日本基準トピックス 実務対応報告公開草案第46号「平成28年度税制 改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の 取扱い(案)」の公表(ASBJ) 2016年4月28日 第304号 ■主旨 2016年4月22日、企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」)は、実務対応報告公開草案第 46号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」 (以下、「本公開草案」)を公表しました。コメント募集期限は、2016年5月23日です。 本公開草案は、平成28年度税制改正に係る減価償却方法の改正に対応して、必要 と考えられる取扱いを示すことを目的として公表されたものです。 公表日以後、最初に終了する事業年度のみに適用することが提案されています(ただし、 早期適用も可)。 原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。 https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/exposure_draft/depreciation/index.shtml ------------------------------------------------------------------------- 1.経緯 (1) 検討の背景 平成 28 年度税制改正により、平成 28 年(2016 年)4 月 1 日以後に取得する建物附属設備 及び構築物の法人税法上の減価償却方法については、定率法が廃止され、定額法のみ が適用されることとなっています。本公開草案は、この税制改正による見直しに対応して、 必要と考えられる取扱いを示すことを目的として公表されました。 我が国において固定資産の減価償却方法は、企業会計原則注解(注 1-2)において重要 な会計方針の一つとして示されており、会計方針の選択として定められています。一方で、 減価償却に関する法人税法上の損金算入について損金経理要件が定められていること等に 関連して、いわゆる「税法基準」による会計処理が実務上一定の範囲で認められてきました。 また、これまで数度の減価償却に関する税制改正があり、日本公認会計士協会より、監査上の 取扱いも公表されています。 このような状況の中、2016 年 4 月 1 日以後に取得する建物附属設備及び構築物から減価 償却方法を定額法に変更する場合に、当該減価償却方法の変更が正当な理由に基づく 会計方針の変更に該当するか否かに関して ASBJ によって緊急に審議が行われ、必要と考え られる取扱いが示されました。 1 (2) 検討の理由 原則的には、税法の改正によって償却限度額の算定方法が変更されたことのみでは、会計 基準等の改正に伴う会計方針の変更には該当しません。しかしながら、今回の税制改正に 合わせた会計方針の変更を自発的な変更として扱う場合、以下のような懸念があるとの意見 が寄せられました。 これまで一定程度、いわゆる税法基準による会計処理が容認されてきたことを踏まえると、 企業における作成実務に混乱が生じる。 監査実務においても、自発的な会計方針の変更の適切性の判断は相当程度困難な ものとなり、審査も含めた監査対応に相当の時間を要することが想定される。 ASBJ では、この論点に抜本的に取り組むには減価償却に関する会計基準の開発を検討 する必要があるとしつつ、それには一定の時間を要するとされました。このため、会計基準の 開発に着手することの合意形成に向けた取組みを速やかに行うことを前提に、以下のような 本論点における性質を踏まえ、実務上の取扱いを定めることとされました。 ① 建物付属設備や構築物の減価償却費は、建物や機械等に比較して重要ではないこと が多く、定額法への変更による財務諸表への影響は限定的と考えられること。 ② 今回の税制改正にあわせて会計方針を変更することは客観的な事実に基づいて行 われるものであり、変更の適時性に関する趣旨と矛盾するものではないこと。 ③ 建物付属設備は、建物本体に付属する同一用途の固定資産であると考えられ、構築物 も同様とみなせるケースもあり、定額法を採用している建物との会計処理の整合性を 高める可能性があると考えられること。 2.主な内容 (1) 会計方針の変更に関する取扱い 従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理している企業に おいて、建物付属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法について定率法を採用 している場合、2016 年 4 月 1 日以後に取得する当該資産の減価償却方法を定額法に変更 するときは、法令等の改正に準じたもの とし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として 取り扱うこと が提案されています。 なお、本公開草案は、取り扱う範囲を 平成 28 年度税制改正に係る減価償却方法の改正に 限定 して緊急に対応したものであり、今回に限られたものとすることが 提案されています。 (2) 開示の取扱い 本公開草案に従って、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う場合、企業会 計基準第 24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第 19 項及び第 20 項 (注)の定めにかかわらず、次の事項を注記することが提案されています。 ① 会計方針の変更内容として、法人税法の改正に伴い、本実務対応報告(案)を適用し、 2016 年 4 月 1 日以後に取得する建物付属設備、構築物又はその両方の減価償却方法 を定額法に変更している旨 ② 会計方針の変更による当期への影響額 2 (注) 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第 24 号) 会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合の取扱い 19. 会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合については、会計上の見積り の変更と同様に取り扱い、遡及適用は行わない。ただし、注記については、第 11 項(1)、(2)及び 前項(2)に関する記載を行う。 20. 有形固定資産等の減価償却方法及び無形固定資産の償却方法は、会計方針に該当するが、 その変更については前項により取り扱う。 3.適用時期等 本公開草案は、公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用することが提案されてい ます。ただし、2016 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が、最終基準の公表日前に 終了している場合には、当該事業年度に適用できるとする早期適用の規定が提案されてい ます。 PwCあらた監査法人 東京都中央区銀座8丁目21番1号 住友不動産汐留浜離宮ビル (〒104-0061) お問い合わせ: [email protected] 本資料は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナル からのアドバイスを受けることなく、本資料の情報を基に判断し行動されないようお願いします。本資料に含まれる情報は正確性または完全性を、 (明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するものではありません。また、本資料に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされたり、 起こされなかったことによって発生した結果について、PwC あらた監査法人、およびメンバーファーム、職員、代理人は、法律によって認められる範囲 においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。 © 2016 PricewaterhouseCoopers Aarata. All rights reserved. PwC refers to the PwC Network member firms in Japan and/or their specified subsidiaries, and may sometimes refer to the PwC Network. Each member firm is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details. This content is for general information purposes only, and should not be used as a substitute for consultation with professional advisors. 3
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