情報提供資料 投資のヒントをお届けします。 コラム 「柏原延行」の Market View 2016年12月12日 #37 中国版プラザ合意? 皆さま こんにちは。 アセットマネジメントOneで調査グループ長を務めます柏原延行です。 トランプ次期大統領の選出以降の米国長期金利の上昇には、やや一服感があり、市場はある程度冷静さ を取り戻しているように思えます(一方で、株式は上昇しています)。 トランプ次期大統領は、中国との関係について、度々言及しています。そして、財政出動や減税に関しては、 議会との交渉が必要ですが、外交や通商関係については、大統領の考え方が反映される部分が大きくなりま す。 そこで、今回のコラムでは、米国と中国の経済的関係を整理したいと思います。 米国の対中国向けの貿易収支は、トレンドとして赤字額が増加傾向にあります(図表1)。 図表1:米国の貿易収支(対中国) 1996年~2015年:年次 (10億米ドル) 0 -5 -10 -15 -20 -25 -30 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 (年) 出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。 貿易赤字の計上は、米国内での需要が海外からの輸入によって賄われていることを示します。 これを米国内雇用の観点で見た場合には、需要が輸入によって賄われる結果、米国内における生産が停 滞し、トランプ次期大統領の支持層といわれる労働階級の雇用自体や賃金水準に悪影響を与えるとされま す。このため、トランプ次期大統領は、中国との間で、公正・公平な貿易の実現を志向すると考えます。そして、 これを達成するための(交渉の)手段として、為替操作国認定や懲罰的ともいえる関税率引き上げ等がク ローズアップされていると思われます。 ※本資料中の図表は、将来における米国の貿易収支(対中国)の推移を示唆、保証するものではありません。 ※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。 商 号 等 / アセットマネジメントOne株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第324号 加入協会/ 一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 1 まず、貿易の相手方としての重要性を考えてみましょう。 「米国の輸入における中国の地位」、及び「中国の輸出における米国の地位」は両方1位であり、相互の貿 易を通じた結びつきは相当に強く、互いにとって重要であることが分かります(図表2、図表3)。 図表2:米国の輸入相手国(上位5ヵ国) 図表3:中国の輸出相手国(上位5ヵ国) 中国 米国 カナダ 香港 メキシコ 日本 日本 韓国 ドイツ メキシコ 0 100 200 300 400 500 (10億米ドル) 出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。 ※データは2015年の値。 0 100 200 300 400 500 (10億米ドル) 出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。 ※データは2015年の値。 次に、トランプ次期大統領が中国との貿易赤字減少のための交渉を本格的に開始した場合、どのようなこと が起こるかについて、考えてみたいと思います。 懲罰的に高率な関税は、交渉が相当混乱した場合に発動される可能性は否定できません。しかし、自由 貿易との価値観の重要さを勘案するに、貿易赤字の解消方法は、1985年のプラザ合意と同じく、通貨調整 (米ドル安・人民元高)が有力な手段になるのではないかと私は考えています。 とすれば、(中国と日本はその交渉能力等が異なるとの反論は当然に想定されますが)、(一定割合) 輸出に依存した経済からの変革の必要性があるとの観点では、現在の中国と1980年代の日本は共通点を 持つと考えることも可能なように思いますので、1980年代の日米貿易摩擦を簡単におさらいしましょう(前川 レポートが懐かしいですね)。 当時を思い返すと、日本の自動車がハンマーで叩かれ壊される様子等がニュースで流れたことがとても印象 的です。それくらい、一部の米国人には日本製品が輸入されることにより雇用が奪われているとの思いが強く、 これは今回トランプ次期大統領誕生に対する有権者の思いに通じるところがあるように思います。 そして、貿易摩擦は、通貨調整の進展などに伴い、解消方向に向かいました(加えて、日本の自動車企業 の米国工場の設立発表等も行われました)。 この時の通貨の調整は非常に大きいもので、1984年末に約252円であった米ドルは、1999年末には約103 円まで米ドル安・円高が進展しました。 トランプ次期大統領が中国との交渉を始めた場合、一定程度、通貨調整(中国版プラザ合意と呼ばれる のでしょうか?)が起こることを想定すべきと考えますが、米ドル安・人民元高と聞くと、中国の景気が大きく減 速するとの印象を持つため、リスクオフ要因となるとの懸念を持たれる方もいらっしゃると思います。 ※本資料中の図表は、将来における米国の輸入相手国(上位5ヵ国)、中国の輸出相手国(上位5ヵ国)を示唆、保証するものではありません。 ※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。 