、活性炭素と減圧残油、分解残油でスラリーを調製し、ずり速度と見掛 け粘度、見掛け粘度と温度、スラリー濃度と見掛け粘度等のレオロジー特性に関す るデータを蓄積した。 (2) プ ロ セ ス ス キ ー ム の 最 適 化 新水素化分解法では、コーク生成抑制に有効な触媒使用法、触媒使用量削減のため の 触 媒 劣 化 制 御 法 、回 収 率 向 上 の た め の 反 応 生 成 物 と コ ー ク /廃 触 媒 の 分 離 法 、コ ー ク 生成を抑制し且つ高転化率を達成する反応方式・反応条件の選定等がプロセス構築上 重要である。 スキームの検討では、白油収率の高い高転化率型と、白油収率は低いが残渣油が製 品価値を有する低転化率型とでは、コーク生成や触媒劣化に差が生じるため、運転モ ー ド に よ っ て プ ロ セ ス 構 成 を 変 え た 。想 定 さ れ る フ ロ ー の 一 例 を 図 に 示 す (図 2.8-1)。 水素 水素回収 オフガス 水素 クエンチ 減圧残油 反応 スラリー床 水素回収 クエンチ 気・スラリー 分離 軽・中間留分 減圧残油 固体濃縮 触媒 反応 スラリー床 気・スラリ 分離 軽・中間留 トルエン 抽出 固体分離 高転化率型 オフガス 乾燥 減圧軽油 固体分離 トルエン 回収 減圧蒸留 減圧軽油 低転化率型 減圧蒸留 ピッチ ピッチ 図 2.8-1 プロセスフロー例 コーク (3) プ ロ セ ス の 解 析 ・ 評 価 新 水 素 化 分 解 法 の 評 価 の た め 、20,000BPSD 規 模 の 分 解 設 備 を 検 討 し 、沸 騰 床 型 水 素 化分解法、および熱分解プロセスのディレードコーカー法と経済性を比較した。この 際、留出油脱硫設備・水素製造設備・硫黄回収設備までを検討範囲とし、比較基準をそ ろ え た 。 各 ケ ー ス の 比 較 に は 、 純 利 益 を 総 投 資 額 で 割 っ た 値 、 即 ち 投 資 回 転 率 (ROI) を 用 い 、 デ ィ レ ー ド コ ー カ ー の ROI 85%ケース触媒メークアップ量 (wt.% on VR) を 100 と し て 比 較 し た (図 2.8-2)。 0.0 140 型ではコーク生成がないため、触媒 120 費・固体取出し設備費および用役費 100 が大幅に低減し、経済性はディレー ドコーカーを上回る。一方、高転化 経済性 本プロセスの経済性は、低転化率 1.0 2.0 3.0 85%ケース 80 60 率型の場合、コークが生成すると触 40 媒メークアップが必要となり、メー 20 クアップ量に経済性は大きく依存す 0 る。従って、反応温度をマイルドに 本プロセス 62%ケース し、コークの生成を抑制する条件で ディレード コーカー 沸騰床 90% 沸騰床 65% 図 2.8-2 経済性比較 反応器を運転し、触媒消費量を低減 すると、プロセスの経済性は大幅に向上することがわかった。 3 試 験 研 究 の 成 果 平 成 6∼ 10 年 に 亘 り 、活 性 炭 素 物 性 お よ び 金 属 (鉄 )/活 性 炭 素 触 媒 調 製 、水 素 化 分 解 反応特性、反応生成物の性状評価等の試験研究を行い、工業的な触媒調製法、コーク 生成の抑制に有効な触媒反応条件、触媒反応特性、反応生成物の性状に関する基礎デ ータ蓄積を行った。更に、プロセスをよりフレキシビリティのある経済性に優れたも のとするため、触媒の性能向上及び工業的適用法の最適化、触媒使用法及び消費量の 低減化、触媒活性評価、残渣油の用途開発、プロセスの最適化及び経済性評価を実施 し 、高 転 化 率 か ら 低 転 化 率 ま で の 対 応 が 可 能 な 技 術 の 検 討 を 行 い 、下 記 の 成 果 を 得 た 。 * 褐炭チャーの水蒸気による賦活で、メソポア構造の発達したコーク生成の抑制能 力を持つ活性炭素の調製が可能となった。 * 活性炭素の賦活方式として、生産性の向上・装置の小型化が期待できる流動床が 適用可能であった。 * 鉄 担 持 法 に 代 わ り 、 天 然 パ イ ラ イ ト (二 硫 化 鉄 )と 活 性 炭 素 の 物 理 混 合 法 も 有 効 で 、 工業的に、より有利な活性炭素触媒調製法に関する基礎データを得た。 * 従 来 の 水 素 化 分 解 技 術 よ り も 低 い 10MPa 程 度 の 圧 力 で 、 反 応 器 内 の 鉄 /活 性 炭 素 触媒高濃度にすることでコーク生成の抑制が可能なことがわかった。 * 鉄 /活 性 炭 素 触 媒 に よ っ て 白 油 収 率 の 維 持 に 重 要 な 軽 油 留 分 の 二 次 分 解 が 抑 制 さ れ、中間留分に富む分解生成油が得られた。分解生成油の製品化のための二次処 理は、通常の水素化処理条件で可能であることがわかった。 * 反応モデル解析によって、重質留分の重質化とコーク化を防ぐ上に、開発の活性 炭素触媒は有効に作用することを検証した。 * メソポア構造の発達した活性炭素は、アスファルテンに親和性を持ち、この特性 がコーク生成の抑制に関与していることが明らかになった。 * 流通式連続反応装置により、触媒の反応性能、活性評価を実施した結果、転化率 90%に お い て も ほ と ん ど コ ー ク の 生 成 が 無 く 、ま た 触 媒 性 能 は 安 定 し て お り 、触 媒 消 費 量 は 1%以 下 で 済 む 可 能 性 が 確 認 で き た 。 * 鉄 /活 性 炭 素 触 媒 に よ っ て 原 料 VR 中 の Ni は 80∼ 85%、 V は 92∼ 95%除 去 さ れ る 結 果を得、開発の触媒は脱メタルに優れた性能を示すことを確認した。 * 分 解 残 油 の 残 留 炭 素 、 ノ ル マ ル ヘ プ タ ン 不 溶 分 、 軟 化 点 等 の 性 状 は 転 化 率 65%程 度までは増加なく、重質化は抑えられていた。 * 低 転 化 率 モ ー ド (転 化 率 60∼ 65%)に お い て 得 ら れ た 残 油 は C 重 油 JIS 3 種 1∼ 3 号に規定されている規格に適合することを確認した。残油の安定性の改善には、 低 温 /高 温 で の 反 応 器 2 段 反 応 で 、ス ラ ッ ジ の 生 成 を 抑 え る こ と が 有 効 で あ っ た 。 * プロセスの最適化、評価・解析を行った結果、経済性は触媒メークアップ量に大 きく依存することがわかった。 4 まとめ 以上の試験研究の成果より、本研究開発の目標に対して下記を達成した。 圧 力 (MPa) 水素消費量 (Nm 3 /kl-Oil) 転化率 (%) 白油収率 (%) コ ー ク 生 成 率 (%) 低転化率* 目標 達成値 従 来 法 の 1/2 1/2 (10MPa) 従 来 法 の 1/2 1/2(120) 高転化率 目標 達成値 従 来 法 の 1/2 1/2 (10MPa) 従 来 法 の 1/2 1/2(180) 65 60 95 80 70 60 0 0 *残 油 は 製 品 価 値 を 有 す る 90 76 5 0 未実証 高 転 化 率 型 は 、目 標 の 95%転 化 率 は 未 実 証 で あ る が 、流 通 式 連 続 反 応 装 置 に お い て ワ ン ス ス ル ー 運 転 で 転 化 率 90%を 達 成 し て お り 、未 反 応 残 油 の リ サ イ ク ル と の 組 合 わ せで、目標達成は可能と考える。 今後、中規模試験において、触媒長期寿命の確認、反応工程、分離工程、生成油 二次精製処理工程等のトータルプロセス性能の確認、スケールアップ等エンジニア リングデータの採取等を実施し、本プロセスの実証化が可能と考える。 Copyright 1999 Petroleum Energy Center all rights reserved.
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