India Insights(12月)(インド市場を見る眼~現地からの報告)

India Insights(12⽉)
(インド市場を⾒る眼〜現地からの報告)
HSBC投信株式会社
2016年12⽉21日
<トピックス>
インド:2016年の回顧と2017年の⾒通し
マーケットサマリー(株式・債券・為替市場)
11⽉の株式市場は下落したが債券市場は上昇。高額紙幣廃止は国債の需要を高めた(高額紙幣が預⾦に切り
替わり銀⾏が預⾦増を背景に国債を購入)。ルピーは対米ドルで下落。対円では円安が進⾏する中で上昇
<トピックス>
インド:2016年の回顧と2017年の⾒通し
2016年は改⾰が前進
 2016年は改⾰が前進した年であった。8⽉には
「物品サービス税(GST)法案」が議会で可決さ
れ、歴史的税制改⾰が実現に向けて動き出した。
これまで中央政府と州政府が別個に課してきた
複雑な間接税が一本化される。
 高額紙幣の廃止も経済改⾰の一環として注目す
べき措置であった。政府は11⽉、これまで高額
紙幣として流通していた500ルピー札と1,000
ルピー札を廃止した。これは国⺠に混乱を与え、
短期的には個人消費に悪影響をもたらしている。
しかし、中⻑期的には、汚職や脱税などの闇経
済の根絶、銀⾏取引の拡⼤、キャッシュレス取
引の推進に繋がり、ビジネス環境の改善をもた
らすことが期待される。
 2016年は、景気及び企業収益は期待したほど回
復しなかったが、政府が経済構造改⾰を進めた
点に当社は注目している。
 一方、インフレ指標は顕著な改善を示した(11
⽉の消費者物価指数は前年同⽉⽐+3.6%と2年
振りの低水準)。インド準備銀⾏(中央銀⾏)
は、インフレ率が低下傾向を辿る中、政策⾦利
を4⽉、10⽉に各々0.25%引き下げ6.25%とし、
今後も⾦融緩和を継続する姿勢を示している。
2017年のインド株式市場は新興国の中でも有望
 当社では、インドの株式及び中期国債を選好し
ている。また、通貨ルピーは安定的に推移する
と予想している。中央銀⾏は外貨準備をなお潤
沢に保有しており、ルピーに下落圧⼒がかかっ
たとしても、通貨安定を目的に為替介入を⾏う
と⾒込まれる。
当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。
 2017年のインドの株式市場は、新興国市場の中
でも有望であると当社は⾒ている。中央銀⾏は
12⽉の⾦融政策決定会合では政策⾦利を据え置
いたが、次回の2017年2⽉の会合では0.25%の
利下げを⾏い、これに加えて2017年中にさらに
0.5%の利下げを⾏うと当社では予想している。
利下げに加えて、銀⾏セクターの業績改善、ま
た世界経済の回復による外需の持ち直しもイン
ド株式市場の⽀援材料になると⾒ている。
高額紙幣廃止でインド国債上昇
 高額紙幣廃止により、銀⾏に持ち込まれた旧紙
幣の多くが預⾦に切り替わった。銀⾏は、急増
した預⾦で国債を購入し、その結果、11⽉はイ
ンド国債価格が⼤幅に上昇(利回りは低下)し、
他の新興国債券市場をアウトパフォームした。
今後についても、インフレ率の低下や政策⾦利
の引き下げなどの要因が国債の上昇要因となろ
う。
 2017年は、米国の追加利上げが⾒込まれるた
め、世界の⻑期⾦利の方向性にインド国債利回
りが収れんすることが主たるリスクになる。海
外要因と国内要因のバランスが、インド国債の
方向性を決定づけよう。2017年は短期債から
は安定したリターンが期待できるが、⻑期債に
ついては、2016年に10%台後半のリターンを
達成したが、2017年はリターンへの期待をよ
り低く抑える必要が出てこよう。
図表2
<マーケットサマリー>
10年物国債利回りの推移
(2015年1⽉1日〜2016年11⽉30日)
(%)
株式市場
8.0
11月は売り優勢の展開
7.5
 11⽉のインド株式市場は売り優勢の展開となり、
SENSEX指数は前⽉末⽐-4.6%で取引を終えた。
国内ではインド政府による高額紙幣廃止の発表と
その景気へのマイナス効果、海外では米国⼤統領
選挙での共和党トランプ⽒の勝利と次期政権の政
策を巡る先⾏き不透明感がマイナス要因となった。
7.0
当社の株式運⽤戦略
 当社では、インド株式ファンドの運用においては、
インド経済の拡⼤から恩恵を受ける資本財や一般
消費財など、景気敏感セクターに引き続き重点を
置いている。中でも健全な財務体質を持ち、景気
回復の流れに素早く対応できる企業に注目。一方、
景気動向の影響を受けにくい生活必需品やヘルス
ケアはアンダーウエイトを維持。
図表1 SENSEX指数の推移
(2015年1⽉1日〜2016年11⽉30日)
6.5
6.0
15/1
15/4
15/7 15/10 16/1
16/4
16/7 16/10
(年/月)
出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成
当社の債券運⽤戦略
 当社では、インド債券ファンドの運用においては、
引き続きルピー建インド国債を有望視している。
世界的な低⾦利を背景に、相対的に利回りが高い
インド国債の魅⼒が増している。通貨ルピーの底
堅い推移が⾒込めることもプラスに働いている。
 11⽉には、一段の⾦融緩和が⾒込まれる中で、
デュレーションを僅かに⻑くした。
為替市場
(ポイント)
対⽶ドルで下落、対円では上昇
30,000
 11⽉の外為市場では、インドルピーは対米ドルで
下落したが、他のアジア通貨と歩調を合わせた下
落であった。一方、対円では、ルピーは、円安が
進⾏する中で上昇した。
28,000
26,000
24,000
22,000
15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10
(年/⽉)
出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成
債券市場
当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。
(ルピー/円)
(米ドル/ルピー、逆目盛)
60
2.00
1.90
対円(左軸)
1.80
64
1.70
66
1.60
1.50
62
対米ドル(右軸)
1.40
68
ルピー安
 11⽉のインド債券市場は⼤幅上昇し、10年物国
債利回りは0.64%低下(価格は上昇)した。政府に
よる高額紙幣の廃止はインド国債への需要を高め
(高額紙幣が預⾦に切り替わり、預⾦増を背景に
銀⾏が国債を購入)、債券価格の上昇要因となっ
た。
 インド準備銀⾏(中央銀⾏)は12⽉7日の⾦融政
策決定会合では、市場の利下げ予想に反して、政
策⾦利を6.25%に据え置いた。中央銀⾏は、米国
の利上げが間近(米連邦準備制度理事会(FRB)
は12⽉14日に0.25%の利上げを決定)と⾒られ
る中での利下げに慎重な姿勢を示した。しかしな
がら、引き続きインフレ率の落ち着いた推移が⾒
込まれ、中央銀⾏は来年2⽉の次回会合では0.25
%の利下げを決定し、これに加えて2017年中に
さらに0.5%の利下げを⾏うと予想される。
図表3 インドルピーの推移
(2015年1⽉1日〜2016年11⽉30日)
ルピー高
高額紙幣廃止を受けて上昇
 在外インド人による外貨預⾦(FCNR)の満期到
来による資⾦流出を受けて外貨準備高が減少した
が、ルピー相場への影響は最小限にとどまった。
中央銀⾏は再び外貨準備を積み上げることが⾒込
まれる。
70
15/1 15/4 15/7 15/10 16/1 16/4 16/7 16/10
(年/月)
出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成
2
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HSBC投信株式会社
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