2 この要因からのリスク・オフが発生するか、否かは、極めて難しい問題です。 米ドル安・中国元高が起こった場合に、リスク・オフになるとの根拠として有力なものは、①中国輸出企業の 業績下押し圧力、②米中関係の悪化自体(中国は米国債券を大量に保有しています)等の主張が挙げ られます。 一方で、リスク・オフ要因にならないとの主張の根拠としては、①急激ではない緩やかな人民元高は、人民元 の国際化を推進し、人民元経済圏を拡大するとの中国政府の意思にそうものであり、むしろ資本流出に伴う 人民元安がリスク・オフ要因である、②中国の生産拠点としての魅力が薄れ、中国がデフレを輸出するとの経 済構造が変化する可能性がある、③プラザ合意後の円高局面で日本の株式や不動産等の資産価格はむし ろ上昇した等の主張が考えられます。 また、人民元高は、日本に対しては、インフレ要因となるとともに(ただし、コストアップ型です)、中国による インバウンド需要を喚起する要因となることにも留意が必要です(日本円安、人民元高が発生すると仮定し た場合)。 以上を眺めると、米国の中国向け貿易赤字の解消への交渉が、タフネゴシエーターと言われるトランプ次期 大統領のもとで、慎重かつ粘り強く進められた場合に、リスク・オフ要因になるとの安易な思い込みは危険であ ると考えます。 アセットマネジメントOneでは、業界No1の質と量を実現する積極的な情報発信に努めたいと考えます。 是非、弊社の新しいホームページ等をご覧いただければと考えます。 なお、コラムの過去分に関しては、以下をご参照ください。 ・2016年10月以降 http://www.am-one.co.jp/report/marketreport/3/ ・上記以前 http://www.mizuho-am.co.jp/report/column-list/ctg/041 (2016年12月9日 9:00執筆) ※巻末の投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項を必ずお読みください。 3 投資信託に係るリスクと費用およびご注意事項 【投資信託に係るリスクと費用】 ● 投資信託に係るリスクについて 投資信託は、株式、債券および不動産投資信託証券(リート)などの値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替リ スクもあります。)に投資をしますので、市場環境、組入有価証券の発行者に係る信用状況等の変化により基準価額は 変動します。このため、購入金額について元本保証および利回り保証のいずれもありません。 ● 投資信託に係る費用について [ご投資いただくお客さまには以下の費用をご負担いただきます。] ■お客さまが直接的に負担する費用 購入時手数料 :上限4.104%(税込) 信託財産留保額:上限0.5% 公社債投信およびグリーン公社債投信の換金時手数料:取得年月日により、1万口につき上限108円(税込) その他の投資信託の換金時手数料:ありません ■お客さまが信託財産で間接的に負担する費用 運用管理費用(信託報酬):上限 年率2.6824%(税込) ※ 上記は基本的な料率の状況を示したものであり、成功報酬制を採用するファンドについては、成功報酬額の加算 によってご負担いただく費用が上記の上限を超過する場合があります。成功報酬額は基準価額の水準等により変 動するため、あらかじめ上限の額等を示すことができません。 ■その他費用・手数料 上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)等でご確認ください。 ※上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。 費用の料率につきましては、アセットマネジメントOne株式会社が運用するすべての投資信託のうち、徴収するそれぞれ の費用における最高の料率を記載しております。 ※税法が改正された場合等には、税込手数料等が変更となることがあります。 【ご注意事項】 ●当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が作成したものです。 ●当資料は、情報提供を目的とするものであり、投資家に対する投資勧誘を目的とするものではありません。 ●当資料は、アセットマネジメントOne株式会社が信頼できると判断したデータにより作成しておりますが、その内容の完 全性、正確性について、同社が保証するものではありません。また掲載データは過去の実績であり、将来の運用成果を保 証するものではありません。 ●当資料における内容は作成時点のものであり、今後予告なく変更される場合があります。 ●投資信託は、 1.預金等や保険契約ではありません。また、預金保険機構および保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。加 えて、証券会社を通して購入していない場合には投資者保護基金の対象ではありません。 2.購入金額について元本保証および利回り保証のいずれもありません。 3.投資した資産の価値が減少して購入金額を下回る場合がありますが、これによる損失は購入者が負担することとなり ます。 【当資料で使用している指数について】 ございません。 4
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