景気循環研究所レポート インバウンド消費の裾野が広がる 2016 年 10 月 19 日 9 月の訪日客数は前年比 日本政府観光局(JNTO)が 19 日発表した 9 月の訪日外客数は 191.8 万 人となり、9 月としての過去最高を更新した。前年比増加率は 19.0%と、 19.0%増加 8 月の 12.8%から 6.2%ポイント拡大している。昨年秋以降、訪日客数の 前年比増加率は縮小傾向を辿っていたが、足元では増勢の鈍化に歯止めが かかりつつある。 7-9 月期の訪日客 1 人当 一方、訪日客の 1 人当たり支出額は、円高(自国通貨安)に伴う訪日客 たり支出額は 3 四半期連 の購買力低下もあって、急速に冷え込んでいる。観光庁が同日に発表した 続の前年割れに 「訪日外国人消費動向調査(16 年 7-9 月期)」によると、7-9 月期の訪日 外国人 1 人当たりの旅行支出額は前年比 17.1%減少し、3 四半期連続の前 年割れを記録した。その結果、16 年 7-9 月期の訪日外国人旅行消費額(イ ンバウンド消費)は、11 年 10-12 月期(前年比 17.0%減)以来 19 四半期 ぶりに、前年比マイナスに転じた(同 2.9%減)。 中国以外のインバウンド 消費は持ち直す 国・地域別のインバウンド消費動向をみると、中国からの訪日客の旅行 消費額が 7-9 月期に前年比 5.6%減少している。中国のインバウンド消費 の落ち込みだけで、同期の旅行消費額全体が前年比で 2.6%ポイント下押 しされた計算となる。もっとも、前期比ベースでみると、訪日客全体の旅 嶋中 雄二 景気循環研究所長 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 シニアエコノミスト 宮嵜 行消費額は、16 年 4-6 月期に前期比 4.4%増、7-9 月期には同 3.8%増と、 2 四半期連続で増加している(当研究所季節調整値、図 1)。中国とは対照 的に、訪日客数の増勢が加速している韓国やアメリカなどのインバウンド 消費の拡大が、中国のインバウンド消費の落ち込みを上回ったとみられる (表 1)。中国の「爆買い」ブームが一巡したインバウンド消費は、足元 で国・地域の裾野を着実に広げつつある。 浩 シニアエコノミスト 03-6627-5132 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 図 1. インバウンド消費は持ち直しつつある (10年=100) 350 300 福田 圭亮 シニアエコノミスト 03-6627-5133 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 本レポートは、嶋中雄二の見方に基づき、宮嵜・ 福田が執筆を担当しています。 訪日客の旅行消費額 250 200 訪日客数 150 100 50 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ 訪日客1人当たり支出額 0 10 11 12 13 14 15 16 (年、四半期) (注)当研究所季節調整値。 (資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」、日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」 をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 1 2016 年 10 月 19 日 図 2. 訪日外国人 1 人当たりの旅行支出額 (2016 年 7-9 月期) 0 10 20 30 (万円) 22.8 中国 22.2 ロシア 20.4 ドイツ スペイン 20.3 オーストラリア 20.0 19.7 イギリス 17.9 シンガポール フランス 17.9 アメリカ 17.6 カナダ 16.6 ベトナム 16.2 15.3 インド 14.7 香港 14.6 インドネシア 14.1 フィリピン タイ 12.3 台湾 12.0 11.8 マレーシア その他 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21.5 イタリア 2016年9月 国・地域 15.5 全国籍・地域 韓国 表 1. 国・地域別の訪日外国人数 6.8 16.3 (注)パッケージツアー参加費内訳を含む。 (資料)観光庁「訪日外国人消費動向調査」をもとに三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 総数 中国 韓国 台湾 香港 米国 タイ 豪州 マレーシア 英国 カナダ シンガポール フィリピン フランス ドイツ ベトナム インドネシア インド イタリア ロシア スペイン その他 (人) 1 ,9 1 8 ,2 0 0 522,300 430,600 347,500 130,900 96,800 44,700 41,100 25,900 24,700 22,100 21,900 20,800 17,300 16,900 19,300 17,800 10,100 9,800 4,500 9,200 84,000 (前年比、%) 1 9 .0 6.3 42.8 14.7 13.6 26.9 30.0 18.4 21.6 8.8 24.8 17.0 31.3 13.2 16.2 24.0 38.5 11.0 17.1 6.7 21.0 (資料)日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数の動向」をもとに 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 (以 上) みやざき ひろし (16.10.19 宮嵜 浩) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 10 月 19 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、カブドットコム証券、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3
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