Market View #28 選択権はそれだけで価値がある

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コラム
2016年10月11日
Market View
#28 選択権はそれだけで価値がある
皆さま こんにちは。
アセットマネジメントOneで調査グループ長を務めます柏原延行です。
今回のコラムでは、前回2016年10月3日号に続いて、9月21日に発表された日銀の金融政策変更に関して、私
なりの解釈をお話したいと考えます。
本年1月に、政策金利にマイナス金利を導入した後の1ヵ月で株価が大幅下落、為替が大きく円高に進展した理
由としては(前号の図表1、図表2ご参照)、諸説あるのですが、私は、①政策金利(短期金利)のマイナス誘
導により、長期金利もマイナス化したことで、銀行や(年金の運用難を通じ)企業の収益に悪影響を与えることが
懸念されたこと、②サプライズな政策自体が金融政策の持続可能性への疑義を想起させたことが主因ではないかと
考えています。
このうち、①に関しては、前号でお話させていただきました。
簡単に要約すると、今回の「長短金利操作」の結果、景気への感応度が高い10年以下の金利はマイナス圏で維
持され、金融緩和効果を発現します(政策金利のマイナス幅拡大もあるかもしれません)。一方で、景気への感応
度が限定的な10年より長い年限の金利はプラスになる、あるいはプラス幅を拡大することで、銀行や企業等の収益に
プラスの影響を与える、いわゆる「いいとこ取り」の政策になると日銀が考えていると思われることをご説明しました。
そして、今回は②である金融政策の持続性に関してお話したいと考えます。
日銀は国債保有残高の増加額が年間約80兆円となるように量的緩和を実施してきましたが、日銀の国債保有
額が市中残の三分の一を超えるなか、これほど巨額な購入を今後どの程度の期間継続できるのかについて、疑問が
呈されてきました。
このため、マイナス金利導入等、なんらかの機会があるたびに、量的緩和の限界、すなわち「日本銀行による国債の
購入額が先細り(テーパリング)」する可能性があるのではないかと市場では疑心暗鬼に陥っていました。
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
商 号 等 / アセットマネジメントOne株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第324号
加入協会/ 一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
1
皆さまがご承知のように、米国では、政策金利の引き上げに先立って、国債購入額をテーパリングさせました。2013
年5月に、当時のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、テーパリングを示唆する発言をした際には、
我が国の株式市場などが大きく下落しました(図表1)。これは、バーナンキ・ショックと呼ばれています。
この市場の反応からも、テーパリングは金融の引き締め的効果があると市場は解していると思われます。
図表1:2013年の日経平均株価の推移
2013年1月4日~2013年12月30日:日次
(円)
17,000
バーナンキ議長が
テーパリングを示唆
16,000
15,000
14,000
13,000
12,000
11,000
10,000
13/1
13/3
13/5
13/7
13/9
13/11
(年/月)
それでは、今回の金融政策変更のポイントであると思われる長短金利操作によって、国債の購入額はどのように変
化する可能性があるのでしょうか。
日銀は、「買入れ額については、概ね現状程度の買入れペースを(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどと
しつつ、金利操作方針を実現するよう運営する」(下線は筆者による)としています。ここでの金利操作方針とは、
政策金利(短期金利)を▲0.1%に、10年物国債金利(長期金利)をゼロ%程度に操作することを指します。
この文言は、新聞等での華々しい報道の通り、量から、金利にターゲットが変更されたことを意味します。
ここで、今回の政策変更が巧みであると思うところは、足元では、80兆円をめどとしつつも、金利を優先させることで、
場合によっては、「購入額を減少させることも、増加させることもできるかもしれない選択権」を日銀が手に入れた可能
性があることです。
何かを選択できることは、権利ですので、通常、選択権はそれ自体で価値があります。
出所:ブルームバーグが提供するデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
※上記は、将来における日経平均株価の推移を示唆、保証するものではありません。
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
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したがって、経済的にはなんらかの対価を払わない限り、入手することはできません。しかし、日銀は、今回、量に関
する選択権を国内株式市場や為替市場に大きな動揺を与えずに手に入れることができたと評してよいように思います
(図表2、図表3)。
図表2:9月20日からの日経平均株価の推移
(円)
17,000
2016年9月20日~2016年10月7日:日次
16,900
(円)
105
2016年9月20日~2016年10月7日:日次
104
16,800
103
16,700
102
16,600
101
16,500
100
