「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い

日本基準トピックス
「リスク分担型企業年金の会計 処 理 等 に 関 す る
実 務 上 の 取 扱 い 」(実務対応報告第33号)等の
公 表 (ASBJ)
2016年12月20日
第316号
■主旨

2016年12月16日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、実務対応報告第33号「リ
スク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下、「本実務対応報
告」)を公表しました。

本実務対応報告は、新たな確定給付企業年金の仕組みである「リスク分担型企業年
金」について、必要と考えられる会計処理および開示を明らかにすることを目的として
公表されています。

本実務対応報告は、2017年1月1日以後適用されます。

なお、上記に関連して、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」および
企業会計基準適用指針第1号「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」が改正
されています。

原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/taikyu2016/
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1.経緯
(1) 検討の背景
現行の主な企業年金制度には、確定給付企業年金と確定拠出年金があります。確定給付
企業年金制度は、あらかじめ給付の計算方法が決まっており、事業主は給付をまかなえる
ように掛金を拠出します。そのため、財政計算上の積立不足が生じた場合、事業主は追加
で掛金を拠出する必要があり、運用等のリスクが事業主に偏っていると考えられています。
一方、確定拠出年金制度では、事業主はあらかじめ定められた掛金を拠出し、個々の加入
者が個人単位で運用します。事業主は定められた掛金以外に追加で拠出することがなく、
掛金の拠出額とその運用収益をもとに年金が給付されるため、運用のリスクは加入者に偏
っていると考えられています。
2015 年 6 月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂 2015」には、企業が確定給付企業年
金を実施しやすい環境を整備するため、確定給付企業年金の制度改善について検討する
ことが記載されました。そして、2016 年 12 月に確定給付企業年金に関する政省令が改正さ
れ、将来の景気変動を見越したより弾力的な掛金の拠出ができる仕組みとして「リスク対応
掛金(※1)」が導入されることとなりました。また、このリスク対応掛金の仕組みを活用して、将
1
来発生する財政悪化リスクを労使で柔軟に分担できる制度設計の「リスク分担型企業年金」
が併せて導入されています。
リスク分担型企業年金は、労使で財政悪化のリスク(主に年金資産運用リスク)を分け合うこ
とができる仕組みであり、従来の確定給付企業年金と確定拠出年金の中間的な仕組みの
制度であると考えられています。しかし、従来の会計基準(企業会計基準第 26 号「退職給
付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」))等では、このような中間的な制度につ
いての実務上の取扱いが必ずしも明確ではありませんでした。そのため、ASBJ は、リスク分
担型企業年金に係る会計上の取扱いについて審議を行い、本実務対応報告を公表しまし
た。
(※1) リスク対応掛金:景気の変動にかかわらず一定程度平準化した掛金の設定ができるように、あら
かじめ財政悪化時に想定される積立不足を測定し、その水準を踏まえて、拠出を行うことがで
きる掛金である。
(2) 本実務対応報告の目的
本実務対応報告は、リスク分担型企業年金(確定給付企業年金法に基づいて実施される
企業年金のうち、給付額の算定に関して、調整率(※2)が規約に定められる企業年金)に
ついて、すでに公表されている退職給付会計基準等における会計処理および開示の取扱
いを踏まえて、必要と考えられる会計処理および開示を明らかにすることを目的として公表
されています。
(※2) 調整率:確定給付企業年金法施行規則第 25 条の 2 に規定される調整率であり、積立金の額、
掛金額の予想額の現価、通常予測給付額の現価および財政悪化リスク相当額(通常の予測を
超えて財政の安定が損なわれる危険に対応する額)に応じて定まる数値をいう。
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2.主な内容
(1) 会計上の退職給付制度の分類と会計処理
退職給付会計基準では、確定拠出制度および確定給付制度についてそれぞれ以下のよう
に定義しています。
確定拠出制度
一定の掛金を外部に積み立て、事業主である企業が、当該掛金以
外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負わない退職給付制度
(退職給付会計基準第 4 項)
確定給付制度
確定拠出制度以外の退職給付制度 (同第 5 項)
まず、本実務対応報告では、リスク分担型企業年金について、以下のように分類することが
定められています。

企業の拠出義務が、標準掛金相当額、特別掛金相当額およびリスク対応掛金相当額
の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていな
い場合には、当該リスク分担型企業年金を確定拠出制度に分類する(本実務対応報
告第 3 項)。

