早稲田大学 文学部 日本史 講評

早稲田大学 文学部 日本史 講評
出題形式
試験時間
特徴・その他
マーク・記述併用
60分
大問数6題、小問数45問で例年より1問減少した。記述問題が16問、選択問題29問(内
訳は正誤20問・語句選択7問・組合せ1問・年代配列1問)で、正誤問題が倍増し、組合せ・
年代配列問題が加わったことが新しい。2つ選ぶ形式の選択問題は2016年度は7問あっ
たが、今年度は2問のみ。時代別では原始1題・古代1題・中世1題・近世1題、近現代
1題・古代~近世1題(美術史)となっており、ほぼ例年通り。原始・古代~近世で全体の
4分の3を占めるため、前近代史にかなりの比重がかかる。戦後史からは2問出された。
分野別では政治史・文化史重視だが、今年度は外交史もよく出た。例年同様、第1問は
原始時代(今年度は旧石器・縄文時代)、第6問は美術史であった。史料問題は出題され
ていない。全体的なレベルはやや難である。分量も多く試験時間60分に余裕はない。
〔大問別講評〕
番号
出題内容
コメント
難易度
〔Ⅰ〕 旧石器・縄文時代
問1:難問。エ.花崗岩は堅牢・美麗で土木・建築用の石材なの
で誤り。問2:難問。オ.年代差は認められないので誤り。問
3:やや難。イ.コメ・ムギなどの「主穀」は問題文の「縄文時代
のほぼ全時期において主要な食料であった」に合致しないの
で誤り。問4:やや難。ア.姫川流域が特産地なので正しい。
オ.ひすいは少数の者の威信財(ステータスシンボル)と考え
られるので正しい。問5:難問。ウ.縄文人と現代日本人の宗
教観に共通点は少ない。問6:難問。ウ.例えば、福岡県の遺
跡の木棺墓に副葬されていた磨製石剣・磨製石鏃は、朝鮮半
島の支石墓の副葬品と共通している。
難
〔Ⅱ〕 古代の女性天皇
問2:やや難。のちの推古天皇は敏達天皇の后だった。問3:
ア.南路ではなく北路。イ.小野妹子ではなく犬上御田鍬。
ウ.630-618=12年後。エ.渤海経由で唐へ渡ったのは第13回
目(759)の遣唐使。オ.遭難せず唐へ渡った。問6:ア.右京で
はなく左京。ウ.50mではなく74m。エ.羅城(城壁)はなかっ
た。オ.藤原京(宮)が最初。問7:エ.称徳天皇が創建したの
は西大寺。問8:イ.銅製ではなく木製。ウ.七重塔ではなく
三重塔。エ.法華経ではなく陀羅尼経。オ.法隆寺に約4万
5000基現存する。
標準
〔Ⅲ〕 中世の都市
問1:イ.春屋妙葩ではなく無学祖元。ウ.叡尊ではなく忍性。
エ.鎌倉大仏ではなく興福寺・東大寺。オ.大仏様ではなく禅
宗様。問2:六波羅探題がおかれた地である。問3:ア.金肥
の使用は江戸時代から。問5:Y.五山官銭・五山献上銭とし
て課税された。問6:③1399年、足利満兼は応永の乱に呼応
して上京しようとした。①1416年の上杉禅秀の乱。②1454年
の享徳の乱。問7:ア.浅井氏ではなく朝倉氏。イ.織田信長
ではなく法華一揆。ウ.堺ではなく博多。オ.はじめて行われ
たのではなく祇園祭は再興された。
標準
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番号
出題内容
コメント
難易度
〔Ⅵ〕 近世の治安維持
問1:やや難。イ.鳥獣害対策のための鉄砲所持は認められて
いた。問2:ウ.徳川家康~綱吉期まで多くの大名が改易され
ている。問3・4:「切捨御免」「村入用」は正確な漢字で書こ
う。問5:やや難。ア.旗本ではなく譜代大名。イ.大坂城代
は廃止されてない。ウ.1人ではなく2人。エ.長崎奉行は遠
国奉行に含まれる。問6:やや難。ア.工藤平助『赤蝦夷風説
考』提出は1781~83(天明1~3)年の成立。田沼時代に天明
の飢饉が始まることを想起しよう。問8:難問。通常は「寄場
組合」なのだが、漢字5字の指定があるので「改革組合村」が
答えとなる。
やや難
〔Ⅴ〕 近現代の琉球・沖縄
問1:オ.旧制度が温存されたので誤り。問3:やや難。米西
戦争で勝利したアメリカはフィリピンを獲得した。問4:ア.
第2次大隈内閣ではなく寺内内閣、また石井菊次郎は外務大
臣ではなく特派大使。問6:イ.東条英機陸相ではなく松岡洋
右外相。問7:やや難。「帝国国策遂行要領」は第3次近衛内閣
で決定した。問8:オ.政府は本土決戦に備えていたので誤
り。問10:やや難。イ.日米相互防衛援助協定を含め4つの協
定なので誤り。
やや難
〔Ⅵ〕 古代~近世の日本美術
問1:図1は縄文時代の土偶、図2は古墳時代の埴輪。ア.古 やや難
墳時代の説明。イ.銅鐸は弥生時代。エ.火炎土器は縄文時代。
オ.図1の方が古い。問2:「螺鈿」を書かせるのは難問。問3:
イ.須弥壇の遺体から奥州藤原氏と分かるので、平泉の中尊
寺。問4:難問。「秋草」は知らないとできないだろう。問5:
やや難。ウ.北政所は秀吉の正室。問6:やや難。ウ.太田南
畝は幕臣。オ.渡辺崋山は三河田原藩家老。
〔総合コメント〕
2016年度までは記述問題が多かったが、今年度は正誤問題が倍増し、全問題の半分を占めるにいたった。
また、2016年度は易化したのだが、今年度は難化した。第1問の原始時代は例年難しく、今年は輪をか
けて難しくなった。第2~5問は通常、標準~やや易のレベルなのだが、今年度は全体的にやや難であ
り、「改革組合村」「帝国国策遂行要領」「螺鈿」など記述問題のレベルもアップした。2つ選ぶ形式の問題
が激減しているにも関わらず、問題の難度がアップしているため、基本問題で失点することは避けたい。
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