India Insights(11月) (インド市場を見る眼∼現地からの報告) HSBC投信株式会社 2016年11月21日 <トピックス> インド政府が高額紙幣の廃止を決定。 マーケットサマリー(株式・債券・為替市場) 10月は株式市場、債券市場ともに小幅な動き。インフレ率の低下と政策金利の引き下げがプラス要因となっ た一方、海外では米国の12月の利上げ観測の高まりがマイナスに働いた。通貨ルピーは対米ドルで弱含み。 <トピックス> インド政府が高額紙幣の廃止を決定 脱税や紙幣偽造の撲滅に向けて高額紙幣を廃止 インド政府は11月8日、これまで高額紙幣とし て 流 通 し て い た 法 定 通 貨 の 500 ル ピ ー 札 と 1,000ルピー札の2種類を廃止すると発表した。 代替として、新たに500ルピー、2,000ルピー の新札が段階的に発行される。 2種類の旧紙幣は、今年末まで銀行などで換金 が可能だが、換金額が一定額を超える場合には 身分証明書の提示が必要となり、換金された紙 幣は税務官らに精査される。 今回の措置は、汚職および非公式経済(いわゆ る地下経済)の撲滅を目的としている。 高額紙幣廃止のインド経済への影響は少なくな い。インドでは現金の流通量が対国内総生産 (GDP)比12.1%に相当する。このうち今回廃止 が決定された500ルピー札、1,000ルピー札が 占める割合は87%に達する。 このため、短期的には消費者の購買意欲の低下 が懸念されており、その影響は自動車・二輪車 など高額商品から一般消費財まで多岐に及び、 ひいては今年10-12月期のGDP成長率を押し下 げる可能性もある。 モディ政権下で進展する各種改革 インドでは、非公式経済がGDPの20%に及ぶと 見られている。インド政府にとり、通貨偽造、 汚職、脱税などが蔓延る非公式経済の撲滅、公 式経済への移行促進は急務である。 インド政府は、過去に実施されたタックス・ア ムネスティ(税務特赦)*に加え、近く導入が 当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。 見込まれる「物品サービス税(GST)」**、高額 現金取引における身分証提示義務など、ブラッ クマネー(不正資金)の撲滅や税徴収の強化に 取り組んでいる。 今回の高額紙幣廃止も不正資金の流用を一掃す る一助となろう。 *税務特赦:資産や所得を過去に申告してこなかった納税者 が自主的に開示・申告を行うことで加算税の減免や刑事告 発の免除を得られる措置。 **GST:中央政府と各州が課す複雑な間接税を一本化する 大規模税制改革。 長期的にはプラス側面が勝ると見る 高額紙幣の廃止は、短期的には、非公式経済の 活動に打撃を与える一方、公式経済における消 費者心理の悪化にも繋がる「荒治療」と言える。 しかし中長期的には、汚職や脱税などインド経 済が孕む問題を抜本的に解決する「ショック療 法」になることが期待できる。 汚職の撲滅は、ビジネス環境の改善に貢献する ばかりでなく、非公式経済から公式経済への移 行による納税対象範囲の拡大、ひいては税収増 に繋がることも期待できる。これはインフラ 投資のための財源拡大にもなる。一方、高額紙 幣廃止は足元で金への需要を押し上げているが、 銀行システムへの現金の預け入れと銀行利用の 拡大は、中期的には金から金融資産へと需要を シフトさせることが見込まれる。 図表2 10年物国債利回りの推移 <マーケットサマリー> (2015年1月1日∼2016年10月31日) 株式市場 強弱材料が交錯し方向感乏しい展開 10月のインド株式市場は僅かな上昇となり、 SENSEX指数は前月末比+0.3%で取引を終えた。 インフレ率の低下とインド準備銀行(中央銀行) の利下げなどがプラス要因となった一方、米国の 12月の利上げ観測の高まりがマイナスに働いた。 8.2 8.0 7.8 7.6 7.4 7.2 7.0 6.8 6.6 (%) 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 (年/月) 当社の株式運用戦略 出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成 当社では、インド株式ファンドの運用においては、 インド経済の拡大から恩恵を受ける資本財や一般 消費財など景気敏感セクターに引き続き重点を置 いている。中でも健全な財務体質を持ち、景気回 復の流れに素早く対応できる企業に注目。一方、 景気動向の影響を受けにくい生活必需品やヘルス ケアはアンダーウエイトを維持。 高額紙幣の廃止は短期的には一般消費財セクター にマイナスの影響をもたらす可能性があるが、組 入銘柄の長期的なファンダメンタルズは良好であ り、引き続き同セクターのオーバーウェイトを維 持する。 図表1 SENSEX指数の推移 (2015年1月1日∼2016年10 月31日) (ポイント) 当社の債券運用戦略 当社では、インド債券ファンドの運用においては、 引き続きルピー建インド国債を有望視している。 世界的な低金利を背景に、相対的に利回りが高い インド国債の魅力が増している。通貨ルピーの堅 調推移が見込めることもプラスに働いている。 また、中央銀行の国債買戻しプログラムや追加利 下げ観測などが国債利回りの低下(価格の上昇) を一段と促すことが見込まれる。 2016年度下半期(2016年9月∼2017年3月)は 10年∼14年物の国債発行額がより多くなる見通し であることから、5∼10年物及び20年物国債をよ り選好している。 