確定拠出制度に分類されないリスク分担型企業年金は、確定給付制度に分類する
(本実務対応報告第 4 項)。
次に、会計処理について、確定拠出制度に分類されたリスク分担型企業年金については、
規約に基づきあらかじめ定められた各期の掛金の金額を、各期において費用処理すること
が定められています(本実務対応報告第 7 項)。
また、確定給付制度に分類されたリスク分担型企業年金については、退職給付会計基準の
確定給付制度の会計処理が適用されることになります。
このように、企業は、リスク分担型企業年金について、その規約等により追加的な拠出義務
を実質的に負っているかどうかを検討し、当該制度の会計上の分類を判断する必要があり
ます。同じ法令に基づくリスク分担型企業年金であっても、規約の内容等により会計上の分
類が異なり、結果として会計処理も異なるため、分類の判断は重要であるといえます。
さらに、制度の導入時においては、追加的な拠出義務を実質的に負っていないと判断され
ていた場合でも、当該制度の導入後に、分類に影響を及ぼす事象が新たに生じた場合(新
たな労使合意に基づく規約の改訂が行われた場合など)は、会計上の分類を再判定する
必要があります(本実務対応報告第 5 項)。
リスク分担型企業年金の分類
会計上の
分類 (※)
会計処理
開示
企業の拠出義務が、給付に充 確定拠出
当する各期の掛金として、規 制度
約に定められた標準掛金相当
額、特別掛金相当額およびリ
スク対応掛金相当額の拠出に
限定され、企業が当該掛金相
当額の他に拠出義務を実質的
に負っていない制度
(本実務対応報告第 3 項)
規約に基づきあらかじめ
定められた各期の掛金
の金額を、各期におい
て費用処理する。
(確定拠出制度の会計
処理の取扱いと同様。
ただし、移行時 に未払
金計上した特別掛金相
当額を除く。)
以下の項目について注記する。
 企業の採用するリスク分担
型企業年金の概要
 リスク分担型企業年金に係
る退職給付費用の額
 翌期以降に拠出することが
要求されるリスク対応掛金
相当額および当該拠出に
関する残存年数
上記以外の制度
(本実務対応報告第 4 項)
退職給付会計基準の確 退職給付会計基準の確定給
定給付制度の会計処理 付制度の開示要求に従って注
記する。
を適用する。
確定給付
制度
(※) 制度導入後に新たな労使合意によって規約が改訂された場合などは「再判定」が必要となる。
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(2) 退職給付制度間の移行時の取扱い
本実務対応報告では、確定給付制度に分類される現行の退職給付制度から、確定拠出制
度に分類されるリスク分担型企業年金に移行する場合の取扱いについても定められていま
す。
企業会計基準適用指針第 1 号「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」では、確定
拠出制度に分類される退職給付制度への資産の移換は、退職給付制度の終了に該当す
るとされています。そのため、本実務対応報告では、確定給付制度に分類される現行の退
職給付制度から、確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金への移行は、退職給
付制度の終了に該当するものとして、次の会計処理を行うことが定められています(本実務
対応報告第 9 項および第 10 項)。
① 移行時点で、移行した部分に係る退職給付債務と、その減少分相当額に係るリスク分
担型企業年金に移行した資産の額との差額を損益として認識する。
② 移行した部分に係る未認識過去勤務費用および未認識数理計算上の差異は、損益と
して認識する。
③ 移行時に、リスク分担型企業年金の規約に定める掛金に特別掛金相当額が含まれる
場合には、当該特別掛金相当額の総額を未払金等として計上する(相手勘定は費用と
して一括計上する)。
④ 上記①から③で認識される損益は、原則として、特別損益に純額で表示する。
なお、本実務対応報告には、上記の会計処理を説明する設例が含まれています。
(3) 開示
本実務対応報告では、確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金について、以下の
事項を注記することが定められています(本実務対応報告第 12 項)。
① 企業の採用するリスク分担型企業年金の概要
② リスク分担型企業年金に係る退職給付費用の額
③ 翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額および当該リスク対応掛金
相当額の拠出に関する残存年数
なお、上記の注記が定められたことに伴い、退職給付会計基準における確定拠出制度に係
る注記が改正されていますが、従来の確定拠出制度の注記を実質的に変更するものではあ
りません。
3.適用時期
本実務対応報告は、2017 年 1 月 1 日以後適用されます。
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4.参考
確定給付企業年金制度の主な改正(リスク対応掛金およびリスク分担型企業年金の導入)
については、厚生労働省のウェブサイトをご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000145209.html
また、ASBJ では、IFRS 適用課題対応専門委員会において、リスク分担型企業年金を我が
国における IFRS 適用上の課題として取り扱うテーマとし、IFRS 解釈指針委員会に要望書
を提出すべきか否かについての分析を行いました。その結果、リスク分担型企業年金につ
いては要望書を提出しないと結論づけられています。当結論に関連する ASBJ の事務局の
論点整理の資料「IFRS の適用上の課題:リスク分担型企業年金」については、ASBJ のウェ
ブサイトに掲載されていますので、ご参照ください。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/technical_committees/ifrs_implementation/issues.shtml
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