16,400
99
16,300
16,200
16/9/20
図表3:9月20日からの米ドル/円の推移
16/9/25
16/9/30
16/10/5
98
16/9/20
16/9/25
16/9/30
(年/月/日)
16/10/5
(年/月/日)
前号で、私は(おそらく一般的な評価ではないと考えますが、)「日銀の周到な準備に市場が圧倒された」と今回
の金融政策変更を評しました。
量の拡大政策に限界が懸念される中、量に関しての選択権を入手したことは、日銀の十分な準備のたまものであ
ると私は考えています。
今回の日銀の金融政策変更については、日銀が「金融緩和強化のための新しい枠組み」(下線は筆者による)
というように、本当に金融緩和強化であるかは、議論のあるところです。
結局のところ、金融緩和強化であるか、否かを判断するためには、今後の日銀の「保有残高の増加額年間約80
兆円」とのめどが実際の金利操作の結果、どのような額に着地するかを見極める必要があります。
仮に、政府がインフラ投資等の大規模な財政出動(政府支出の拡大)を行い、その原資として、国債を大量発
行した場合には、10年物国債金利の上昇を抑えるために(お金を借りたい人・額が増えると、通常金利は上昇しま
すが、日銀は10年物国債金利をゼロ%程度で推移させるとしています)、日銀が購入額を増やす可能性もあります。
これをヘリコプターマネーと呼ぶか、否かは議論が分かれるところですが、この場合、たしかに金融緩和効果があると思
われます。
出所:ブルームバーグが提供するデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
※上記は、将来における日経平均株価と米ドル/円レートの推移を示唆、保証するものではありません。
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
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新しいアセットマネジメントOneでは、業界No1の質と量を実現する積極的な情報発信に努めたいと考えます。
是非、弊社の新しいホームページ等をご覧いただければと考えます。
なお、コラムの過去分に関しては、以下をご参照ください。
http://www.mizuho-am.co.jp/report/column-list/ctg/041
(2016年10月11日9:00執筆)
※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。
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投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項
【投資信託に係るリスクと費用】
● 投資信託に係るリスクについて
投資信託は、株式、債券および不動産投資信託証券(リート)などの値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替リ
スクもあります。)に投資をしますので、市場環境、組入有価証券の発行者に係る信用状況等の変化により基準価額は
変動します。このため、購入金額について元本保証および利回り保証のいずれもありません。
● 投資信託に係る費用について
[ご投資いただくお客さまには以下の費用をご負担いただきます。]
■お客さまが直接的に負担する費用
購入時手数料 :上限4.104%(税込)
信託財産留保額:上限0.5%
公社債投信およびグリーン公社債投信の換金時手数料:取得年月日により、1万口につき上限108円(税込)
その他の投資信託の換金時手数料:ありません
■お客さまが信託財産で間接的に負担する費用
運用管理費用(信託報酬):上限 年率2.6824%(税込)
※ 上記は基本的な料率の状況を示したものであり、成功報酬制を採用するファンドについては、成功報酬額の加算
によってご負担いただく費用が上記の上限を超過する場合があります。成功報酬額は基準価額の水準等により変
動するため、あらかじめ上限の額等を示すことができません。
■その他費用・手数料
上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)等でご確認ください。
※上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。
費用の料率につきましては、アセットマネジメントOne株式会社が運用するすべての投資信託のうち、徴収するそれぞれ
の費用における最高の料率を記載しております。
※税法が改正された場合等には、税込手数料等が変更となることがあります。
【ご注意事項】
●当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が作成したものです。
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●当資料における内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。
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えて、証券会社を通して購入していない場合には投資者保護基金の対象ではありません。
2.購入金額について元本保証および利回り保証のいずれもありません。
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【当資料で使用している指数について】
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