30,000 為替市場 28,000 中長期的な強気スタンス維持 10月の外為市場では、インドルピーが対米ドルで 弱含み、対円では上昇した。FCNR(在外インド 人による外貨預金)の満期到来による資金流出に もかかわらず、ルピーはよく持ちこたえている。 26,000 24,000 22,000 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 (年/月) 出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成 債券市場 インフレ率低下を背景に堅調に推移 中長期的には、インドルピー相場について当社は 強気である。経常収支赤字は比較的低水準にとど まる見通しであり、また海外からの直接投資が引 き続き拡大基調で推移することなどが、通貨の支 援要因になると見ている。 図表3 インドルピーの推移 (2015年1月1日∼2016年10月31日) (ルピー/円) (米ドル/ルピー、逆目盛) 60 2.00 1.90 対円(左軸) 1.80 62 64 ルピー安 1.70 66 1.60 1.50 ルピー高 10月のインド債券市場は底堅く推移し、10年物 国債利回りは0.08%低下(価格は上昇)した。イン フレ率の低下と中央銀行による利下げがプラス要 因となった。 中央銀行は10月4日の金融政策委員会で、政策金 利のレポレートを0.25%引き下げ6.25%とする ことを全会一致で決定した。インドの利下げは4 月5日に次ぎ今年2回目。インフレ率の落ち着いた 推移が見込まれる中で、中央銀行は金融緩和を継 続することが見込まれる。2017年3月までに少な くとも0.25%の利下げがあると当社では予想して いる。 ルピーは、短期的にはインドの経済ファンダメン タルズ改善、潤沢な外貨準備高などが下支えとな り、レンジ内での相場展開になると見ている。 対米ドル(右軸) 1.40 68 70 15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10 (年/月) 出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成 当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。 2 留意点 投資信託に係わるリスクについて 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としており、当該資産の市場 における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し損失が生じる可能性があります。従い まして、投資元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金または保険契約ではなく、 預金保険機構または保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入の 投資信託は投資者保護基金の保護の対象ではありません。購入の申込みにあたりましては「投資信託説 明書(交付目論見書)」および「契約締結前交付書面(目論見書補完書面等)」を販売会社からお受け 取りの上、十分にその内容をご確認頂きご自身でご判断ください。 投資信託に係わる費用について 購入時に直接ご負担いただく費用 購入時手数料 上限3.78%(税込) 換金時に直接ご負担いただく費用 信託財産留保額 投資信託の保有期間中に間接的に ご負担いただく費用 運用管理費用(信託報酬) 上限年2.16%(税込) その他費用 上記以外に保有期間等に応じてご負担頂く費用があります。 「投資信託説明書(交付目論見書)」、「契約締結前交付書 面(目論見書補完書面等)」等でご確認ください。 上限0.5% ※上記に記載のリスクや費用につきましては、一般的な投資信託を想定しております。 ※費用の料率につきましては、HSBC投信株式会社が運用するすべての投資信託のうち、ご負担 いただくそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。 ※投資信託に係るリスクや費用はそれぞれの投資信託により異なりますので、ご投資される際には、 かならず「投資信託説明書(交付目論見書)」をご覧ください。 HSBC投信株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第308号 加入協会 一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会 ホームページ www.assetmanagement.hsbc.com/jp 電話番号 03-3548-5690 (受付時間は営業日の午前9時∼午後5時) 【当資料に関する留意点】 当資料は、HSBC投信株式会社(以下、当社)が投資者の皆さまへの情報提供を目的として作成したものであり、 特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。 当資料は信頼に足ると判断した情報に基づき作成していますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありま せん。また、データ等は過去の実績あるいは予想を示したものであり、将来の成果を示唆するものではありません。 当資料の記載内容等は作成時点のものであり、今後変更されることがあります。 当社は、当資料に含まれている情報について更新する義務を一切負いません。 3
© Copyright 2024 ExpyDoc