「医療事故・訴訟等関連情報」月報(2〜9月)から

日本看護協会、日本医療機能評価機構医療事故防止事業部、
「看護職賠償責任保険制度」サービス推進室が、医療安全に
関する最新情報を紹介します。
74
Vol.
掛川 弘恵
日本看護協会出版会損害保険部「看護職賠償責任保険制度」サービス推進室
「医療事故・訴訟等関連情報」月報(2〜9月)から
日本看護協会「看護職賠償責任保険制度」サー
という重大局面で無資格者が業として診断をした。
ビス推進室では、医療事故・訴訟等に関連する報
実害が生じる恐れもあり、厳しく非難されなけれ
道記事を収集・再構成し、
「医療事故・訴訟等関
ばならない……」
(一部抜粋)と指摘したとの報道
連情報」
(月報)としてホームページ加入者専用サ
がなされました。
イトに掲載しています(表)。本稿では2016年2〜
●死亡診断書の交付は医師法第20条で規定
9月の月報から注目した事案について解説します。
医師法第 20 条では、「医師は、自ら診察しない
●死亡時の診察を受けずに
で診断書を交付、自ら検案をしないで検案書の交
看護師が死亡診断書を記入
付を行ってはならない」
(条文抜粋)と規定してい
2015 年、特別養護老人ホームで入居者 2 人の死
ます。
亡診断書を、医師が死亡時の診察をしないまま、
なお「死亡診断書(死体検案書)記入マニュア
医師の指示を受けた看護師が診断書に日時を記入
ル平成 28 年度版」によると「診療継続中の患者が
し家族に交付したとして、医師法違反の疑いで嘱
受診後 24 時間以内に診療中の傷病で死亡した場
託医を務めていた医師と施設に勤務する看護師 2
合については、異状がない限り、改めて死後診察
人を書類送検しました。
しなくても、死亡診断書を交付することを認めて
2013 年には、診療所で死亡診断をしていた准
います。これは、24 時間を超える場合には死体
看護師が医師法違反の罪で、懲役 1 年 6 カ月、執
検案書を交付しなければならないとする趣旨では
行猶予 4 年(求刑懲役 1 年 6 月)の判決を言い渡さ
ありません。診療継続中の患者が、受診後 24 時
れています。
間を超えている場合であっても、診療に係る傷病
●死亡診断書の重要な意味と意義
で死亡したことが予期できる場合であれば、まず
医師の発行する診断書、特に出生や死亡の診断
診察を行い、その上で生前に診療していた傷病が
書は法律上の権利・義務関係の始期、終期を画す
死因と判定できれば、求めに応じて死亡診断書を
るものとして、極めて重要な意味を持つ書類です。
発行することができます」とされています
したがって、できるかぎり事実を正確に伝えるこ
●診断書ではなく
。
とが求められています 。
検案書を書くのはどのようなときか?
2013 年の事件の判決理由として裁判官は「死亡
診療継続中の患者以外の者が死亡した場合、診
1)
096
1, 2)
看護 2017. 1